mission 18:baby is cruel ~トラウマ~
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階下の中庭ではダンテがナイトメアと激しい戦闘を繰り広げている。
ナイトメアが新しく自身の一部を鋭い刃の形に切り離して、ブーメランのようにダンテに放っている。
意外と大きなそれは、縦横無尽でいつこちらに届くかわからなくてこわい。大きいから大丈夫だとは思ってるけども……。
あたしは思わず、柱の影に隠れ頭を引っ込めた。
ギャリギャリ!
「ちっ……!」
ブーメランを弾こうとスパーダやアラストルを振るうが押し負けて、ダンテが飛ばされた。
武器で跳ね返すのは難しいのか、ダンテが回避に回っている。ブーメランに関しては防戦一方だ。
とはいえ相手は、一度戦ったことのある悪魔。戦い方を覚えたダンテに死角はない。
最初から紋章へと光を灯すことで、露出されたナイトメアの核へと攻撃を叩き込んでいた。
よかった。
紋章に光が灯ったから、あたしの目にも少しはダンテの様子が確認できる。
相変わらずゲル状のあの体は、少しだけ気色悪いけれども。
「わっ!危な……」
ブーメランは大きいからともかく、あたしの方にもナイトメアが放ったミサイルや、機関銃の取りこぼしが飛んできた!
パラパラと破壊された壁の破片が頭に落ちてくる。
黒髪だったら、埃と煤で真っ白になっていた。汚れることに変わりはないけど、薄い髪色でよかったかもしれない。
「ディーヴァ大丈夫か!!」
「だ、大丈夫……!」
数の多いミサイルのほとんどは、ダンテがイフリートのインフェルノで燃やし、弾いてくれている。
跳ね返ったそれは、露出された核に当たって逆にナイトメアへダメージが入った。
あれ、核が青色から緑色にかわったような……?気のせいかな。
ひいふうみい。
ミサイルは一度に十六発も撃つようで、こんなに多いんじゃ取りこぼしがあっても仕方ないね。
非戦闘員だからしょうがないけど、ダンテのために何もできないのが心苦しい。
あたしが出来ることなんて、こうして戦いの邪魔にならない場所でダンテの無事を祈るのみだ。
顔をそっと出してダンテの戦いの様子を覗き見る。
ああ、やっぱり核の色が変わってる。
青だったはずのそれは、緑色に変わっていた。
それがどういう意味を持つのかあたしにはわからないけど、よくない兆候だと思う。ダンテ相手にね。
そしてそれは的中した。
明滅した頭部の核が発射した冷たい光線が、一直線ではなく、ダンテを追うようにぐるぐると動いたのだ!
「うっわ、あっぶね!凍っちまうところだぜ」
多分、攻撃を受ければ受けるほどに、ダメージが蓄積されて核の色が変わるんだと思う。
そしてカウンターよろしく、ダンテに向かって放たれる攻撃が強力になるんではないかな、とあたしは睨んだ。
「オア゛ッ!」
と、ここでまさかのまさか。
先程の冷たい光線によって凍りついた床で、ダンテがつるりんステーン!と転んだ。
あの!ダンテが!である。
天狗の飛び損ない、とでもいうべきなのだろうか……うん、そうね。ダンテは半分悪魔。つまり半分は人間。
こういうこともある。
そんなちょっとドジなところもあるダンテが好き。
だけど、好きなんて言っていられなくなった。
ばくん!
ナイトメアの至近距離についてしまったダンテが、そのゲル状の体に取り込まれ、食われてしまった!
一度目のあの時のように!!
「えっ!うそでしょダンテー!?」
ダンテと一緒だとしても、悪魔に取り込まれてどこかへ行くなんて嫌だよ?でも、ひとりでこんなところに置いていかれることのほうがもっといや。
前回もそうだった。
蛭のような、幼虫のようなウネウネした悪魔があたしをどこまでも追ってきて……。ゾゾゾゾゾ。ああ気持ち悪い。
気持ち悪さもあるけど、心細くてたまらない。ひとりぼっちは嫌。
ダンテ、あたしを置いていかないで。
恐怖を感じ、自分の腕で体を抱きしめる。
ダンテを取り込み、暗闇の中でうぞうぞと蠢くナイトメアを涙目のまま見つめる。
その頭部がギギギギと、こちらに向けられた。
ナイトメアの無機質で硬質なボディには顔がない。なのに今は顔があるように見える。
あたしというおもちゃを見つけたその顔が、嬉しそうな笑みを浮かべたように見えた。
あ。まずい。
小さな機関銃の弾が、こちらに一斉に放たれた。
***
再び降り立った、ナイトメアによる悪夢の空間。
悪夢と言いながらも、オレにとっては全然悪夢じゃない。むしろ置いてきたディーヴァのほうが悪夢を体験しているんじゃなかろうか。
……絶対そうだ。
「早く戻らないとな」
歯向かってくるサルガッソー群を軽く蹴散らすと、今回は蜘蛛ではなく大きな鳥の幻影が現れた。
使う技を見れば、ああ……ディーヴァになら悪夢になりそうな相手だった。
悪夢というか、ディーヴァが見たら悲しむ悪魔。
グリフォンの幻影だ。
『真っ黒焦げだぁ!!』の声もなしに、ただひたすら電撃を放ってくるだけの幻影に。こんな劣化版に、オレが負けると思うか?
