mission 22:old enemy ~VS魔帝~ 前編
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これまでとは真逆。
全く異なる、純白の神殿という空間がそこには広がっていた。
目眩を起こすほどに白く、温かな光が差すそこはこちらが場違いに感じるほど、厳かで神聖な雰囲気が漂っている。
讃美歌でも聞こえてきそうだ。
だが、この場の主だと主張してくる巨大な石像からは、隠しきれない禍々しい魔力が漏れ出していた。
その石像を剣で突けば、膨大な魔力が漏れ出し、本性でも現れそうだ。
見た目だけは白く神々しい石像だがこれこそが魔界の支配者。魔帝ムンドゥス。
そして像の足元には……。
「あた、し……?」
血の赤と蒼白な顔色の白に彩られた、荊の蔦が絡まったディーヴァの痛々しい姿。
その身は、半透明のガラスケースのような棺に入れられ、まるで御伽噺に出てくる眠ったままの白雪姫。
目覚めるためにキスが必要ならば、喜んでこの唇を差し出すというのに。
「あ、ああ……」
隣のディーヴァが顔を両手で覆い、崩れ落ちて泣きだす。
同時に苦しみだし、胸を押さえ始めた。
「ああそんな……!まさか、あんな状態になってたなんて……。あたし、ちゃんと生きてるの……ねぇあれ、死んでないの?助かるの……!?」
ディーヴァの呼吸が浅く、速くなっていく。
その瞬間、『過呼吸』という言葉がオレの脳裏に浮かんだ。
「その緊張をほぐせ。落ち着け。ここへ入る前にも言ったはずだ。無理に見なくていい、目を閉じろ。
……いいか、俺は今お前の背をさすっている。俺の手の動きにだけ集中しろ。ゆっくりでいい、呼吸をするんだ」
ディーヴァの背をバージルがゆっくりと擦り、優しく言葉をかけている。過呼吸への対処もできるならいい。
オレも心配だがここはバージルに任せておこう。バージルならば絶対悪いようにはしない。安心だ。
オレはオレのすべきことを。
全ての元凶である、目の前の巨像を見上げ、力いっぱい睨みつける。
視線だけで相手を殺せるのなら、すでにこの殺意によって巨像は木っ端微塵に消し飛んでいたことだろう。
今の今まで行動を共にしていたディーヴァは、あそこで眠る本体の魂が形を得たものだという。
どちらもディーヴァに変わりはない。……変わりはないが、囚われているあの体は取り戻さねばならない。
棺を覆い隠そうとするほどの荊の蔦は、石像の周りから這い伸びている。
ディーヴァの血をこれでもかと啜って赤く染まった蔦に、魔剣スパーダの刃先を向ける。
忌々しい蔦など、斬り刻んでくれる!
「待てダンテ。それを切るな!」
だが振り下ろす直前で、バージルの一喝で刃は止まった。
巨像から、嘲笑うような声が聞こえて来る。
『フハハハハ……!斬らずに済んでよかったな。
その蔦の根は天使の血管の中にまで入り込んでいる。まさに血管そのもの!斬ったならどうなるかわかっていよう?』
蔦が血管と同じということは、斬ったら間違いなく血が噴き出す。文字通りの出血大サービスだ。
ただでさえ血の絶対量が少なくなってミイラ寸前のディーヴァにそれは、トドメをさすのと変わらない。
オレの手でディーヴァを殺すところだった。
棺にはバージルが入れたとの話だし、知っていたのだろう。止めてくれたバージルに感謝の念を送る。
『大輪の薔薇が咲いた後、天使の体は強大な力を宿した果実となる……!』
「へぇ。それを食って強大な力を手に入れようってか。全く、お前ら悪魔の考えそうなことだぜ」
「薔薇になる果実……。まるでローズヒップのようだな。酸っぱそうな果実だ」
「バージル、お前が気にするのそこかよ」
ディーヴァの背を擦りながらも酸っぱい物を食べた時の顔をするバージルに、オレは小さくツッコミを入れた。
「ディーヴァ!起きろ!!いつまでそうしてやがる……!帰るぞ!」
眠る本体のディーヴァに呼びかける。
うんともすんとも言わない。……言わない、が、その指先がぴくりと一瞬動いた気がした。
『それくらいでは起きる事はないぞ?
