mission 22:old enemy ~VS魔帝~ 前編
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「悪魔と人間のハーフなダンテと、天使の血をひいた人間なあたしが出会うところから始まるの。
わるい悪魔に食べられちゃうところだったあたしを、助けてくれたのがダンテだった」
「へー。悪魔は天使を食べるんだな」
「悪魔のご馳走らしいよ」
「なのに天使の血をひいたディーヴァを助けるってか、さすがオレ。ディーヴァのことが大好きなだけあるぜ」
「うん、ありがたいことだよね。
その時からあたしは天涯孤独の身の上になったんだけど、色々あってダンテと一緒に暮らし始めて。暮らす中では山あり谷ありのいろんな苦難があった。
痛い思いをしたのも、一度や二度じゃない。その中には悲しい出来事も、幸せな出来事もたっくさんあった。
リアルで何年もの時を過ごしてきたって感じがする」
あれは何年間だったんだろう。
十年には満たないかもしれない。でもそれくらい長く感じた。
「なるほどね、だから長い夢か。あの短時間の居眠りの間にねぇ……大河ドラマもびっくりの壮大さだな」
「そうだね。大河ドラマ並みだったよ。
そんな折、あたしは魔界の王様に連れ去られたの」
その途端、吹き出すダンテ。
「魔界の王様!いよいよファンタジーらしくなってきたもんだ!」
「もうっ!茶化すの禁止!」
「ごめんごめん、ディーヴァは真面目に話してんだもんな」
「まったく……。
連れ去られた先で、あたしは酷いことを、拷問をいっぱいいっぱい受けて……すごく、すごーく痛い思いと苦しい思いをした。
血をね、たっくさん抜き取られて、寒くて寒くて。とっても怖くって……」
思い出すだけで、寒さが蘇る。心臓が凍っていくかのよう。
ああ、絶望ってこういう物なんだ。
「血をとられる……採血みたいにか」
「採血どころじゃないよ!全身に食い込んだ荊の棘で、じゅるじゅるじゅる~って木の根が水を吸い上げるみたいな感じ」
「うっわ、痛そう……」
「ダンテはあたしを助けに絶対、ぜーったい来てくれたはずなんだけど、あたしは……」
「ディーヴァは?どうしたんだ?」
あれ、どうなったんだっけ。
「……あたしが覚えてるのはここまで。
あたしは、殺されたのかもしれない。死んじゃったのかもしれない」
あっけない最期。悪魔に食べ尽くされて骨も残っていないかもしれない。
あの世界では天使は悪魔の獲物であり、あたしは誰かに守ってもらわなければならないほどに弱い、弱い存在だったから。
「大丈夫だ。ここにはお前を害するやつはいない。悪魔も天使も、そんなの小説やゲームの中の話だ。現実じゃない。
ま、ディーヴァはオレだけの天使だけどな〜?」
「まーたそんなこと言って」
最後の軽口さえなければすごくかっこよかったのに。……そう言ってもらえて、ホントは嬉しいけどさ。
「ただの夢だ。忘れちまえ」
ぽんぽんと、優しく頭を叩かれる。
「夢のオレは間に合ったかどうかわからないけど、今ここにいるオレはお前から離れない。
お前とオレはこの先もずっと一緒だ」
「う、ん……」
でも、この夢には特別な意味があるような気がする。
忘れてはいけないような、そんな気がする。
「あ。そういえば、ダンテは二十歳を越えてもかっこよかったよ」
「あー。何年も一緒にいたってことは、それくらいの年齢のオレも見たに決まってるからな。かっこいいのはオレだから当たり前だ。
でもそうか……ディーヴァと長年一緒にか……夢の自分に嫉妬しちまうな」
「一番好きなのは、今ここであたしのお話を聞いてくれているダンテだよ」
指を絡ませて見つめれば、微笑みが降ってきた。
「嬉しいよ。
……んで。オレとのアッチの方はどうなってたんだ?」
「アッチって……あっ!やだそんなこと聞く!?教えなーい!」
「とんでもないことされたんだな!?
くそっ!やっぱ嫉妬するぜ……!」
嫉妬心を発散させるかのように、ダンテは繋いだ手をブンブンと振ってきた。
ひとどおりの少ない交差点に差し掛かる。
あと数分歩けば、お互いの家がある住宅街に入る。
歩行者用の信号機が青に変わるのを待っていれば、午後5時を告げるとおりゃんせの曲が聞こえてきた。
良い子はおうちに帰りましょう、そう呼びかける街のチャイム。
ああ、もうそんな時間か。
どこか優しくてちょっぴり怖い、黄昏を告げる懐かしいメロディ。
……懐かしい?本当に?
