mission 21:inside devil's body ~蠢く胎内にて~
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「えっ」
なぜに、あたしは抱き上げられてるんでしょうか?
びっくりしてバージルのコートの胸元の近くをむぎゅっと掴んでしまった。
「ディーヴァ、悪いが手はそこではなく首に回せ」
「えっ、あ……うん。ごめんなさい」
よかった。手を離しても美しい装飾のコートには皺ひとつつかなかった。
それどころか手に触れたこのビロード生地の滑らかさ……癒されるぅ〜。ずっと触っていたい。
あたしはいつから布フェチになったんだろう。
「なんでオレのディーヴァを抱き上げてる。今すぐ返せ」
「断る。ここからは俺がディーヴァを連れて行くことにした」
「…………はあ?
それはオレの役割だぜ。すっこんでろよバージル」
バージルの顔が怖いけど、ダンテの顔も怖い。怖い怖い怖い。
なんで二人ともそこまで怖い顔してるの。あたし自分で歩けるよ!
……でも怖くて言える雰囲気じゃない。お口チャックで二人を見守る役に徹する。
「寄るなダンテ!」
「……ッ!」
痺れを切らし伸ばされたダンテの手を、バージルが思い切り跳ね除けた!
そして器用にもあたしの事を一本の腕で支え、次の部屋へ繋がる弁膜を刀で切り刻んで開放する。
バージルがダンテの方へ振り向くと同時に、あたしの顔はバージルの胸元へと押し付けられた。
んむ、ちょっと苦しい。
でも嫌じゃない。なぜだかあたしの身を案じている。ということが伝わってくるから。
「貴様がしたのはなんだ?あの状況を放置しようとした奴にディーヴァは任せられん」
「一瞬だけだ」
「たわけ!普通ならば一瞬だろうとも考えつかん!!」
一瞬だけ。その言葉が癪に触ったのかバージルはあたしの事を一度おろすと、ダンテの前に歩いていき胸ぐらを掴んだ。
その拳がダンテの横面に思い切りめり込んだ。
「ぐっ……!」
あたしが殴られたわけじゃないのに、その衝撃を前にして縮み上がる。
同時にダンテを殴ったバージルから、魔人化もかくやの怒気が立ち登るのが見えた。
さっきもそう。でもさっきよりも怖い。
怖くて口出しどころか、息をすることさえできなかった。
どっちの味方していいかもわからない。
半分悪魔の怒りは恐ろしい。自分が怒られているわけじゃなくても、怒りの矛先が自分にも向いてしまうんではないか。
そう思わせる何かがあった。
「そんな状態でよくもまあ、恋人だなんだと胸を張れたものだ……」
地獄の底から響いてくるような低い声。
冷たく肌を刺すような怒りが部屋の温度を著しく下げるよう。
バージルって氷属性の武器も持っていたっけ?
「人間界にいた期間が短いアンタにはわからないかもしれないけどな、時に男のロマンは最優先にすべきものなんだ……よっ!」
「ッーー!ロマンくらいわかる。
俺は!今やるなと言っているのだッ!」
倒れた姿勢から腹筋だけで立ち上がったダンテが、バージルに掴みかかる。
ダンテの右ストレートがバージルの頬を打った。
片眼鏡から覗く鋭い目。打たれながらもダンテから目を逸らさなかったバージルが、踏ん張ってダンテの肩を掴みあげた。
ドパァン!
地の底まで揺れるような轟音がダンテとバージルから聞こえた。
お互いが石頭なのに、強烈な頭突きで相手の頭をかち割ろうとした結果だった。
血飛沫が宙を舞い、地に落ちる。
立ち止まっていると地面から噛み付いてくるトラバサミのような悪魔の口も、空気を読んだのかここには現れてこないほどの険悪な雰囲気。
お互い邪魔な武器の一切を放り投げ、身一つで拳をぶつけ合う。
取っ組み合い殴り合いの兄弟喧嘩だ。
止めるべき?いや、今の状態は怒声が飛び交っていて声も届かなさそうだ。
下手なことをすれば巻き込まれそうだし、あれが一発当たるだけであたしは天国行きだろう。
何もできない。
「状況を!考えろッ!
俺があと少し遅れていたらディーヴァは死ぬところだった!貴様が躊躇したせいでな!」
「くっ……!あれを見ないのは逆にディーヴァに失礼だろ!
あと数秒くらい持つっての!オレの女だぞそれくらい我慢できなくてどうするんだ……よっ!」
完全な肉弾戦。
ダンテが拳を振るえばバージルが腕でガードし、バージルが拳を振るえばダンテがガードする。
拳と拳がぶつかり合い、避けきれなかった拳が二人の顔に、体に傷を増やす。
あまり見たくないので目を閉じれば、代わりに耳に届く言葉たち。
見ない?失礼?さっぱりわからない。
さっぱりを連呼する妖精に進化しそうだ。
「己が欲望に忠実なのは悪魔の特性だ……。が、場を弁えろ!
