mission 22:old enemy ~VS魔帝~ 前編
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石像から高笑いが聞こえてきた。
『果たしてそうかな。……見ろ』
胸部から光を放ったムンドゥスは、オレ達が入ってきた方向、扉の上部……天井近くを照らし出した。
魔帝なんぞに命令されて見るのは癪だったが、言葉の通りにその光の先を辿ってやる。
やけに上から目線だって?しかたないだろ、相手は憎き仇なんだぜ?
明るいこの空間を更に明るくする光の先には、壁に磔にされたトリッシュの姿があった。
「トリッシュ!」
一度は敵だったが、次に会った時には自らの失言について謝ろう、そう考えていた彼女。
助けねばと一歩踏み出そうとするが。
『動くな。
瞬きしても――女を殺す』
その言葉を前に、オレはその一歩さえも動けなくなった。
瞬きがダメならと、頼みの綱のバージルを一瞥する。バージルは……ディーヴァを支えること手いっぱいのようだ。どちらにせよ動けない。
「は……ははは、なんの冗談だ?
トリッシュはオレを攻撃してきた、敵の悪魔だぜ。アンタの仲間だろ。
そんな脅しが通用するとでも?」
内心冷や汗が垂れる思いだが、悟らせないように言葉を返す。
え?瞬き?我慢できなくてフツーにしてるぜ。
だがムンドゥスは、オレの心を見抜いた。
『ほう?許しを貰えなかったら女の気が済むまで雷攻撃を受け入れるのだろう?謝るのだろう?
信用しているそうじゃないか』
「!なっ、てめ……っ!どこから見てやがった……!?」
『貴様が降り立った魔界はまるで生物の肉体のようだっただろう?あれが誰の胎内だったと思うておる』
背中に吊ったアラストルが『あ。俺の読み当たってたわ』と声をもらした。
アラストルが言った通り、ここまで通ってきた魔界の各所は、魔帝の腹の中だったようだ。体の中にナイトメアだのノーバディだのを飼っているとは、なんと気色の悪い……。
『フハハハ!貴様が魔界に入った瞬間から見ていたぞ。すべてをな!』
「へぇ。テメェの心臓は動いてなかったが?心臓も動いてない状態でよく見れたもんだなァ」
『貴様が思った通り仮死状態だったものでな。寝ていた』
「寝……っ」
オレ達が必死の思いでここを目指す間、寝ていただと?週休六日で寝てるのはオレの専売特許だ。真似しやがって腹立つ〜〜〜!
『だが、目は魔界のどこにでもある。どんな状態だろうとこちらから見ることは可能であった』
「なんだと!
ディーヴァとオレのムフフなシーンやアハーンなシーンまで視姦してやがったなテメェ!」
「おいこら魔界で何してた愚弟」
幻影剣より鋭い視線がバージルから飛んできて背中に刺さる。
実際に刺さったわけじゃないのに痛く感じるあたり、さすがは我が兄といったところ。視線にすら魔力こもってんぜ!
『そんなわけの分からぬシーンはなかったが、触手に絡め取られる天使の姿はしかと見た!
あのまま触手に食わせておけば、楽に我が力へと換わっていたものを……』
そりゃオレもあのシーンには正直期待した。だが、その結果ディーヴァを失うことにでもなってみろ。オレは一生後悔する。
だから。
「ディーヴァをテメェになんて食わせてやらん。
ってか他にもイイシーンあっただろうが。キスシーンとか」
『惰眠を貪っていたといっておろうが』
もうお前の話はええわ!とでも言わんばかりに話を終えられてしまった。
一番大事なところだったんだが、強制終了は酷いぞ魔帝め!
『もうよい。
ネロアンジェロよ、ダンテを殺し、魂が形をとった事で存在していられるそこの天使を、“よこせ”』
オレを無視し、狙いが今度はバージルへ向いた。
かけられた言葉には魔力が宿っており、バージルを再び命令で縛ろうとしているのがよくわかる。
しかしそれは失敗に終わった。
『なんだこれは。呪縛が完全にとけている……?』
「フン。当たり前だ。
俺はもう『バージル』だ。貴様の命令など、もう効かん。
あの女をやるならばやるがいい。どうせ貴様が一番に消したいのはダンテと俺であって、その他は用済み……掟とやらの通り最後には消すつもりなのだろう?」
バージルがあの女と呼んだ者ーートリッシュは、バージルにとって感情が向かない対象のようだ。
ディーヴァにかかりきりでなければ、トリッシュに危害が加わることなど気にせず今すぐ抜刀していただろう。
『ならば貴様等を直々に殺し、無理やり奪うまでよ!』
トリッシュを消すのはバージルが読んだ通りあとにしたのか、魔帝の矛先がこちらを向いた。
気がつけば、魔帝が三つ目から放った赤く光る刃がオレの体を貫いていた。
「な、にぃ……?」
次いで体の各所に鋭い痛みが走る。
なんて速いスピードだ。避ける暇がなかった。
「ぐあああああっ!」
「なにをやっている!それくらい避けてみせんか馬鹿者!」
「チッ……油断しただけだ……!」
バージルから怒号が飛んできた。
くそ、カッコ悪いとこ晒しちまった……って、おい。
オレもたしかに三本もの光に刺し貫かれてるが、バージルの背中にも立派な刃が生えてるぜ!?
