mission 23:blue sky ~崩壊と脱出~
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無視していこう、ダンテがそう言ったあとのバージルの言葉に、あたしは耳を疑った。
悪魔の結界もこの部屋には張られていない。ならば、この大量のマリオネットを倒す必要はないはずだ。
何より時間ももうない。倒している時間は惜しい。
なのに、バージルはこのマリオネットを倒すから先に行け?そう言ったのか。
ガシャコン、ガシャコンと、向かってきたマリオネットを取り敢えずショットガンで弾き飛ばして近寄らせないようにしているダンテには肩からおろしてもらい、あたしはバージルの前に立つ。
鯉口を切っていた刀を鞘に収め直し、バージルはあたしをまっすぐ見つめた。
「……バージル、残る気なのね」
図星か。
ぴく、とバージルの指が動いた。一瞬だったが瞳も動揺からか揺れ動いていた。
「バージルも帰ろう」
「断る。
俺はここでいい。この場所が、親父のいた、この場所がーー」
「その言葉は!!」
あたしが出した大声に、ダンテもバージルも、マリオネット達ですら、一瞬止まった。
言った本人であるあたしでさえも。
「……その言葉は、あの時も聞いた。テメンニグルで、バージルと離れる際に」
じっと見つめ返せば、バージルは居心地悪そうに目を逸らした。
「ここは居心地がいい。俺の体にも合っている。だが人間社会は俺には向かない。
それに、愚弟が勝手においてきたアミュレットも取りに行かねばならん」
「まだそんなこと言ってんのかアンタ。帰んぞ!」
「いや、帰らない。ここまで送ったんだ。それで終いでいいだろう。
俺は魔界へ戻る」
何も食べていないものすごく空腹の状態なのに、胸焼けしたみたい。
今のあたしが、すごーく腹を立ててるってことかも。
バージルの体に魔界が合っている?そんなことあるわけない。
ネロアンジェロの時ならまだわかる。けれど今は半分悪魔のバージルだ。つまりもう半分は人間。
魔界の空気や瘴気は、じわじわ蝕む毒のように、バージルの心や肉体を侵していく。
ダンテよりバージルの体温ははるかに低い。毒気に当たってるからだ。あたしにはそう思えた。
こんなところにいては、バージルは体も心もダメになる。
「ねえダンテ。複葉機って全員乗れる乗り物なんだよね?」
「ああ、一応乗れると思うぜ。ディーヴァはお子ちゃまサイズだし」
お子ちゃまサイズって、あたしのことを馬鹿にしすぎだと思うの。
カチンときたが今はいい。足でも踏んでやりたかったけれどそれをしたら、ダンテがマリオネットを追い払えなくなって困る。
「まあ乗っていい人数は超えちゃうんだろうけど…席を詰めればなんとかいけるって事。
ね、バージル……行こう?」
魔界につながるそこへ足を向けようとするバージルの手を掴む。
手を払われるかと思った。けれど、流石にあたし相手にはバージルも手を振り上げることはなかった。
再びじっと見つめれば、今度のバージルはあたしを真っ直ぐ見つめ返してきて、困ったように眉を下げた。
バージルはいつだってあたしには優しい。
「離してくれ、ディーヴァ。
定員を超えるのだろう?詰めて乗ってもしも落ちたらどうする。俺たちはいいがお前は無事ではいられない。
もちろんそうならないように俺も守るが、絶対守れるとは言い切れん。
だからこそ俺は行かん」
「そんなこと言って、行かない理由をこじつけようとしてる……」
「………………、俺はお前たちが魔界から出られたのを見届けたなら、あとは戻るだけだ」
非難すれば、バージルは顔を見せないように下を向いてただ一言、約束を破ってすまない。そう呟いた。
そうやって謝るなら、約束しないで欲しかった。希望を持たせないで欲しかった……!
上乗せするようにふつふつと湧いてくる怒り。腹に抱えた爆弾が爆発するかと思われたその時、新たにバージルの手を掴む手が追加された。
ダンテの手だ。
「はあ……ガタガタ言ってねぇで来いっての。誰が助けたと思ってる」
「少なくともダンテではないな」
「ああ、そうだ!ディーヴァだ!」
直後、バージルがダンテの手だけを払い除ける。
けれどまた掴まれた。
今度も払って、また掴まれる。その繰り返しだった。
なお、あたしがバージルの腕を掴む手はそのままだ。
高速で繰り返されたそれは動きが追えない。暇を持て余した神々……じゃなくて半魔達の遊びかな?
