mission 22:old enemy ~VS魔帝~ 前編
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ダンテに連れられ入り込んだのは、鉄筋コンクリート造のビルとビルの間だ。
なんとか間一髪、トラックをやり過ごせた。
「ここまではあのトラックも入って来れねぇ……」
ダンテとあたしは激しく息切れを起こしていた。あたしはともかく、ダンテも……?ああ、ここも夢と混ざってる。
「トラックを運転してたのって一体なんだろうな。変な仮面をかぶってたぜ」
「…………、あれが悪魔だよ」
「はあ?まだンな事言ってるのか?ただの頭がイカれた人間だろ。酒でも飲んでるんじゃねぇかな。
けど、こちとらあと少しで轢き殺されるところだ!オレはサツに通報するぜ」
「うん……警察なら一応武器も持ってるもんね……」
警察がどうにかできる相手じゃないと思うけど、ダンテに説明してもわからないだろう。
とはいえ、幽霊と違い悪魔には銃も効く。悪魔退治を請け負う人間も、夢の中には出てきたもの。
怒りながらスマホを取り出すダンテを横目に、少しだけホッとしたのも束の間。
ドオオオオン!
地響きを伴う轟音。
どこかへと追突しガソリンに引火したのか、あのトラックが周りを巻き込み爆発したようだった。
人々の声がそれを物語っている。
「おいおい今度は何だよ!」
ここから見える通り沿いに黒煙があがっている。何かから逃げ惑う人々の悲鳴も聞こえる。化け物、という叫び声も。
「ちっ、サツに連絡してる場合じゃないな。
ここにいても危険そうだ。ディーヴァ逃げるぞ、家まで走ろう!」
「ここから出る!?嫌だ、怖い!この状態で走るなんてあたしには無理……!怖くて足が動かない!」
化け物。ああ、やっぱり悪魔!
なんてこと。夢の中からあたしを追って出てきたんだ。
怖くて怖くて、動けない……!
「馬鹿!こんなとこいる方が危険だろが!この勢いだとその内ここまで火の手が回るぞ」
伸ばされた手をそっと掴む。
まだあたしと同じように、色のついたダンテの手のひら。
動きの悪い足に叱咤し、手を取って一歩踏み出した時だ。
ダンテの微笑みが、一瞬にして消えた。
「がは……っ」
口から血を吐き出し、その体はぐらりと傾き倒れていく。
その背には、ぽっかりと穴が空いていた。
流れる血に沈む体。血に染まる衣服、地面。あたしにもその血が飛び散った。
ひどい鉄の匂いとぬるりとした独特の生温かさ。
「え……?……ダ、ンテ?……うそ、うそ……っ!?」
そしてダンテが倒れたその後ろには、あの悪魔の姿。
血に濡れた武器の先端には、愛する人の体の中心に収まっていたであろう……。
「ウッ……」
それがなんであるか理解した瞬間、吐き気に襲われた。
悲しみよりも悔しさよりも先に、耐えられぬ恐怖と嫌悪感がやってくる。
吐いている暇はない。吐き戻すのはなんとか我慢できた。
ダンテの亡骸をその場に残し、あたしは弾かれたように、とうとう走り出すことが出来た。
ごめん、ごめんねダンテ。もっとはやくあたしが逃げていれば……。
安全だと思われた場所から逃げてきた道では、仮面をかぶったあの悪魔がそこかしこで人間を襲っていた。
口から炎を吐くこともできるのか、爆発したトラックだけでなく街の至る所で火の手があがっている!
色のない世界の中、舐めるように燃え上がる炎も赤く、赤く染まっている。
人々の血もまた、色鮮やかな紅い花のように咲いていた。
「ああそんな……」
ガクガクとすくむ足を叱咤して、逃げ道を探す。悪魔があたしに気がつかないようにゆっくり、でも素早い移動を繰り返しながら。
その肩に、手が置かれた。
「ディーヴァ、」
「!?ダンテ、生きてた、の…………?