今回もオレにとっての悪夢にはなり得ないな。
少しは骨のある悪魔をよこしやがれ。
とにかく早く戻らねば。
スパーダを、アラストルを、そしてイフリートを振るいグリフォンの幻影と戦っていると、空間内にきゃらきゃらと楽しそうに笑う赤子の声が響いた。
『ここ、マスターにとっての悪夢の空間じゃなくて、ナイトメアにとってのマスターとの遊び場みたいだね』
グリフォンの幻影を使い、オレと遊んでいる……?たしかに蜘蛛の幻影の時も声は聞こえたが。
しかし、幻影を攻撃するたびにナイトメアにも痛みはあろうて。
だが今は遊びの時間なのか、ただひたすらにオレを攻撃してくる。オレからもたらされる痛みすら遊んだ時にできたかすり傷か何かに変えている。
「悪魔と遊ぶ暇はない。
戦いを長引かせようったって、そうはいくか」
目の前にチラついたものを、手のひらで挟んで確認しようとする赤子のようだ。
電撃によるV字挟み込み攻撃が、ここに展開された。
動きはグリフォン本体のように苛烈ではなく、どこかゆるゆると緩慢なものだ。
せっかちなグリフォンなら絶対にしないような、攻撃の仕方。
遊びたくなったら疲れるまで戦って遊び、腹が減ったら悪夢の空間に取り込んで食い、眠くなったら活動を止めて休む。
ナイトメアが使役する悪魔の攻撃からは、そんなイメージが伝わってくる。
今回で確信した。やはりナイトメアの本質は赤子そのものだ。
赤ん坊だろうが悪魔は悪魔だ。
魔帝に作られて日が浅いだとか、そういう期間は関係がない。
人を慈しみ愛するために泣くことと、生存するがために悪魔が哭くことは全く違う。
「これで終わりだ!
ディーヴァのもとへ返してもらうぞ」
グリフォンの幻影を真っ二つに両断して霧散させる。
赤子が母を求めて癇癪を起こしたような、悲痛な叫び泣きが響いた。
ナイトメアが新しく自身の一部を鋭い刃の形に切り離して、ブーメランのようにダンテに放っている。
意外と大きなそれは、縦横無尽でいつこちらに届くかわからなくてこわい。大きいから大丈夫だとは思ってるけども……。
あたしは思わず、柱の影に隠れ頭を引っ込めた。
ギャリギャリ!
「ちっ……!」
ブーメランを弾こうとスパーダやアラストルを振るうが押し負けて、ダンテが飛ばされた。
武器で跳ね返すのは難しいのか、ダンテが回避に回っている。ブーメランに関しては防戦一方だ。
とはいえ相手は、一度戦ったことのある悪魔。戦い方を覚えたダンテに死角はない。
最初から紋章へと光を灯すことで、露出されたナイトメアの核へと攻撃を叩き込んでいた。
よかった。
紋章に光が灯ったから、あたしの目にも少しはダンテの様子が確認できる。
相変わらずゲル状のあの体は、少しだけ気色悪いけれども。
「わっ!危な……」
ブーメランは大きいからともかく、あたしの方にもナイトメアが放ったミサイルや、機関銃の取りこぼしが飛んできた!
パラパラと破壊された壁の破片が頭に落ちてくる。
黒髪だったら、埃と煤で真っ白になっていた。汚れることに変わりはないけど、薄い髪色でよかったかもしれない。
「ディーヴァ大丈夫か!!」
「だ、大丈夫……!」
数の多いミサイルのほとんどは、ダンテがイフリートのインフェルノで燃やし、弾いてくれている。
跳ね返ったそれは、露出された核に当たって逆にナイトメアへダメージが入った。
あれ、核が青色から緑色にかわったような……?気のせいかな。
ひいふうみい。
ミサイルは一度に十六発も撃つようで、こんなに多いんじゃ取りこぼしがあっても仕方ないね。
非戦闘員だからしょうがないけど、ダンテのために何もできないのが心苦しい。
あたしが出来ることなんて、こうして戦いの邪魔にならない場所でダンテの無事を祈るのみだ。
顔をそっと出してダンテの戦いの様子を覗き見る。
ああ、やっぱり核の色が変わってる。
青だったはずのそれは、緑色に変わっていた。
それがどういう意味を持つのかあたしにはわからないけど、よくない兆候だと思う。ダンテ相手にね。
そしてそれは的中した。
明滅した頭部の核が発射した冷たい光線が、一直線ではなく、ダンテを追うようにぐるぐると動いたのだ!
