mission 18:baby is cruel ~トラウマ~
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『ナイトメアに取り込まれていや〜な空間に行ったのはかわいそうだけど、あの酸がかからなくてよかった』
泣き止みはしたものの、すんすんと鼻を鳴らし続けちゃうあたしに、アラストルがこぼした。ここまで泣いちゃうと鼻がなかなか止まらないのよね。
うん、でも、少しでも場を和ませようとしたんだろうけど、結局ナイトメア関連かぁ。らしいといえばらしい。
「そういえば、ダンテも戦闘中にかかってたよね?特になんともなかったみたいだけど……もしかしてナイトメアのゲルって酸性なの?」
『イエス!酸性!
あいつの体って骨や塵芥内包してるゲル状だけど、あの体自体が消化液みたいなものなのさ。
だからたまに肌とか服とか溶かしちゃう酸ぶっかけてくるんだよ』
自分が取り込まれる時に付着したゲル。あれがすべて酸だった時を想像する。ゾッとした。
「ひえ……何それ怖い。それを思うと悪夢見てるほうで良かったと言えなくもないかも……」
実際は悪夢の方が嫌だったけど。
いやでも酸に肌が溶けるってかなり痛そう。化学の実験で取り扱った塩酸みたいなものかな。
塩酸ならすぐに処置すればまだしも、硫酸で考えてみよう。ものすごく火傷しちゃう!やだこわい!
「チクショウ!」
その時、ダンテが壁を殴りつけて拳をめり込ませた。
壁どころかこの中庭が壊れちゃうからやめて欲しい。
「ど、どうしたの?」
「なんでそれやってくれなかったんだナイトメア……!
服が溶けるディーヴァなんてご褒美じゃないか。ああ、見たかった……!」
握り拳を震わせ、顔を歪めながらのこのセリフである。
ほほう!中破ではなく大破したあたしのスチルが見たいと抜かすかこの男は。
「うわ最低。ただでさえビリビリ破いて止血してこの露出度なのよ?服が溶けちゃうのは困るって。
でもそれでこそダンテって感じもするけど」
てーん!
立ち上がって今一度服装を見てみよう。
かつては白かったワンピース。この悪魔の城で白とはかけ離れた色になってしまっているが、問題はそこじゃない。
様々な理由で破いたり破けたり。
裾が極端に短くなってしまっているのだ。
膝?太もも?際どいまではいかないものの、もちろん出ている。
「い〜いアングルになってきてるからな」
ぴら、スカートの裾を持ち上げられた。
ひいいい中身が見えてしまう!
「ちょっと!」
「はは、冗談だ。……少しは顔色戻ったな」
ぺたり、ふにふに。
頬におかれたダンテの手。それは移動してあたしのほっぺもちもちをしてくる。
それは遊ぶというより、今ここにいるあたしの存在を、確かな物と確認しているようで。
「うん……ごめんねダンテ」
あたしはされるがまま。
ダンテがホッとしてるし、嬉しそうだしこのままでいい。
「いい、謝るな。何も心配せず笑ってろって何度言えばわかる。
ディーヴァの涙は綺麗だぞ?けど、泣かれるとオレはどう声をかけていいか時々わからなくなる」
「ごめんなさい」
「だから、こういう時はごめんじゃなくて?」
「ありがとう」
その手が頭の上に置かれ、ゆっくりと撫でられる。
ああ、これだ。この撫で方、ダンテだ。
ゴオッ……!