ディーヴァに我慢が効くと思うか!?あれは悪魔の血のものではない!天使だぞ……!はあっ!」
「ぐッ!?てめ、卑怯だぜバージル……」
振るった右腕をお互い左手で掴み、押し合う。
バージルがダンテの怪力に押し負ける、と思いきやバージルが開いた長いその脚を使い、ダンテを足払いしてそのまま壁の端まで蹴り飛ばした。
打ちどころ悪く頭から血をダラダラと流すダンテ。
それを気にせずに立ち上がりバージルに向かって笑みすら浮かべてみせた。
「ディーヴァのことはもちろん大切だ。死なせやしない。
けどよ、ちょーっと熱くなりすぎだぜバージル。頭冷やすのはアンタのほうじゃねぇか?ン?」
自分の頭をトントンとこづいてバージルを見、挑発する。
ダンテからの挑発が相手だと、バージルはそれに簡単にノる。
「このたわけが……死なねばわからないなら魔帝の前に貴様も冥土に送ってやるぞ……」
だがノるのレベルが違いすぎた。
離れていても肌がぴりぴりする。
大気が渦巻く。大気と言われるほどの広さも空気もないけれど、この狭い空間に強大な悪魔の気配が現れる。
出所はバージル。
彼の体が一瞬、青い魔人の姿に変わったのが見えた。
「ちょ、待て待て。アンタ今の状態わかってんのか?
その魔力量じゃ魔人化は無理だ。やめとけ」
まだ魔力が回復しきっていないバージル。
そんなバージルが魔人化しても、体がもたない。
いつもならすぐにダンテに飛んでくるはずの幻影剣が、再会してから一度も放たれていないのが何よりの証拠。
「黙れ。半分が人間なら、いつどこで何を優先すべきかくらいわかるだろうがッ!」
電気の束が弾けるような音が響く。
一瞬。ほんの一瞬だけ止まった時の中、バージルがダンテの頭に鋭い踵落としを決め、そこからさらに顎へと強烈なアッパーを入れるのがあたしには見えてしまった。
「っってぇ〜〜。
魔人化するフリかよ……」
動き出す刻の中、吹っ飛んで大の字で寝ていたダンテが顎をさすりながら起き上がる。
うん。鐘をついたようなすっごいいい音したもんね。痛そう。
ダンテの顎割れてない?
なぜに、あたしは抱き上げられてるんでしょうか?
びっくりしてバージルのコートの胸元の近くをむぎゅっと掴んでしまった。
「ディーヴァ、悪いが手はそこではなく首に回せ」
「えっ、あ……うん。ごめんなさい」
よかった。手を離しても美しい装飾のコートには皺ひとつつかなかった。
それどころか手に触れたこのビロード生地の滑らかさ……癒されるぅ〜。ずっと触っていたい。
あたしはいつから布フェチになったんだろう。
「なんでオレのディーヴァを抱き上げてる。今すぐ返せ」
「断る。ここからは俺がディーヴァを連れて行くことにした」
「…………はあ?
それはオレの役割だぜ。すっこんでろよバージル」
バージルの顔が怖いけど、ダンテの顔も怖い。怖い怖い怖い。
なんで二人ともそこまで怖い顔してるの。あたし自分で歩けるよ!
……でも怖くて言える雰囲気じゃない。お口チャックで二人を見守る役に徹する。
「寄るなダンテ!」
「……ッ!」
痺れを切らし伸ばされたダンテの手を、バージルが思い切り跳ね除けた!
そして器用にもあたしの事を一本の腕で支え、次の部屋へ繋がる弁膜を刀で切り刻んで開放する。
バージルがダンテの方へ振り向くと同時に、あたしの顔はバージルの胸元へと押し付けられた。
んむ、ちょっと苦しい。
でも嫌じゃない。なぜだかあたしの身を案じている。ということが伝わってくるから。
「貴様がしたのはなんだ?あの状況を放置しようとした奴にディーヴァは任せられん」
「一瞬だけだ」
「たわけ!普通ならば一瞬だろうとも考えつかん!!」
一瞬だけ。その言葉が癪に触ったのかバージルはあたしの事を一度おろすと、ダンテの前に歩いていき胸ぐらを掴んだ。
その拳がダンテの横面に思い切りめり込んだ。
「ぐっ……!」
あたしが殴られたわけじゃないのに、その衝撃を前にして縮み上がる。
同時にダンテを殴ったバージルから、魔人化もかくやの怒気が立ち登るのが見えた。
さっきもそう。でもさっきよりも怖い。
怖くて口出しどころか、息をすることさえできなかった。
どっちの味方していいかもわからない。
半分悪魔の怒りは恐ろしい。自分が怒られているわけじゃなくても、怒りの矛先が自分にも向いてしまうんではないか。
そう思わせる何かがあった。
「そんな状態でよくもまあ、恋人だなんだと胸を張れたものだ……」
地獄の底から響いてくるような低い声。
冷たく肌を刺すような怒りが部屋の温度を著しく下げるよう。
バージルって氷属性の武器も持っていたっけ?
