mission 18:baby is cruel ~トラウマ~
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深く息を吸って、静かに答える。
「周りの状況よくみろ。今自分がどこにいるかその目で見て確認しろ。
本当に体が痛いのか、痛いならどこが痛いのかよく調べろ。少なくとも外傷はない。
お前は悪夢にとらわれていただけだ。全ては夢だ」
暴れ馬もかくやなディーヴァの動きが遅くなっていき、そして止まる。
ぐるぅりと周りを見渡し、自分をペタペタと触って体に痛みがあるのか確認していた。
「こ、こ……うちじゃない。ここは……魔帝の、」
うち?見ていたのは事務所の夢か?それともディーヴァの生家の夢だろうか。
「うぷ、気持ち悪い……」
「お、おお?大丈夫か?吐くなら吐いちまえ
「いい、大丈夫……吐くもの何もない」
えずいたディーヴァの背をさする。
その吐き気はすぐにおさまったようで、オレの顔を伺うように見上げてくる。……目が合った。
はくはくと呼吸する口もと。顔色も悪い。
やっぱりまた過呼吸起こしそうになってたんじゃねぇか。
さすっていた背中をトントン叩いて落ち着かせる。
「でも、でも……」
「うん?でも、なんだ?」
呼吸と共に落ち着いてきたディーヴァの鼓動。
それと共に、くしゃりとゆがむ表情。涙腺が緩んだのか緑の瞳からぼろぼろぼろと大粒の涙がこぼれ落ち始めた。
ギョッとして固まったオレを許せ。
「もうやだぁ……こんな悪魔だらけの場所も!魔帝がいるこの世界も!何もかも大嫌い!
もうどうせ助からないの。諦めるしかないの。あんなのにかないっこないし、無駄なの。どこに逃げても逃げられない。
あたしもダンテも殺されちゃう!おなかにおっきな穴開けて!
あたしはすべて奪われ続けて死んじゃうの!みんな負けちゃう!
あの悪夢そのままに!」
おろおろしてしまったが、途中聞こえた単語がオレの意識をはっきりさせた。怒りと憎しみを思い出させるその単語。
「誰が、死ぬって?誰が負けるって?」
玉座でふんぞり返り、ディーヴァを盾にして引きこもっているだろう、そんな魔帝ごときにこのオレが負けて、死ぬ?
オレは今、ディーヴァの体を取り戻すため、そして仇を討ちに向かっている。
負けるなんてあってはならないし、有り得ないことだ。
一番信じて欲しい女に、オレは随分見下されているようだ。悲しいな。
オレがナイフのような殺気を放ったことで、ディーヴァが震える。
ディーヴァに向けたものじゃない。魔帝向けたものだ。だが、ディーヴァはその殺気に至近距離で当てられ恐怖を感じたようだ。
天使の生存本能が、殺られる!そう思ったのかもしれない。
「やっ!!」
「い゛っーー!?」
オレを否定したディーヴァの手のひらが飛んでくる。
ガリ、という音。予想外の痛みにオレの口から声が漏れた。
頬から血が滲むのを感じる。
ああ、引っかかれたんだなあと、そこで理解した。
「ぁ……ごめ、なさ……」
さすがに効いた。ディーヴァの腹パンなんかだと全く効かない。パンチが弱すぎるからな。
だが頬は鋼鉄でできてるわけじゃなし、爪で引っ掻かれれば痛いし傷ができるに決まっている。
まるで飼い猫にやられたかのようだな。
もっとも、微笑ましくおもうのは、こんなの怪我のうちに入らないからだろう。そして愛する人にやられた。そこが大きい。……オレはマゾじゃないぞ?
