mission 18:baby is cruel ~トラウマ~
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若干疲弊しながら、ダンテに続いて扉をくぐると、そこは見覚えのある階段塔につながっていた。
上に長いだけの狭い場所だ。
服や髪の水をふたりで絞りながら、会話する。
って、ダンテの靴の中すごい水溜まってる。うわぁべちょべちょ。
「へー、さっきの水牢がここに繋がってるとはな。最初は地下水路の臭い場所だったってのに」
「くさいよりましでしょ」
「水中で窒息するよりはくさいほうがいいと思うけどな。大体ディーヴァは匂いフェチだろ?」
「や、くさいのは結構です」
あたしは好きな匂いだけ嗅ぎたいのよね。
美味しい食べ物とかお花とか……ダンテの匂いも大好きだよ。ダンテの愛用してるコートの匂いとかも。
あと、ソウイウコトの時の汗に濡れてる男性!って感じのにおい……アレ結構クセになるんだよね。ドキドキしちゃう。
って、何へんなこといってるんだろう。きゃー!
恥ずかしさに熱が出そうな顔を覆いながらもじもじしてしまう。
そしたら「変なやつだな」だって。あなたが変なスイッチ押そうとするからでしょうが!
「とりあえず、行くべきは上だな」
文句言いたくなりながら共に上を見上げる。
なーにもない。頼みの綱の階段は途中までしかなく、その先は天井にぽっかり空いた吹き抜けの穴だけ。
どうやって昇ろう?
「階段、途中までしかないね」
「ああ。あの吹き抜けを飛んで行けってことなのかもな。
けど、オレの魔人化した翼は、高く飛ぶには向いてない。残念ながらまだそのへんの魔力がうまく調整できなくてな」
そう言うダンテは悔しそうだ。出来ないことや壁にぶち当たるのも、そのために努力するのもあまり得意なほうじゃないものね。
珍しく鍛練してるダンテを見た時は、すっごい失礼だけど明日は悪魔が降るかしら……なんて空を仰ぎ見たくなるほど。
失礼なこと思ってごめん!でも努力してるダンテの姿もあたしは好きだよ!
「仕方ないからボルダリングで上がってく」
「えええボルダリング!?どこにホールドが?スタンスもガバも何もないけど!?」
壁を登るスポーツだけど、あれは掴むためのホールドという突起があるから登れるわけで、何もない場所で登れるものではない。
ダンテなら無理やり掴む場所作ってしまいそうだけどね。こう……壁に手をめり込ませるとか。
「ディーヴァはオレの背に掴まっていればいいだけだろうが。何を気にすることがある?」
「まあそうだけどさあ。掴まってるのも結構大変と言うかなんと言うか」
『ハァーーー。おふたりさん、目の前に紋章あるのお忘れ?』
「「あ」」
変なかけ合いを繰り広げてたら、アラストルが残念な生き物を目の前にしたような声音で、そう言ってきた。
お互い何も言わず、無言で紋章を発動する。
ごぼり。突然の浮遊感!
その瞬間、息がまた苦しくなった。
(えっ!なにこれ!?)
紋章を発動したその次の瞬間に、間髪いれずにいきなりの水没!
隣にいたダンテも、困惑して水に浮かんでいた。
もちろん、息を吸っておくなんてことしていなかったので、水が大量に口や気管に入り込み一気に咳き込んで、さらに水が入り込むという悪循環に陥った。
たった数秒で意識が朦朧とする。
ああ、花畑の向こうに家族が見える気がする……。
あはは久しぶりパパママお兄ちゃん元気にしてた?あたしは今日も今日とて、悪魔に大変な目に合わされる生活を送っています。
あと、その悪魔の血が流れている人と今はお付き合いしてるの。天使の血族なのにね。
世の中何が起こるかわからないね!すごいよね!
……あれ?花畑と家族がちょっとずつ遠のいて消えてくよ。なんでなんでちょっと待って!
家族と会話していたおかげで、温かい腕があたしを引き寄せ抱きしめたことにも、水で満たされた空間の中を上へ上へと泳いでいることにも気がつかなかった。
だが、その水はほんの少し上がったところで消えてしまったようだ。
水ではなく空気が入ってきたことで、変なところまで入り込んでいた水が吐き出される。
「げほげほっ!うぇっ!」
「大丈夫かディーヴァ!!」
「わあ家族と花畑が消えちゃった!」
「家族と花畑ぇ?」
水がなくなったことで重力に従い、真っ逆さまに落ちる。落ちる前のふわりとした浮遊感が怖い!