今までこんな曲を聴いたことなんてあったっけ。
緩やかなメロディで思いだすのは、ダンテ達双子を思ってダンテのお母さんが歌ったあの……。
『ディーヴァ!起きろ!!いつまでそうしてやがる……!帰るぞ!』
世界に声が響き渡った。でも隣のダンテには聞こえないみたい。
この声はダンテと同じだけど同じじゃない。
じゃあ、誰なんだろう。この世界の外側から聞こえてる……?
行きはよくても、帰りは。
あたしが本当に帰るべき場所は、悪魔はびこる恐ろしい場所。
忘れちゃいけない。
あたしは。あたしには。帰るべき場所がある。
あれは夢じゃない。
夢なのは。
幻なのは。
目の前のこの世界なのでは?
そう思った瞬間だった。
色を持っていた世界が突如灰色に包まれる。
「えっ」
道ゆく人の服も、この街の家屋も、空も。
全てが灰色。色がついているのは、あたしたちだけ。
あたしがこの世界から取り残されているのは、偽りの世界だなんて思ってしまったから……?
「ディーヴァ、危ない!」
その言葉に声の方へ顔をあげれば、大きなトラックが突っ込んで来るのが視界に映る。
暴走?ううん。明確にこちらを狙って爆走してくる!
トラックを運転しているのは、何?人間には見えない。
運転席を陣取るのは、心を持たぬ薄気味悪い生物。
「アレは一体なんだ……!?」
あれは、夢の中にも出て来た人形の悪魔だ。
上位種なのか、その姿形はフェティッシュと呼ばれる種類の者。
フロントガラス越し。仮面で遮られて表情の読み取れない悪魔と目が合う。表情は見えないはずなのに、ニタリと笑ったように感じた。
ああ、恐怖が足にまとわりつく。足がすくんで動けない。
「何やってる!逃げるぞ!!」
体を引っ張られる感覚。あたしはダンテに手を引かれ転びそうになって初めて、足を動かすことができた。
「くそ、追ってくる……!なんなんだよ……っ」
あたしを轢き殺そうと迫るトラックからは、逃げられるかどうかわからない。
あああ……この世界も怖いところだったのね。
どうして、あたしの行く所はこんなにも恐ろしい場所ばかりなの。
あたしは逃げられないの?
悪魔から。恐怖から。
わるい悪魔に食べられちゃうところだったあたしを、助けてくれたのがダンテだった」
「へー。悪魔は天使を食べるんだな」
「悪魔のご馳走らしいよ」
「なのに天使の血をひいたディーヴァを助けるってか、さすがオレ。ディーヴァのことが大好きなだけあるぜ」
「うん、ありがたいことだよね。
その時からあたしは天涯孤独の身の上になったんだけど、色々あってダンテと一緒に暮らし始めて。暮らす中では山あり谷ありのいろんな苦難があった。
痛い思いをしたのも、一度や二度じゃない。その中には悲しい出来事も、幸せな出来事もたっくさんあった。
リアルで何年もの時を過ごしてきたって感じがする」
あれは何年間だったんだろう。
十年には満たないかもしれない。でもそれくらい長く感じた。
「なるほどね、だから長い夢か。あの短時間の居眠りの間にねぇ……大河ドラマもびっくりの壮大さだな」
「そうだね。大河ドラマ並みだったよ。
そんな折、あたしは魔界の王様に連れ去られたの」
その途端、吹き出すダンテ。
「魔界の王様!いよいよファンタジーらしくなってきたもんだ!」
「もうっ!茶化すの禁止!」
「ごめんごめん、ディーヴァは真面目に話してんだもんな」
「まったく……。
連れ去られた先で、あたしは酷いことを、拷問をいっぱいいっぱい受けて……すごく、すごーく痛い思いと苦しい思いをした。
血をね、たっくさん抜き取られて、寒くて寒くて。とっても怖くって……」
思い出すだけで、寒さが蘇る。心臓が凍っていくかのよう。
ああ、絶望ってこういう物なんだ。
「血をとられる……採血みたいにか」
「採血どころじゃないよ!全身に食い込んだ荊の棘で、じゅるじゅるじゅる~って木の根が水を吸い上げるみたいな感じ」
「うっわ、痛そう……」
「ダンテはあたしを助けに絶対、ぜーったい来てくれたはずなんだけど、あたしは……」
「ディーヴァは?どうしたんだ?」
あれ、どうなったんだっけ。
「……あたしが覚えてるのはここまで。
あたしは、殺されたのかもしれない。死んじゃったのかもしれない」