ただ、引っ掻いた側の爪が傷ついて剥がれてないかは気になるが。
「あたし、なんてことを。
ごめんなさい……ごめんなさい……っ!」
オレが何も言わないのは怒っているから、そう思ったのか。
ディーヴァが今まで以上に震えている。
「大丈夫だ。すぐ治る。
…………ほらな」
腕で拭い去れば、かすり傷の爪痕なんてもの、すぐ治った。
もうどこにもその痕はない。
ディーヴァに立てられた背中の爪痕さえ一瞬なんだもんなぁ……愛の証がオレも欲しいぜ。
「落ち着け。お前の心をオレに預けろ」
今度はそっと、壊物を扱うように正面から抱きしめる。
涙で濡れる瞼から、頬にかけ、そして首筋にまで念入りに唇を落としていけば、その順番に合わせてディーヴァの緊張が解けていく。
「飲み込まれた先でお前が何を見たのかはよく知らねぇ。でもだいたいの見当はつく。
オレが魔帝を必ず倒すってそう言ってるだろ。それを信じろ。
悪夢は悪夢。ただの夢。ぜんぶわるーい夢だよ。
悪魔を倒してはやく帰ろう。
帰って美味いもん食べて好きなことして……ちょっとイイ酒飲んだり、たまにはピザ頼むのもいいな。そんで一緒に飽きるほど眠って、そうだな……食っちゃ寝で太るほど眠るのもいいかもしれない。
それからふたりで、うんと幸せな夢を見るんだ。
オレが一緒ならいい夢が見れる、いつもそうだろ?」
恐怖が薄まり、そして緊張がほぐれたディーヴァ。呼吸も鼓動も安定した彼女が、口を尖らせた。
「……いつもじゃないもん。夢が見れないほど疲れ果てて眠っちゃう時あるもん」
「あーー…………それはまあ、オレのせいだな、うん」
オレの下でかわいく啼いてくれるディーヴァも悪いと思う。
子供のようにオレに抱きつき返し、頭をぐりぐりと押し付けてくる。
ああ、やはりディーヴァとはこうでなければ。
「こうしてるとディーヴァはおこちゃまだな」
「おこちゃまでごめんなさいね!成長しなくてごめんね!!」
「責めてないっての。かわいいよ」
ぽんぽん。子供にするように、腕で包み込みそして背中を優しくたたく。
子供、ねぇ……。
ナイトメアも子供の悪魔だろう。それも生まれたての赤子のような。
悪魔の兵器?いや、生きている兵器な以上、そこには多少なりとも感情がある
子供は残酷だ。
その結果何が起こるかなんて二の次で、笑いながら残虐極まりない行動を平気でする。
誰も教えてくれなかったら当然だ。
何がよくて何が悪いのかわかっていないのだから。
直接言ったわけじゃないが、もしかしたらディーヴァも気がついてるかもしれない。
それほどまでの時間を、あちらで過ごしてきたのなら尚更だ。
だが、悪魔が赤子同然だと知れたら、ディーヴァはどう思う?
自分がされたことと天秤にかけ続けて、ひどく葛藤するはずだ。悪魔は許すな。そう言っても、恐怖との狭間で己の気持ちと戦おうとする。
そういうところもオレは好きだけど……でも無理はしてほしくない。
ましてや、先程の取り乱しようだからな。
だから、知られてはいけないのだ。
あの暗黒の空間では、赤子の泣き叫ぶ声が聞こえた気がする。許せ。
「周りの状況よくみろ。今自分がどこにいるかその目で見て確認しろ。
本当に体が痛いのか、痛いならどこが痛いのかよく調べろ。少なくとも外傷はない。
お前は悪夢にとらわれていただけだ。全ては夢だ」
暴れ馬もかくやなディーヴァの動きが遅くなっていき、そして止まる。
ぐるぅりと周りを見渡し、自分をペタペタと触って体に痛みがあるのか確認していた。
「こ、こ……うちじゃない。ここは……魔帝の、」
うち?見ていたのは事務所の夢か?それともディーヴァの生家の夢だろうか。
「うぷ、気持ち悪い……」
「お、おお?大丈夫か?吐くなら吐いちまえ
「いい、大丈夫……吐くもの何もない」
えずいたディーヴァの背をさする。
その吐き気はすぐにおさまったようで、オレの顔を伺うように見上げてくる。……目が合った。
はくはくと呼吸する口もと。顔色も悪い。
やっぱりまた過呼吸起こしそうになってたんじゃねぇか。
さすっていた背中をトントン叩いて落ち着かせる。
「でも、でも……」
「うん?でも、なんだ?」
呼吸と共に落ち着いてきたディーヴァの鼓動。
それと共に、くしゃりとゆがむ表情。涙腺が緩んだのか緑の瞳からぼろぼろぼろと大粒の涙がこぼれ落ち始めた。
ギョッとして固まったオレを許せ。
「もうやだぁ……こんな悪魔だらけの場所も!魔帝がいるこの世界も!何もかも大嫌い!
もうどうせ助からないの。諦めるしかないの。あんなのにかないっこないし、無駄なの。どこに逃げても逃げられない。
あたしもダンテも殺されちゃう!おなかにおっきな穴開けて!
あたしはすべて奪われ続けて死んじゃうの!みんな負けちゃう!
あの悪夢そのままに!」
おろおろしてしまったが、途中聞こえた単語がオレの意識をはっきりさせた。怒りと憎しみを思い出させるその単語。
「誰が、死ぬって?誰が負けるって?」
玉座でふんぞり返り、ディーヴァを盾にして引きこもっているだろう、そんな魔帝ごときにこのオレが負けて、死ぬ?
