mission 22:old enemy ~VS魔帝~ 前編
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ムンドゥスがその翼を大きく一振りすると、神殿の存在が吸い込まれるかのように消えていき、世界は何もない暗闇になる。
「テメェにゃお似合いの真っ暗な場所だぜ」
「深海……いや、よく見れば星が瞬いている。宇宙をイメージして創造したようだ」
新しく作られたその空間は、宇宙空間のような場所。
戦いのフィールドとして、これほどスケールの大きなものはなかろう。
さすが世界を掌握しようとするだけはある。
目の前でふんぞり返って浮かぶ魔帝ムンドゥスを、俺たちは揃って睨みつけた。
『その目だ』
睨むダンテの、そして俺の目を見据え、魔帝が言葉をこぼす。
『スパーダと同じ、危険な光が見える』
かつてスパーダに負わされた傷を思い出したか、魔帝の目にわずかながら恐れが見えた。
『人間を捨て、完全なる悪魔になる気はないか。
殺戮、破壊、略奪……悪魔の感情に身を委ねて好きに振る舞えば楽になれるぞ』
「なんだって?オレを、悪魔に……?」
ダンテを悪魔側に引き入れようと、勧誘している。
魔帝が赤い目を妖しく光らせた。あれは対象を操るための魔術……!
視線を外させるべく、ダンテの顔を思い切り殴る。
ん?目から星が出るほどにいい音がしたな。クセになりそうな音だ。
「しっかりしろ、惑わされるな!」
「いてぇ……けど助かった」
「俺と同じ顔の男が着る趣味の悪い鎧姿など、見るに耐えんからな」
半分悪魔の体でもかなり痛かったのか、頬をさすりながら感謝してくる愚弟。
俺が操り人形になるのは嫌だが、敵として操り人形になったこいつを倒すのはもっと嫌だ。
戦ったとしても、本来の力が発揮されないだろう。そんなつまらん喧嘩はごめんだ。
「弟まで引き込もうとするな。
ダンテを倒すのはこの俺だ。決して貴様などではない」
『ふん。兄弟で殺し合いたければなおのこと、もう一度我が配下に下ればよかろう』
「貴様の手の内で踊れと?これ以上笑わせてくれるな」
隠しもせず笑い飛ばしていれば、ダンテの方から殺意の波動。
絶対にお前を殺す。殺意にまみれたダンテの魔力が、毒の塗られた凶刃のように魔帝の肌を差しているのがわかった。
「このオレに、悪魔になれだと?
親父と母さんがいたからオレ達は生まれた。異種族同士で愛し合う、それは悪いことじゃない。感謝している。
この悪魔の力があったからここまでこれた。大切なものを守ることもできた。
けどな、同時にこの血を恨むこともあった。
オレは周りを傷つけんとする自分の悪魔の部分は憎んでいる。
そのオレに、悪魔そのものに成り下がれ、だと……?」
怒りで魔力が揺らめいている。
「悪魔は嫌いだ。ああ、嫌いだね!