ヒッ!」
ダンテだった。
けれど、それはもうダンテじゃなかった。
胸に空いた穴からは未だ血が流れ、ダンテがもう生きている人間とは異なる何かだとわかる。
目は悪魔と同じように赤く光り、どんよりと濁っていた。
「やだ、近づかないで……!」
振り払って後ずさり。
「近づかないで?オレを怖がるなんてひどいぜ……。なんで離れる?ずっと一緒だと約束したばかりじゃないか。
一緒になろうぜ。オレの中で」
獲物を狙うようなダンテの目が、こちらをギョロリと凝視していた。開いた口からは、牙のようなものが見えてごぼりと流れる血で赤く光る。
生きてもいない。もはや、人間ではない。悪魔そのもの。
いつか見たアンデッドやモンスターの出る映画のような見た目の、愛する人だったもの。
ダンテがゆらゆらと体を揺らしながら近づいてくる。
「あ……いや、いやぁぁぁあ!」
あたしはなりふり構わず走り出した。
ああ、最初にこの足が動いていたら何か変わったかもしれないのに。
ダンテも、あんなことにはならなかったのに。
悪魔も天使も、何もないはずの世界だったのになんでこんなことに。
どこをどう通ったのか覚えていない。
炎に包まれる街並みと阿鼻叫喚の渦の中、気がつけばあたしが立っていたのは自宅の前だった。
「た、ただ……いま……」
焦り、玄関に滑り込む自分から漏れるのは、掠れきって小さい声。ホッとしてへたりこんだけど、そこで気がつく。
おかしい。
なんで、おかえりって言ってくれるママの声がしないの。
たしかにあたしの声は小さかった。けれど、玄関の扉が開く音は聞こえたはず。
今日はパパもお休みだから、この時間は書斎かリビングにいるはず。靴もあるし、お兄ちゃんも大学が休講だったから、家にいるはずなのに。
ママだって専業主婦だし家にいるはずでしょ?
鼻に届く、先程嗅いだものと同じにおい。鉄錆のにおい。
ダンテの血の匂いを、あたしの鼻はしっかりと覚えている。
匂いフェチではあるけれど、鼻が利くというわけじゃない。なのにここまでそのにおいが届くということは。
……あまり考えたくない。
なんとか間一髪、トラックをやり過ごせた。
「ここまではあのトラックも入って来れねぇ……」
ダンテとあたしは激しく息切れを起こしていた。あたしはともかく、ダンテも……?ああ、ここも夢と混ざってる。
「トラックを運転してたのって一体なんだろうな。変な仮面をかぶってたぜ」
「…………、あれが悪魔だよ」
「はあ?まだンな事言ってるのか?ただの頭がイカれた人間だろ。酒でも飲んでるんじゃねぇかな。
けど、こちとらあと少しで轢き殺されるところだ!オレはサツに通報するぜ」
「うん……警察なら一応武器も持ってるもんね……」
警察がどうにかできる相手じゃないと思うけど、ダンテに説明してもわからないだろう。
とはいえ、幽霊と違い悪魔には銃も効く。悪魔退治を請け負う人間も、夢の中には出てきたもの。
怒りながらスマホを取り出すダンテを横目に、少しだけホッとしたのも束の間。
ドオオオオン!
地響きを伴う轟音。
どこかへと追突しガソリンに引火したのか、あのトラックが周りを巻き込み爆発したようだった。
人々の声がそれを物語っている。
「おいおい今度は何だよ!」
ここから見える通り沿いに黒煙があがっている。何かから逃げ惑う人々の悲鳴も聞こえる。化け物、という叫び声も。
「ちっ、サツに連絡してる場合じゃないな。
ここにいても危険そうだ。ディーヴァ逃げるぞ、家まで走ろう!」
「ここから出る!?嫌だ、怖い!この状態で走るなんてあたしには無理……!怖くて足が動かない!」
化け物。ああ、やっぱり悪魔!
なんてこと。夢の中からあたしを追って出てきたんだ。
怖くて怖くて、動けない……!