「俺は、もともと助けてなどただの一言も発していなかった。死ぬはずだった。生きていることには感謝している。
だが、すでに感謝は伝えた」
ばし!
次こそ思い切り、ダンテの手を払い除けた。思い切りだったので、あたしの手まで振り払われることに。
ダンテはバージルに払われた手の動きを利用し、背後に迫っていたマリオネットに一撃浴びせた。
ああ、なんだ。このためか。
でも今度はあたしが再度バージルの腕を掴んだ。バージルがこっちの世界に留まり続けるための枷になる!
怒気を強めに無言で掴み、あたしは決して離さなかった。
「ディーヴァ、これでは俺が向こうへ帰れない。お前はダンテとは違うからわがままなぞ言わずに、俺の気持ちをわかってくれるだろう?
だからいい加減に離してくれ。……頼む」
あたしから流れる怒気と離さないという決意の感情に困惑しながらも、バージルは子供に言い聞かせるように優しく言ってきた。
でも、あたしは聞かない。
「…………やだ!」
あたしが心に抱える爆弾が爆ぜた。
「ねぇバージル?逃げないでって言った時、ちゃんと話したよね!?
あたしからバージルを奪わないでよ。それはバージル自身からもってことだよ!
おうちでバーベキューするんだから!バージルの好きな食べ物やお菓子作りまくるんだから!子守唄の歌詞も教えてもらう約束した!コートの刺繍だって、お願いされた!!
みんなみんな、バージルがいなくちゃできない!」
どちらが駄々をこねているのかわからない。けれど、放つ声とは反対に駄々をこねているのはあたしではなく、バージルだ。
背後でダンテが吹き出した。
「ディーヴァのお約束事リストって、ずいぶんと俗っぽい内容ばっかなんだな〜」
「そこ!黙らっしゃい!」
「アッハイ」
茶化してくるダンテに怒りが飛び火した。
ダンテもさすがに押し黙った。
あれれ、そこまで怖かったかな?
「あたしは貴方を魔界なんかに置いておきたくないの!だから離さない!」
あたしが出せる最大限の力で、バージルの腕を掴む手を締め上げる。
掴んでいるのはあたしなのに、真っ赤になったのはあたしの手の方だった。
見かねたのかダンテがあたしの手をそっととって降ろす。
そのままバージルに静かな声音で話しかけた。
「ディーヴァの努力や想いを、また無駄にするつもりか?」
オレではない、バージルに向けた真摯な想いを。
そう続けば、バージルはようやく観念したようだ。
長いため息を吐いて、眉尻を下げてかすかに笑う。
「ダンテ、俺は貴様に借りを作ってしまったようだな」
「オレじゃない。アンタはディーヴァに馬鹿でかい借りを作ったんだ。借りだとか貸しだとか、ディーヴァはひとっつも考えちゃいないだろうけどな。
けどンな事言うなら、これからはディーヴァのためにでも生きりゃいいだろ」
「フ、それもいいかもな。考えておこう。
……ディーヴァ、すまなかった」
「ううん、いいの」
バージルもまた、あたしの手を取って赤くなった指先部分を慈しむように撫でた。
その瞬間、倒壊寸前かもしれない。そうおもうほどに揺れる視界、揺れる城内。
「わ、きゃあ!?」
揺れが激しくなってきた。
自分一人ではおよそ立っていられない揺れを前にして、あたしは二人を支えに立つ。
べしっ!
あ、ダンテがバージルの頭を叩いた。
いい音したなあ。
「何をする愚弟!?」
「時間がないってのお前忘れてるだろ。いい加減余計な時間食わせんじゃねぇ。掃いて捨てるほど出てきてたマリオネット共も一掃するほどの時間経ってるんだぞ。
この城と心中する羽目になる前に行くぜ」
わすれてた!城と心中なんてしたくない!
サッと青くなるあたしの膝裏に手を入れて抱き上げながら、バージルが大きな舌打ちをダンテに放った。
「ちっ……今叩いたこと、覚えておけよ」
「もう忘れた」
ダンテ、忘れるの早すぎじゃない?
