mission 23:blue sky ~崩壊と脱出~
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
当たり前だけど、次の部屋に入ってもなおバージルの怒りは収まるどころか苛烈になっていった。
扉をくぐったくらいで収まるなら、最初から怒らないよね。うん。
部屋に巣食っていたフロスト一体が、その怒りをちょびっとでも冷やしてくれれば……などと悪魔に対して初めて淡い期待を抱いてみるも、それも失敗に終わる。
この部屋の構造上、無視ができたはずのフロスト。
実際、ダンテはフロストを完全に無視してスタコラサッサとあたしを運んでいる。
だが怒りに燃えるバージルの刀によって膾斬りにされた。完全に巻き込まれてる可哀想な人役ゥ!
米俵のように担いでくるダンテの腕の中から、それを見たあたしは悪魔に対して小さく合掌した。
「おい止まれこの愚弟がぁ……!」
「おっそろしい兄貴が迫ってきてるってのに止まるバカはいねぇっての」
しかし膾斬りにするだけでは足らず、バージルの刃が細い食道内目掛けて空気を裂いて飛んできた!
うわぁダンテへのお熱い殺意をビシビシと、感じる……。
うん、気持ちはわかる気がしないでもない。母親が残してくれたたったひとつの形見なのに、勝手に使われた挙句戻ってこない……だなんて、普通怒る。あたしも怒る。
でも元はといえば、あたしが悪い。ダンテにもっと強く言って聞かせて、取り返しておけばよかった。
自責の念に駆られていると、壁に突き刺さった刀を回収したバージルが再び刃を投げてきた。
ピッ!あたしの髪の毛数本が、目の前をはらりと落ちるのが見えた。
そしてそれはダンテの目にも留まった。
「へ?」
「アッディーヴァの髪が!!!」
その瞬間、三十六計逃げるに如かず作戦に入っていたダンテの行動が止まった。
バージルの方へと体ごとグリン!と向き直り、怒りで眉毛を釣り上げている。
「やいてめぇ!オレに当てるのはいいがディーヴァに当てるのは違うだろうが!
ディーヴァの髪が切れたぞ!!」
「はっ!?お、俺はなんてことを!
すまん。ディーヴァ、すまん……」
「ちょっと謝ったくらいで済むなら、サツはいらねえだろうが!!」
すごい、バージルと同じくらい怒ってる。しょーもない理由で。
バージルもバージルで、怒りにはなりを潜めさせ、がくりと膝をついてしまった。
ええええ、なにこの茶番劇。時間ない時にすること!?
「え、あ、いや……気にしないで?そんなのたった数本だから!ね!?」
それより先に進もうよ!!
そう続けたいのに、あたしを抱えるダンテにその動きは見られないし、なんなら立ち止まって仁王立ちでバージルを糾弾している。
「髪は女の命だ!特にディーヴァの髪は一度切ったら伸びないんだぞ!どうしてくれる!!」
「……すまない。本当にすまない」
「オレの髪を!返せ!!」
いや貴方の髪じゃなくてあたしの髪だから。
オレの女であるディーヴァの髪を返せって意味のことを言いたいんだろうけど、それじゃ普通の人には伝わらないよ。
その感じだと、バージルには伝わってるみたいだけど。さすが双子。
当のバージルは土下座しそうな勢いになってる。でもそんなのあたしは望んでない。
大体髪くらい数本切れたって……と、思ったけどこれは言ってはいけない。
前に嫌というほど叱られた。ダンテはあたしの髪が好きだ。
「と、とにかく時間がないんでしょ!命あっての物種!急ごうよ!?」
ダンテのちょびっと長い襟足の毛を思い切り引っ張ることで意識をこっちに向けさせることに成功した。
おかげでやっと言えた!
「そうだぞバージル。まずは急いで出なきゃならないのを忘れたのか?」
怒ってたのが嘘のように、真面目な顔でバージルを叱るダンテ。変わり身が早い。
「貴様が言うな!」
ほんとだよ。
その場に光の粒子を巻き上げるワープホールに飛び込み、魔界の入り口へと飛ぶ。ううん、こっちからだと入り口じゃなくて出口か。
「はー、息が詰まる場所だった」
大きく口をあける禍々しい魔界への扉が、逃さないとばかりに瘴気を垂れ流してはいるが、やはり魔界との境界線だからかはるかに空気が美味しく感じる。
いや、今までいた魔界は魔帝の胎の中のようなものだったから空気がまずいのは当たり前だったか。なにより、臭かったもんね。
あたしは匂いフェチではあるけれど、臭い匂いのフェチではない。
「ディーヴァにはさぞ辛い場所だったろう。愚弟の肩口か髪にでも顔を埋めて残り少し耐えていろ」
革のコートやダンテのこそばゆい髪の毛じゃ、たいしてフィルター代わりにはならないだろうけれど、それでもないよりはマシだし血と汗と埃の香りはしても、ベースがダンテだから嗅いでても嫌悪感はない。
むしろその……男の人の匂いって感じがするし、夜にだ、抱かれ……うあーーッ!そういう匂い思い出してドキドキする。そうだよ!好きなのよ!