その時、背後で炎が大きく燃え上がった。
「おっ!ちょうど終わったみたいだな」
ふうふう言いながら、ダンテがイフリートの籠手を使い、石だった物を炎から取り出す。
なんだろうこの焼き芋感……食べたいな。
変成が終わったそれは、アラストルによるとなんと錬金術ではお馴染みの『エリキサ』と呼ばれる物質だった。
それは、青く神秘的な宝石のようひ輝き、冷たくなったところでダンテによって、あたしの手に収められた。
「エリキサねぇ……ずいぶんトゲトゲしてるのな」
「うん。神様の血で出来てるっていう、飲み薬か粉状態のものじゃないのね」
固形物だったとは驚き。私が読んだ本には液体か粉末って書いてあったのに。
しかしエリキサは、永遠の命が手に入るとか、死者に飲ませれば復活するとか、肉体強化につかえるってものだということは、どの本でも変わらず書いてあった。
夢のような物質だ。
これを使えば、パパやママ、お兄ちゃんが……。
元の生活に戻ることができるかもしれない。
また会えるのなら会いたい。
けど悪魔から離れた安全な生活が得られるかどうかって言われると、あたしに天使の力があるから難しい。
どこにいたって狙われる存在、それがあたしだ。あたしがいてはまた家族を傷つけてしまう。
それに、こんなものに頼っちゃダメ。
復活したとして、生前と同じ姿や性格とは限らないってあたしは良く知ってる。
生ける屍、アンデッドになる確率が高いんだって。生から死を生み出すのは容易いけれど、死から生を生み出すことは禁忌とされている。死者は蘇らない。
人としての理をねじ曲げて生まれた物は、人間とは言わない。
そんな状態の家族を見たいか?ううん、見たくない。
家族も望まないだろう。安らかに眠りたいはず。
……うん。あたしにはこうしてダンテがいる、それで十分じゃない。
今ある幸せや温もりを大切にするのが、一番だいじ。
「なあ、難しい顔してるが大丈夫か?」
いけない、ダンテに心配されちゃった。
そんなに難しい顔してたのかな。眉間の皺伸ばしとこう。ぐりぐり。
「あははー。こんなトゲトゲした形状のもの口に入れたら、怪我して死にそうだなーって思っただけだよ」
「はぁ?ゆで卵の中身にでも見えてたのか」
「見えないけど。
でもねダンテくん、世の中にはアローカナという鳥の青い卵があってだね?濃厚で甘味が強くて美味しくてだね??」
「それトゲトゲしてるんだから食うって選択肢はいい加減捨てろ!」
ありゃ、怒られた。あたしなりの冗談がダンテには通じな……。
「……あと無理して笑うな。無理して変な冗談言わなくていいからな。何かあったらすぐ言え」
通じてたみたい。顔に出てたかな。
頬を両手で挟み込まれたまま、見つめ合うこと数秒。
「ダンテ……」
「なんだ」
「ごめん食べ物食べたいのはホントなの」
「あっそうっすか。ちっ、このはらっぺらしめ……!」
「はらっぺらしは褒め言葉だからね」
お腹を小さく鳴らしてむぎゅむぎゅ。手のひらのつぼ押しがてら、エリキサを握っていれば手の中からそれが囁いた。
『我は魔の門を開く第一の鍵なり。
二つ目の鍵は映し世の世界にある』
このエリキサは、鏡の封印を解き放つ力を備えているらしい。
鏡……いい思い出がなんにもないのよね。悪夢の中でも、いい思い出が悪魔で汚されたばかりだし。
でも、確かにどこかの鑑と呼応している。そんな雰囲気がエリキサからは感じ取れた。
そして足元にはまたも、深い闇色が広がる穴。ゲートが開かれた。
こっちにおいで。と恐ろしい悪魔が囁いているような気がした。
●あとがき
悪夢の空間やたら長くてすみません……!
泣き止みはしたものの、すんすんと鼻を鳴らし続けちゃうあたしに、アラストルがこぼした。ここまで泣いちゃうと鼻がなかなか止まらないのよね。
うん、でも、少しでも場を和ませようとしたんだろうけど、結局ナイトメア関連かぁ。らしいといえばらしい。
「そういえば、ダンテも戦闘中にかかってたよね?特になんともなかったみたいだけど……もしかしてナイトメアのゲルって酸性なの?」
『イエス!酸性!
あいつの体って骨や塵芥内包してるゲル状だけど、あの体自体が消化液みたいなものなのさ。
だからたまに肌とか服とか溶かしちゃう酸ぶっかけてくるんだよ』
自分が取り込まれる時に付着したゲル。あれがすべて酸だった時を想像する。ゾッとした。
「ひえ……何それ怖い。それを思うと悪夢見てるほうで良かったと言えなくもないかも……」
実際は悪夢の方が嫌だったけど。
いやでも酸に肌が溶けるってかなり痛そう。化学の実験で取り扱った塩酸みたいなものかな。
塩酸ならすぐに処置すればまだしも、硫酸で考えてみよう。ものすごく火傷しちゃう!やだこわい!
「チクショウ!」
その時、ダンテが壁を殴りつけて拳をめり込ませた。
壁どころかこの中庭が壊れちゃうからやめて欲しい。
「ど、どうしたの?」
「なんでそれやってくれなかったんだナイトメア……!
服が溶けるディーヴァなんてご褒美じゃないか。ああ、見たかった……!」
握り拳を震わせ、顔を歪めながらのこのセリフである。
ほほう!中破ではなく大破したあたしのスチルが見たいと抜かすかこの男は。
「うわ最低。ただでさえビリビリ破いて止血してこの露出度なのよ?服が溶けちゃうのは困るって。
でもそれでこそダンテって感じもするけど」
てーん!
立ち上がって今一度服装を見てみよう。
かつては白かったワンピース。この悪魔の城で白とはかけ離れた色になってしまっているが、問題はそこじゃない。
様々な理由で破いたり破けたり。
裾が極端に短くなってしまっているのだ。
膝?太もも?際どいまではいかないものの、もちろん出ている。
「い〜いアングルになってきてるからな」
ぴら、スカートの裾を持ち上げられた。
ひいいい中身が見えてしまう!
