mission 22:old enemy ~VS魔帝~ 前編
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「……ディーヴァ、ディーヴァ?」
名前を呼ぶ声が聞こえた。
重い瞼を開けて最初に見えたのは、青い双眸に映るあたしの姿。
銀髪に青い目。あたしの彼氏、ダンテが心配そうに、でも呆れたように顔を覗き込んでいた。
「あ、ごめん。ちょっとうたたねしちゃってたみたい」
「なかなか起きないからどうかしたかと思った。
……お、ついたな。降りるぜ」
車内放送で、良く知った駅の名前が繰り返される。ちょうど最寄りの駅に到着したところのようだった。
「ふあぁ~」
「でっけぇ欠伸」
手で覆うことも忘れ、大きく開けてしまった口にダンテが指を入れようとしてくる。邪魔なその指噛みちぎっちゃうよ?
改札を抜け夕暮れ時の歩道を歩きながら、先ほどまで見ていた夢を思い出す。
夢と現実が混じり合う感覚。
起きた瞬間も背景が電車の中でなければ、ダンテが制服に身を包んでいなければ……。未だ夢の続きだと思い込んでいたかもしれない。
隣を上機嫌で歩くダンテの横顔を見ながら、短く息を漏らす。
あら、ダンテには聞こえない程度に小さく、あたしのお腹の虫が鳴った。
「ん。浮かない顔してどした?」
「変な夢見た。あと寝起き最悪なせいでお腹すいた」
「寝起き最悪なのと腹減ってるのはまったく関係ないだろうよ」
あたしが見た、ファンタジーな設定に近いその夢の内容を掻い摘んで話す。
だがダンテはそれを軽やかに笑い飛ばした。……もう、笑い事じゃないのに。
「ハハハ!現実的じゃないな!白昼夢ってやつか?」
「や、実際にあたし寝てたからただの悪夢だと思う。でもどこかリアルで……痛みも苦しみもあった。
眠りから覚めた今でも、このへんが苦しく感じるくらい」
心臓の鼓動が弱くなっていく息苦しさは本物で。
今も痛みが鈍く続いている錯覚がある。
けれど実際に擦ってみると何ともない。ああ、よかった。
「ふーん。その痛み、オレが気持ちのイイもんに変えてやろうか?」
ダンテはニヤニヤしながら、あたしの胸をムニと指でつついてきた。
悪さをしてくる手の甲に思い切り爪を立てる。
「セクハラ禁止」
「いってー!」
あれ?こんな爪痕はダンテならすぐに治るのに。って、ああそっか。あたしったらまだ夢と混同しているのね。
「ちぇ。腹減ってるとそうやってすーぐ機嫌悪くなる。その機嫌と腹の虫を落ち着かせるためにも、なんか買い食いしてこうぜ」
そう言って入ったコンビニ。レジ前のケースに並ぶほかほかの中華まんがおいしそうだ。
そんなに寒くはない時期のはずだけど、おかしいくらい寒く感じているからか、余計おいしそうに輝いて見える。
「中華まんか。オレもそれにしよ。ディーヴァは何にするんだ」
「あたしピザまん」
「よく見ろピザまんは一個しかないだろ。オレの好物を盗る気か」
「変換おかしい。ピザまんにはチーズたっぷり入ってるのよ。あたしからチーズ奪う気?」
「いくらディーヴァの頼みでもだめー」
「ケチ!じゃあ二倍サイズの特選肉まんにするからいいですよーっだ。あ、ダンテのおごりね」
「まじかよ」
と、まあ。好物についての小さい小競り合いがあったが、やっと食べ物にありつけた。
帰り道でのおやつってなんでこんなに美味しいんだろうね。疲れているからかな。それとも帰り道にこっそりと、っていう背徳感を胸に好きな人と一緒に食べてるからかな。
「そういえばこうやってダンテと寄り道して、何か食べて帰るのは二回目だよね」
「何言ってんだ、買い食いなんて毎回の事だろ」
「……そうだっけ?」
おかしい。頭の中に靄がかかってるみたい。
両親や兄、友人達の顔は思いだせるのに、この町で育ってきたという思い出だけがすっぽり抜け落ちたかのようだ。
ダンテと帰りにおやつ食べるデートしたのなんて、ダンテがあたしの高校に潜入した時以来……ん?潜入ってなんだっけ。
「またそんな顔してどしたよ」
難しい顔をしていたみたい。眉間に皺が寄ったようで目の上が疲れている。
眉間の皺……。ダンテには確か双子の兄がいた気がする。でも、ここでの思い出の中にはその姿すらもない。存在しているはずなのに。
「ねえ……ダンテの双子のお兄ちゃんって同じ学校だったっけ」
「はー!?なんのこっちゃ?オレは一人っ子だろ。幼馴染で彼女のお前はオレの家族構成くらいよく知ってるだろうが。
さ、これでも食べて元気出せよ」
半分に割られたピザまんのふかふかした外側が、あたしの頬にぴとっ!
