mission 22:old enemy ~VS魔帝~ 前編
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『愚かな。それが人間の限界なのだ』
その様子を見ていた魔帝が鼻で笑った。
もう一度放つ気なのだろうか。奴の目に赤い光が集中する。
「うぅっ……!さ、寒い……、」
その時、バージルの腕の中でディーヴァが激しく震え出した。
「っディーヴァ……!?」
「いかん。このままでは、手足の末端から壊疽してしまうぞ」
青い顔がさらに青く、蒼白になっていく。
本人が『寒い』と、そう答えたように、体温が急激に低下していく。バージルの熱を移そうとも、冷たくなっていくスピードの方が早い。
このままでは、バージルが言うように手足から徐々に死んでいくだろう。
すでに死後硬直を起こしたかのように、柔らかかったあのディーヴァの皮膚が、石のように硬くなってきている。
「寒い、こわい。痛いよ……。
嫌だよ、ダンテ……助けて、バージル……」
痛みを放り出し駆け寄ったオレもディーヴァの顔を覗き込み、その手を取る。
ここに来るまでも体温は低かった。けれどここまでではない。今の冷たさはまるで死体ではないか。
「今の魔帝の攻撃は、ディーヴァの血を媒介にしているようだ。奴にあまり攻撃をうたせるな」
『気がつくのが遅いぞ。もうその仮の体は存在しておけまい!
その全てが我が物になる時も近い!!』
ディーヴァの血でできた赤い刃ってことか?
だからこんなにも痛いのか。ならこれはディーヴァからの愛の痛さだと思っておこう。
魔帝ごときの攻撃で痛がってるなんて思われたくない。
ディーヴァの魂までをも取り込もうと、魔帝がさらに赤い刃を生成し出す。
血を吸い取られ力を、生命力を取られ、呼応するように目の前のディーヴァの体が透けてきていた。
壊疽はしない代わりに、指先から透けて消えていくなんて。もっと最悪ではないか。
「ディーヴァ、お前……なんで透けてるんだ。おい冗談だろ、オレの前から消える気か?」
「消えたくないし、怖い……けど。
でも、あたしはこんなにも透けてる……もう、無理……存在を保っていられないみたい」
指先から手へ、体までもが徐々に粒子になって消えていく。
ディーヴァの気配が空気中へと霧散していく中、微かに甘い酒のような匂いが漂った。
「これは……なるほど」
バージルもその匂いに気がついたようだったが、ひとり納得して終わり、ディーヴァに呼びかけていた。
「大丈夫だ、自分を信じろ。自己を取り戻せ。
お前は消えるが、自分の身体へと還るだけだ。
死ぬわけではない」
「うん。それはもうわかって、きた……。
だからお願い。あのあたしを、起こして……。お願い、起こして……」
「了解した」
ディーヴァは理解しているようだった。理解が出来ていないのはオレだけのようだ。
「ごめんねダンテ。すぐ……戻るね」
もう存在しない手のひらがオレに向かって伸ばされているのを感じる。
か細い体を抱き寄せれば、冷たいけれどディーヴァの温もりは確かにあった。
「ディーヴァ、本当に戻ってくるんだな?」
「うん、戻るよ……。だから、ダンテはダンテにしかできないことをして。
負けないで……この世界を魔帝に壊させないで。あたしが戻った時、世界がなかったら、ダンテやバージルがいなかったら……嫌だよ。
ただいまって言わせて。おかえりって声を掛けて……お願い」
「……わかった。後のことは任せろ」
最後に笑うディーヴァ。微笑んだその瞳からははらはらと涙がこぼれ落ち、それすら空気に溶けて消える。
「行ってきます」
体が消え、顔が消え、オレが昔にプレゼントしたネックレスのパールとガーネットが最後に揺れて消える。
笑顔の余韻を残して。
が、一瞬の静寂のあと、バージルから爆弾が投下された。
「なあダンテ、ディーヴァの肉体は一度死んでいたようだ」
「……は?………………は??」
こいつは今なんて言った?ディーヴァの肉体、つまり今ここにいた魂が形を取ったディーヴァではなく、本体のディーヴァが、『死んでいた』?
