mission 19:gate to demon world ~ヒトと魔の境界線~
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鏡の内側は、今までいた世界の風景が反転した世界だった。
ここが人間界と魔界の狭間。
まぜこぜにした不安定な空間。
「えええ??」
いやいやいやこわいこわいこわい。禍々しい!
ダンテはなんともないようだけど、あたしは呼吸がしづらかった。
空気がどっしりと重くて淀んでいるのだろうか、全ての輪郭が歪んで見えて気持ち悪い。
どっしり重いのなんて、ベイクドチーズケーキかガトーショコラだけでいいと思う。
アイシングたっぷりのバターケーキに、フルーツやナッツがぎっしり入ったパウンドケーキも捨てがたいよね。ああ食べたい。
ここへきてから現実逃避が加速する。
ううん、現実逃避じゃない。帰って作る予定。
あれもしたいこれもしたい。だって女の子なんだもん。どっちも言い回しが懐かしい?それはよござんした!
でもやっぱり気持ち悪くて我慢できない。
この空間、立ってるだけで目眩がする。
思わずダンテのコートを掴んだ。でもリバースはしない予定だよ。
あと頭も痛い。ダンテに寄りかからないと無理そうなんだよねぇ……はあ。
「センセー、ディーヴァちゃん吐かないけど吐きそうでーす」
「はあー?
この空間近く……それも魔界に囚われてたなら、多少耐性あって慣れてるはずだろ」
「そうかもだけど。
なんかね、空間が歪んで見えるっていうか……そう!度数合わない眼鏡借りた時と同じ感覚」
あれって目がみょわわわーんってして、つらいよね。わあっ!てなっちゃうの。
「ディーヴァ眼鏡かけてないだろ!いつ!誰の!眼鏡を!かけた!!」
「パパのだけど?」
「……ならいい」
やだダンテったら、眼鏡で嫉妬した!ちょっと赤くなってるような気さえする。
なんだかかわいく見えちゃった。
「何笑ってるんだよ」
プッと小さく吹き出したら、ダンテに小突かれてベッドにどさりと投げ出された。
こちらの世界も表と変わらない。埃が舞う。
ああ、また服が汚れちゃうなぁ。咳も出ちゃう。
「他の奴の眼鏡をかける状況なんて、ベッドで男といる時くらいだ。『俺の眼鏡かけてみるか?度数高いんだぜ』『わあホントだ。輪郭がぼやけて周りの景色と溶けちゃいそう』『意識のほうもドロドロに溶けるまでシよう』とか、普通そういうのだと思うだろ」
何その固定観念。裏声まで使ってあたしの声を真似てる。ダンテったら、えっちな方にすぐ考え持ってくんだから。
また笑ってしまった。
「あっこら。笑うなっての」
「だって、おもしろくって。……怒った?」
「仕置きしたい程度にはムカついた」
ムッとしたダンテの顔が近づき、銀糸の前髪があたしの視界を覆い隠す。彼の長い足が、あたしの逃げ道をなくした。
あたしの世界には今、ダンテしかいない。
暗いのに、なのにダンテの透き通るようなブルーの瞳だけが光って見えて……いとおしい。覗き込まれると、ドキドキしてくる。
そのドキドキはどこか、食べられる前の獲物が感じているものに似ている。
美しい捕食者に、とらわれる。
だけど今のダンテのその目には情欲の光はない。からかっているだけなのはわかってるからね?