「そういうアンタだって、自分の体に一本刺さっているモンが見えてないのか」
「ぐ……っ、俺はディーヴァを庇っただけだ……」
庇いながらだって避けられそうなもんだが、オレに言えることじゃない。こういうのを五十歩百歩っていうんだっけか。
「ダンテ!……と、ネロアンジェ……いえ、バージル?」
串刺しプチオンリーイベントと言わんばかりに血みどろなさなか、トリッシュが目覚めたようだ。
バージルのことは知っていたようだ。オレの、そしてバージルの様子を見て心配そうに呼びかけながらも、自分自身の魔力を流してその拘束を懸命に解こうとしていた。
にしても、この光の刃はいつまで消えないままなんだ。刺さってなお、消えずにオレにダメージを与えてくるとは……やるな。
さすがは魔帝というべきか。
傷口から絶えず滴り落ちる血が、床を赤く染め上げる中、断続的にやってくる激痛に堪えながら、魔帝へと向き直る。
まだ、まだ大丈夫だ。大したダメージじゃあない。
「ガハッ……!」
その瞬間、魔帝が再び放ってきた赤い刃が何本もオレの体を貫いた。
バージルにも放たれていたそれも、オレの体で受け止める。
おい、ハリネズミって思った奴手を挙げろ。
浅く刺さった分を引っこ抜いて放り投げる。
それは他に落ちる前に霧散して消えたが、代わりに空洞となった傷口からは血が吹き出して止まらなかった。
「ダンテ!?……なぜ俺を庇った!」
「ははは……何勘違いしてんだ、違ぇよ。
アンタはディーヴァの事を自己を顧みずそうやって守ってる。ならそのバージルを守る奴も必要だろ?」
まだディーヴァを助けていない。まだ死なない。
いや、ディーヴァとの幸せな生活をこれから先も送るんだ。死んでなんていられないだろうが。
とはいえ、失血死まではまだまだいかないが、一瞬よろめいた。情けないったらないぜ。
『果たしてそうかな。……見ろ』
胸部から光を放ったムンドゥスは、オレ達が入ってきた方向、扉の上部……天井近くを照らし出した。
魔帝なんぞに命令されて見るのは癪だったが、言葉の通りにその光の先を辿ってやる。
やけに上から目線だって?しかたないだろ、相手は憎き仇なんだぜ?
明るいこの空間を更に明るくする光の先には、壁に磔にされたトリッシュの姿があった。
「トリッシュ!」
一度は敵だったが、次に会った時には自らの失言について謝ろう、そう考えていた彼女。
助けねばと一歩踏み出そうとするが。
『動くな。
瞬きしても――女を殺す』
その言葉を前に、オレはその一歩さえも動けなくなった。
瞬きがダメならと、頼みの綱のバージルを一瞥する。バージルは……ディーヴァを支えること手いっぱいのようだ。どちらにせよ動けない。
「は……ははは、なんの冗談だ?
トリッシュはオレを攻撃してきた、敵の悪魔だぜ。アンタの仲間だろ。
そんな脅しが通用するとでも?」
内心冷や汗が垂れる思いだが、悟らせないように言葉を返す。
え?瞬き?我慢できなくてフツーにしてるぜ。
だがムンドゥスは、オレの心を見抜いた。
『ほう?許しを貰えなかったら女の気が済むまで雷攻撃を受け入れるのだろう?謝るのだろう?
信用しているそうじゃないか』
「!なっ、てめ……っ!どこから見てやがった……!?」
『貴様が降り立った魔界はまるで生物の肉体のようだっただろう?あれが誰の胎内だったと思うておる』
背中に吊ったアラストルが『あ。俺の読み当たってたわ』と声をもらした。
アラストルが言った通り、ここまで通ってきた魔界の各所は、魔帝の腹の中だったようだ。体の中にナイトメアだのノーバディだのを飼っているとは、なんと気色の悪い……。
『フハハハ!貴様が魔界に入った瞬間から見ていたぞ。すべてをな!』
「へぇ。テメェの心臓は動いてなかったが?心臓も動いてない状態でよく見れたもんだなァ」
『貴様が思った通り仮死状態だったものでな。寝ていた』
「寝……っ」
オレ達が必死の思いでここを目指す間、寝ていただと?週休六日で寝てるのはオレの専売特許だ。真似しやがって腹立つ〜〜〜!
