mission 19:gate to demon world ~ヒトと魔の境界線~
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「……あっちか」
「あっち?」
強風に煽られる中ダンテが顔を向けるは、崩れた足場が点々と浮かぶその先。城の中だ。
ダンテの所持するエリキサも、城の中へ行けと急かしている。
しかし城の手前のこの宙に浮かぶ足場がネック。落ちたら怖い。
「うわー、またここ渡るの……?」
「このまま飛んでいくから心配するな。目を閉じてろよ。
アラストル力を貸せ」
「はいよ」
先の戦闘で使い切った魔力量では、魔人化は容易じゃない。今回はアラストルからの供給で応急処置的に魔人化するようだった。
魔力回復かあ……あたしの血を今のダンテにあげると、またいつ魔に引っ張られるかわからないもんね。
そもそもがダンテ自身そんな考え持ってないだろう。血が欲しければこっちを見てくるはず。
ダンテの体が雷の魔力に包まれる。体が黒く変わり、あたしを抱える腕や爪も悪魔のものへ変わり。
その美貌に満ち溢れた顔も、恐ろしく固くて表情の読めない悪魔の顔になった。
そして視界を覆い尽くすような漆黒の翼がその背から生え、羽ばたく。
人間と違う硬質の体。
いまだに好きになれないダンテの魔人化した姿。
だけど、この姿に何度も助けられている。恐怖の対象だとしても、見た目が怖くても、ダンテはダンテなんだよね。
もう少し、もっともっと心を開くべき。あたしはその存在を認めるべき。委ねるべき。
ヒトの体の時より若干低いその体温に、自分の体温を移すようにしてあたしは身を寄せた。
「ダンテ」
「んー?」
「ありがとう」
「?……ああ」
あたしのためなのか、極力揺らさないようにゆっくりと飛ぶダンテ。
だからきっと気がつかない。
硬質化したダンテの鎖骨へと、あたしは小さく唇を寄せた。
対岸へ渡り下ろされたと同時に、アラストルからの魔力が切れて魔人化が解かれる。
大きな扉を開けて大聖堂へと戻ると、ナイトメアが登場した床の水溜りがおかしなことになっていた。
エリキサがはげしく共鳴反応を起こし、沸騰した水のようにボコボコと沸き立っている。
この中が目的地、と言っているのはわかった。わかった、けれど……?
「うわぁ、沸騰したお湯みたいになってる。
ねえここ?ほんとにここ行くの?水溜りの中?」
「何を今更。行くに決まってるだろ」
「沸騰してるよ?火傷しない?」
「しないしない。熱くない」
熱くなくたって、このボコボコしてるところに飛び込むってかなり勇気がいると思う。
拒否反応で蕁麻疹が出そう!
しかしダンテは気にせず、再びあたしを抱えてその上に立った。うわ、逃げられない!
どろり、体が吸い込まれる感覚とそして。
ふわり、一瞬の浮遊感と共に襲う、落下感。
下を見てギョッとした。
高いとこから落ちてるじゃん!
「ひぇっーー!」
こういうのは、たとえダンテの腕の中だろうと慣れることはない。
胃の中には何もなくとも、でも胃の中をシェイクされてリバースしてしまいそうな感覚がある。苦手だ……。
漆黒の鏡と化した水溜りの下には、広い空間が広がり、魔界への入り口がその存在を大きく主張していた。
あたしとは違い、100点満点の着地で何事もなかったかのようなダンテは、現れた空間を眺め、ひとり感心している。
「なるほどこれが魔界への入り口か」
足元では魔界の闇をいっぱいに内包した歪んだガラスのような膜が、薄水色の輝きを増していた。
この真下が魔界。異形の世界。
悪魔が手をこまねき、そして囁く。
ダンテの中に住む悪魔が、早く魔界に行きたい、帰りたいとせがんでいるようだ。
ダンテは興奮を覚えていた。ノーバディを相手取った時以上、ディーヴァという獲物を目の前にした時以上に。
その様子が、腕の中におさまるあたしにも伝わってくる。
ダンテの目に映る魔界の入り口が、妖しく光る。
「ダンテ……?」
あたしは不穏とも呼べるダンテの変化に気がついていた。
こわい。こわいけど、でも声をかけずにはいられなかった。
ダンテに頭をぐりぐりと押しつけ、首に思い切り手を回す。
その衝撃でダンテの目に通常の光が宿った。
「いかんいかん。こういうところがまだまだ未熟なんだろうな。だからスパーダでの魔人化がうまくできない。
さっきから悪魔の血にマジ引っ張られすぎだわ。テメンニグルではこんな状態にならなかったってのにな……」
ムンドゥスの思惑に乗ってる気分だと、ダンテは続ける。
確かにその可能性は否定できない。
ダンテを悪魔側に引き込めば人間界掌握も、獲物であるあたしを食べるのも簡単だ。
そしてダンテが用済みになったら、バージルをネロアンジェロに変えた時みたいに……。あ、無理。許せない。顔面ボコボコに殴らないと気が済まない。
ボコるよ!……ダンテが。
「このまま進んだらその思惑に乗っちゃうことになるのかもね。そう思うとうんざりして上に戻りたくなる……」
「上にまだ用事があるのか?便所か?