テメェは普通の悪魔と比べ物にならねぇくらい大嫌いだ。悪魔以前に、テメェの考え方、言ってる事が全部大嫌いだ。
悪魔の風上にも風下にもおけねぇ……!」
ダンテ、風下にはもともと置いておけんぞ。
そうツッコミを入れたかったが、口を出せばその刃のような魔力がこちらに牙を剥きそうだった。
「ディーヴァやバージル、トリッシュを傷つけたことは大きい。許し難い。
が、何よりもテメェはーー」
ダンテの怒りがその身に収束し、無数の刃となって魔帝に放たれた。
「母の仇……!」
無意識で飛んだダンテの攻撃に魔帝が怯んだのを見て、俺は押し黙った。
ダンテは魔帝を倒すことを目標に、母の仇を討つためにここまで生きてきたという。
これまでの人生を賭けてまで、ダンテは打倒魔帝と思っていたのか。
母の仇とは思う。だが執念深いともとれるダンテのその感情、俺には理解できない部分もまだまだ多い。
人を目指す者、悪魔を目指す者。その違いなのか否か。
『あんな生き物。母が欲しければ何人でも創造してやるぞ。天使もまた然り。
トリッシュのようにな』
魔帝が高笑いを響かせながら、またも勧誘してくる。
「「黙れ!」」
これにはキレた。
魔帝の言葉を聞き、流石の俺もダンテ同様に怒りを隠せず、まさかの同じタイミングで同じ言葉を放ってしまった。
双子だからな、仕方ない。
母を救えなかった悔しさを、感情を踏み躙られた。その上母を殺めた首謀者張本人が新しい母を創造してやるなど……。バカにするな。
母は創造して得るものではない。姿形が同じでも、紛い物は紛い物でしかない。
二人の黙れの言葉を前に交渉決裂を悟ったか、宇宙のように広大なフィールドに飛んでいく魔帝。
さすがに逃げる気はないだろう。これから戦いが始まる。
濃い霧のような雲が視界を覆う空間の中、魔帝を追って飛び上がれば体が熱くなっていく。
隣でダンテが魔人としてのスパーダそのものに姿を変えていた。
手のひらを、そして体を見れば、自身の肉体も変化している。ダンテ同様に魔人化していた。
自分の意思とは関係なく魔人化した己の体に困惑する。
ダンテの魔人化に呼応したとしか考えがつかない。
かつて、テメンニグル頂上で悪魔の力を解放したダンテ。トリガーこそリベリオンだったが、あれも俺の魔力に呼応したところが大きい。
どこまで行っても、双子は双子、か。
スパーダそっくりなダンテの魔人化には、赤い魔力のゆらぎが見え、俺は青い魔力を纏っている状態。
違いはその色と今現在の魔力の量だった。魔人化しておいてなんだが、今の俺には魔力が少なすぎる。
「バージル!ディーヴァを頼む……!」
勇ましく力強い喋りを残し、ダンテが翼を羽ばたかせて魔帝へと向かっていった。
その一言の言葉にすら魔力が込められているのでは?と思うほどに強さが伝わった。
それはダンテの圧倒的な力をみせつけられるのと同じことで。
いつもそうだ。俺が兄だというのに、ダンテはいつも俺を置いて先に行く。
ディーヴァへの想いも、魔力の量でも「叶わない」と、悔しい思いを抱いた。
はやく自分の力を取り戻さねばなるまい。
「あれは……!」
ダンテに頼まれた視線の先、まだ神殿とわずかに繋がっている場所が見える。
境界線に絡みつくか細い荊の蔦も目に入った。
なるほど、ここからディーヴァと繋げているのか。
「…………くっ!」
神殿へ戻るための境界線には結界が張ってあったようだ。
結界がはばみ、この身を焦がす。が、俺はやめない。あきらめない。
今救わねば、ディーヴァはダンテと魔帝との戦いの中力を、命を吸われて死んでしまうだろう。
すでに大輪の薔薇が血のように赤く、毒々しくディーヴァの胸に咲いているのだ。
一刻の猶予もない。
雷に打たれたかのように体から煙を出しながら、壁をブチ破るようにして降り立った先。
横たわるディーヴァを囲むように、黒い鉄球のような物が無数に浮いていた。
神殿の中にはトリッシュの体も横たわっていたはずだが、姿が見えない。
ディーヴァの体が安置されているこの場所もまた、神殿そのものとは違う空間だったようだ。
「こんな物で俺の歩みを止められると思うな!」
魔帝が創造したのだろう攻撃を放ってくる球を、魔力をわずかに乗せた刀の一振りで破壊する。
粉々に砕け落ちたそれを踏み、ディーヴァの元へ駆け寄る。
あんなに太かった蔦が細くなっている。
大輪の薔薇を咲かせた事でなのか、それとも魔帝がダンテにかかりきりになるからかそれはわからない。
だが、ダンテの存在は大きかろう。
「奴め、今はスパーダの血族を殺すことに全力らしい。ディーヴァへ割く力が手薄だったぞ。
俺ならばこちらにも全力を出すがな」
果実などならせはしない。
切るのがダメなら……。除草剤になればと、自分の魔力を微量ながら蔦へ流し込む。
薔薇は萎み、蔦や葉がカサカサと枯れ絡みが解けていく。
最後には悪魔の最期と同じように弾けて消え、何も無くなった。
「間一髪、と言ったところか」
……安心して息が漏れてしまった。だが。
「何ッ!?……く……、吸い込まれる……!」
ディーヴァを抱き起こした瞬間、俺はディーヴァごと再び宇宙のようなフィールドへと投げ出された。
「テメェにゃお似合いの真っ暗な場所だぜ」
「深海……いや、よく見れば星が瞬いている。宇宙をイメージして創造したようだ」
新しく作られたその空間は、宇宙空間のような場所。
戦いのフィールドとして、これほどスケールの大きなものはなかろう。
さすが世界を掌握しようとするだけはある。
目の前でふんぞり返って浮かぶ魔帝ムンドゥスを、俺たちは揃って睨みつけた。
『その目だ』
睨むダンテの、そして俺の目を見据え、魔帝が言葉をこぼす。
『スパーダと同じ、危険な光が見える』
かつてスパーダに負わされた傷を思い出したか、魔帝の目にわずかながら恐れが見えた。
『人間を捨て、完全なる悪魔になる気はないか。
殺戮、破壊、略奪……悪魔の感情に身を委ねて好きに振る舞えば楽になれるぞ』
「なんだって?オレを、悪魔に……?」
ダンテを悪魔側に引き入れようと、勧誘している。
魔帝が赤い目を妖しく光らせた。あれは対象を操るための魔術……!