「ちょっと!」
「はは、冗談だ。……少しは顔色戻ったな」
ぺたり、ふにふに。
頬におかれたダンテの手。それは移動してあたしのほっぺもちもちをしてくる。
それは遊ぶというより、今ここにいるあたしの存在を、確かな物と確認しているようで。
「うん……ごめんねダンテ」
あたしはされるがまま。
ダンテがホッとしてるし、嬉しそうだしこのままでいい。
「いい、謝るな。何も心配せず笑ってろって何度言えばわかる。
ディーヴァの涙は綺麗だぞ?けど、泣かれるとオレはどう声をかけていいか時々わからなくなる」
「ごめんなさい」
「だから、こういう時はごめんじゃなくて?」
「ありがとう」
その手が頭の上に置かれ、ゆっくりと撫でられる。
ああ、これだ。この撫で方、ダンテだ。
ゴオッ……!
その時、背後で炎が大きく燃え上がった。
「おっ!ちょうど終わったみたいだな」
ふうふう言いながら、ダンテがイフリートの籠手を使い、石だった物を炎から取り出す。
なんだろうこの焼き芋感……食べたいな。
変成が終わったそれは、アラストルによるとなんと錬金術ではお馴染みの『エリキサ』と呼ばれる物質だった。
それは、青く神秘的な宝石のようひ輝き、冷たくなったところでダンテによって、あたしの手に収められた。
「エリキサねぇ……ずいぶんトゲトゲしてるのな」
「うん。神様の血で出来てるっていう、飲み薬か粉状態のものじゃないのね」
固形物だったとは驚き。私が読んだ本には液体か粉末って書いてあったのに。
しかしエリキサは、永遠の命が手に入るとか、死者に飲ませれば復活するとか、肉体強化につかえるってものだということは、どの本でも変わらず書いてあった。
夢のような物質だ。
これを使えば、パパやママ、お兄ちゃんが……。
元の生活に戻ることができるかもしれない。
また会えるのなら会いたい。
けど悪魔から離れた安全な生活が得られるかどうかって言われると、あたしに天使の力があるから難しい。
どこにいたって狙われる存在、それがあたしだ。あたしがいてはまた家族を傷つけてしまう。
それに、こんなものに頼っちゃダメ。
復活したとして、生前と同じ姿や性格とは限らないってあたしは良く知ってる。
生ける屍、アンデッドになる確率が高いんだって。生から死を生み出すのは容易いけれど、死から生を生み出すことは禁忌とされている。死者は蘇らない。
人としての理をねじ曲げて生まれた物は、人間とは言わない。
そんな状態の家族を見たいか?ううん、見たくない。
家族も望まないだろう。安らかに眠りたいはず。
……うん。あたしにはこうしてダンテがいる、それで十分じゃない。
今ある幸せや温もりを大切にするのが、一番だいじ。
「なあ、難しい顔してるが大丈夫か?」
いけない、ダンテに心配されちゃった。
そんなに難しい顔してたのかな。眉間の皺伸ばしとこう。ぐりぐり。
「あははー。こんなトゲトゲした形状のもの口に入れたら、怪我して死にそうだなーって思っただけだよ」
「はぁ?ゆで卵の中身にでも見えてたのか」
「見えないけど。
でもねダンテくん、世の中にはアローカナという鳥の青い卵があってだね?濃厚で甘味が強くて美味しくてだね??」
「それトゲトゲしてるんだから食うって選択肢はいい加減捨てろ!」
ありゃ、怒られた。あたしなりの冗談がダンテには通じな……。
「……あと無理して笑うな。無理して変な冗談言わなくていいからな。何かあったらすぐ言え」
通じてたみたい。顔に出てたかな。
頬を両手で挟み込まれたまま、見つめ合うこと数秒。
「ダンテ……」
「なんだ」
「ごめん食べ物食べたいのはホントなの」
「あっそうっすか。ちっ、このはらっぺらしめ……!」
「はらっぺらしは褒め言葉だからね」
お腹を小さく鳴らしてむぎゅむぎゅ。手のひらのつぼ押しがてら、エリキサを握っていれば手の中からそれが囁いた。
『我は魔の門を開く第一の鍵なり。
二つ目の鍵は映し世の世界にある』
このエリキサは、鏡の封印を解き放つ力を備えているらしい。
鏡……いい思い出がなんにもないのよね。悪夢の中でも、いい思い出が悪魔で汚されたばかりだし。
でも、確かにどこかの鑑と呼応している。そんな雰囲気がエリキサからは感じ取れた。
そして足元にはまたも、深い闇色が広がる穴。ゲートが開かれた。
こっちにおいで。と恐ろしい悪魔が囁いているような気がした。
●あとがき
悪夢の空間やたら長くてすみません……!