「馬鹿!こんなとこいる方が危険だろが!この勢いだとその内ここまで火の手が回るぞ」
伸ばされた手をそっと掴む。
まだあたしと同じように、色のついたダンテの手のひら。
動きの悪い足に叱咤し、手を取って一歩踏み出した時だ。
ダンテの微笑みが、一瞬にして消えた。
「がは……っ」
口から血を吐き出し、その体はぐらりと傾き倒れていく。
その背には、ぽっかりと穴が空いていた。
流れる血に沈む体。血に染まる衣服、地面。あたしにもその血が飛び散った。
ひどい鉄の匂いとぬるりとした独特の生温かさ。
「え……?……ダ、ンテ?……うそ、うそ……っ!?」
そしてダンテが倒れたその後ろには、あの悪魔の姿。
血に濡れた武器の先端には、愛する人の体の中心に収まっていたであろう……。
「ウッ……」
それがなんであるか理解した瞬間、吐き気に襲われた。
悲しみよりも悔しさよりも先に、耐えられぬ恐怖と嫌悪感がやってくる。
吐いている暇はない。吐き戻すのはなんとか我慢できた。
ダンテの亡骸をその場に残し、あたしは弾かれたように、とうとう走り出すことが出来た。
ごめん、ごめんねダンテ。もっとはやくあたしが逃げていれば……。
安全だと思われた場所から逃げてきた道では、仮面をかぶったあの悪魔がそこかしこで人間を襲っていた。
口から炎を吐くこともできるのか、爆発したトラックだけでなく街の至る所で火の手があがっている!
色のない世界の中、舐めるように燃え上がる炎も赤く、赤く染まっている。
人々の血もまた、色鮮やかな紅い花のように咲いていた。
「ああそんな……」
ガクガクとすくむ足を叱咤して、逃げ道を探す。悪魔があたしに気がつかないようにゆっくり、でも素早い移動を繰り返しながら。
その肩に、手が置かれた。
「ディーヴァ、」
「!?ダンテ、生きてた、の…………?
ヒッ!」
ダンテだった。
けれど、それはもうダンテじゃなかった。
胸に空いた穴からは未だ血が流れ、ダンテがもう生きている人間とは異なる何かだとわかる。
目は悪魔と同じように赤く光り、どんよりと濁っていた。
「やだ、近づかないで……!」
振り払って後ずさり。
「近づかないで?オレを怖がるなんてひどいぜ……。なんで離れる?ずっと一緒だと約束したばかりじゃないか。
一緒になろうぜ。オレの中で」
獲物を狙うようなダンテの目が、こちらをギョロリと凝視していた。開いた口からは、牙のようなものが見えてごぼりと流れる血で赤く光る。
生きてもいない。もはや、人間ではない。悪魔そのもの。
いつか見たアンデッドやモンスターの出る映画のような見た目の、愛する人だったもの。
ダンテがゆらゆらと体を揺らしながら近づいてくる。
「あ……いや、いやぁぁぁあ!」
あたしはなりふり構わず走り出した。
ああ、最初にこの足が動いていたら何か変わったかもしれないのに。
ダンテも、あんなことにはならなかったのに。
悪魔も天使も、何もないはずの世界だったのになんでこんなことに。
どこをどう通ったのか覚えていない。
炎に包まれる街並みと阿鼻叫喚の渦の中、気がつけばあたしが立っていたのは自宅の前だった。
「た、ただ……いま……」
焦り、玄関に滑り込む自分から漏れるのは、掠れきって小さい声。ホッとしてへたりこんだけど、そこで気がつく。
おかしい。
なんで、おかえりって言ってくれるママの声がしないの。
たしかにあたしの声は小さかった。けれど、玄関の扉が開く音は聞こえたはず。
今日はパパもお休みだから、この時間は書斎かリビングにいるはず。靴もあるし、お兄ちゃんも大学が休講だったから、家にいるはずなのに。
ママだって専業主婦だし家にいるはずでしょ?
鼻に届く、先程嗅いだものと同じにおい。鉄錆のにおい。
ダンテの血の匂いを、あたしの鼻はしっかりと覚えている。
匂いフェチではあるけれど、鼻が利くというわけじゃない。なのにここまでそのにおいが届くということは。
……あまり考えたくない。