「ダンテったら、こんな怖ぁいところでどんなお仕置きする気なの?」
「怖いところねぇ。オレの方がよほど怖いってこと、お前に教えてやってもいいんだぞ」
「こんな汚くてボロボロのベッドで?魔界の真ん中で?あなたは一体どぉんな仕打ちをする気なのかしらね〜」
あたしの鼻先にちょんと当たる、ダンテのお鼻。
「ばーか、するわけないだろ。
気分が悪いならと、少しでも休ませようかと思っただけだ」
「ありがと。でもね、ドキドキしたら少しは楽になったんだよ」
「ドキドキしたくらいで治るなら、もっとドキドキさせとくか」
「だめ。心臓持たなくなっちゃう」
お互い同じようにクスクス笑い、パズルのピースを埋めるが如く抱きしめ合う。
おでこをコツン、小さくぶつけ合うと胸がちょっぴり満たされた。
ああ、ダンテと一緒にこうしてくっついていられるこの時間が、すごく幸せ。嬉しくないのは場所だけね。
『うわぁんもうやめてよ!俺のライフはゼロよ!!キミたちいい加減こんなとこでイチャコラしないで!?』
「羨ましいのかアラストル」
『少しは羨ましいよチクショウめ』
ベッドサイドに立て掛けられていたアラストルがぴーぴー叫ぶ。
柄のドラゴンも涙を流してるように見えるけどダンテは目もくれず、あたしの顔をとろりと溶け落ちそうな目で眺め、慈しむように撫でていた。
……目線からして甘いなぁ。
「もう起きよ?」
「ディーヴァがいいならそうするか。そこの独り身もカワイソウだしな」
『カワイソウ?べっ、別に恋人はいらんし!なにせ俺は剣だからね!?』
「妬むな僻むな」
そのやりとりに苦笑し、手を借りて起き上がる。ダンテに支えられて立つ中、部屋をぐるりと見回す。
「まさに鏡の中の世界って感じしてる。いろんなものの位置が反転してる……」
「ああ。時空神像もうんともすんとも言わない。ただの置物だ」
家具の位置が鏡合わせ。世界そのものが鏡合わせ。あたし達は唯一鏡合わせになっていない異物。
そんな状況下では、ダンテに力を貸す存在も使い物にならないのか。
そして2人でゆっくりと目を向ける。
この場所で唯一、色を放つ場所。
禍々しく赤い空の色が差し込み、全体が魔の光を放つ大きな窓を。
「行くしかないな」
「そのようで」
アラストルを背にしまい、意を決して窓に手をかける。簡単に開いたその先、その下にはやはり、反転した城壁その場所が広がっている。
そして広場部分の中央の台には、魔力を放つ変わった形のオブジェが置かれていた。
エリキサがそちらに呼応し、かすかな反応をみせる。
「あれが必要なブツのようだな。……ん?」
崩れた壁のヘリに足をかけて覗き込むダンテには、あたしが怖気付いているのが伝わってしまった。
「あんまり行きたくないなって……下に降りたくない……」
「ならこの場所で待ってるか?」
ここから見えている部屋の鏡がこわい。
どんよりと、禍々しい気配に満ちている。
中から手が生えて引っ張り込まれそうという、一度浮かんだ想像はそう簡単には拭い去ることができない。
けど……。
「うーーー。
ここで1人も嫌だし、とりあえず窓だけ閉めてこのバルコニーにいる」
「リョーカイ」
窓を閉めていたらダンテによって素早く体の向きを変えられた。
唇に温かいものが押しつけられ、堪能される。
「……んっ…………」
「取ってくるだけだからいい子で待ってろ」
ダンテがこっちを向いたまま、笑顔で真下へと落ちていった。
ここが人間界と魔界の狭間。
まぜこぜにした不安定な空間。
「えええ??」
いやいやいやこわいこわいこわい。禍々しい!
ダンテはなんともないようだけど、あたしは呼吸がしづらかった。
空気がどっしりと重くて淀んでいるのだろうか、全ての輪郭が歪んで見えて気持ち悪い。
どっしり重いのなんて、ベイクドチーズケーキかガトーショコラだけでいいと思う。
アイシングたっぷりのバターケーキに、フルーツやナッツがぎっしり入ったパウンドケーキも捨てがたいよね。ああ食べたい。
ここへきてから現実逃避が加速する。
ううん、現実逃避じゃない。帰って作る予定。
あれもしたいこれもしたい。だって女の子なんだもん。どっちも言い回しが懐かしい?それはよござんした!
でもやっぱり気持ち悪くて我慢できない。
この空間、立ってるだけで目眩がする。
思わずダンテのコートを掴んだ。でもリバースはしない予定だよ。
あと頭も痛い。ダンテに寄りかからないと無理そうなんだよねぇ……はあ。
「センセー、ディーヴァちゃん吐かないけど吐きそうでーす」
「はあー?
この空間近く……それも魔界に囚われてたなら、多少耐性あって慣れてるはずだろ」
「そうかもだけど。
なんかね、空間が歪んで見えるっていうか……そう!度数合わない眼鏡借りた時と同じ感覚」
あれって目がみょわわわーんってして、つらいよね。わあっ!てなっちゃうの。
「ディーヴァ眼鏡かけてないだろ!いつ!誰の!眼鏡を!かけた!!」
「パパのだけど?」
「……ならいい」
やだダンテったら、眼鏡で嫉妬した!ちょっと赤くなってるような気さえする。
なんだかかわいく見えちゃった。
「何笑ってるんだよ」
プッと小さく吹き出したら、ダンテに小突かれてベッドにどさりと投げ出された。
こちらの世界も表と変わらない。埃が舞う。
ああ、また服が汚れちゃうなぁ。咳も出ちゃう。
「他の奴の眼鏡をかける状況なんて、ベッドで男といる時くらいだ。『俺の眼鏡かけてみるか?度数高いんだぜ』『わあホントだ。輪郭がぼやけて周りの景色と溶けちゃいそう』『意識のほうもドロドロに溶けるまでシよう』とか、普通そういうのだと思うだろ」
何その固定観念。裏声まで使ってあたしの声を真似てる。ダンテったら、えっちな方にすぐ考え持ってくんだから。
また笑ってしまった。
「あっこら。笑うなっての」
「だって、おもしろくって。……怒った?」
「仕置きしたい程度にはムカついた」
ムッとしたダンテの顔が近づき、銀糸の前髪があたしの視界を覆い隠す。彼の長い足が、あたしの逃げ道をなくした。
あたしの世界には今、ダンテしかいない。
暗いのに、なのにダンテの透き通るようなブルーの瞳だけが光って見えて……いとおしい。覗き込まれると、ドキドキしてくる。
そのドキドキはどこか、食べられる前の獲物が感じているものに似ている。
美しい捕食者に、とらわれる。
だけど今のダンテのその目には情欲の光はない。からかっているだけなのはわかってるからね?
