mission 22:old enemy ~VS魔帝~ 前編
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『そう簡単に贄を手放すと思うか?あと少しで果実のなる贄を』
こちらをちっぽけな存在とでも思っているのだろう。オレ達のことを鼻で笑ったムンドゥスが、三つ目を光らせた。魔帝の魔力で棺から持ち上げられたディーヴァの身体が宙に浮かぶ。
蔦が絡みつく様は触手にまみれるというよりも、まるで機械に繋がれたコードのようだ。
シュルシュル、ギチギチギチ……。
蔦が、蔓がディーヴァの血を吸い上げ、赤く色づく。その胸には大きな蕾が一つ出来上がっていた。
『ほぅら、薔薇の蕾が出来た。この花が咲き、朽ちた後には果実がなるぞ』
くそ、あれが落ちて実がなれば、ディーヴァは死ぬ。魔帝は最強の存在になり、この世界も終わってしまう。そんな事はさせねぇ。
「起きろ、目を覚ませよディーヴァ……!
そこは夢だ。ディーヴァ、現実から……オレから逃げんな!!もう朝だぜ!!」
呼びかけても眠りから覚めないディーヴァ。
眠っているそのディーヴァの顔には苦悶の表情が浮かんでいた。
『見るがいい。夢の中でも絶望を味わっている……かわいそうになあ。悪夢を見ているようだ。
それもこれも、貴様が天使に『そこ』が夢だと呼びかけて教えたからだ。
魂の存在たる天使も本来の肉体へと還った今、我が血肉になる時を刻一刻と待つのみよ』
「そもそもてめぇが全ての元凶だろうが……」
もう我慢がならん!
オレは魔剣スパーダを抜き、隣のバージルは刀を抜いた。
「そんな蔦なんか引きちぎらなくてもどうとでもなる!ディーヴァの身体、返してもらうぜ」
「ディーヴァにも蔦にも傷はつけるなよ」
二人揃って走り出す。
前にもこんなことがあった。ああ、そうか。テメンニグルでも共闘したっけ。懐かしいぜ。
走りながらそんな事を考えていたからか、自身にそしてバージルに迫る魔帝の刃を弾けず、体で受け止める羽目になってしまった。
「ぐあぁっ……!」
「う、ぐ……、っ!」
相手が悪かった。アーカムとは比べ物にならない膨大な魔力。その圧倒的な力。
せっかくディーヴァからもらった力も、その力によって増えていた血すらも、流れて消えていく。
たった数本の光の刃を前に、オレの意識は朦朧としていた。
バージルも同様だ。
『この程度か。スパーダの血も腐ったものだな』
ムンドゥスの額に強い光が集まる。これまでの赤い光とは違う、もっと膨大な量の魔力が額を中心に渦巻いている。
その強さに大地も震えていた。
『死ね!』
眩いまでに白く太い光線が発射された。
あんなもの当たっては、ひとたまりもないだろう。
だが回復していない体では動けなかった。
それはそうだ。
これまで何本も刺さった光の刃だが、ここへ来て更に追加でダンテとバージルを貫く無数のそれ。さすがの半魔の力でも、その怪我が治癒する暇など皆無だ。
ディーヴァと約束したんだがな。おかえりって、迎え入れると……。
約束……破っちまうな。
そう諦めかけたその時だ。
拘束具がようやく壊れたのか、トリッシュがオレとバージルの前へと降り立った。
オレ達を突き飛ばし、魔帝の攻撃にその身を晒す。
「トリッシュ!」
オレの声は届かず、光線に貫かれるトリッシュの姿が、かつて自分を守って死んでいった母の姿と重なった。
まるでスローモーション。ゆっくりと倒れゆくトリッシュのからだを、オレはただ見ている事しか出来なかった。
「トリッシュ、バカな!」
お前からしたらオレはまだお前の敵だったはずだろ。
いくら心配そうな顔をしても、心配そうな声をかけられても、まだ敵だった。そうだろ?
なのになんでオレを庇う。トリッシュの中に情が芽生えた……?
もしそうだとしたら、それではまるで……人間のようじゃあないか。
オレの内側で、さまざまな葛藤と思いが生まれる。
人間のような悪魔がいて、悪魔のような人間がいる。
その言葉が脳裏をよぎった。
ああ、そうか。人間のような悪魔……。ここにもいたんだな。
『役立たずめ。邪魔をするとは、とんだ失敗作だ』
倒れたトリッシュの思いを、全てを踏み躙るようにムンドゥスが言葉を吐き捨てる。
オレの怒りのボルテージが限界突破。ブチッと何か切れる……いや、キレるような音が額から聞こえた。
『戦意喪失か?では今こそ因縁の幕を引こう!