「アンデッド?オレの、ディーヴァが……アンデッド?」
バージルのあまりに衝撃的なトンデモ発言を前に、オレの体は大きくよろめいた。
泡ふいてぶっ倒れそう。白眼はむいていたと思う。
むしろ倒れなかっただけ褒めて欲しい。褒めてくれそうなディーヴァはいないけれど。
「ディーヴァがアンデッド……ゾンビに……。なあそれは、このオレにディーヴァを殺せと言ってるってことか?このオレに愛するディーヴァを手にかけろと……」
「しっかり聞け。取り乱しすぎだ」
バージルに詰め寄れば、思い切りブッ叩かれた。ある意味魔帝の攻撃より痛い。
「消える直前に甘い酒の匂いがした事はわかるか」
「ああ……ディーヴァから香ってきた、度数の高そうな甘ったるい酒の匂い。
酒に弱いはずのディーヴァからなんで、って不思議に感じた」
「どこで手に入れたものかは知らん。だがあれは飲んだ者を死の淵から救う、魔女製の奇跡の魔薬『レッドホットショット』だ」
死の淵から救う。まるでオレたちでいう所の、金色に輝くオーブの塊ではないか。
ディーヴァにそれを飲ませて助けてくれた魔女にはあとでしっかりと礼を言わなければ。その酒のおかげでディーヴァが助かったのだから。
「貴様はディーヴァを信じろ。ディーヴァは俺でなく、一番ダンテに信じて欲しいはずだ。貴様が信じてやらなくてどうする」
そうだ。一番ディーヴァを信じて待たなくちゃいけないのは他でもないオレだ。バージルの言葉で、オレは我に返った。
『天使との別れは済んだようだな』
「はっ!待っててもらったみたいでドーモアリガトな。礼として地獄に案内してやるよ」
「いいか。我々のすることは奴から身体を取り返すことだ。
その役は貴様に譲ってやるから、取り返してディーヴァを起こしてやれ」
「オレに譲っていいのか?アンタが見てる前で熱烈なキスして起こすかもしれないぜ」
「姫は王子のキスで起きるものなのだろう?残念ながら俺は王子というガラではない」
ディーヴァとのキスよりも、自分の美学や醜聞を気にするか。頑固一徹というかなんというか。
ま、ここは礼を言うべきところだろう。
「サンキュー。
オレだって王子って感じじゃあねぇけど、姫は愛する者のキスで起きるって相場が決まってるからな」
更に血が吹き出る事も厭わず、光の刃を体から抜いて投げ捨てること数本。
臨戦態勢を整え、二人で魔帝ムンドゥスを見据える。
その様子を見ていた魔帝が鼻で笑った。
もう一度放つ気なのだろうか。奴の目に赤い光が集中する。
「うぅっ……!さ、寒い……、」
その時、バージルの腕の中でディーヴァが激しく震え出した。
「っディーヴァ……!?」
「いかん。このままでは、手足の末端から壊疽してしまうぞ」
青い顔がさらに青く、蒼白になっていく。
本人が『寒い』と、そう答えたように、体温が急激に低下していく。バージルの熱を移そうとも、冷たくなっていくスピードの方が早い。
このままでは、バージルが言うように手足から徐々に死んでいくだろう。
すでに死後硬直を起こしたかのように、柔らかかったあのディーヴァの皮膚が、石のように硬くなってきている。
「寒い、こわい。痛いよ……。
嫌だよ、ダンテ……助けて、バージル……」
痛みを放り出し駆け寄ったオレもディーヴァの顔を覗き込み、その手を取る。
ここに来るまでも体温は低かった。けれどここまでではない。今の冷たさはまるで死体ではないか。
「今の魔帝の攻撃は、ディーヴァの血を媒介にしているようだ。奴にあまり攻撃をうたせるな」
『気がつくのが遅いぞ。もうその仮の体は存在しておけまい!
その全てが我が物になる時も近い!!』
ディーヴァの血でできた赤い刃ってことか?