そのまま手渡された。
あ。あたしの大好きなチーズが多いところだ。
「言っておくけど、あたし食べ物で回復するような単純な性格はしてないんだからね?でももらう。
うん美味しい!」
「結局受け取るあたり十分にそういう性格してると思うぞ」
ダンテに貰ったピザまんの代わりに、あたしの肉まんを半分渡す。もちろん割ってみて大きい方があたしが食べる!
だってお腹はまだ大合唱。欲張りだもの。
「お前ってほーんと、美味そうに食べるよなぁ」
「美味しいもの食べてる時は顔に出るの当たり前」
「あっそ。……お、ついてたぜ。ったく、子供みたいなやつだな」
中華まんの皮がついていたみたいで、ダンテが取ってくれた。
ダンテって同い年、同じ学年、同じクラス……だよね。なんでお兄ちゃんみたいに、頼りになる男性に見えるんだろう。
あたしを見つめる表情は、保護者のようで守護者のよう。
ううん。気のせい気のせい。
「ありがとう。また食べようね!」
「また次があればな」
次がないかもしれないっていうのは、きっと中華まんがなくなるって意味よね。
この辺のコンビニ中華まんの売り出し期間はそう長くないし。
「で、どんな夢だったんだよ」
「聞いてくれるの?」
「悪夢は人に話すといいって聞いたぜ。
それに、ディーヴァは悩むほどにその悪夢が苦しくて恐ろしいんだろ?オレにもその苦しみを分けてくれ」
さっきは聞き流してごめん。と謝って来たダンテ。
徐々に伸びていく自分の影を追いかけるように帰り道を歩きながら、あたしは夢の内容を掻い摘んでではなく、詳しくダンテに伝えた。
「すごく、すごく長い夢だった」
名前を呼ぶ声が聞こえた。
重い瞼を開けて最初に見えたのは、青い双眸に映るあたしの姿。
銀髪に青い目。あたしの彼氏、ダンテが心配そうに、でも呆れたように顔を覗き込んでいた。
「あ、ごめん。ちょっとうたたねしちゃってたみたい」
「なかなか起きないからどうかしたかと思った。
……お、ついたな。降りるぜ」
車内放送で、良く知った駅の名前が繰り返される。ちょうど最寄りの駅に到着したところのようだった。
「ふあぁ~」
「でっけぇ欠伸」
手で覆うことも忘れ、大きく開けてしまった口にダンテが指を入れようとしてくる。邪魔なその指噛みちぎっちゃうよ?
改札を抜け夕暮れ時の歩道を歩きながら、先ほどまで見ていた夢を思い出す。
夢と現実が混じり合う感覚。
起きた瞬間も背景が電車の中でなければ、ダンテが制服に身を包んでいなければ……。未だ夢の続きだと思い込んでいたかもしれない。
隣を上機嫌で歩くダンテの横顔を見ながら、短く息を漏らす。
あら、ダンテには聞こえない程度に小さく、あたしのお腹の虫が鳴った。
「ん。浮かない顔してどした?」
「変な夢見た。あと寝起き最悪なせいでお腹すいた」
「寝起き最悪なのと腹減ってるのはまったく関係ないだろうよ」
あたしが見た、ファンタジーな設定に近いその夢の内容を掻い摘んで話す。
だがダンテはそれを軽やかに笑い飛ばした。……もう、笑い事じゃないのに。
「ハハハ!現実的じゃないな!白昼夢ってやつか?」
「や、実際にあたし寝てたからただの悪夢だと思う。でもどこかリアルで……痛みも苦しみもあった。
眠りから覚めた今でも、このへんが苦しく感じるくらい」
心臓の鼓動が弱くなっていく息苦しさは本物で。
今も痛みが鈍く続いている錯覚がある。
けれど実際に擦ってみると何ともない。ああ、よかった。
「ふーん。その痛み、オレが気持ちのイイもんに変えてやろうか?」
ダンテはニヤニヤしながら、あたしの胸をムニと指でつついてきた。
悪さをしてくる手の甲に思い切り爪を立てる。
「セクハラ禁止」
「いってー!」
あれ?こんな爪痕はダンテならすぐに治るのに。って、ああそっか。あたしったらまだ夢と混同しているのね。