「うっわ、あっぶね!凍っちまうところだぜ」
多分、攻撃を受ければ受けるほどに、ダメージが蓄積されて核の色が変わるんだと思う。
そしてカウンターよろしく、ダンテに向かって放たれる攻撃が強力になるんではないかな、とあたしは睨んだ。
「オア゛ッ!」
と、ここでまさかのまさか。
先程の冷たい光線によって凍りついた床で、ダンテがつるりんステーン!と転んだ。
あの!ダンテが!である。
天狗の飛び損ない、とでもいうべきなのだろうか……うん、そうね。ダンテは半分悪魔。つまり半分は人間。
こういうこともある。
そんなちょっとドジなところもあるダンテが好き。
だけど、好きなんて言っていられなくなった。
ばくん!
ナイトメアの至近距離についてしまったダンテが、そのゲル状の体に取り込まれ、食われてしまった!
一度目のあの時のように!!
「えっ!うそでしょダンテー!?」
ダンテと一緒だとしても、悪魔に取り込まれてどこかへ行くなんて嫌だよ?でも、ひとりでこんなところに置いていかれることのほうがもっといや。
前回もそうだった。
蛭のような、幼虫のようなウネウネした悪魔があたしをどこまでも追ってきて……。ゾゾゾゾゾ。ああ気持ち悪い。
気持ち悪さもあるけど、心細くてたまらない。ひとりぼっちは嫌。
ダンテ、あたしを置いていかないで。
恐怖を感じ、自分の腕で体を抱きしめる。
ダンテを取り込み、暗闇の中でうぞうぞと蠢くナイトメアを涙目のまま見つめる。
その頭部がギギギギと、こちらに向けられた。
ナイトメアの無機質で硬質なボディには顔がない。なのに今は顔があるように見える。
あたしというおもちゃを見つけたその顔が、嬉しそうな笑みを浮かべたように見えた。
あ。まずい。
小さな機関銃の弾が、こちらに一斉に放たれた。
***
再び降り立った、ナイトメアによる悪夢の空間。
悪夢と言いながらも、オレにとっては全然悪夢じゃない。むしろ置いてきたディーヴァのほうが悪夢を体験しているんじゃなかろうか。
……絶対そうだ。
「早く戻らないとな」
歯向かってくるサルガッソー群を軽く蹴散らすと、今回は蜘蛛ではなく大きな鳥の幻影が現れた。
使う技を見れば、ああ……ディーヴァになら悪夢になりそうな相手だった。
悪夢というか、ディーヴァが見たら悲しむ悪魔。
グリフォンの幻影だ。
『真っ黒焦げだぁ!!』の声もなしに、ただひたすら電撃を放ってくるだけの幻影に。こんな劣化版に、オレが負けると思うか?
今回もオレにとっての悪夢にはなり得ないな。
少しは骨のある悪魔をよこしやがれ。
とにかく早く戻らねば。
スパーダを、アラストルを、そしてイフリートを振るいグリフォンの幻影と戦っていると、空間内にきゃらきゃらと楽しそうに笑う赤子の声が響いた。
『ここ、マスターにとっての悪夢の空間じゃなくて、ナイトメアにとってのマスターとの遊び場みたいだね』
グリフォンの幻影を使い、オレと遊んでいる……?たしかに蜘蛛の幻影の時も声は聞こえたが。
しかし、幻影を攻撃するたびにナイトメアにも痛みはあろうて。
だが今は遊びの時間なのか、ただひたすらにオレを攻撃してくる。オレからもたらされる痛みすら遊んだ時にできたかすり傷か何かに変えている。
「悪魔と遊ぶ暇はない。
戦いを長引かせようったって、そうはいくか」
目の前にチラついたものを、手のひらで挟んで確認しようとする赤子のようだ。
電撃によるV字挟み込み攻撃が、ここに展開された。
動きはグリフォン本体のように苛烈ではなく、どこかゆるゆると緩慢なものだ。
せっかちなグリフォンなら絶対にしないような、攻撃の仕方。
遊びたくなったら疲れるまで戦って遊び、腹が減ったら悪夢の空間に取り込んで食い、眠くなったら活動を止めて休む。
ナイトメアが使役する悪魔の攻撃からは、そんなイメージが伝わってくる。
今回で確信した。やはりナイトメアの本質は赤子そのものだ。
赤ん坊だろうが悪魔は悪魔だ。
魔帝に作られて日が浅いだとか、そういう期間は関係がない。
人を慈しみ愛するために泣くことと、生存するがために悪魔が哭くことは全く違う。
「これで終わりだ!
ディーヴァのもとへ返してもらうぞ」
グリフォンの幻影を真っ二つに両断して霧散させる。
赤子が母を求めて癇癪を起こしたような、悲痛な叫び泣きが響いた。