mission 4:same sword style ~黒き鎧の魔剣士~
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「……一体何をしている」
漆黒の騎士ネロアンジェロの前には、ディーヴァに食事を提供した場所に隣接された、小さな厨房のような場所で、オーブンの前に向かい合うディーヴァの姿があった。
「真っ赤だなー真っ赤だなー、(体にまとわりついた)蔦がこんなに真っ赤だなー。ケーキもこんなに真っ赤だなー。沈む心と死にかけ身体ー…。真っ赤な全身のー、ケーキとあたしー。
何って、もちろん料理してます」
「そんなナリで料理だと?正気か」
全身どっぷりと酸素に触れて黒っぽく滲む紅に包まれているディーヴァ。作業中の手元も違う赤に濡れている。
くるぅりと、振り向いた頬にもまた、なにかの赤い液体が頬に跳ねている。醜い悪魔と違い、滑らかなその顔の上にぴちょんと跳ねるその様…。
料理というか、殺人現場に見えた。
いや、ここに『人』はディーヴァ以外いないのだから、この場合は自殺現場、か。
「正気か、ですって?
何かやってないと正気でいられなぁいー」
そしてその目。
わあ、死んでる。
光をなくしたそれは、一歩間違えるとヤンデレの目だ。
実はディーヴァが史上最強最悪の魔王としてDMCの最終章に出現する、とかそんなではないだろうか。
主人公は愛する者を手にかけられない。そういう意味では最強かもしれない。
謎の歌といい、顔に跳ねたものといい、おおこわい。
赤いクリームだろう、手元の甘い香りにまじり、ネロアンジェロの鎧の下、その鼻腔に届いてくるディーヴァの血の芳香。
血なまぐさいというより、芳しい。
血を求めてその体に絡みつく棘の蔦も赤に染まって、今にも熟れた赤い果実をつけそうだ。
それを食したらあるいは…。
そう思ったところで、ネロアンジェロはその思考を断ち切った。
貧血でクラクラしているはずのディーヴァよりも、その匂いを嗅いでいる自分の方が、クラクラしてしまっている。
クラクラして、思考がおかしな方向へ飛びかけた。
だめだ、この者はムンドゥスの獲物。この者は俺の大事な者。
…ん、大事……?
悪魔として生まれたはずの自分、ずっとここでムンドゥス様の配下として生きてきたはずの自分。
だが、ここ数年の記憶は、魔界の瘴気よりも暗い闇に包まれている。
「それにね、」
またも思考がごちゃごちゃしてきたが、ディーヴァが口を開いたことで、ようやく現実へと戻ってこられた。
「食べるの怖い料理があるなら、最初から自分で作っちゃえばいいかなって。
そうすれば、どんな材料があるかも確認できるでしょ。
それに、出歩ける範囲が少しでもあるなら、閉じこもって鬱々しているより、倒れない程度に料理でもしてたほうがいいもの」
ただ引きこもっているだけとは違う。やはり女性という生き物は。
「…強いな。
いや、そのように風変わりな思考をするあたりは、さすがディーヴァというかなんというか…」
「さすがディーヴァ?
まるであたしのこと、前から知っているみたいな言い方」
「なぜだろうな、そう思った」
このディーヴァという天使を前にすると、どうも思考がおかしくなる。
だが、いやではないのだ。いやでは。
ドゥン!
ちょうど何かが焼きあがったらしい、オーブンもどきが音を立てた。
チン!じゃないあたり、魔界だ。
その時、禍々しくも嫌味な奴、同じ魔王の腹心たる悪魔が現れた。
「変わった匂いがするので来てみれば…おやおや、新たな武器でも作れたか?」
「武器じゃなくてケーキです」
「ケーキ?人間の甘露か。
毒々しいまでに真っ赤だが?」
熱々のそれを取り出し、湯気を立てるさまを覗き込むと、確かにケーキの土台だというに、血で染まったかのように赤い。が、気になったのはそこじゃない。
「貴様、『作れたか?』だと?まさか許可を出したのは」
「ああ、我だ。ふふん、やりたいのならやらせておけばいい。
ここは逃げ出せる場所ではない。
で、なぜクリームも赤い…赤というより紅だな。これはどうした?」
自身も真っ赤、焼き上がり生地も真っ赤、クリームもこれまた真っ赤。真っ赤だなー。歌の通り。
「生地にもどっちにも、食紅これでもかと入れて更に苺エキスみたいなの混ぜ込んだの」
「頬に跳ねていたのはそれか」
魔界なのに普通の材料が揃っていて助かった、とホッとしているディーヴァは、魔界の食材はハギスのような物を作る材料や、虫の湧いたような物しか想像していなかったらしい。某魔法学校のゴーストの地下パかよ。
なぜ前回食べた?と激しく聞きたいところだ。
「クリームにお前の血も混ぜろ。より赤くなる」
「おいこらグリフォン」
「はぁい、じゃあ失礼して」
「お前も返事するな」
盛り付けが終わったらしい。
綺麗に飾り付けられた皿が、グリフォンとネロアンジェロ、2人の前に差し出された。
「…?どういうことだ」
「お前が食べるのではないのか?」
「作ってる時の匂いでお腹いっぱい。それにこのレッドベルベットケーキ真っ赤すぎて体に良くなさそう〜」
体に悪そうな物を人にやるなよ、とは言いたい。人じゃなくて悪魔だが。
「なんでもいいさ。人間の食事には興味がある。ありがたくいただこうか」
「…一つ聞きたい。この皿の恐ろしい悪魔の絵は何だ?」
「やだなぁ、どっからどう見てもかわいいジャッカロープでしょ。あ、彼らも悪魔か」
「「………」」
うわ微妙。
皿の上、ケーキを囲むようにして苺ソースで描かれたジャッカロープはどうみても恐ろしいホラー映画さながらだった。盛り付けはいいのになんともったいない。
赤を見るとなぜか少し腹立たしくなるネロアンジェロだが、それが搔き消えるほどの赤さ。そして絵のセンスだった…。
「!!
