mission 21:inside devil's body ~蠢く胎内にて~
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手を抜いたのか、などとは言ったが。
「……悪くない」
布や糸が繊細かつ強靭な素材なためか着心地はとんでもなく良い。
火鼠の衣のようでいて、ミスリルのようでもある。
しなやかで炎にも強く、寒さにも強く、刃を通しにくい素材だ。縫い糸はもしかしなくても特殊な蜘蛛糸のよう。
もちろん、魔界の炎や魔剣を完全に通さない、とはいかんだろうが、ある程度は防ぐはずだしただのナイフなどでは傷一つつかないはずだ。
とんでもないものを手に入れてしまった気がする。
貴族が身につける様な紫色の長い外套。全体に施された繊細な金の刺繍。そして片方だけの眼鏡。
どこかむず痒くも思う衣装に身を包んだ俺は、近くの武器庫から適当な刀を拝借した。
なに、刀の一本や二本、なくなったところで魔帝は文句を言うまい。
だが、どうせならと業物を奪うことは忘れない。
手に取った一振りの日本刀。
俺の閻魔刀に酷似した黒い鞘、白い柄巻。スラリとした刀身は刃こぼれひとつない。
閻魔刀ほどの魔力はないようだが、魔界にある刀だ。これでも魔剣のはしくれだろう。作者は不明か。
「無銘刀のようだな。だがーー」
鯉口を切る。
何もない適当な壁に一閃。
「斬れ味が良ければそれでいい」
斬れ味は及第点。壁が弱かったか、それともここまでの俺の閻魔刀へのフラストレーションが刀の攻撃力を上げたか……斬撃ひとつで壁が崩壊した。
おそらくは後者がゆえだと自分でもわかっている。
崩れ落ちた壁の先は魔界の一部である、腸管につながっていたようだ。
ちょうどいい、腸管からたどっていけば、ダンテやディーヴァと落ち合うことも可能だろう。
魔帝の間はすぐそこも同然だ。
生物の内部を進む独特の発酵臭や腐敗臭が鼻を刺激する中、しばらく進んでいく。
おかしい。
「ここは目指していた腸管とは逆の場所ではないか?」
行けども行けども、煩わしい触手が壁から生えてこない。特徴あるあの触手こそが、目指していた腸管の目印だったはず。
が、戻ろうと後ろを向くも、そこには悪魔の封印が浮かび上がる。
このまま進むしかなさそうだ。
そうして開けた場所に待ち受けていたのは、魔帝の配下ではない悪魔。
知能を持たぬノーバディ。
「ヒャヒヒヒィ!」
「ちっ」
厄介な悪魔に会ってしまったようだ。悪魔のその向こうを見れば、やはり悪魔の封印。
この外道を倒さねば先へ進めぬということか。
面倒だが、これはまたとない機会か。
得た刀の力が如何程か、壁ではなく生ける物を斬った時の感触を確かめられそうだ。
最初に斬る動くものはダンテにしようと目論んでいたが、今回はこいつでいいだろう。
ダンテめ、命拾いしたな。
呪術で作られた仮面を装着させる暇は与えやしない。
ノーバディの腕が動くよりも早く、俺は刀を振るった。
一閃、二閃、三閃……、いや、それ以上か。ノーバディの体に斬撃の嵐を刻み込む。
「ギャッーー」
「フン、刀の錆にもならないではないか」
刀を鞘に収める金属音と共に、ノーバディの体はバラバラになり、赤いかけらになって消えた。
「ふう……」
よかった、俺の刀の腕は衰えていないようだ。そう思った時、ふと息が漏れた。
この俺でも不安になるものなのだな。そういった感情がわくのは久しぶりだった。
迷い込みそうな腸内を巡り、結局は計三匹のノーバディとの戦闘に付き合わされた。
臭いも相まってストレスで爆発しそうだ。
だというに、ようやく辿り着いた次のフィールドがこれとは。
そこに広がるのは、竜骨の悪魔が支配する小さな洞穴。
地表の隙間から迸るのは煮えた溶岩……いや、燃える血液か。
蒸気で暑いことこの上ない不快な場所だった。
「ククク、まさか最奥に待ち構えるのが竜とはな」
決めた。次のストレスの捌け口はこの竜だな。
余計に暑くなる炎のブレスが邪魔だ。その口二度と開かぬようにしてやる。
飛び上がった俺は竜が吐いてきた炎のブレスを刀を高速で回して防ぐと、その勢いのまま肉薄して複数回刀を振り下ろした。
骨だから堅かろう。刀が折れたその時はその時だ。次は拳を振るえばいい。
軽くそう考えて。
だがあっけなく竜の骨は崩れた。
カルシウムが足りていないのでは?
骨粗鬆症かと思わせる脆さ。
数回斬りつけるだけで崩れ去り、消えてしまうとはなんと弱い!
ノーバディよりも弱いではないか!!