……匂いフェチとはこういうのをいうんだと思う。
ダンテからも肩口にぎゅっと頭を押し付けられた。赤い顔を隠すにはちょうどよかったけれど、ダンテとの情事を思い出してあたしは叫び出したくてたまらなくなった。
嬉しいけど離れたい。
というかはやくこの島からも出て、澄んだ空気をこの胸いっぱいに吸い込みたい!このままだと呼吸器の病気になりそうだものね。
定員オーバーになりながら、気色の悪い形をしたエレベーターもどきに乗り、上へとあがる。
これで魔界とは本格的におさらばだ。
あとは城を脱出するだけ。複葉機の場所に急がないと。
魔界の入り口が口を開けているそこから出れば、大聖堂が広がる。
ナイトメアと最初に戦ったあの場所だ。あの時は真っ暗な宵闇に包まれていたが、今は違う。
夜明けが近いのか朝方の刺すような冷たい空気が漂い、白んだ空の気配がもうすぐそこまできている。
空は見えないけれどそんな感じがした。
ガシャコン!
戦いの記憶をどこか懐かしく思っていると、この城で何度も聞いて耳に慣れた音が響く。
大量のマリオネットが、あたし達を囲んでいた。
「魔帝もいなくなったんだから大人しくしててくれればいいのに……」
一人だったら叫びたい状況だけど、悲しいかな。ダンテとバージルがいれば弱い悪魔と対峙しても安全だし安心できるって体が理解しちゃってるんだよね。
口から出たのは、うんざりしすぎて間延びした声だった。
慣れとは本当に怖い物だ。
「司令塔にもなってたはずの主君が倒されたっての、こいつら知らないんだろうな」
「雑魚悪魔にはそれを理解できる頭がない。それにほうれんそうもなっていないのだ、仕方あるまい?」
それって社会に出た時に困るやつじゃん……報告、連絡、相談。ほうれんそう大事。めちゃくちゃ大事。
バージルが静かに鯉口を切る。
「雑魚なんぞ倒さなくてもいいかもな、なあバージルーー」
「ーー先に行け」
「え?」
扉をくぐったくらいで収まるなら、最初から怒らないよね。うん。
部屋に巣食っていたフロスト一体が、その怒りをちょびっとでも冷やしてくれれば……などと悪魔に対して初めて淡い期待を抱いてみるも、それも失敗に終わる。
この部屋の構造上、無視ができたはずのフロスト。
実際、ダンテはフロストを完全に無視してスタコラサッサとあたしを運んでいる。
だが怒りに燃えるバージルの刀によって膾斬りにされた。完全に巻き込まれてる可哀想な人役ゥ!
米俵のように担いでくるダンテの腕の中から、それを見たあたしは悪魔に対して小さく合掌した。
「おい止まれこの愚弟がぁ……!」
「おっそろしい兄貴が迫ってきてるってのに止まるバカはいねぇっての」
しかし膾斬りにするだけでは足らず、バージルの刃が細い食道内目掛けて空気を裂いて飛んできた!
うわぁダンテへのお熱い殺意をビシビシと、感じる……。
うん、気持ちはわかる気がしないでもない。母親が残してくれたたったひとつの形見なのに、勝手に使われた挙句戻ってこない……だなんて、普通怒る。あたしも怒る。
でも元はといえば、あたしが悪い。ダンテにもっと強く言って聞かせて、取り返しておけばよかった。
自責の念に駆られていると、壁に突き刺さった刀を回収したバージルが再び刃を投げてきた。
ピッ!あたしの髪の毛数本が、目の前をはらりと落ちるのが見えた。
そしてそれはダンテの目にも留まった。
「へ?」
「アッディーヴァの髪が!!!」
その瞬間、三十六計逃げるに如かず作戦に入っていたダンテの行動が止まった。
バージルの方へと体ごとグリン!と向き直り、怒りで眉毛を釣り上げている。
「やいてめぇ!オレに当てるのはいいがディーヴァに当てるのは違うだろうが!
ディーヴァの髪が切れたぞ!!」
「はっ!?お、俺はなんてことを!
すまん。ディーヴァ、すまん……」
「ちょっと謝ったくらいで済むなら、サツはいらねえだろうが!!」
すごい、バージルと同じくらい怒ってる。しょーもない理由で。
バージルもバージルで、怒りにはなりを潜めさせ、がくりと膝をついてしまった。
ええええ、なにこの茶番劇。時間ない時にすること!?
