mission 3:stuffy blazing-spider ~巨大な蜘蛛との遭遇~
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小さな窓ひとつしかない、どこか鳥籠に似た部屋の中、ディーヴァは膝を抱えて座り込み静かに涙する。
もういやだ。
せめて他のことを考えよう。考えている間は、痛みも苦しみも、恐怖さえ薄れるのだから。
もし、あたしに天使の力がなかったら。
家族は死ななかったし、悪魔となんて関わらずに生きていけたのに。
ううん。この世の中が、悪魔のいない世の中だったら良かったのに。
悪魔に襲われなければダンテとの縁はなかったかもしれない。
それでももし、そんな世の中でもダンテと会えるなら嬉しい。
今じゃダンテがいなくては生きていけない。ダンテなしじゃいられない。
それほどまでに彼を愛しているから。
とはいえ、平和な世界でダンテと会うなら、もっとしあわせな出会い方をして、しあわせな生活を送りたい。なんて思う。
すべてたらればの話だ。
ああ、これではまた悪魔の話に戻ってしまいそうだ。なんという連想ゲーム。
どんなに違うことを考えようとしても、血と恐怖とにまみれた話しか浮かんでこない。
もっと楽しい話を思い浮かべないと。
チーズの乗ったパンケーキ、トロゥリとろける美味しいラザニア…みんなみんな我慢しません、ワガママな子だと思…ってくれていいよ。
食べたいものを思い浮かべたら、バーチャルアイドルの自前替え歌歌詞が出てきちゃった。
なんてこったい。
チーズ食べたい。
「さっき食べたのになぁ」
腹っぺらしな胃袋は健在のようだ。
あのあと、ネロアンジェロに食べるように促されて、結構な量を食べたというに、もう小腹がすいて虫が小さく鳴いている。
すぐに空腹になる程、血が失われているということでいいのだろうか。うん、そういうことにしておこう。
食べたのは、特別すごく美味しいものでもなかったが、人間の食べられる料理で。
使われている食材も危ないものではなかった。
だからたくさん食べたのだ。
だが、今は食事がとれるような場所でも状況でもない。
チーズへと完全に移行したしょーもない考えこそ、捨てるべきだ。どうやったって食べれないのだから。
生きて帰ることができたら、食べればいい。
変なフラグ立てると逆に死んでしまいそうなので、こういう考えは一旦やめる。
「なんか歌お」
疲労困憊しているが、空腹や痛み、苦しみを紛らわせるには、歌うしかない。
歌うのは好きだ。
メロディ、歌詞を思い浮かべ、唇に歌を乗せて口遊むだけで気持ちが和らぐ。
楽しい曲を歌えば楽しく、切ない歌を歌えば切なく。
愛しい人をイメージした曲を歌えば、愛しい人を目の前にしたような、ふんわりと温かい気持ちになる。
はやくあって言いたい、あなたとのいろんなこと。はやくあって抱きたい、すべての始まりがあなたとで。
あなたがあたしの頬にほおずりすると、二人の時間は止まる。好きよ、愛しいダンテ。
ダンテのことを思い浮かべてみたら、今度はジャパニーズポピュラーミュージックを歌ってしまった。
もちろん歌詞を少し変えてだけれど。
うん、温かい気持ちにはなった。確かになった。
でも、まるでマッチ売りの少女の気分だ。
温かいのはマッチをつけた瞬間だけなのと同じ、温かい気持ちになったのは歌っているその一瞬だけ。
歌い終えたあとには、体温と血液を否応なく奪う、この凍てつくような冷たい牢と、体に巻きついた蔦しかのこらない。
いや、歌っている最中すら、違和感があった。選んだのは、いつもなら弾んだ声で歌う曲。なのに、口から出るのは少し掠れた小さな声。
こんな所にも影響を及ぼしていた。
それでもディーヴァは歌うのをやめなかった。
籠の鳥は番を呼ぶ。
自分はここにいるよ、と居場所を伝えるため囀る。
In the field so green and so free
Seeds gaze up
The clouds keeps them from the light
And the sky cries white tears of snow
But still… The fragile seeds…
曲調のせいか、か細くもスッと空に伸びていくような声が、窓からあたりへと広がっていった。
「天使は歌も歌うのか」
「ひぇっ!」
いつのまに来ていたのだろう。
後ろにあの悪魔が壁に身を預けて、ディーヴァの歌を聞いていた。
ビビったディーヴァの口が止まったので、悪魔がその形の良い眉根を不服そうに寄せる。
「いい、続けろ。本性が鳥の悪魔なものでな、囀りには惹かれてしまうのだ」
ああ、最悪だ。ダンテという番を喚ぶどころか、違う脅威を喚び寄せてしまうとは。
というか、鳥の悪魔なのかこのひと。
もしかして、この冷たい感じする悪魔は、鳥の姿でぴーちくぱーちく囀るのだろうか。
何それこわい。でも見てみたい。
「B、But still… The fragile seeds wait long for the sun to shine.
