mission 18:baby is cruel ~トラウマ~
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「すまんディーヴァ待たせた!!」
「あああああダンテ戻ってきた!はやくなんとかして!!」
ダンテが戻ってきた時には、ディーヴァのいる二階は壁や天井の一部がナイトメアの機関銃攻撃によって破壊され、悲惨な状態になっていた。
それでもなお、肉体はただの人間であるあたしが無傷でいることを、だれか褒めて欲しい。
戻って早々にナイトメアの注意を自分に向けると、ダンテはまずもう切れるであろう紋章の光を灯し直した。
紋章が発動した状態でなくては、ナイトメアへの攻撃は不可能だからだ。
かぱりと頭部の核が露出する。
その瞬間に冷気の塊で出来た光線がダンテに向かって発射されたが、ダンテは飛び上がり、ナイトメアの背中の装甲に乗った。
「おっと。子供はそろそろ寝る時間だぜ」
ぐるぐると四方八方に光線を発射してダンテを振り落とそうとするも、そんなことでダンテが落ちるわけもなく。
背中という安全地帯から、ダンテは核を何度も攻撃した。
……それはいいけど、あたしのいる二階部分にまで、光線が届きそうなんですけど。
ダンテは暴れさせすぎ!
あたしへの無差別な攻撃のせいか、段差や障害物が増えた中庭内。
いやいやと体を振ったナイトメアから、光線どころかゲル状の液体が、四方八方に飛び散る。
動きづらい中で飛び散ったその液体が、あたしの足に絡みついた。
「えっ」
べちゃり。絡み付いたそれは急速に質量を増していく。
この中庭内にナイトメアが出現した時と同じように、床からさらに染み出したゲル状の触手。
「やだ、やだ……!ダンテ!!」
振り払おうとした手にも付着したそれは、腕にも絡みつき増殖して体を包み込む。
「なっ!ディーヴァ!!」
助けを求め伸ばす手が、ゲルに飲み込まれる。
ダンテが伸ばした手が空を切るのを最後に、その視界も飲み込まれた……。
***
……そして暗転。
真っ暗闇からの、起床。
「ぎぃやーーーー!痛い痛い痛い!あた、あたし食べられ……、アレ?」
みっともないほど大きな叫び声が出た気がする。
って、痛くない?
「あ、無事みたい。体はなんともない」
ぺたぺたと体を触り確認するが、どこにも異変はなかった。
足も手もある。痛いところもない。
しいていえば、思い切り叫んだことで喉がちょっぴり痛いくらいか。
だいたい、ぎぃやーーってなに。女の子とは思えない叫び声だったよ。ダンテには聞かせられないなあ……。
無事なのはよかったけれど、美味しくないからって吐き出されちゃったのかな。……いやまさかそんな。我天使ぞ?悪魔の好物ぞ??
飲み込まれた時を思い出してみる。
ほんの一瞬の出来事だったよね?
飲み込まれた瞬間は死を覚悟した。
ナイトメアの体を構成している何かの骨のように溶かされて食べられると思った。
なのに、ほんの少しの間気を失ったら、ついた先はここ。
それとも、この暗い空間こそが、ナイトメアにとってのお食事どころなのだろうか。
この空間でジワジワあたしを追い詰めて食べちゃう……とか。
えっつまりここ胃袋?