……さて、再びスパーダの血族共と対面か。
ネロアンジェロに至っては……なんだその恰好は?見た目だけでもスパーダになったつもりか?』
ネロアンジェロの格好から、かつてのスパーダそのものと言っても過言じゃない衣装に身を包むバージル。その姿を目にし、声大きく聞いて来る魔帝。
バージルは鼻で笑い飛ばした。
「貴様に与えられた悪趣味な鎧などいつまでも身に纏っていたくなかったものでな。俺の体が入る衣装がこれだっただけだ。
そうだ、お代は貴様にツケてある。俺の代わりに払うがいい」
『何だと!?』
「給料がわりだ、それくらい支払え元上司。
ああそうだった。衣装で思いだしたが、衣装を作る部屋に貴様用の服の資料があったぞ。
現世での貴様の姿は糞のように巨大なその石像。おまけに隠しようもないビールっ腹。それでどう人間用の衣装を身につける予定だったのだろうか。俺には想像もつかんなあ?」
『ぐぬぬ、言わせておけば……!』
魔帝を糞呼ばわりの、ビールっ腹扱い。手ではディーヴァを優しく介抱しながらの魔帝に向ける蔑むようなその視線。
魔帝にぐぬぬ、とか言わせるとは。やるなバージル、今日も言葉と視線の刃が鋭いぜ!
それにしてもバージルもオレと同じでツケってのを使うとはなあ。こりゃあ、街に戻ったら色々と苦労しそうだ。
……主にディーヴァが。
『スパーダも言葉は辛辣だった。その剣も鋭く、敵対するには惜しい存在だった』
「親父もかよ!……いや、敵には毒舌だったかもしれないな。オレ達にすら厳しく当たっていた。甘いのは母さんにだけってわけか」
だから、敗北したバージルの体を操り配下に仕立て上げた?
かつては配下だったスパーダを失ったかわりにでもしようとしたのだろうか。
『貴様等を見ていると昔を思い出す』
「きっと結末も同じだぜ?」
魔剣士ダンテと魔剣士バージルに敗れるって結末な。
そしてそれは覆されることのない、約束された未来でもある!
全く異なる、純白の神殿という空間がそこには広がっていた。
目眩を起こすほどに白く、温かな光が差すそこはこちらが場違いに感じるほど、厳かで神聖な雰囲気が漂っている。
讃美歌でも聞こえてきそうだ。
だが、この場の主だと主張してくる巨大な石像からは、隠しきれない禍々しい魔力が漏れ出していた。
その石像を剣で突けば、膨大な魔力が漏れ出し、本性でも現れそうだ。
見た目だけは白く神々しい石像だがこれこそが魔界の支配者。魔帝ムンドゥス。
そして像の足元には……。
「あた、し……?」
血の赤と蒼白な顔色の白に彩られた、荊の蔦が絡まったディーヴァの痛々しい姿。
その身は、半透明のガラスケースのような棺に入れられ、まるで御伽噺に出てくる眠ったままの白雪姫。
目覚めるためにキスが必要ならば、喜んでこの唇を差し出すというのに。
「あ、ああ……」
隣のディーヴァが顔を両手で覆い、崩れ落ちて泣きだす。
同時に苦しみだし、胸を押さえ始めた。
「ああそんな……!まさか、あんな状態になってたなんて……。あたし、ちゃんと生きてるの……ねぇあれ、死んでないの?助かるの……!?」
ディーヴァの呼吸が浅く、速くなっていく。
その瞬間、『過呼吸』という言葉がオレの脳裏に浮かんだ。
「その緊張をほぐせ。落ち着け。ここへ入る前にも言ったはずだ。無理に見なくていい、目を閉じろ。
……いいか、俺は今お前の背をさすっている。俺の手の動きにだけ集中しろ。ゆっくりでいい、呼吸をするんだ」
ディーヴァの背をバージルがゆっくりと擦り、優しく言葉をかけている。過呼吸への対処もできるならいい。
オレも心配だがここはバージルに任せておこう。バージルならば絶対悪いようにはしない。安心だ。
オレはオレのすべきことを。
全ての元凶である、目の前の巨像を見上げ、力いっぱい睨みつける。
視線だけで相手を殺せるのなら、すでにこの殺意によって巨像は木っ端微塵に消し飛んでいたことだろう。
今の今まで行動を共にしていたディーヴァは、あそこで眠る本体の魂が形を得たものだという。
どちらもディーヴァに変わりはない。……変わりはないが、囚われているあの体は取り戻さねばならない。
棺を覆い隠そうとするほどの荊の蔦は、石像の周りから這い伸びている。
ディーヴァの血をこれでもかと啜って赤く染まった蔦に、魔剣スパーダの刃先を向ける。
忌々しい蔦など、斬り刻んでくれる!