まずはダンテ、貴様からだ!!』
血を失いすぎている事もあり、やけに静かになったオレを戦意喪失と見做した奴が、鼻で笑う。
魔帝が集めた高濃度のエネルギー波が、今度はオレだけを狙って発射される。
「避けろダンテっ!」
バージルが鋭く言い放つと同時、オレに攻撃が着弾ーー
ドォン!!
する事はなく、オレ自身に宿る強大な魔力によってそれは跳ね返された。
明後日の方向へと弾かれた光線が天井を破壊し、大きな破片がボロボロと落ちてくる。
その破片の一粒すら、オレには当たらなかった。
体から激しい怒りの波動が立ち上っているのが、自分でもわかった。
赤い、紅い、スパーダの物と酷似したその魔力。怒りにより増大した魔力の奔流の恐ろしさは、バージルが一歩後退るほどだった。
「いつまでも調子に乗るな」
自分でも驚くほど低い声だった。
「テメェは母さんだけに飽き足らず、バージルやオレの愛するディーヴァに手を出した……。更には自分の仲間でさえも虫ケラのように消した。
そして今度はトリッシュにまで……!」
赤い魔力が、怒る瞳を深紅に光らせる。
視界の全てまで、赤く染まっているかのようだった。
「出て来い、魔帝ムンドゥス!!」
怒りに震えるオレの渾身の叫びを前に、ムンドゥスの現世での仮の姿ーー巨像の外側が剥がれ、崩れ落ちていく。
内側から漏れ出す閃光。
体が崩れた後に現れたのは、神々しいまでに白く巨大な翼を広げた、魔帝ムンドゥスの真の姿だった。
「これが魔帝の真の姿か。これまで見た覚えはないが、あまり先程と変わっておらんな」
「図体ばっかでかいデクの棒が……」
奴の翼から、羽根が舞い落ちる。
まるでディーヴァの天使の翼だ。彼女の翼顕現時にも、美しい羽根が宙を漂う。
ディーヴァの真似すんじゃねぇ。
こちらをちっぽけな存在とでも思っているのだろう。オレ達のことを鼻で笑ったムンドゥスが、三つ目を光らせた。魔帝の魔力で棺から持ち上げられたディーヴァの身体が宙に浮かぶ。
蔦が絡みつく様は触手にまみれるというよりも、まるで機械に繋がれたコードのようだ。
シュルシュル、ギチギチギチ……。
蔦が、蔓がディーヴァの血を吸い上げ、赤く色づく。その胸には大きな蕾が一つ出来上がっていた。
『ほぅら、薔薇の蕾が出来た。この花が咲き、朽ちた後には果実がなるぞ』
くそ、あれが落ちて実がなれば、ディーヴァは死ぬ。魔帝は最強の存在になり、この世界も終わってしまう。そんな事はさせねぇ。
「起きろ、目を覚ませよディーヴァ……!
そこは夢だ。ディーヴァ、現実から……オレから逃げんな!!もう朝だぜ!!」
呼びかけても眠りから覚めないディーヴァ。
眠っているそのディーヴァの顔には苦悶の表情が浮かんでいた。
『見るがいい。夢の中でも絶望を味わっている……かわいそうになあ。悪夢を見ているようだ。
それもこれも、貴様が天使に『そこ』が夢だと呼びかけて教えたからだ。
魂の存在たる天使も本来の肉体へと還った今、我が血肉になる時を刻一刻と待つのみよ』
「そもそもてめぇが全ての元凶だろうが……」
もう我慢がならん!