味がいい!人間の食いもん、なかなか美味じゃねーか!俺の口にあうぜえ!」
「えっ!グ、リフォンさん…口調違くないですか??」
「口が悪くなったぞ」
「……こほん、ちょっと素が出てしまったな。
忘れろ」
「でも」
「忘れろ」
普段はシャープな顔に合わせ、キャラを作っていたか。
グリフォンが『素』に戻るほどの美味さ、ぜひ味わってみたいものだ。
気を取り直し口にするべく、その漆黒の画面に手をやるネロアンジェロ。
ディーヴァが、その素顔を見られるのかと、息を飲んだ。
「おっとネロアンジェロ、時間切れだ。ムンドゥス様がおよびのようだぞ」
「そのようだな」
「え?え??」
「どれ、お前の分は我が食べておこう」
残念。ネロアンジェロはディーヴァのケーキを食べ損ねてしまった。
残念。ディーヴァはネロアンジェロの素顔を見る事が出来なかった。
「ではまたな。侵入者を殺してくる…」
「しんにゅうしゃ……」
侵入者とはまさか。
そう期待と不安に苛まれるディーヴァの頭を、鎧に包まれた無骨な手が小さく撫で、去っていった。
漆黒の騎士ネロアンジェロの前には、ディーヴァに食事を提供した場所に隣接された、小さな厨房のような場所で、オーブンの前に向かい合うディーヴァの姿があった。
「真っ赤だなー真っ赤だなー、(体にまとわりついた)蔦がこんなに真っ赤だなー。ケーキもこんなに真っ赤だなー。沈む心と死にかけ身体ー…。真っ赤な全身のー、ケーキとあたしー。
何って、もちろん料理してます」
「そんなナリで料理だと?正気か」
全身どっぷりと酸素に触れて黒っぽく滲む紅に包まれているディーヴァ。作業中の手元も違う赤に濡れている。
くるぅりと、振り向いた頬にもまた、なにかの赤い液体が頬に跳ねている。醜い悪魔と違い、滑らかなその顔の上にぴちょんと跳ねるその様…。
料理というか、殺人現場に見えた。
いや、ここに『人』はディーヴァ以外いないのだから、この場合は自殺現場、か。
「正気か、ですって?
何かやってないと正気でいられなぁいー」
そしてその目。
わあ、死んでる。
光をなくしたそれは、一歩間違えるとヤンデレの目だ。
実はディーヴァが史上最強最悪の魔王としてDMCの最終章に出現する、とかそんなではないだろうか。
主人公は愛する者を手にかけられない。そういう意味では最強かもしれない。
謎の歌といい、顔に跳ねたものといい、おおこわい。
赤いクリームだろう、手元の甘い香りにまじり、ネロアンジェロの鎧の下、その鼻腔に届いてくるディーヴァの血の芳香。
血なまぐさいというより、芳しい。
血を求めてその体に絡みつく棘の蔦も赤に染まって、今にも熟れた赤い果実をつけそうだ。
それを食したらあるいは…。
そう思ったところで、ネロアンジェロはその思考を断ち切った。
貧血でクラクラしているはずのディーヴァよりも、その匂いを嗅いでいる自分の方が、クラクラしてしまっている。
クラクラして、思考がおかしな方向へ飛びかけた。
だめだ、この者はムンドゥスの獲物。この者は俺の大事な者。
…ん、大事……?