「人間界にいた期間が短いアンタにはわからないかもしれないけどな、時に男のロマンは最優先にすべきものなんだ……よっ!」
「ッーー!ロマンくらいわかる。
俺は!今やるなと言っているのだッ!」
倒れた姿勢から腹筋だけで立ち上がったダンテが、バージルに掴みかかる。
ダンテの右ストレートがバージルの頬を打った。
片眼鏡から覗く鋭い目。打たれながらもダンテから目を逸らさなかったバージルが、踏ん張ってダンテの肩を掴みあげた。
ドパァン!
地の底まで揺れるような轟音がダンテとバージルから聞こえた。
お互いが石頭なのに、強烈な頭突きで相手の頭をかち割ろうとした結果だった。
血飛沫が宙を舞い、地に落ちる。
立ち止まっていると地面から噛み付いてくるトラバサミのような悪魔の口も、空気を読んだのかここには現れてこないほどの険悪な雰囲気。
お互い邪魔な武器の一切を放り投げ、身一つで拳をぶつけ合う。
取っ組み合い殴り合いの兄弟喧嘩だ。
止めるべき?いや、今の状態は怒声が飛び交っていて声も届かなさそうだ。
下手なことをすれば巻き込まれそうだし、あれが一発当たるだけであたしは天国行きだろう。
何もできない。
「状況を!考えろッ!
俺があと少し遅れていたらディーヴァは死ぬところだった!貴様が躊躇したせいでな!」
「くっ……!あれを見ないのは逆にディーヴァに失礼だろ!
あと数秒くらい持つっての!オレの女だぞそれくらい我慢できなくてどうするんだ……よっ!」
完全な肉弾戦。
ダンテが拳を振るえばバージルが腕でガードし、バージルが拳を振るえばダンテがガードする。
拳と拳がぶつかり合い、避けきれなかった拳が二人の顔に、体に傷を増やす。
あまり見たくないので目を閉じれば、代わりに耳に届く言葉たち。
見ない?失礼?さっぱりわからない。
さっぱりを連呼する妖精に進化しそうだ。
「己が欲望に忠実なのは悪魔の特性だ……。が、場を弁えろ!
ディーヴァに我慢が効くと思うか!?あれは悪魔の血のものではない!天使だぞ……!はあっ!」
「ぐッ!?てめ、卑怯だぜバージル……」
振るった右腕をお互い左手で掴み、押し合う。
バージルがダンテの怪力に押し負ける、と思いきやバージルが開いた長いその脚を使い、ダンテを足払いしてそのまま壁の端まで蹴り飛ばした。
打ちどころ悪く頭から血をダラダラと流すダンテ。
それを気にせずに立ち上がりバージルに向かって笑みすら浮かべてみせた。
「ディーヴァのことはもちろん大切だ。死なせやしない。
けどよ、ちょーっと熱くなりすぎだぜバージル。頭冷やすのはアンタのほうじゃねぇか?ン?」
自分の頭をトントンとこづいてバージルを見、挑発する。
ダンテからの挑発が相手だと、バージルはそれに簡単にノる。
「このたわけが……死なねばわからないなら魔帝の前に貴様も冥土に送ってやるぞ……」
だがノるのレベルが違いすぎた。
離れていても肌がぴりぴりする。
大気が渦巻く。大気と言われるほどの広さも空気もないけれど、この狭い空間に強大な悪魔の気配が現れる。
出所はバージル。
彼の体が一瞬、青い魔人の姿に変わったのが見えた。
「ちょ、待て待て。アンタ今の状態わかってんのか?
その魔力量じゃ魔人化は無理だ。やめとけ」
まだ魔力が回復しきっていないバージル。
そんなバージルが魔人化しても、体がもたない。
いつもならすぐにダンテに飛んでくるはずの幻影剣が、再会してから一度も放たれていないのが何よりの証拠。
「黙れ。半分が人間なら、いつどこで何を優先すべきかくらいわかるだろうがッ!」
電気の束が弾けるような音が響く。
一瞬。ほんの一瞬だけ止まった時の中、バージルがダンテの頭に鋭い踵落としを決め、そこからさらに顎へと強烈なアッパーを入れるのがあたしには見えてしまった。
「っってぇ〜〜。
魔人化するフリかよ……」
動き出す刻の中、吹っ飛んで大の字で寝ていたダンテが顎をさすりながら起き上がる。
うん。鐘をついたようなすっごいいい音したもんね。痛そう。
ダンテの顎割れてない?