Dark winter away, come spring…」
しかしディーヴァが歌うのはここまで。
ダンテが思い出さぬ限り、続きを歌うことはできない。
「そこで終わりではないだろう。続きは?」
「し、知らないんです…。教わってないんです…ごめんなさい…っ」
「続きくらい作れ。即興アカペラで歌え」
「んな無茶な…!」
「ほおー。拒否できる立場だと思っているのか?」
「痛い痛い」
断れば、またも頬をつねられた。
爪を食い込ませ痛めつける姿は楽しそう。ディーヴァを気に入っているのはなんとなくわかるが…性質がサド。
しばらくして満足そうに去っていった悪魔。
「痛かったなぁ、もう…」
断続的な痛みはともかく、さらに与えられる痛みはご勘弁。間に合ってます。
…食事はできた。
なら今度は顔を洗いたい。シャワーも浴びたいと思ってしまう。状況的にどう考えても無理な、わがままな願い。
でも、ディーヴァの今の格好はとてもひどいものだ。
血であちこち紅く染まっているし、鉄臭い独特の血の匂いがあたりに漂っている。不快だ。
「服着替えたいな…」
真っ赤に染まり、酸素に触れた赤が黒に変わる
白いワンピース。
それが今もなお流れる血で、濃いえんじ色とかなにそれこわい。
悪夢としか思えない。いいや現実だ。
ディーヴァは知らない事だが、ダンテが相手にしている、ブラッディマリーのマリオネットと同じである。
とはいえ、着替えるにしてもこの蔦の棘が邪魔をする。
触ればなお締めつけ、傷を深くするそれ。おいそれと触ることもできない。
断続的な痛みにもう慣れた、とは言った。うん、言った。
それでも痛みも、そして今の状況、取り巻く環境のすべてが、嫌なことに変わりない。
もういやだ。
せめて他のことを考えよう。考えている間は、痛みも苦しみも、恐怖さえ薄れるのだから。
もし、あたしに天使の力がなかったら。
家族は死ななかったし、悪魔となんて関わらずに生きていけたのに。
ううん。この世の中が、悪魔のいない世の中だったら良かったのに。
悪魔に襲われなければダンテとの縁はなかったかもしれない。
それでももし、そんな世の中でもダンテと会えるなら嬉しい。
今じゃダンテがいなくては生きていけない。ダンテなしじゃいられない。
それほどまでに彼を愛しているから。
とはいえ、平和な世界でダンテと会うなら、もっとしあわせな出会い方をして、しあわせな生活を送りたい。なんて思う。
すべてたらればの話だ。
ああ、これではまた悪魔の話に戻ってしまいそうだ。なんという連想ゲーム。
どんなに違うことを考えようとしても、血と恐怖とにまみれた話しか浮かんでこない。
もっと楽しい話を思い浮かべないと。
チーズの乗ったパンケーキ、トロゥリとろける美味しいラザニア…みんなみんな我慢しません、ワガママな子だと思…ってくれていいよ。
食べたいものを思い浮かべたら、バーチャルアイドルの自前替え歌歌詞が出てきちゃった。
なんてこったい。
チーズ食べたい。
「さっき食べたのになぁ」
腹っぺらしな胃袋は健在のようだ。
あのあと、ネロアンジェロに食べるように促されて、結構な量を食べたというに、もう小腹がすいて虫が小さく鳴いている。
すぐに空腹になる程、血が失われているということでいいのだろうか。うん、そういうことにしておこう。
食べたのは、特別すごく美味しいものでもなかったが、人間の食べられる料理で。
使われている食材も危ないものではなかった。
だからたくさん食べたのだ。
だが、今は食事がとれるような場所でも状況でもない。
チーズへと完全に移行したしょーもない考えこそ、捨てるべきだ。どうやったって食べれないのだから。
生きて帰ることができたら、食べればいい。
変なフラグ立てると逆に死んでしまいそうなので、こういう考えは一旦やめる。
「なんか歌お」
疲労困憊しているが、空腹や痛み、苦しみを紛らわせるには、歌うしかない。
歌うのは好きだ。
メロディ、歌詞を思い浮かべ、唇に歌を乗せて口遊むだけで気持ちが和らぐ。
楽しい曲を歌えば楽しく、切ない歌を歌えば切なく。