『だが、目は魔界のどこにでもある。どんな状態だろうとこちらから見ることは可能であった』
「なんだと!
ディーヴァとオレのムフフなシーンやアハーンなシーンまで視姦してやがったなテメェ!」
「おいこら魔界で何してた愚弟」
幻影剣より鋭い視線がバージルから飛んできて背中に刺さる。
実際に刺さったわけじゃないのに痛く感じるあたり、さすがは我が兄といったところ。視線にすら魔力こもってんぜ!
『そんなわけの分からぬシーンはなかったが、触手に絡め取られる天使の姿はしかと見た!
あのまま触手に食わせておけば、楽に我が力へと換わっていたものを……』
そりゃオレもあのシーンには正直期待した。だが、その結果ディーヴァを失うことにでもなってみろ。オレは一生後悔する。
だから。
「ディーヴァをテメェになんて食わせてやらん。
ってか他にもイイシーンあっただろうが。キスシーンとか」
『惰眠を貪っていたといっておろうが』
もうお前の話はええわ!とでも言わんばかりに話を終えられてしまった。
一番大事なところだったんだが、強制終了は酷いぞ魔帝め!
『もうよい。
ネロアンジェロよ、ダンテを殺し、魂が形をとった事で存在していられるそこの天使を、“よこせ”』
オレを無視し、狙いが今度はバージルへ向いた。
かけられた言葉には魔力が宿っており、バージルを再び命令で縛ろうとしているのがよくわかる。
しかしそれは失敗に終わった。
『なんだこれは。呪縛が完全にとけている……?』
「フン。当たり前だ。
俺はもう『バージル』だ。貴様の命令など、もう効かん。
あの女をやるならばやるがいい。どうせ貴様が一番に消したいのはダンテと俺であって、その他は用済み……掟とやらの通り最後には消すつもりなのだろう?」
バージルがあの女と呼んだ者ーートリッシュは、バージルにとって感情が向かない対象のようだ。
ディーヴァにかかりきりでなければ、トリッシュに危害が加わることなど気にせず今すぐ抜刀していただろう。
『ならば貴様等を直々に殺し、無理やり奪うまでよ!』
トリッシュを消すのはバージルが読んだ通りあとにしたのか、魔帝の矛先がこちらを向いた。
気がつけば、魔帝が三つ目から放った赤く光る刃がオレの体を貫いていた。
「な、にぃ……?」
次いで体の各所に鋭い痛みが走る。
なんて速いスピードだ。避ける暇がなかった。
「ぐあああああっ!」
「なにをやっている!それくらい避けてみせんか馬鹿者!」
「チッ……油断しただけだ……!」
バージルから怒号が飛んできた。
くそ、カッコ悪いとこ晒しちまった……って、おい。
オレもたしかに三本もの光に刺し貫かれてるが、バージルの背中にも立派な刃が生えてるぜ!?
「そういうアンタだって、自分の体に一本刺さっているモンが見えてないのか」
「ぐ……っ、俺はディーヴァを庇っただけだ……」
庇いながらだって避けられそうなもんだが、オレに言えることじゃない。こういうのを五十歩百歩っていうんだっけか。
「ダンテ!……と、ネロアンジェ……いえ、バージル?」
串刺しプチオンリーイベントと言わんばかりに血みどろなさなか、トリッシュが目覚めたようだ。
バージルのことは知っていたようだ。オレの、そしてバージルの様子を見て心配そうに呼びかけながらも、自分自身の魔力を流してその拘束を懸命に解こうとしていた。
にしても、この光の刃はいつまで消えないままなんだ。刺さってなお、消えずにオレにダメージを与えてくるとは……やるな。
さすがは魔帝というべきか。
傷口から絶えず滴り落ちる血が、床を赤く染め上げる中、断続的にやってくる激痛に堪えながら、魔帝へと向き直る。
まだ、まだ大丈夫だ。大したダメージじゃあない。
「ガハッ……!」
その瞬間、魔帝が再び放ってきた赤い刃が何本もオレの体を貫いた。
バージルにも放たれていたそれも、オレの体で受け止める。
おい、ハリネズミって思った奴手を挙げろ。
浅く刺さった分を引っこ抜いて放り投げる。
それは他に落ちる前に霧散して消えたが、代わりに空洞となった傷口からは血が吹き出して止まらなかった。
「ダンテ!?……なぜ俺を庇った!」
「ははは……何勘違いしてんだ、違ぇよ。
アンタはディーヴァの事を自己を顧みずそうやって守ってる。ならそのバージルを守る奴も必要だろ?」
まだディーヴァを助けていない。まだ死なない。
いや、ディーヴァとの幸せな生活をこれから先も送るんだ。死んでなんていられないだろうが。
とはいえ、失血死まではまだまだいかないが、一瞬よろめいた。情けないったらないぜ。