「ちぇ。腹減ってるとそうやってすーぐ機嫌悪くなる。その機嫌と腹の虫を落ち着かせるためにも、なんか買い食いしてこうぜ」
そう言って入ったコンビニ。レジ前のケースに並ぶほかほかの中華まんがおいしそうだ。
そんなに寒くはない時期のはずだけど、おかしいくらい寒く感じているからか、余計おいしそうに輝いて見える。
「中華まんか。オレもそれにしよ。ディーヴァは何にするんだ」
「あたしピザまん」
「よく見ろピザまんは一個しかないだろ。オレの好物を盗る気か」
「変換おかしい。ピザまんにはチーズたっぷり入ってるのよ。あたしからチーズ奪う気?」
「いくらディーヴァの頼みでもだめー」
「ケチ!じゃあ二倍サイズの特選肉まんにするからいいですよーっだ。あ、ダンテのおごりね」
「まじかよ」
と、まあ。好物についての小さい小競り合いがあったが、やっと食べ物にありつけた。
帰り道でのおやつってなんでこんなに美味しいんだろうね。疲れているからかな。それとも帰り道にこっそりと、っていう背徳感を胸に好きな人と一緒に食べてるからかな。
「そういえばこうやってダンテと寄り道して、何か食べて帰るのは二回目だよね」
「何言ってんだ、買い食いなんて毎回の事だろ」
「……そうだっけ?」
おかしい。頭の中に靄がかかってるみたい。
両親や兄、友人達の顔は思いだせるのに、この町で育ってきたという思い出だけがすっぽり抜け落ちたかのようだ。
ダンテと帰りにおやつ食べるデートしたのなんて、ダンテがあたしの高校に潜入した時以来……ん?潜入ってなんだっけ。
「またそんな顔してどしたよ」
難しい顔をしていたみたい。眉間に皺が寄ったようで目の上が疲れている。
眉間の皺……。ダンテには確か双子の兄がいた気がする。でも、ここでの思い出の中にはその姿すらもない。存在しているはずなのに。
「ねえ……ダンテの双子のお兄ちゃんって同じ学校だったっけ」
「はー!?なんのこっちゃ?オレは一人っ子だろ。幼馴染で彼女のお前はオレの家族構成くらいよく知ってるだろうが。
さ、これでも食べて元気出せよ」
半分に割られたピザまんのふかふかした外側が、あたしの頬にぴとっ!
そのまま手渡された。
あ。あたしの大好きなチーズが多いところだ。
「言っておくけど、あたし食べ物で回復するような単純な性格はしてないんだからね?でももらう。
うん美味しい!」
「結局受け取るあたり十分にそういう性格してると思うぞ」
ダンテに貰ったピザまんの代わりに、あたしの肉まんを半分渡す。もちろん割ってみて大きい方があたしが食べる!
だってお腹はまだ大合唱。欲張りだもの。
「お前ってほーんと、美味そうに食べるよなぁ」
「美味しいもの食べてる時は顔に出るの当たり前」
「あっそ。……お、ついてたぜ。ったく、子供みたいなやつだな」
中華まんの皮がついていたみたいで、ダンテが取ってくれた。
ダンテって同い年、同じ学年、同じクラス……だよね。なんでお兄ちゃんみたいに、頼りになる男性に見えるんだろう。
あたしを見つめる表情は、保護者のようで守護者のよう。
ううん。気のせい気のせい。
「ありがとう。また食べようね!」
「また次があればな」
次がないかもしれないっていうのは、きっと中華まんがなくなるって意味よね。
この辺のコンビニ中華まんの売り出し期間はそう長くないし。
「で、どんな夢だったんだよ」
「聞いてくれるの?」
「悪夢は人に話すといいって聞いたぜ。
それに、ディーヴァは悩むほどにその悪夢が苦しくて恐ろしいんだろ?オレにもその苦しみを分けてくれ」
さっきは聞き流してごめん。と謝って来たダンテ。
徐々に伸びていく自分の影を追いかけるように帰り道を歩きながら、あたしは夢の内容を掻い摘んでではなく、詳しくダンテに伝えた。
「すごく、すごく長い夢だった」