「え、あ、いや……気にしないで?そんなのたった数本だから!ね!?」
それより先に進もうよ!!
そう続けたいのに、あたしを抱えるダンテにその動きは見られないし、なんなら立ち止まって仁王立ちでバージルを糾弾している。
「髪は女の命だ!特にディーヴァの髪は一度切ったら伸びないんだぞ!どうしてくれる!!」
「……すまない。本当にすまない」
「オレの髪を!返せ!!」
いや貴方の髪じゃなくてあたしの髪だから。
オレの女であるディーヴァの髪を返せって意味のことを言いたいんだろうけど、それじゃ普通の人には伝わらないよ。
その感じだと、バージルには伝わってるみたいだけど。さすが双子。
当のバージルは土下座しそうな勢いになってる。でもそんなのあたしは望んでない。
大体髪くらい数本切れたって……と、思ったけどこれは言ってはいけない。
前に嫌というほど叱られた。ダンテはあたしの髪が好きだ。
「と、とにかく時間がないんでしょ!命あっての物種!急ごうよ!?」
ダンテのちょびっと長い襟足の毛を思い切り引っ張ることで意識をこっちに向けさせることに成功した。
おかげでやっと言えた!
「そうだぞバージル。まずは急いで出なきゃならないのを忘れたのか?」
怒ってたのが嘘のように、真面目な顔でバージルを叱るダンテ。変わり身が早い。
「貴様が言うな!」
ほんとだよ。
その場に光の粒子を巻き上げるワープホールに飛び込み、魔界の入り口へと飛ぶ。ううん、こっちからだと入り口じゃなくて出口か。
「はー、息が詰まる場所だった」
大きく口をあける禍々しい魔界への扉が、逃さないとばかりに瘴気を垂れ流してはいるが、やはり魔界との境界線だからかはるかに空気が美味しく感じる。
いや、今までいた魔界は魔帝の胎の中のようなものだったから空気がまずいのは当たり前だったか。なにより、臭かったもんね。
あたしは匂いフェチではあるけれど、臭い匂いのフェチではない。
「ディーヴァにはさぞ辛い場所だったろう。愚弟の肩口か髪にでも顔を埋めて残り少し耐えていろ」
革のコートやダンテのこそばゆい髪の毛じゃ、たいしてフィルター代わりにはならないだろうけれど、それでもないよりはマシだし血と汗と埃の香りはしても、ベースがダンテだから嗅いでても嫌悪感はない。
むしろその……男の人の匂いって感じがするし、夜にだ、抱かれ……うあーーッ!そういう匂い思い出してドキドキする。そうだよ!好きなのよ!
……匂いフェチとはこういうのをいうんだと思う。
ダンテからも肩口にぎゅっと頭を押し付けられた。赤い顔を隠すにはちょうどよかったけれど、ダンテとの情事を思い出してあたしは叫び出したくてたまらなくなった。
嬉しいけど離れたい。
というかはやくこの島からも出て、澄んだ空気をこの胸いっぱいに吸い込みたい!このままだと呼吸器の病気になりそうだものね。
定員オーバーになりながら、気色の悪い形をしたエレベーターもどきに乗り、上へとあがる。
これで魔界とは本格的におさらばだ。
あとは城を脱出するだけ。複葉機の場所に急がないと。
魔界の入り口が口を開けているそこから出れば、大聖堂が広がる。
ナイトメアと最初に戦ったあの場所だ。あの時は真っ暗な宵闇に包まれていたが、今は違う。
夜明けが近いのか朝方の刺すような冷たい空気が漂い、白んだ空の気配がもうすぐそこまできている。
空は見えないけれどそんな感じがした。
ガシャコン!
戦いの記憶をどこか懐かしく思っていると、この城で何度も聞いて耳に慣れた音が響く。
大量のマリオネットが、あたし達を囲んでいた。
「魔帝もいなくなったんだから大人しくしててくれればいいのに……」
一人だったら叫びたい状況だけど、悲しいかな。ダンテとバージルがいれば弱い悪魔と対峙しても安全だし安心できるって体が理解しちゃってるんだよね。
口から出たのは、うんざりしすぎて間延びした声だった。
慣れとは本当に怖い物だ。
「司令塔にもなってたはずの主君が倒されたっての、こいつら知らないんだろうな」
「雑魚悪魔にはそれを理解できる頭がない。それにほうれんそうもなっていないのだ、仕方あるまい?」
それって社会に出た時に困るやつじゃん……報告、連絡、相談。ほうれんそう大事。めちゃくちゃ大事。
バージルが静かに鯉口を切る。
「雑魚なんぞ倒さなくてもいいかもな、なあバージルーー」
「ーー先に行け」
「え?」