だがそこはダンテ。くるくるスタッ!と、ディーヴァを抱いたまま華麗に着地してみせた。オール10点!つまり100点!優勝!!
「今のはなんなの?いきなり水の中とか聞いてない!またぬれねずみに逆戻りだわ」
「ぬれねずみ上等じゃねぇか。
それより家族と花畑が見えたんだろ。ディーヴァがそっちに行かなくてよかったよ……」
ああそっか。一瞬見えた家族と花畑は天国……かどうかわからないけど、あの世だ。戻って来れてよかった。
このあたしが死んだ場合、本体のあたしに戻るだけなのかもしれないけど、そうじゃなくて魂だけ消えちゃうって場合もあるもんね。
何より、ダンテの目の前で死ぬわけには行かない。ダンテのトラウマ一直線。
「でもさ、水で満たされるとしても水を溜めてる時間ってあるよね?一瞬で浴槽にお湯がたまる?普通はたまらないよね!?
ドウイウコトナノ……?
あぁあせっかく悪魔の世界の不思議について考えるやめたとこなのにぃ……」
「そんなしょうもないこと考えてたのか。
やめとけやめとけ。頭空っぽにしとかねぇと脳みそつかれるぞ」
「ういー」
人間の世界での常識が悪魔の世界で通用するとは限らないことはわかった。考えるだけ無駄なんだね。
ダンテが頭を揉み解してくれた。絶妙な力加減が気持ちいい。寝そう。
「ふむ、紋章発動中だけ水で満たされるというわけだ。水が抜けないうちに上がれと、そういうことなんだろうな」
頭をわしわししたまま、ダンテが紋章を眺め、次に上を見上げてつぶやく。
また濡れてしまった服を絞っていたあたしの手が止まった。
「え、じゃあ今のもう一回?濡れ損だぁ……」
「濡れて損することなんて何もないだろ。滑りがヨくなる」
にやりとダンテが笑って言った。
なんの話ですかね?ね??
「紋章発動直前に息を吸えよ」
「あいさー」
さっきは突然すぎて死にかけたけど、息を止めておく時間は水牢よりも船よりも短い。
抱き抱えられながら軽く返事すれば、ダンテはさっそく片手で紋章をサクッと発動した。
そのまま吹き抜け部分を素早く泳ぎ、上の階へと到達した。
上に長いだけの狭い場所だ。
服や髪の水をふたりで絞りながら、会話する。
って、ダンテの靴の中すごい水溜まってる。うわぁべちょべちょ。
「へー、さっきの水牢がここに繋がってるとはな。最初は地下水路の臭い場所だったってのに」
「くさいよりましでしょ」
「水中で窒息するよりはくさいほうがいいと思うけどな。大体ディーヴァは匂いフェチだろ?」
「や、くさいのは結構です」
あたしは好きな匂いだけ嗅ぎたいのよね。
美味しい食べ物とかお花とか……ダンテの匂いも大好きだよ。ダンテの愛用してるコートの匂いとかも。
あと、ソウイウコトの時の汗に濡れてる男性!って感じのにおい……アレ結構クセになるんだよね。ドキドキしちゃう。
って、何へんなこといってるんだろう。きゃー!
恥ずかしさに熱が出そうな顔を覆いながらもじもじしてしまう。
そしたら「変なやつだな」だって。あなたが変なスイッチ押そうとするからでしょうが!
「とりあえず、行くべきは上だな」
文句言いたくなりながら共に上を見上げる。
なーにもない。頼みの綱の階段は途中までしかなく、その先は天井にぽっかり空いた吹き抜けの穴だけ。
どうやって昇ろう?
「階段、途中までしかないね」
「ああ。あの吹き抜けを飛んで行けってことなのかもな。
けど、オレの魔人化した翼は、高く飛ぶには向いてない。残念ながらまだそのへんの魔力がうまく調整できなくてな」
そう言うダンテは悔しそうだ。出来ないことや壁にぶち当たるのも、そのために努力するのもあまり得意なほうじゃないものね。
珍しく鍛練してるダンテを見た時は、すっごい失礼だけど明日は悪魔が降るかしら……なんて空を仰ぎ見たくなるほど。
失礼なこと思ってごめん!でも努力してるダンテの姿もあたしは好きだよ!