だからこんなにも痛いのか。ならこれはディーヴァからの愛の痛さだと思っておこう。
魔帝ごときの攻撃で痛がってるなんて思われたくない。
ディーヴァの魂までをも取り込もうと、魔帝がさらに赤い刃を生成し出す。
血を吸い取られ力を、生命力を取られ、呼応するように目の前のディーヴァの体が透けてきていた。
壊疽はしない代わりに、指先から透けて消えていくなんて。もっと最悪ではないか。
「ディーヴァ、お前……なんで透けてるんだ。おい冗談だろ、オレの前から消える気か?」
「消えたくないし、怖い……けど。
でも、あたしはこんなにも透けてる……もう、無理……存在を保っていられないみたい」
指先から手へ、体までもが徐々に粒子になって消えていく。
ディーヴァの気配が空気中へと霧散していく中、微かに甘い酒のような匂いが漂った。
「これは……なるほど」
バージルもその匂いに気がついたようだったが、ひとり納得して終わり、ディーヴァに呼びかけていた。
「大丈夫だ、自分を信じろ。自己を取り戻せ。
お前は消えるが、自分の身体へと還るだけだ。
死ぬわけではない」
「うん。それはもうわかって、きた……。
だからお願い。あのあたしを、起こして……。お願い、起こして……」
「了解した」
ディーヴァは理解しているようだった。理解が出来ていないのはオレだけのようだ。
「ごめんねダンテ。すぐ……戻るね」
もう存在しない手のひらがオレに向かって伸ばされているのを感じる。
か細い体を抱き寄せれば、冷たいけれどディーヴァの温もりは確かにあった。
「ディーヴァ、本当に戻ってくるんだな?」
「うん、戻るよ……。だから、ダンテはダンテにしかできないことをして。
負けないで……この世界を魔帝に壊させないで。あたしが戻った時、世界がなかったら、ダンテやバージルがいなかったら……嫌だよ。
ただいまって言わせて。おかえりって声を掛けて……お願い」
「……わかった。後のことは任せろ」
最後に笑うディーヴァ。微笑んだその瞳からははらはらと涙がこぼれ落ち、それすら空気に溶けて消える。
「行ってきます」
体が消え、顔が消え、オレが昔にプレゼントしたネックレスのパールとガーネットが最後に揺れて消える。
笑顔の余韻を残して。
が、一瞬の静寂のあと、バージルから爆弾が投下された。
「なあダンテ、ディーヴァの肉体は一度死んでいたようだ」
「……は?………………は??」
こいつは今なんて言った?ディーヴァの肉体、つまり今ここにいた魂が形を取ったディーヴァではなく、本体のディーヴァが、『死んでいた』?
「アンデッド?オレの、ディーヴァが……アンデッド?」
バージルのあまりに衝撃的なトンデモ発言を前に、オレの体は大きくよろめいた。
泡ふいてぶっ倒れそう。白眼はむいていたと思う。
むしろ倒れなかっただけ褒めて欲しい。褒めてくれそうなディーヴァはいないけれど。
「ディーヴァがアンデッド……ゾンビに……。なあそれは、このオレにディーヴァを殺せと言ってるってことか?このオレに愛するディーヴァを手にかけろと……」
「しっかり聞け。取り乱しすぎだ」
バージルに詰め寄れば、思い切りブッ叩かれた。ある意味魔帝の攻撃より痛い。
「消える直前に甘い酒の匂いがした事はわかるか」
「ああ……ディーヴァから香ってきた、度数の高そうな甘ったるい酒の匂い。
酒に弱いはずのディーヴァからなんで、って不思議に感じた」
「どこで手に入れたものかは知らん。だがあれは飲んだ者を死の淵から救う、魔女製の奇跡の魔薬『レッドホットショット』だ」
死の淵から救う。まるでオレたちでいう所の、金色に輝くオーブの塊ではないか。
ディーヴァにそれを飲ませて助けてくれた魔女にはあとでしっかりと礼を言わなければ。その酒のおかげでディーヴァが助かったのだから。
「貴様はディーヴァを信じろ。ディーヴァは俺でなく、一番ダンテに信じて欲しいはずだ。貴様が信じてやらなくてどうする」
そうだ。一番ディーヴァを信じて待たなくちゃいけないのは他でもないオレだ。バージルの言葉で、オレは我に返った。
『天使との別れは済んだようだな』
「はっ!待っててもらったみたいでドーモアリガトな。礼として地獄に案内してやるよ」
「いいか。我々のすることは奴から身体を取り返すことだ。
その役は貴様に譲ってやるから、取り返してディーヴァを起こしてやれ」
「オレに譲っていいのか?アンタが見てる前で熱烈なキスして起こすかもしれないぜ」
「姫は王子のキスで起きるものなのだろう?残念ながら俺は王子というガラではない」
ディーヴァとのキスよりも、自分の美学や醜聞を気にするか。頑固一徹というかなんというか。
ま、ここは礼を言うべきところだろう。
「サンキュー。
オレだって王子って感じじゃあねぇけど、姫は愛する者のキスで起きるって相場が決まってるからな」
更に血が吹き出る事も厭わず、光の刃を体から抜いて投げ捨てること数本。
臨戦態勢を整え、二人で魔帝ムンドゥスを見据える。