あっけない最期。悪魔に食べ尽くされて骨も残っていないかもしれない。
あの世界では天使は悪魔の獲物であり、あたしは誰かに守ってもらわなければならないほどに弱い、弱い存在だったから。
「大丈夫だ。ここにはお前を害するやつはいない。悪魔も天使も、そんなの小説やゲームの中の話だ。現実じゃない。
ま、ディーヴァはオレだけの天使だけどな〜?」
「まーたそんなこと言って」
最後の軽口さえなければすごくかっこよかったのに。……そう言ってもらえて、ホントは嬉しいけどさ。
「ただの夢だ。忘れちまえ」
ぽんぽんと、優しく頭を叩かれる。
「夢のオレは間に合ったかどうかわからないけど、今ここにいるオレはお前から離れない。
お前とオレはこの先もずっと一緒だ」
「う、ん……」
でも、この夢には特別な意味があるような気がする。
忘れてはいけないような、そんな気がする。
「あ。そういえば、ダンテは二十歳を越えてもかっこよかったよ」
「あー。何年も一緒にいたってことは、それくらいの年齢のオレも見たに決まってるからな。かっこいいのはオレだから当たり前だ。
でもそうか……ディーヴァと長年一緒にか……夢の自分に嫉妬しちまうな」
「一番好きなのは、今ここであたしのお話を聞いてくれているダンテだよ」
指を絡ませて見つめれば、微笑みが降ってきた。
「嬉しいよ。
……んで。オレとのアッチの方はどうなってたんだ?」
「アッチって……あっ!やだそんなこと聞く!?教えなーい!」
「とんでもないことされたんだな!?
くそっ!やっぱ嫉妬するぜ……!」
嫉妬心を発散させるかのように、ダンテは繋いだ手をブンブンと振ってきた。
ひとどおりの少ない交差点に差し掛かる。
あと数分歩けば、お互いの家がある住宅街に入る。
歩行者用の信号機が青に変わるのを待っていれば、午後5時を告げるとおりゃんせの曲が聞こえてきた。
良い子はおうちに帰りましょう、そう呼びかける街のチャイム。
ああ、もうそんな時間か。
どこか優しくてちょっぴり怖い、黄昏を告げる懐かしいメロディ。
……懐かしい?本当に?
今までこんな曲を聴いたことなんてあったっけ。
緩やかなメロディで思いだすのは、ダンテ達双子を思ってダンテのお母さんが歌ったあの……。
『ディーヴァ!起きろ!!いつまでそうしてやがる……!帰るぞ!』
世界に声が響き渡った。でも隣のダンテには聞こえないみたい。
この声はダンテと同じだけど同じじゃない。
じゃあ、誰なんだろう。この世界の外側から聞こえてる……?
行きはよくても、帰りは。
あたしが本当に帰るべき場所は、悪魔はびこる恐ろしい場所。
忘れちゃいけない。
あたしは。あたしには。帰るべき場所がある。
あれは夢じゃない。
夢なのは。
幻なのは。
目の前のこの世界なのでは?
そう思った瞬間だった。
色を持っていた世界が突如灰色に包まれる。
「えっ」
道ゆく人の服も、この街の家屋も、空も。
全てが灰色。色がついているのは、あたしたちだけ。
あたしがこの世界から取り残されているのは、偽りの世界だなんて思ってしまったから……?
「ディーヴァ、危ない!」
その言葉に声の方へ顔をあげれば、大きなトラックが突っ込んで来るのが視界に映る。
暴走?ううん。明確にこちらを狙って爆走してくる!
トラックを運転しているのは、何?人間には見えない。
運転席を陣取るのは、心を持たぬ薄気味悪い生物。
「アレは一体なんだ……!?」
あれは、夢の中にも出て来た人形の悪魔だ。
上位種なのか、その姿形はフェティッシュと呼ばれる種類の者。
フロントガラス越し。仮面で遮られて表情の読み取れない悪魔と目が合う。表情は見えないはずなのに、ニタリと笑ったように感じた。
ああ、恐怖が足にまとわりつく。足がすくんで動けない。
「何やってる!逃げるぞ!!」
体を引っ張られる感覚。あたしはダンテに手を引かれ転びそうになって初めて、足を動かすことができた。
「くそ、追ってくる……!なんなんだよ……っ」
あたしを轢き殺そうと迫るトラックからは、逃げられるかどうかわからない。
あああ……この世界も怖いところだったのね。
どうして、あたしの行く所はこんなにも恐ろしい場所ばかりなの。
あたしは逃げられないの?
悪魔から。恐怖から。