「仕方ないからボルダリングで上がってく」
「えええボルダリング!?どこにホールドが?スタンスもガバも何もないけど!?」
壁を登るスポーツだけど、あれは掴むためのホールドという突起があるから登れるわけで、何もない場所で登れるものではない。
ダンテなら無理やり掴む場所作ってしまいそうだけどね。こう……壁に手をめり込ませるとか。
「ディーヴァはオレの背に掴まっていればいいだけだろうが。何を気にすることがある?」
「まあそうだけどさあ。掴まってるのも結構大変と言うかなんと言うか」
『ハァーーー。おふたりさん、目の前に紋章あるのお忘れ?』
「「あ」」
変なかけ合いを繰り広げてたら、アラストルが残念な生き物を目の前にしたような声音で、そう言ってきた。
お互い何も言わず、無言で紋章を発動する。
ごぼり。突然の浮遊感!
その瞬間、息がまた苦しくなった。
(えっ!なにこれ!?)
紋章を発動したその次の瞬間に、間髪いれずにいきなりの水没!
隣にいたダンテも、困惑して水に浮かんでいた。
もちろん、息を吸っておくなんてことしていなかったので、水が大量に口や気管に入り込み一気に咳き込んで、さらに水が入り込むという悪循環に陥った。
たった数秒で意識が朦朧とする。
ああ、花畑の向こうに家族が見える気がする……。
あはは久しぶりパパママお兄ちゃん元気にしてた?あたしは今日も今日とて、悪魔に大変な目に合わされる生活を送っています。
あと、その悪魔の血が流れている人と今はお付き合いしてるの。天使の血族なのにね。
世の中何が起こるかわからないね!すごいよね!
……あれ?花畑と家族がちょっとずつ遠のいて消えてくよ。なんでなんでちょっと待って!
家族と会話していたおかげで、温かい腕があたしを引き寄せ抱きしめたことにも、水で満たされた空間の中を上へ上へと泳いでいることにも気がつかなかった。
だが、その水はほんの少し上がったところで消えてしまったようだ。
水ではなく空気が入ってきたことで、変なところまで入り込んでいた水が吐き出される。
「げほげほっ!うぇっ!」
「大丈夫かディーヴァ!!」
「わあ家族と花畑が消えちゃった!」
「家族と花畑ぇ?」
水がなくなったことで重力に従い、真っ逆さまに落ちる。落ちる前のふわりとした浮遊感が怖い!
だがそこはダンテ。くるくるスタッ!と、ディーヴァを抱いたまま華麗に着地してみせた。オール10点!つまり100点!優勝!!
「今のはなんなの?いきなり水の中とか聞いてない!またぬれねずみに逆戻りだわ」
「ぬれねずみ上等じゃねぇか。
それより家族と花畑が見えたんだろ。ディーヴァがそっちに行かなくてよかったよ……」
ああそっか。一瞬見えた家族と花畑は天国……かどうかわからないけど、あの世だ。戻って来れてよかった。
このあたしが死んだ場合、本体のあたしに戻るだけなのかもしれないけど、そうじゃなくて魂だけ消えちゃうって場合もあるもんね。
何より、ダンテの目の前で死ぬわけには行かない。ダンテのトラウマ一直線。
「でもさ、水で満たされるとしても水を溜めてる時間ってあるよね?一瞬で浴槽にお湯がたまる?普通はたまらないよね!?
ドウイウコトナノ……?
あぁあせっかく悪魔の世界の不思議について考えるやめたとこなのにぃ……」
「そんなしょうもないこと考えてたのか。
やめとけやめとけ。頭空っぽにしとかねぇと脳みそつかれるぞ」
「ういー」
人間の世界での常識が悪魔の世界で通用するとは限らないことはわかった。考えるだけ無駄なんだね。
ダンテが頭を揉み解してくれた。絶妙な力加減が気持ちいい。寝そう。
「ふむ、紋章発動中だけ水で満たされるというわけだ。水が抜けないうちに上がれと、そういうことなんだろうな」
頭をわしわししたまま、ダンテが紋章を眺め、次に上を見上げてつぶやく。
また濡れてしまった服を絞っていたあたしの手が止まった。
「え、じゃあ今のもう一回?濡れ損だぁ……」
「濡れて損することなんて何もないだろ。滑りがヨくなる」
にやりとダンテが笑って言った。
なんの話ですかね?ね??
「紋章発動直前に息を吸えよ」
「あいさー」
さっきは突然すぎて死にかけたけど、息を止めておく時間は水牢よりも船よりも短い。
抱き抱えられながら軽く返事すれば、ダンテはさっそく片手で紋章をサクッと発動した。
そのまま吹き抜け部分を素早く泳ぎ、上の階へと到達した。