悪魔の結界もこの部屋には張られていない。ならば、この大量のマリオネットを倒す必要はないはずだ。
何より時間ももうない。倒している時間は惜しい。
なのに、バージルはこのマリオネットを倒すから先に行け?そう言ったのか。
ガシャコン、ガシャコンと、向かってきたマリオネットを取り敢えずショットガンで弾き飛ばして近寄らせないようにしているダンテには肩からおろしてもらい、あたしはバージルの前に立つ。
鯉口を切っていた刀を鞘に収め直し、バージルはあたしをまっすぐ見つめた。
「……バージル、残る気なのね」
図星か。
ぴく、とバージルの指が動いた。一瞬だったが瞳も動揺からか揺れ動いていた。
「バージルも帰ろう」
「断る。
俺はここでいい。この場所が、親父のいた、この場所がーー」
「その言葉は!!」
あたしが出した大声に、ダンテもバージルも、マリオネット達ですら、一瞬止まった。
言った本人であるあたしでさえも。
「……その言葉は、あの時も聞いた。テメンニグルで、バージルと離れる際に」
じっと見つめ返せば、バージルは居心地悪そうに目を逸らした。
「ここは居心地がいい。俺の体にも合っている。だが人間社会は俺には向かない。
それに、愚弟が勝手においてきたアミュレットも取りに行かねばならん」
「まだそんなこと言ってんのかアンタ。帰んぞ!」
「いや、帰らない。ここまで送ったんだ。それで終いでいいだろう。
俺は魔界へ戻る」
何も食べていないものすごく空腹の状態なのに、胸焼けしたみたい。
今のあたしが、すごーく腹を立ててるってことかも。
バージルの体に魔界が合っている?そんなことあるわけない。
ネロアンジェロの時ならまだわかる。けれど今は半分悪魔のバージルだ。つまりもう半分は人間。
魔界の空気や瘴気は、じわじわ蝕む毒のように、バージルの心や肉体を侵していく。
ダンテよりバージルの体温ははるかに低い。毒気に当たってるからだ。あたしにはそう思えた。
こんなところにいては、バージルは体も心もダメになる。
「ねえダンテ。複葉機って全員乗れる乗り物なんだよね?」
「ああ、一応乗れると思うぜ。ディーヴァはお子ちゃまサイズだし」
お子ちゃまサイズって、あたしのことを馬鹿にしすぎだと思うの。
カチンときたが今はいい。足でも踏んでやりたかったけれどそれをしたら、ダンテがマリオネットを追い払えなくなって困る。
「まあ乗っていい人数は超えちゃうんだろうけど…席を詰めればなんとかいけるって事。
ね、バージル……行こう?」
魔界につながるそこへ足を向けようとするバージルの手を掴む。
手を払われるかと思った。けれど、流石にあたし相手にはバージルも手を振り上げることはなかった。
再びじっと見つめれば、今度のバージルはあたしを真っ直ぐ見つめ返してきて、困ったように眉を下げた。
バージルはいつだってあたしには優しい。
「離してくれ、ディーヴァ。
定員を超えるのだろう?詰めて乗ってもしも落ちたらどうする。俺たちはいいがお前は無事ではいられない。
もちろんそうならないように俺も守るが、絶対守れるとは言い切れん。
だからこそ俺は行かん」
「そんなこと言って、行かない理由をこじつけようとしてる……」
「………………、俺はお前たちが魔界から出られたのを見届けたなら、あとは戻るだけだ」
非難すれば、バージルは顔を見せないように下を向いてただ一言、約束を破ってすまない。そう呟いた。
そうやって謝るなら、約束しないで欲しかった。希望を持たせないで欲しかった……!
上乗せするようにふつふつと湧いてくる怒り。腹に抱えた爆弾が爆発するかと思われたその時、新たにバージルの手を掴む手が追加された。
ダンテの手だ。
「はあ……ガタガタ言ってねぇで来いっての。誰が助けたと思ってる」
「少なくともダンテではないな」
「ああ、そうだ!ディーヴァだ!」
直後、バージルがダンテの手だけを払い除ける。
けれどまた掴まれた。
今度も払って、また掴まれる。その繰り返しだった。
なお、あたしがバージルの腕を掴む手はそのままだ。
高速で繰り返されたそれは動きが追えない。暇を持て余した神々……じゃなくて半魔達の遊びかな?