ならそこの台に乗れば戻れると思うぞ。いってら〜」
いや戻らないし。
「この台ギョロギョロおめめみたいで気持ち悪い!やだ!一人で乗りたくない!
それにトイレじゃないよ!?女性にトイレとか聞くなんて失礼なひと!」
「HAHAHA!!」
ひとしきり笑ったダンテはプンスコ怒るあたしを下ろし、魔界への入り口近くの窪みをチェックする。
一緒になって覗き込めば、窪みの形は多面体が置けるようなものだった。
「ここに賢者の石を置くようだな。
誰か使ったあとがある。なるほど、この魔力は……」
周りには賢者の石によく似た欠片が散らばっていたが、それらは足でどかした。
そして件の石そのものを嵌め込むダンテ。
賢者の石と門が共鳴し、大きな地響きか起こる。
人間界と魔界をへだてる薄く、そして強い膜が文字通り鏡が破られるように破られ、綺麗さっぱりなくなった。
奈落の底のような大穴が、口を大きく開けている。
「ちょっと待って。行くの?行っちゃう感じ?」
「なんだまだ待たせる気か。今度はなんだ」
「だって、バージル待たないの?」
「待つ必要はない。奴さんなら、すでに中にいる」
「えっえっ!うそっ!?」
「往生際が悪いぜディーヴァ。さあ、行くぞ」
抱きかかえるではない。何度も待てをされてめんどくさくなったのか、今度は胴に腕を回して米俵状態でダンテは異形の世界へと飛び込んだ。
●あとがき
バージル登場させることできて満足。
「あっち?」
強風に煽られる中ダンテが顔を向けるは、崩れた足場が点々と浮かぶその先。城の中だ。
ダンテの所持するエリキサも、城の中へ行けと急かしている。
しかし城の手前のこの宙に浮かぶ足場がネック。落ちたら怖い。
「うわー、またここ渡るの……?」
「このまま飛んでいくから心配するな。目を閉じてろよ。
アラストル力を貸せ」
「はいよ」
先の戦闘で使い切った魔力量では、魔人化は容易じゃない。今回はアラストルからの供給で応急処置的に魔人化するようだった。
魔力回復かあ……あたしの血を今のダンテにあげると、またいつ魔に引っ張られるかわからないもんね。
そもそもがダンテ自身そんな考え持ってないだろう。血が欲しければこっちを見てくるはず。
ダンテの体が雷の魔力に包まれる。体が黒く変わり、あたしを抱える腕や爪も悪魔のものへ変わり。
その美貌に満ち溢れた顔も、恐ろしく固くて表情の読めない悪魔の顔になった。
そして視界を覆い尽くすような漆黒の翼がその背から生え、羽ばたく。
人間と違う硬質の体。
いまだに好きになれないダンテの魔人化した姿。
だけど、この姿に何度も助けられている。恐怖の対象だとしても、見た目が怖くても、ダンテはダンテなんだよね。
もう少し、もっともっと心を開くべき。あたしはその存在を認めるべき。委ねるべき。
ヒトの体の時より若干低いその体温に、自分の体温を移すようにしてあたしは身を寄せた。
「ダンテ」
「んー?」
「ありがとう」
「?……ああ」
あたしのためなのか、極力揺らさないようにゆっくりと飛ぶダンテ。
だからきっと気がつかない。
硬質化したダンテの鎖骨へと、あたしは小さく唇を寄せた。
対岸へ渡り下ろされたと同時に、アラストルからの魔力が切れて魔人化が解かれる。
大きな扉を開けて大聖堂へと戻ると、ナイトメアが登場した床の水溜りがおかしなことになっていた。
エリキサがはげしく共鳴反応を起こし、沸騰した水のようにボコボコと沸き立っている。
この中が目的地、と言っているのはわかった。わかった、けれど……?