ありえる。だって相手は悪魔だもの。
「というかここどこなんだろう?」
暗いし、何よりダンテがいなくてひとりぼっち。
置いていかないでとは思っていたけど、まさかあたしが取り込まれるなんて。
不安と恐怖で、ガタガタと震える。
でも、この場所へ助けになんて来れないのはなんとなくわかる。
何かあれば、自分で戦うか、逃げるしかない。戦うのは無理だから逃げるという選択肢しか残ってないけど。
足音をなるべく立てずに歩いてみる。
しばらくすると、真っ暗闇とは違うことがわかった。
窓もあったため、そこから差し込む月明かりが足元を照らしてくれた。
目が徐々に慣れてきてようやく、ここがどこであるかあたしは理解した。
そう、いやでも理解することができてしまった。
手に馴染む色合いの調度品。
踏み慣れた床やカーペット。
柔らかい色合いのカーテン。
懐かしい空気の香りがする。
かつて家族と住んでいた生家だ。
そして窓から覗く月の大きさ、形、その色で気がついた。
ああこれは、あの時と同じ……。
悪魔はあたしに悪夢を見せたいのだと、瞬時に理解した。
「慣れってこわいねえ」
これまでも何度かこの悪夢は繰り返し見てきたのだ。それこそ、うんざりするくらい。
自分の中にある最も強い恐怖を体験する、小悪魔の戯れに翻弄された時も、これと同じような悪夢を見させられた。
今でももちろん恐怖には違いないが、乾いた笑いがもれるほどにはもう慣れた。
ならばあたしがすることはひとつだけ。
ホールを通って階段を上がり、廊下を通って自分の部屋へ行くこと。
ただそれだけ。
言葉にすると簡単だけど、雑魚とはいえ悪魔の気配は漂っているし、あたしは攻撃手段を持っていない。
ハードモード。ディーヴァマストダイどころじゃない、HELLあーんどHELLモードだ。そんなモードあたしにないけれど。
ここは一階の廊下だ。
家族の亡骸は見当たらないけれど、本来なら母か父が倒れていたはずの場所。
先は短いようで、でも長い。
それでも部屋に行けば、きっと何かが変わるはず。
いつもの夢のように部屋でシーツをかぶって耐えていれば、いつものようにダンテが助けに来てくれる。
小悪魔の戯れの時は、そのダンテに殺されるという悪夢の中のさらなる悪夢という展開が待っていたけど……でもこれはそれとはまた違うと思うし。
でも警戒はしておこう。
だがこれは、ディーヴァという獲物で遊び、食らうためナイトメアが見せる「悪夢」だということを、ディーヴァはまだちゃんと理解していなかった。
廊下にもホールにも家族の亡骸はなかった。
壁や床に飛び散る血飛沫だけが、その凄惨さを表している。
飛び散る血を視覚でとらえただけだったなら、ホラーハウスのよくできた血糊と錯覚してもおかしくない。
だが、違う。
懐かしい空気の香りの中、むせかえるほどの濃ゆい鉄錆くささが鼻をツンと刺激してくる。
いけない、吐き気が。
当時感じた、大切な人たちを守れなかったやるせない気持ちと、悔しさと悲しみ。そしてこの吐き気で立ち止まりそうになる。
唇を真一文字に結び、あたしは足を進めた。
「あああああダンテ戻ってきた!はやくなんとかして!!」
ダンテが戻ってきた時には、ディーヴァのいる二階は壁や天井の一部がナイトメアの機関銃攻撃によって破壊され、悲惨な状態になっていた。
それでもなお、肉体はただの人間であるあたしが無傷でいることを、だれか褒めて欲しい。
戻って早々にナイトメアの注意を自分に向けると、ダンテはまずもう切れるであろう紋章の光を灯し直した。
紋章が発動した状態でなくては、ナイトメアへの攻撃は不可能だからだ。
かぱりと頭部の核が露出する。
その瞬間に冷気の塊で出来た光線がダンテに向かって発射されたが、ダンテは飛び上がり、ナイトメアの背中の装甲に乗った。
「おっと。子供はそろそろ寝る時間だぜ」
ぐるぐると四方八方に光線を発射してダンテを振り落とそうとするも、そんなことでダンテが落ちるわけもなく。
背中という安全地帯から、ダンテは核を何度も攻撃した。
……それはいいけど、あたしのいる二階部分にまで、光線が届きそうなんですけど。
ダンテは暴れさせすぎ!
あたしへの無差別な攻撃のせいか、段差や障害物が増えた中庭内。
いやいやと体を振ったナイトメアから、光線どころかゲル状の液体が、四方八方に飛び散る。
動きづらい中で飛び散ったその液体が、あたしの足に絡みついた。
「えっ」
べちゃり。絡み付いたそれは急速に質量を増していく。
この中庭内にナイトメアが出現した時と同じように、床からさらに染み出したゲル状の触手。
「やだ、やだ……!ダンテ!!」
振り払おうとした手にも付着したそれは、腕にも絡みつき増殖して体を包み込む。
「なっ!ディーヴァ!!」
助けを求め伸ばす手が、ゲルに飲み込まれる。
ダンテが伸ばした手が空を切るのを最後に、その視界も飲み込まれた……。
***
……そして暗転。
真っ暗闇からの、起床。
「ぎぃやーーーー!痛い痛い痛い!あた、あたし食べられ……、アレ?」
みっともないほど大きな叫び声が出た気がする。
って、痛くない?