「ダンテったら、こんな怖ぁいところでどんなお仕置きする気なの?」
「怖いところねぇ。オレの方がよほど怖いってこと、お前に教えてやってもいいんだぞ」
「こんな汚くてボロボロのベッドで?魔界の真ん中で?あなたは一体どぉんな仕打ちをする気なのかしらね〜」
あたしの鼻先にちょんと当たる、ダンテのお鼻。
「ばーか、するわけないだろ。
気分が悪いならと、少しでも休ませようかと思っただけだ」
「ありがと。でもね、ドキドキしたら少しは楽になったんだよ」
「ドキドキしたくらいで治るなら、もっとドキドキさせとくか」
「だめ。心臓持たなくなっちゃう」
お互い同じようにクスクス笑い、パズルのピースを埋めるが如く抱きしめ合う。
おでこをコツン、小さくぶつけ合うと胸がちょっぴり満たされた。
ああ、ダンテと一緒にこうしてくっついていられるこの時間が、すごく幸せ。嬉しくないのは場所だけね。
『うわぁんもうやめてよ!俺のライフはゼロよ!!キミたちいい加減こんなとこでイチャコラしないで!?』
「羨ましいのかアラストル」
『少しは羨ましいよチクショウめ』
ベッドサイドに立て掛けられていたアラストルがぴーぴー叫ぶ。
柄のドラゴンも涙を流してるように見えるけどダンテは目もくれず、あたしの顔をとろりと溶け落ちそうな目で眺め、慈しむように撫でていた。
……目線からして甘いなぁ。
「もう起きよ?」
「ディーヴァがいいならそうするか。そこの独り身もカワイソウだしな」
『カワイソウ?べっ、別に恋人はいらんし!なにせ俺は剣だからね!?』
「妬むな僻むな」
そのやりとりに苦笑し、手を借りて起き上がる。ダンテに支えられて立つ中、部屋をぐるりと見回す。
「まさに鏡の中の世界って感じしてる。いろんなものの位置が反転してる……」
「ああ。時空神像もうんともすんとも言わない。ただの置物だ」
家具の位置が鏡合わせ。世界そのものが鏡合わせ。あたし達は唯一鏡合わせになっていない異物。
そんな状況下では、ダンテに力を貸す存在も使い物にならないのか。
そして2人でゆっくりと目を向ける。
この場所で唯一、色を放つ場所。
禍々しく赤い空の色が差し込み、全体が魔の光を放つ大きな窓を。
「行くしかないな」
「そのようで」
アラストルを背にしまい、意を決して窓に手をかける。簡単に開いたその先、その下にはやはり、反転した城壁その場所が広がっている。
そして広場部分の中央の台には、魔力を放つ変わった形のオブジェが置かれていた。
エリキサがそちらに呼応し、かすかな反応をみせる。
「あれが必要なブツのようだな。……ん?」
崩れた壁のヘリに足をかけて覗き込むダンテには、あたしが怖気付いているのが伝わってしまった。
「あんまり行きたくないなって……下に降りたくない……」
「ならこの場所で待ってるか?」
ここから見えている部屋の鏡がこわい。
どんよりと、禍々しい気配に満ちている。
中から手が生えて引っ張り込まれそうという、一度浮かんだ想像はそう簡単には拭い去ることができない。
けど……。
「うーーー。
ここで1人も嫌だし、とりあえず窓だけ閉めてこのバルコニーにいる」
「リョーカイ」
窓を閉めていたらダンテによって素早く体の向きを変えられた。
唇に温かいものが押しつけられ、堪能される。
「……んっ…………」
「取ってくるだけだからいい子で待ってろ」
ダンテがこっちを向いたまま、笑顔で真下へと落ちていった。