視線を外させるべく、ダンテの顔を思い切り殴る。
ん?目から星が出るほどにいい音がしたな。クセになりそうな音だ。
「しっかりしろ、惑わされるな!」
「いてぇ……けど助かった」
「俺と同じ顔の男が着る趣味の悪い鎧姿など、見るに耐えんからな」
半分悪魔の体でもかなり痛かったのか、頬をさすりながら感謝してくる愚弟。
俺が操り人形になるのは嫌だが、敵として操り人形になったこいつを倒すのはもっと嫌だ。
戦ったとしても、本来の力が発揮されないだろう。そんなつまらん喧嘩はごめんだ。
「弟まで引き込もうとするな。
ダンテを倒すのはこの俺だ。決して貴様などではない」
『ふん。兄弟で殺し合いたければなおのこと、もう一度我が配下に下ればよかろう』
「貴様の手の内で踊れと?これ以上笑わせてくれるな」
隠しもせず笑い飛ばしていれば、ダンテの方から殺意の波動。
絶対にお前を殺す。殺意にまみれたダンテの魔力が、毒の塗られた凶刃のように魔帝の肌を差しているのがわかった。
「このオレに、悪魔になれだと?
親父と母さんがいたからオレ達は生まれた。異種族同士で愛し合う、それは悪いことじゃない。感謝している。
この悪魔の力があったからここまでこれた。大切なものを守ることもできた。
けどな、同時にこの血を恨むこともあった。
オレは周りを傷つけんとする自分の悪魔の部分は憎んでいる。
そのオレに、悪魔そのものに成り下がれ、だと……?」
怒りで魔力が揺らめいている。
「悪魔は嫌いだ。ああ、嫌いだね!
テメェは普通の悪魔と比べ物にならねぇくらい大嫌いだ。悪魔以前に、テメェの考え方、言ってる事が全部大嫌いだ。
悪魔の風上にも風下にもおけねぇ……!」
ダンテ、風下にはもともと置いておけんぞ。
そうツッコミを入れたかったが、口を出せばその刃のような魔力がこちらに牙を剥きそうだった。
「ディーヴァやバージル、トリッシュを傷つけたことは大きい。許し難い。
が、何よりもテメェはーー」
ダンテの怒りがその身に収束し、無数の刃となって魔帝に放たれた。
「母の仇……!」
無意識で飛んだダンテの攻撃に魔帝が怯んだのを見て、俺は押し黙った。
ダンテは魔帝を倒すことを目標に、母の仇を討つためにここまで生きてきたという。
これまでの人生を賭けてまで、ダンテは打倒魔帝と思っていたのか。
母の仇とは思う。だが執念深いともとれるダンテのその感情、俺には理解できない部分もまだまだ多い。
人を目指す者、悪魔を目指す者。その違いなのか否か。
『あんな生き物。母が欲しければ何人でも創造してやるぞ。天使もまた然り。
トリッシュのようにな』
魔帝が高笑いを響かせながら、またも勧誘してくる。
「「黙れ!」」
これにはキレた。
魔帝の言葉を聞き、流石の俺もダンテ同様に怒りを隠せず、まさかの同じタイミングで同じ言葉を放ってしまった。
双子だからな、仕方ない。
母を救えなかった悔しさを、感情を踏み躙られた。その上母を殺めた首謀者張本人が新しい母を創造してやるなど……。バカにするな。
母は創造して得るものではない。姿形が同じでも、紛い物は紛い物でしかない。
二人の黙れの言葉を前に交渉決裂を悟ったか、宇宙のように広大なフィールドに飛んでいく魔帝。
さすがに逃げる気はないだろう。これから戦いが始まる。