「待てダンテ。それを切るな!」
だが振り下ろす直前で、バージルの一喝で刃は止まった。
巨像から、嘲笑うような声が聞こえて来る。
『フハハハハ……!斬らずに済んでよかったな。
その蔦の根は天使の血管の中にまで入り込んでいる。まさに血管そのもの!斬ったならどうなるかわかっていよう?』
蔦が血管と同じということは、斬ったら間違いなく血が噴き出す。文字通りの出血大サービスだ。
ただでさえ血の絶対量が少なくなってミイラ寸前のディーヴァにそれは、トドメをさすのと変わらない。
オレの手でディーヴァを殺すところだった。
棺にはバージルが入れたとの話だし、知っていたのだろう。止めてくれたバージルに感謝の念を送る。
『大輪の薔薇が咲いた後、天使の体は強大な力を宿した果実となる……!』
「へぇ。それを食って強大な力を手に入れようってか。全く、お前ら悪魔の考えそうなことだぜ」
「薔薇になる果実……。まるでローズヒップのようだな。酸っぱそうな果実だ」
「バージル、お前が気にするのそこかよ」
ディーヴァの背を擦りながらも酸っぱい物を食べた時の顔をするバージルに、オレは小さくツッコミを入れた。
「ディーヴァ!起きろ!!いつまでそうしてやがる……!帰るぞ!」
眠る本体のディーヴァに呼びかける。
うんともすんとも言わない。……言わない、が、その指先がぴくりと一瞬動いた気がした。
『それくらいでは起きる事はないぞ?
……さて、再びスパーダの血族共と対面か。
ネロアンジェロに至っては……なんだその恰好は?見た目だけでもスパーダになったつもりか?』
ネロアンジェロの格好から、かつてのスパーダそのものと言っても過言じゃない衣装に身を包むバージル。その姿を目にし、声大きく聞いて来る魔帝。
バージルは鼻で笑い飛ばした。
「貴様に与えられた悪趣味な鎧などいつまでも身に纏っていたくなかったものでな。俺の体が入る衣装がこれだっただけだ。
そうだ、お代は貴様にツケてある。俺の代わりに払うがいい」
『何だと!?』
「給料がわりだ、それくらい支払え元上司。
ああそうだった。衣装で思いだしたが、衣装を作る部屋に貴様用の服の資料があったぞ。
現世での貴様の姿は糞のように巨大なその石像。おまけに隠しようもないビールっ腹。それでどう人間用の衣装を身につける予定だったのだろうか。俺には想像もつかんなあ?」
『ぐぬぬ、言わせておけば……!』
魔帝を糞呼ばわりの、ビールっ腹扱い。手ではディーヴァを優しく介抱しながらの魔帝に向ける蔑むようなその視線。
魔帝にぐぬぬ、とか言わせるとは。やるなバージル、今日も言葉と視線の刃が鋭いぜ!
それにしてもバージルもオレと同じでツケってのを使うとはなあ。こりゃあ、街に戻ったら色々と苦労しそうだ。
……主にディーヴァが。
『スパーダも言葉は辛辣だった。その剣も鋭く、敵対するには惜しい存在だった』
「親父もかよ!……いや、敵には毒舌だったかもしれないな。オレ達にすら厳しく当たっていた。甘いのは母さんにだけってわけか」
だから、敗北したバージルの体を操り配下に仕立て上げた?
かつては配下だったスパーダを失ったかわりにでもしようとしたのだろうか。
『貴様等を見ていると昔を思い出す』
「きっと結末も同じだぜ?」
魔剣士ダンテと魔剣士バージルに敗れるって結末な。
そしてそれは覆されることのない、約束された未来でもある!