オレは今、ディーヴァの体を取り戻すため、そして仇を討ちに向かっている。
負けるなんてあってはならないし、有り得ないことだ。
一番信じて欲しい女に、オレは随分見下されているようだ。悲しいな。
オレがナイフのような殺気を放ったことで、ディーヴァが震える。
ディーヴァに向けたものじゃない。魔帝向けたものだ。だが、ディーヴァはその殺気に至近距離で当てられ恐怖を感じたようだ。
天使の生存本能が、殺られる!そう思ったのかもしれない。
「やっ!!」
「い゛っーー!?」
オレを否定したディーヴァの手のひらが飛んでくる。
ガリ、という音。予想外の痛みにオレの口から声が漏れた。
頬から血が滲むのを感じる。
ああ、引っかかれたんだなあと、そこで理解した。
「ぁ……ごめ、なさ……」
さすがに効いた。ディーヴァの腹パンなんかだと全く効かない。パンチが弱すぎるからな。
だが頬は鋼鉄でできてるわけじゃなし、爪で引っ掻かれれば痛いし傷ができるに決まっている。
まるで飼い猫にやられたかのようだな。
もっとも、微笑ましくおもうのは、こんなの怪我のうちに入らないからだろう。そして愛する人にやられた。そこが大きい。……オレはマゾじゃないぞ?
ただ、引っ掻いた側の爪が傷ついて剥がれてないかは気になるが。
「あたし、なんてことを。
ごめんなさい……ごめんなさい……っ!」
オレが何も言わないのは怒っているから、そう思ったのか。
ディーヴァが今まで以上に震えている。
「大丈夫だ。すぐ治る。
…………ほらな」
腕で拭い去れば、かすり傷の爪痕なんてもの、すぐ治った。
もうどこにもその痕はない。
ディーヴァに立てられた背中の爪痕さえ一瞬なんだもんなぁ……愛の証がオレも欲しいぜ。
「落ち着け。お前の心をオレに預けろ」
今度はそっと、壊物を扱うように正面から抱きしめる。
涙で濡れる瞼から、頬にかけ、そして首筋にまで念入りに唇を落としていけば、その順番に合わせてディーヴァの緊張が解けていく。
「飲み込まれた先でお前が何を見たのかはよく知らねぇ。でもだいたいの見当はつく。
オレが魔帝を必ず倒すってそう言ってるだろ。それを信じろ。
悪夢は悪夢。ただの夢。ぜんぶわるーい夢だよ。
悪魔を倒してはやく帰ろう。
帰って美味いもん食べて好きなことして……ちょっとイイ酒飲んだり、たまにはピザ頼むのもいいな。そんで一緒に飽きるほど眠って、そうだな……食っちゃ寝で太るほど眠るのもいいかもしれない。
それからふたりで、うんと幸せな夢を見るんだ。
オレが一緒ならいい夢が見れる、いつもそうだろ?」
恐怖が薄まり、そして緊張がほぐれたディーヴァ。呼吸も鼓動も安定した彼女が、口を尖らせた。
「……いつもじゃないもん。夢が見れないほど疲れ果てて眠っちゃう時あるもん」
「あーー…………それはまあ、オレのせいだな、うん」
オレの下でかわいく啼いてくれるディーヴァも悪いと思う。
子供のようにオレに抱きつき返し、頭をぐりぐりと押し付けてくる。
ああ、やはりディーヴァとはこうでなければ。
「こうしてるとディーヴァはおこちゃまだな」
「おこちゃまでごめんなさいね!成長しなくてごめんね!!」
「責めてないっての。かわいいよ」
ぽんぽん。子供にするように、腕で包み込みそして背中を優しくたたく。
子供、ねぇ……。
ナイトメアも子供の悪魔だろう。それも生まれたての赤子のような。
悪魔の兵器?いや、生きている兵器な以上、そこには多少なりとも感情がある
子供は残酷だ。
その結果何が起こるかなんて二の次で、笑いながら残虐極まりない行動を平気でする。
誰も教えてくれなかったら当然だ。
何がよくて何が悪いのかわかっていないのだから。
直接言ったわけじゃないが、もしかしたらディーヴァも気がついてるかもしれない。
それほどまでの時間を、あちらで過ごしてきたのなら尚更だ。
だが、悪魔が赤子同然だと知れたら、ディーヴァはどう思う?
自分がされたことと天秤にかけ続けて、ひどく葛藤するはずだ。悪魔は許すな。そう言っても、恐怖との狭間で己の気持ちと戦おうとする。
そういうところもオレは好きだけど……でも無理はしてほしくない。
ましてや、先程の取り乱しようだからな。
だから、知られてはいけないのだ。
あの暗黒の空間では、赤子の泣き叫ぶ声が聞こえた気がする。許せ。