「俺は、もともと助けてなどただの一言も発していなかった。死ぬはずだった。生きていることには感謝している。
だが、すでに感謝は伝えた」
ばし!
次こそ思い切り、ダンテの手を払い除けた。思い切りだったので、あたしの手まで振り払われることに。
ダンテはバージルに払われた手の動きを利用し、背後に迫っていたマリオネットに一撃浴びせた。
ああ、なんだ。このためか。
でも今度はあたしが再度バージルの腕を掴んだ。バージルがこっちの世界に留まり続けるための枷になる!
怒気を強めに無言で掴み、あたしは決して離さなかった。
「ディーヴァ、これでは俺が向こうへ帰れない。お前はダンテとは違うからわがままなぞ言わずに、俺の気持ちをわかってくれるだろう?
だからいい加減に離してくれ。……頼む」
あたしから流れる怒気と離さないという決意の感情に困惑しながらも、バージルは子供に言い聞かせるように優しく言ってきた。
でも、あたしは聞かない。
「…………やだ!」
あたしが心に抱える爆弾が爆ぜた。
「ねぇバージル?逃げないでって言った時、ちゃんと話したよね!?
あたしからバージルを奪わないでよ。それはバージル自身からもってことだよ!
おうちでバーベキューするんだから!バージルの好きな食べ物やお菓子作りまくるんだから!子守唄の歌詞も教えてもらう約束した!コートの刺繍だって、お願いされた!!
みんなみんな、バージルがいなくちゃできない!」
どちらが駄々をこねているのかわからない。けれど、放つ声とは反対に駄々をこねているのはあたしではなく、バージルだ。
背後でダンテが吹き出した。
「ディーヴァのお約束事リストって、ずいぶんと俗っぽい内容ばっかなんだな〜」
「そこ!黙らっしゃい!」
「アッハイ」
茶化してくるダンテに怒りが飛び火した。
ダンテもさすがに押し黙った。
あれれ、そこまで怖かったかな?
「あたしは貴方を魔界なんかに置いておきたくないの!だから離さない!」
あたしが出せる最大限の力で、バージルの腕を掴む手を締め上げる。
掴んでいるのはあたしなのに、真っ赤になったのはあたしの手の方だった。
見かねたのかダンテがあたしの手をそっととって降ろす。
そのままバージルに静かな声音で話しかけた。
「ディーヴァの努力や想いを、また無駄にするつもりか?」
オレではない、バージルに向けた真摯な想いを。
そう続けば、バージルはようやく観念したようだ。
長いため息を吐いて、眉尻を下げてかすかに笑う。
「ダンテ、俺は貴様に借りを作ってしまったようだな」
「オレじゃない。アンタはディーヴァに馬鹿でかい借りを作ったんだ。借りだとか貸しだとか、ディーヴァはひとっつも考えちゃいないだろうけどな。
けどンな事言うなら、これからはディーヴァのためにでも生きりゃいいだろ」
「フ、それもいいかもな。考えておこう。
……ディーヴァ、すまなかった」
「ううん、いいの」
バージルもまた、あたしの手を取って赤くなった指先部分を慈しむように撫でた。
その瞬間、倒壊寸前かもしれない。そうおもうほどに揺れる視界、揺れる城内。
「わ、きゃあ!?」
揺れが激しくなってきた。
自分一人ではおよそ立っていられない揺れを前にして、あたしは二人を支えに立つ。
べしっ!
あ、ダンテがバージルの頭を叩いた。
いい音したなあ。
「何をする愚弟!?」
「時間がないってのお前忘れてるだろ。いい加減余計な時間食わせんじゃねぇ。掃いて捨てるほど出てきてたマリオネット共も一掃するほどの時間経ってるんだぞ。
この城と心中する羽目になる前に行くぜ」
わすれてた!城と心中なんてしたくない!
サッと青くなるあたしの膝裏に手を入れて抱き上げながら、バージルが大きな舌打ちをダンテに放った。
「ちっ……今叩いたこと、覚えておけよ」
「もう忘れた」
ダンテ、忘れるの早すぎじゃない?