オレは魔剣スパーダを抜き、隣のバージルは刀を抜いた。
「そんな蔦なんか引きちぎらなくてもどうとでもなる!ディーヴァの身体、返してもらうぜ」
「ディーヴァにも蔦にも傷はつけるなよ」
二人揃って走り出す。
前にもこんなことがあった。ああ、そうか。テメンニグルでも共闘したっけ。懐かしいぜ。
走りながらそんな事を考えていたからか、自身にそしてバージルに迫る魔帝の刃を弾けず、体で受け止める羽目になってしまった。
「ぐあぁっ……!」
「う、ぐ……、っ!」
相手が悪かった。アーカムとは比べ物にならない膨大な魔力。その圧倒的な力。
せっかくディーヴァからもらった力も、その力によって増えていた血すらも、流れて消えていく。
たった数本の光の刃を前に、オレの意識は朦朧としていた。
バージルも同様だ。
『この程度か。スパーダの血も腐ったものだな』
ムンドゥスの額に強い光が集まる。これまでの赤い光とは違う、もっと膨大な量の魔力が額を中心に渦巻いている。
その強さに大地も震えていた。
『死ね!』
眩いまでに白く太い光線が発射された。
あんなもの当たっては、ひとたまりもないだろう。
だが回復していない体では動けなかった。
それはそうだ。
これまで何本も刺さった光の刃だが、ここへ来て更に追加でダンテとバージルを貫く無数のそれ。さすがの半魔の力でも、その怪我が治癒する暇など皆無だ。
ディーヴァと約束したんだがな。おかえりって、迎え入れると……。
約束……破っちまうな。
そう諦めかけたその時だ。
拘束具がようやく壊れたのか、トリッシュがオレとバージルの前へと降り立った。
オレ達を突き飛ばし、魔帝の攻撃にその身を晒す。
「トリッシュ!」
オレの声は届かず、光線に貫かれるトリッシュの姿が、かつて自分を守って死んでいった母の姿と重なった。
まるでスローモーション。ゆっくりと倒れゆくトリッシュのからだを、オレはただ見ている事しか出来なかった。
「トリッシュ、バカな!」
お前からしたらオレはまだお前の敵だったはずだろ。
いくら心配そうな顔をしても、心配そうな声をかけられても、まだ敵だった。そうだろ?
なのになんでオレを庇う。トリッシュの中に情が芽生えた……?
もしそうだとしたら、それではまるで……人間のようじゃあないか。
オレの内側で、さまざまな葛藤と思いが生まれる。
人間のような悪魔がいて、悪魔のような人間がいる。
その言葉が脳裏をよぎった。
ああ、そうか。人間のような悪魔……。ここにもいたんだな。
『役立たずめ。邪魔をするとは、とんだ失敗作だ』
倒れたトリッシュの思いを、全てを踏み躙るようにムンドゥスが言葉を吐き捨てる。
オレの怒りのボルテージが限界突破。ブチッと何か切れる……いや、キレるような音が額から聞こえた。
『戦意喪失か?では今こそ因縁の幕を引こう!
まずはダンテ、貴様からだ!!』
血を失いすぎている事もあり、やけに静かになったオレを戦意喪失と見做した奴が、鼻で笑う。
魔帝が集めた高濃度のエネルギー波が、今度はオレだけを狙って発射される。
「避けろダンテっ!」
バージルが鋭く言い放つと同時、オレに攻撃が着弾ーー
ドォン!!
する事はなく、オレ自身に宿る強大な魔力によってそれは跳ね返された。
明後日の方向へと弾かれた光線が天井を破壊し、大きな破片がボロボロと落ちてくる。
その破片の一粒すら、オレには当たらなかった。
体から激しい怒りの波動が立ち上っているのが、自分でもわかった。
赤い、紅い、スパーダの物と酷似したその魔力。怒りにより増大した魔力の奔流の恐ろしさは、バージルが一歩後退るほどだった。
「いつまでも調子に乗るな」
自分でも驚くほど低い声だった。
「テメェは母さんだけに飽き足らず、バージルやオレの愛するディーヴァに手を出した……。更には自分の仲間でさえも虫ケラのように消した。
そして今度はトリッシュにまで……!」
赤い魔力が、怒る瞳を深紅に光らせる。
視界の全てまで、赤く染まっているかのようだった。
「出て来い、魔帝ムンドゥス!!」
怒りに震えるオレの渾身の叫びを前に、ムンドゥスの現世での仮の姿ーー巨像の外側が剥がれ、崩れ落ちていく。
内側から漏れ出す閃光。
体が崩れた後に現れたのは、神々しいまでに白く巨大な翼を広げた、魔帝ムンドゥスの真の姿だった。
「これが魔帝の真の姿か。これまで見た覚えはないが、あまり先程と変わっておらんな」
「図体ばっかでかいデクの棒が……」
奴の翼から、羽根が舞い落ちる。
まるでディーヴァの天使の翼だ。彼女の翼顕現時にも、美しい羽根が宙を漂う。
ディーヴァの真似すんじゃねぇ。