「うわぁ、沸騰したお湯みたいになってる。
ねえここ?ほんとにここ行くの?水溜りの中?」
「何を今更。行くに決まってるだろ」
「沸騰してるよ?火傷しない?」
「しないしない。熱くない」
熱くなくたって、このボコボコしてるところに飛び込むってかなり勇気がいると思う。
拒否反応で蕁麻疹が出そう!
しかしダンテは気にせず、再びあたしを抱えてその上に立った。うわ、逃げられない!
どろり、体が吸い込まれる感覚とそして。
ふわり、一瞬の浮遊感と共に襲う、落下感。
下を見てギョッとした。
高いとこから落ちてるじゃん!
「ひぇっーー!」
こういうのは、たとえダンテの腕の中だろうと慣れることはない。
胃の中には何もなくとも、でも胃の中をシェイクされてリバースしてしまいそうな感覚がある。苦手だ……。
漆黒の鏡と化した水溜りの下には、広い空間が広がり、魔界への入り口がその存在を大きく主張していた。
あたしとは違い、100点満点の着地で何事もなかったかのようなダンテは、現れた空間を眺め、ひとり感心している。
「なるほどこれが魔界への入り口か」
足元では魔界の闇をいっぱいに内包した歪んだガラスのような膜が、薄水色の輝きを増していた。
この真下が魔界。異形の世界。
悪魔が手をこまねき、そして囁く。
ダンテの中に住む悪魔が、早く魔界に行きたい、帰りたいとせがんでいるようだ。
ダンテは興奮を覚えていた。ノーバディを相手取った時以上、ディーヴァという獲物を目の前にした時以上に。
その様子が、腕の中におさまるあたしにも伝わってくる。
ダンテの目に映る魔界の入り口が、妖しく光る。
「ダンテ……?」
あたしは不穏とも呼べるダンテの変化に気がついていた。
こわい。こわいけど、でも声をかけずにはいられなかった。
ダンテに頭をぐりぐりと押しつけ、首に思い切り手を回す。
その衝撃でダンテの目に通常の光が宿った。
「いかんいかん。こういうところがまだまだ未熟なんだろうな。だからスパーダでの魔人化がうまくできない。
さっきから悪魔の血にマジ引っ張られすぎだわ。テメンニグルではこんな状態にならなかったってのにな……」
ムンドゥスの思惑に乗ってる気分だと、ダンテは続ける。
確かにその可能性は否定できない。
ダンテを悪魔側に引き込めば人間界掌握も、獲物であるあたしを食べるのも簡単だ。
そしてダンテが用済みになったら、バージルをネロアンジェロに変えた時みたいに……。あ、無理。許せない。顔面ボコボコに殴らないと気が済まない。
ボコるよ!……ダンテが。
「このまま進んだらその思惑に乗っちゃうことになるのかもね。そう思うとうんざりして上に戻りたくなる……」
「上にまだ用事があるのか?便所か?
ならそこの台に乗れば戻れると思うぞ。いってら〜」
いや戻らないし。
「この台ギョロギョロおめめみたいで気持ち悪い!やだ!一人で乗りたくない!
それにトイレじゃないよ!?女性にトイレとか聞くなんて失礼なひと!」
「HAHAHA!!」
ひとしきり笑ったダンテはプンスコ怒るあたしを下ろし、魔界への入り口近くの窪みをチェックする。
一緒になって覗き込めば、窪みの形は多面体が置けるようなものだった。
「ここに賢者の石を置くようだな。
誰か使ったあとがある。なるほど、この魔力は……」
周りには賢者の石によく似た欠片が散らばっていたが、それらは足でどかした。
そして件の石そのものを嵌め込むダンテ。
賢者の石と門が共鳴し、大きな地響きか起こる。
人間界と魔界をへだてる薄く、そして強い膜が文字通り鏡が破られるように破られ、綺麗さっぱりなくなった。
奈落の底のような大穴が、口を大きく開けている。
「ちょっと待って。行くの?行っちゃう感じ?」
「なんだまだ待たせる気か。今度はなんだ」
「だって、バージル待たないの?」
「待つ必要はない。奴さんなら、すでに中にいる」
「えっえっ!うそっ!?」
「往生際が悪いぜディーヴァ。さあ、行くぞ」
抱きかかえるではない。何度も待てをされてめんどくさくなったのか、今度は胴に腕を回して米俵状態でダンテは異形の世界へと飛び込んだ。
●あとがき
バージル登場させることできて満足。