「あ、無事みたい。体はなんともない」
ぺたぺたと体を触り確認するが、どこにも異変はなかった。
足も手もある。痛いところもない。
しいていえば、思い切り叫んだことで喉がちょっぴり痛いくらいか。
だいたい、ぎぃやーーってなに。女の子とは思えない叫び声だったよ。ダンテには聞かせられないなあ……。
無事なのはよかったけれど、美味しくないからって吐き出されちゃったのかな。……いやまさかそんな。我天使ぞ?悪魔の好物ぞ??
飲み込まれた時を思い出してみる。
ほんの一瞬の出来事だったよね?
飲み込まれた瞬間は死を覚悟した。
ナイトメアの体を構成している何かの骨のように溶かされて食べられると思った。
なのに、ほんの少しの間気を失ったら、ついた先はここ。
それとも、この暗い空間こそが、ナイトメアにとってのお食事どころなのだろうか。
この空間でジワジワあたしを追い詰めて食べちゃう……とか。
えっつまりここ胃袋?
ありえる。だって相手は悪魔だもの。
「というかここどこなんだろう?」
暗いし、何よりダンテがいなくてひとりぼっち。
置いていかないでとは思っていたけど、まさかあたしが取り込まれるなんて。
不安と恐怖で、ガタガタと震える。
でも、この場所へ助けになんて来れないのはなんとなくわかる。
何かあれば、自分で戦うか、逃げるしかない。戦うのは無理だから逃げるという選択肢しか残ってないけど。
足音をなるべく立てずに歩いてみる。
しばらくすると、真っ暗闇とは違うことがわかった。
窓もあったため、そこから差し込む月明かりが足元を照らしてくれた。
目が徐々に慣れてきてようやく、ここがどこであるかあたしは理解した。
そう、いやでも理解することができてしまった。
手に馴染む色合いの調度品。
踏み慣れた床やカーペット。
柔らかい色合いのカーテン。
懐かしい空気の香りがする。
かつて家族と住んでいた生家だ。
そして窓から覗く月の大きさ、形、その色で気がついた。
ああこれは、あの時と同じ……。
悪魔はあたしに悪夢を見せたいのだと、瞬時に理解した。
「慣れってこわいねえ」
これまでも何度かこの悪夢は繰り返し見てきたのだ。それこそ、うんざりするくらい。
自分の中にある最も強い恐怖を体験する、小悪魔の戯れに翻弄された時も、これと同じような悪夢を見させられた。
今でももちろん恐怖には違いないが、乾いた笑いがもれるほどにはもう慣れた。
ならばあたしがすることはひとつだけ。
ホールを通って階段を上がり、廊下を通って自分の部屋へ行くこと。
ただそれだけ。
言葉にすると簡単だけど、雑魚とはいえ悪魔の気配は漂っているし、あたしは攻撃手段を持っていない。
ハードモード。ディーヴァマストダイどころじゃない、HELLあーんどHELLモードだ。そんなモードあたしにないけれど。
ここは一階の廊下だ。
家族の亡骸は見当たらないけれど、本来なら母か父が倒れていたはずの場所。
先は短いようで、でも長い。
それでも部屋に行けば、きっと何かが変わるはず。
いつもの夢のように部屋でシーツをかぶって耐えていれば、いつものようにダンテが助けに来てくれる。
小悪魔の戯れの時は、そのダンテに殺されるという悪夢の中のさらなる悪夢という展開が待っていたけど……でもこれはそれとはまた違うと思うし。
でも警戒はしておこう。
だがこれは、ディーヴァという獲物で遊び、食らうためナイトメアが見せる「悪夢」だということを、ディーヴァはまだちゃんと理解していなかった。
廊下にもホールにも家族の亡骸はなかった。
壁や床に飛び散る血飛沫だけが、その凄惨さを表している。
飛び散る血を視覚でとらえただけだったなら、ホラーハウスのよくできた血糊と錯覚してもおかしくない。
だが、違う。
懐かしい空気の香りの中、むせかえるほどの濃ゆい鉄錆くささが鼻をツンと刺激してくる。
いけない、吐き気が。
当時感じた、大切な人たちを守れなかったやるせない気持ちと、悔しさと悲しみ。そしてこの吐き気で立ち止まりそうになる。
唇を真一文字に結び、あたしは足を進めた。