愛しい人をイメージした曲を歌えば、愛しい人を目の前にしたような、ふんわりと温かい気持ちになる。
はやくあって言いたい、あなたとのいろんなこと。はやくあって抱きたい、すべての始まりがあなたとで。
あなたがあたしの頬にほおずりすると、二人の時間は止まる。好きよ、愛しいダンテ。
ダンテのことを思い浮かべてみたら、今度はジャパニーズポピュラーミュージックを歌ってしまった。
もちろん歌詞を少し変えてだけれど。
うん、温かい気持ちにはなった。確かになった。
でも、まるでマッチ売りの少女の気分だ。
温かいのはマッチをつけた瞬間だけなのと同じ、温かい気持ちになったのは歌っているその一瞬だけ。
歌い終えたあとには、体温と血液を否応なく奪う、この凍てつくような冷たい牢と、体に巻きついた蔦しかのこらない。
いや、歌っている最中すら、違和感があった。選んだのは、いつもなら弾んだ声で歌う曲。なのに、口から出るのは少し掠れた小さな声。
こんな所にも影響を及ぼしていた。
それでもディーヴァは歌うのをやめなかった。
籠の鳥は番を呼ぶ。
自分はここにいるよ、と居場所を伝えるため囀る。
In the field so green and so free
Seeds gaze up
The clouds keeps them from the light
And the sky cries white tears of snow
But still… The fragile seeds…
曲調のせいか、か細くもスッと空に伸びていくような声が、窓からあたりへと広がっていった。
「天使は歌も歌うのか」
「ひぇっ!」
いつのまに来ていたのだろう。
後ろにあの悪魔が壁に身を預けて、ディーヴァの歌を聞いていた。
ビビったディーヴァの口が止まったので、悪魔がその形の良い眉根を不服そうに寄せる。
「いい、続けろ。本性が鳥の悪魔なものでな、囀りには惹かれてしまうのだ」
ああ、最悪だ。ダンテという番を喚ぶどころか、違う脅威を喚び寄せてしまうとは。
というか、鳥の悪魔なのかこのひと。
もしかして、この冷たい感じする悪魔は、鳥の姿でぴーちくぱーちく囀るのだろうか。
何それこわい。でも見てみたい。
「B、But still… The fragile seeds wait long for the sun to shine.
Dark winter away, come spring…」
しかしディーヴァが歌うのはここまで。
ダンテが思い出さぬ限り、続きを歌うことはできない。
「そこで終わりではないだろう。続きは?」
「し、知らないんです…。教わってないんです…ごめんなさい…っ」
「続きくらい作れ。即興アカペラで歌え」
「んな無茶な…!」
「ほおー。拒否できる立場だと思っているのか?」
「痛い痛い」
断れば、またも頬をつねられた。
爪を食い込ませ痛めつける姿は楽しそう。ディーヴァを気に入っているのはなんとなくわかるが…性質がサド。
しばらくして満足そうに去っていった悪魔。
「痛かったなぁ、もう…」
断続的な痛みはともかく、さらに与えられる痛みはご勘弁。間に合ってます。
…食事はできた。
なら今度は顔を洗いたい。シャワーも浴びたいと思ってしまう。状況的にどう考えても無理な、わがままな願い。
でも、ディーヴァの今の格好はとてもひどいものだ。
血であちこち紅く染まっているし、鉄臭い独特の血の匂いがあたりに漂っている。不快だ。
「服着替えたいな…」
真っ赤に染まり、酸素に触れた赤が黒に変わる
白いワンピース。
それが今もなお流れる血で、濃いえんじ色とかなにそれこわい。
悪夢としか思えない。いいや現実だ。
ディーヴァは知らない事だが、ダンテが相手にしている、ブラッディマリーのマリオネットと同じである。
とはいえ、着替えるにしてもこの蔦の棘が邪魔をする。
触ればなお締めつけ、傷を深くするそれ。おいそれと触ることもできない。
断続的な痛みにもう慣れた、とは言った。うん、言った。
それでも痛みも、そして今の状況、取り巻く環境のすべてが、嫌なことに変わりない。