最奥にいるのだから、普通はボス級悪魔だと思うだろう?これでは見掛け倒しのハリボテだ。
「骨だけに骨のある悪魔と戦いたかったんだがな。残念だ」
おっといかん。
久しぶりにダンテなどと言葉を交わしたからか、俺らしからぬ冗談が口から飛び出た。あいつと話すと俺が俺でなくなる……引っ張られる。
だから嫌なのだ。ムカついたからあの愚弟は串刺しの刑にしようヨシそうしよう。
「……悪くない」
布や糸が繊細かつ強靭な素材なためか着心地はとんでもなく良い。
火鼠の衣のようでいて、ミスリルのようでもある。
しなやかで炎にも強く、寒さにも強く、刃を通しにくい素材だ。縫い糸はもしかしなくても特殊な蜘蛛糸のよう。
もちろん、魔界の炎や魔剣を完全に通さない、とはいかんだろうが、ある程度は防ぐはずだしただのナイフなどでは傷一つつかないはずだ。
とんでもないものを手に入れてしまった気がする。
貴族が身につける様な紫色の長い外套。全体に施された繊細な金の刺繍。そして片方だけの眼鏡。
どこかむず痒くも思う衣装に身を包んだ俺は、近くの武器庫から適当な刀を拝借した。
なに、刀の一本や二本、なくなったところで魔帝は文句を言うまい。
だが、どうせならと業物を奪うことは忘れない。
手に取った一振りの日本刀。
俺の閻魔刀に酷似した黒い鞘、白い柄巻。スラリとした刀身は刃こぼれひとつない。
閻魔刀ほどの魔力はないようだが、魔界にある刀だ。これでも魔剣のはしくれだろう。作者は不明か。
「無銘刀のようだな。だがーー」
鯉口を切る。
何もない適当な壁に一閃。
「斬れ味が良ければそれでいい」
斬れ味は及第点。壁が弱かったか、それともここまでの俺の閻魔刀へのフラストレーションが刀の攻撃力を上げたか……斬撃ひとつで壁が崩壊した。
おそらくは後者がゆえだと自分でもわかっている。
崩れ落ちた壁の先は魔界の一部である、腸管につながっていたようだ。
ちょうどいい、腸管からたどっていけば、ダンテやディーヴァと落ち合うことも可能だろう。
魔帝の間はすぐそこも同然だ。
生物の内部を進む独特の発酵臭や腐敗臭が鼻を刺激する中、しばらく進んでいく。
おかしい。
「ここは目指していた腸管とは逆の場所ではないか?」
行けども行けども、煩わしい触手が壁から生えてこない。特徴あるあの触手こそが、目指していた腸管の目印だったはず。
が、戻ろうと後ろを向くも、そこには悪魔の封印が浮かび上がる。
このまま進むしかなさそうだ。
そうして開けた場所に待ち受けていたのは、魔帝の配下ではない悪魔。
知能を持たぬノーバディ。
「ヒャヒヒヒィ!」
「ちっ」
厄介な悪魔に会ってしまったようだ。悪魔のその向こうを見れば、やはり悪魔の封印。
この外道を倒さねば先へ進めぬということか。
面倒だが、これはまたとない機会か。
得た刀の力が如何程か、壁ではなく生ける物を斬った時の感触を確かめられそうだ。
最初に斬る動くものはダンテにしようと目論んでいたが、今回はこいつでいいだろう。
ダンテめ、命拾いしたな。
呪術で作られた仮面を装着させる暇は与えやしない。
ノーバディの腕が動くよりも早く、俺は刀を振るった。
一閃、二閃、三閃……、いや、それ以上か。ノーバディの体に斬撃の嵐を刻み込む。
「ギャッーー」
「フン、刀の錆にもならないではないか」
刀を鞘に収める金属音と共に、ノーバディの体はバラバラになり、赤いかけらになって消えた。
「ふう……」
よかった、俺の刀の腕は衰えていないようだ。そう思った時、ふと息が漏れた。
この俺でも不安になるものなのだな。そういった感情がわくのは久しぶりだった。
迷い込みそうな腸内を巡り、結局は計三匹のノーバディとの戦闘に付き合わされた。
臭いも相まってストレスで爆発しそうだ。
だというに、ようやく辿り着いた次のフィールドがこれとは。
そこに広がるのは、竜骨の悪魔が支配する小さな洞穴。
地表の隙間から迸るのは煮えた溶岩……いや、燃える血液か。
蒸気で暑いことこの上ない不快な場所だった。
「ククク、まさか最奥に待ち構えるのが竜とはな」
決めた。次のストレスの捌け口はこの竜だな。
余計に暑くなる炎のブレスが邪魔だ。その口二度と開かぬようにしてやる。
飛び上がった俺は竜が吐いてきた炎のブレスを刀を高速で回して防ぐと、その勢いのまま肉薄して複数回刀を振り下ろした。
骨だから堅かろう。刀が折れたその時はその時だ。次は拳を振るえばいい。
軽くそう考えて。
だがあっけなく竜の骨は崩れた。
カルシウムが足りていないのでは?
骨粗鬆症かと思わせる脆さ。
数回斬りつけるだけで崩れ去り、消えてしまうとはなんと弱い!
ノーバディよりも弱いではないか!!
最奥にいるのだから、普通はボス級悪魔だと思うだろう?これでは見掛け倒しのハリボテだ。
「骨だけに骨のある悪魔と戦いたかったんだがな。残念だ」
おっといかん。
久しぶりにダンテなどと言葉を交わしたからか、俺らしからぬ冗談が口から飛び出た。あいつと話すと俺が俺でなくなる……引っ張られる。
だから嫌なのだ。ムカついたからあの愚弟は串刺しの刑にしようヨシそうしよう。