濃い霧のような雲が視界を覆う空間の中、魔帝を追って飛び上がれば体が熱くなっていく。
隣でダンテが魔人としてのスパーダそのものに姿を変えていた。
手のひらを、そして体を見れば、自身の肉体も変化している。ダンテ同様に魔人化していた。
自分の意思とは関係なく魔人化した己の体に困惑する。
ダンテの魔人化に呼応したとしか考えがつかない。
かつて、テメンニグル頂上で悪魔の力を解放したダンテ。トリガーこそリベリオンだったが、あれも俺の魔力に呼応したところが大きい。
どこまで行っても、双子は双子、か。
スパーダそっくりなダンテの魔人化には、赤い魔力のゆらぎが見え、俺は青い魔力を纏っている状態。
違いはその色と今現在の魔力の量だった。魔人化しておいてなんだが、今の俺には魔力が少なすぎる。
「バージル!ディーヴァを頼む……!」
勇ましく力強い喋りを残し、ダンテが翼を羽ばたかせて魔帝へと向かっていった。
その一言の言葉にすら魔力が込められているのでは?と思うほどに強さが伝わった。
それはダンテの圧倒的な力をみせつけられるのと同じことで。
いつもそうだ。俺が兄だというのに、ダンテはいつも俺を置いて先に行く。
ディーヴァへの想いも、魔力の量でも「叶わない」と、悔しい思いを抱いた。
はやく自分の力を取り戻さねばなるまい。
「あれは……!」
ダンテに頼まれた視線の先、まだ神殿とわずかに繋がっている場所が見える。
境界線に絡みつくか細い荊の蔦も目に入った。
なるほど、ここからディーヴァと繋げているのか。
「…………くっ!」
神殿へ戻るための境界線には結界が張ってあったようだ。
結界がはばみ、この身を焦がす。が、俺はやめない。あきらめない。
今救わねば、ディーヴァはダンテと魔帝との戦いの中力を、命を吸われて死んでしまうだろう。
すでに大輪の薔薇が血のように赤く、毒々しくディーヴァの胸に咲いているのだ。
一刻の猶予もない。
雷に打たれたかのように体から煙を出しながら、壁をブチ破るようにして降り立った先。
横たわるディーヴァを囲むように、黒い鉄球のような物が無数に浮いていた。
神殿の中にはトリッシュの体も横たわっていたはずだが、姿が見えない。
ディーヴァの体が安置されているこの場所もまた、神殿そのものとは違う空間だったようだ。
「こんな物で俺の歩みを止められると思うな!」
魔帝が創造したのだろう攻撃を放ってくる球を、魔力をわずかに乗せた刀の一振りで破壊する。
粉々に砕け落ちたそれを踏み、ディーヴァの元へ駆け寄る。
あんなに太かった蔦が細くなっている。
大輪の薔薇を咲かせた事でなのか、それとも魔帝がダンテにかかりきりになるからかそれはわからない。
だが、ダンテの存在は大きかろう。
「奴め、今はスパーダの血族を殺すことに全力らしい。ディーヴァへ割く力が手薄だったぞ。
俺ならばこちらにも全力を出すがな」
果実などならせはしない。
切るのがダメなら……。除草剤になればと、自分の魔力を微量ながら蔦へ流し込む。
薔薇は萎み、蔦や葉がカサカサと枯れ絡みが解けていく。
最後には悪魔の最期と同じように弾けて消え、何も無くなった。
「間一髪、と言ったところか」
……安心して息が漏れてしまった。だが。
「何ッ!?……く……、吸い込まれる……!」
ディーヴァを抱き起こした瞬間、俺はディーヴァごと再び宇宙のようなフィールドへと投げ出された。