悪魔として生まれたはずの自分、ずっとここでムンドゥス様の配下として生きてきたはずの自分。
だが、ここ数年の記憶は、魔界の瘴気よりも暗い闇に包まれている。
「それにね、」
またも思考がごちゃごちゃしてきたが、ディーヴァが口を開いたことで、ようやく現実へと戻ってこられた。
「食べるの怖い料理があるなら、最初から自分で作っちゃえばいいかなって。
そうすれば、どんな材料があるかも確認できるでしょ。
それに、出歩ける範囲が少しでもあるなら、閉じこもって鬱々しているより、倒れない程度に料理でもしてたほうがいいもの」
ただ引きこもっているだけとは違う。やはり女性という生き物は。
「…強いな。
いや、そのように風変わりな思考をするあたりは、さすがディーヴァというかなんというか…」
「さすがディーヴァ?
まるであたしのこと、前から知っているみたいな言い方」
「なぜだろうな、そう思った」
このディーヴァという天使を前にすると、どうも思考がおかしくなる。
だが、いやではないのだ。いやでは。
ドゥン!
ちょうど何かが焼きあがったらしい、オーブンもどきが音を立てた。
チン!じゃないあたり、魔界だ。
その時、禍々しくも嫌味な奴、同じ魔王の腹心たる悪魔が現れた。
「変わった匂いがするので来てみれば…おやおや、新たな武器でも作れたか?」
「武器じゃなくてケーキです」
「ケーキ?人間の甘露か。
毒々しいまでに真っ赤だが?」
熱々のそれを取り出し、湯気を立てるさまを覗き込むと、確かにケーキの土台だというに、血で染まったかのように赤い。が、気になったのはそこじゃない。
「貴様、『作れたか?』だと?まさか許可を出したのは」
「ああ、我だ。ふふん、やりたいのならやらせておけばいい。
ここは逃げ出せる場所ではない。
で、なぜクリームも赤い…赤というより紅だな。これはどうした?」
自身も真っ赤、焼き上がり生地も真っ赤、クリームもこれまた真っ赤。真っ赤だなー。歌の通り。
「生地にもどっちにも、食紅これでもかと入れて更に苺エキスみたいなの混ぜ込んだの」
「頬に跳ねていたのはそれか」
魔界なのに普通の材料が揃っていて助かった、とホッとしているディーヴァは、魔界の食材はハギスのような物を作る材料や、虫の湧いたような物しか想像していなかったらしい。某魔法学校のゴーストの地下パかよ。
なぜ前回食べた?と激しく聞きたいところだ。
「クリームにお前の血も混ぜろ。より赤くなる」
「おいこらグリフォン」
「はぁい、じゃあ失礼して」
「お前も返事するな」
盛り付けが終わったらしい。
綺麗に飾り付けられた皿が、グリフォンとネロアンジェロ、2人の前に差し出された。
「…?どういうことだ」
「お前が食べるのではないのか?」
「作ってる時の匂いでお腹いっぱい。それにこのレッドベルベットケーキ真っ赤すぎて体に良くなさそう〜」
体に悪そうな物を人にやるなよ、とは言いたい。人じゃなくて悪魔だが。
「なんでもいいさ。人間の食事には興味がある。ありがたくいただこうか」
「…一つ聞きたい。この皿の恐ろしい悪魔の絵は何だ?」
「やだなぁ、どっからどう見てもかわいいジャッカロープでしょ。あ、彼らも悪魔か」
「「………」」
うわ微妙。
皿の上、ケーキを囲むようにして苺ソースで描かれたジャッカロープはどうみても恐ろしいホラー映画さながらだった。盛り付けはいいのになんともったいない。
赤を見るとなぜか少し腹立たしくなるネロアンジェロだが、それが搔き消えるほどの赤さ。そして絵のセンスだった…。
「!!
味がいい!人間の食いもん、なかなか美味じゃねーか!俺の口にあうぜえ!」
「えっ!グ、リフォンさん…口調違くないですか??」
「口が悪くなったぞ」
「……こほん、ちょっと素が出てしまったな。
忘れろ」
「でも」
「忘れろ」
普段はシャープな顔に合わせ、キャラを作っていたか。
グリフォンが『素』に戻るほどの美味さ、ぜひ味わってみたいものだ。
気を取り直し口にするべく、その漆黒の画面に手をやるネロアンジェロ。
ディーヴァが、その素顔を見られるのかと、息を飲んだ。
「おっとネロアンジェロ、時間切れだ。ムンドゥス様がおよびのようだぞ」
「そのようだな」
「え?え??」
「どれ、お前の分は我が食べておこう」
残念。ネロアンジェロはディーヴァのケーキを食べ損ねてしまった。
残念。ディーヴァはネロアンジェロの素顔を見る事が出来なかった。
「ではまたな。侵入者を殺してくる…」
「しんにゅうしゃ……」
侵入者とはまさか。
そう期待と不安に苛まれるディーヴァの頭を、鎧に包まれた無骨な手が小さく撫で、去っていった。