mission 18:baby is cruel ~トラウマ~
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眩しさに目が焼けてしまいそうな、白く美しい世界。
これでも魔界に存在するひとつの異空間だ。
異空間だからこそ、魔の場所だというのにこの異様さを放つ。
目の前にあるのは、彫刻品にしては大きすぎる純白の巨像。
神々しい見た目とは裏腹に、そこから発せられる空気は禍々しく、聞こえてくる声には邪悪な気配が滲んでいた。
『まさか逃げ出した獲物の一部が、自らの血を差し出して手を貸すとはな』
この神のような悪魔こそ、魔帝ムンドゥス。
君臨する王者の御前、長い金髪の悪魔トリッシュは跪いてつぶやきを聞いていた。
『トリッシュよ。
バージルが敗北し、そして寝返った。あの男たちを殺し、逃げた獲物を連れてこい。
次なる手を打つのだ。行け!』
獲物。それは天使の血を持つあの娘。
本体からの血の供給は保たれているというに、魔帝はその魂までも得ることでより強大な力を得ようというのか。
そして寝返った悪魔。
逃げた悪魔であるファントムにさえ、近々追っ手をかけるという魔帝。
そんなものは放っておけばいいとは、私の持論だ。
間違っても口にはできない。そう言った発言は許されていない。
魔帝は裏切りを許さない。腹心の中にすら信頼できる者がいないからこそ、裏切りを許さない。
だからこそ、あのスパーダの血族を恨み、肉体的にも精神的にも壊して根絶やしにしようとしているのだ。
スパーダが消えてもなお、スパーダの裏切りを許していない。
悪魔の世界の上下関係なんて、力だけのものがほとんどだ。なんて悲しい世界。
だがコロシアムでグリフォンが魔帝によって屠られたあの時のダンテの表情。あれが目に焼き付いて離れない。
彼は敵の悪魔のために、怒りをあらわにしていた。
あれからふとした時に、小さな疑問が浮かび上がってくる。
すべては力だけではない。相手を思いやる心や、愛のなんだのという体がむず痒くなりそうな言葉が頭を支配する。
だが、相手は私の創造主。
作られたものは、作り手に従わなければ。
余計なことは考えてはならない。
「仰せのままに」
首を垂れ命令に従うと、わたしは魔帝の前から立ち去った。
***
バージルが扉へと足を向け、つぶやく。
「確か複葉機の名はカーニバル号だったか。悪魔蔓延る城にふさわしくないふざけた名だ」
「悪魔とお祭り騒ぎ。これ以上なくイイ名前だと思うけどな」
「お前の頭の中じゃあるまいし祭り騒ぎなど要らん」
その呟きを拾い返すダンテへ、嫌そうに口元を歪め眉間の皺をいつにも増して刻むバージル。
憎まれ口でも良い。またこうして2人が軽口を叩き合う姿が見られるなんて。と、ひとり胸を暖かくしていると、バージルがわずかによろけた。
「おっと!」
まだ本調子じゃなさそう。
ダンテが心配してかさりげなく手を貸したのを、あたしは初めて見たかもしれない。
喧嘩が多くたって、仲が悪くたって、相手はたったひとりの家族だもんね。
「いらんと言っておろうが」
その手を取らず突っぱねたバージルも、攻撃するような手の払い方ではなかった。ダンテの胸を小さく押しのけただけだった。
「ふーん……そんな装備で大丈夫か?」
「何を言っている。どうともないし装備はこの大剣だけだ」
「そこは、『大丈夫だ、問題ない』だろ。オレの言葉にノれよ」
「絶対に嫌だ」
バージルの気持ちもわかる。
ダンテ、それは少し定型文が過ぎるんだと思うよ。ちょっぴり古いし。
「ねえバージル、ほんとに大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫だ。俺はダンテより強いし物を整備するスピードも早い。
道中の面倒な雑魚悪魔の退治も俺が引き受けておくから心配するな」
「おいこら」
ダンテの陰からそっと顔を覗かせ、遠慮がちに聞いてみる。
自身を物理的に挟みながらも無視するやり取り。そしてあくまで弟より上の存在だとアピールするバージルに、ダンテが青筋を浮かべる。
もう、バージルが関わるとすーぐ沸点低くなるんだから。
「それは頼もしいんだけど、でも……」
アラストルは、バージルには心臓の他に悪魔の心臓である核ができつつあるって言っていたっけ。
あれってどうなったのだろう。
「悪魔としての心臓代わりの核ってなくなったの?」
「そういえば、いつの間にかなくなっているようだ。今俺にあるのは心臓だけだ」
自分の胸付近をさすって確認するバージル。
「お、オレと同じで串刺しにしてもなかなか死なない心臓だな?」
「ほお……ならば貴様の心臓を串刺しにしてやろうか」
「おいおい。必要のない痛みは勘弁してくれ」
そんなバージルをダンテが茶化して喧嘩に発展しそうになったけど、バージルの幻影剣は作られなかった。
ダンテがそれ以上近寄らないので警告に終わったみたい。
それを待ってあたしはダンテとバージルの間に入り込んだ。
バージルをじっと見つめると、不思議そうな青い目と合う。顔の作りは違ってもダンテと同じ色。なんて綺麗な瞳。
とすっ。
血の匂いと魔の匂いがする胸元へ、あたしは吸い込まれるように抱きついた。
「は……。ディーヴァ!?」
後ろからはダンテの声。
そして、手をどこに置いていいのか戸惑い、空を彷徨うバージルの気配を身近に感じる。
「ディーヴァ何を……いや、別にいいのだが」
「シッ!心臓の音確認してるの」
トクン、トクン。ああ、生きてる。
ダンテと同じ鼓動。バージル自身の匂いもダンテとどこか似ている。
あっちょっと心音速くなった!
うーん、心臓のはね方がどこか嬉しそう。あたしは心音を確認してるだけなのになあ。
でも、なんて優しい音。
生きてて嬉しい。
これでも魔界に存在するひとつの異空間だ。
異空間だからこそ、魔の場所だというのにこの異様さを放つ。
目の前にあるのは、彫刻品にしては大きすぎる純白の巨像。
神々しい見た目とは裏腹に、そこから発せられる空気は禍々しく、聞こえてくる声には邪悪な気配が滲んでいた。
『まさか逃げ出した獲物の一部が、自らの血を差し出して手を貸すとはな』
この神のような悪魔こそ、魔帝ムンドゥス。
君臨する王者の御前、長い金髪の悪魔トリッシュは跪いてつぶやきを聞いていた。
『トリッシュよ。
バージルが敗北し、そして寝返った。あの男たちを殺し、逃げた獲物を連れてこい。
次なる手を打つのだ。行け!』
獲物。それは天使の血を持つあの娘。
本体からの血の供給は保たれているというに、魔帝はその魂までも得ることでより強大な力を得ようというのか。
そして寝返った悪魔。
逃げた悪魔であるファントムにさえ、近々追っ手をかけるという魔帝。
そんなものは放っておけばいいとは、私の持論だ。
間違っても口にはできない。そう言った発言は許されていない。
魔帝は裏切りを許さない。腹心の中にすら信頼できる者がいないからこそ、裏切りを許さない。
だからこそ、あのスパーダの血族を恨み、肉体的にも精神的にも壊して根絶やしにしようとしているのだ。
スパーダが消えてもなお、スパーダの裏切りを許していない。
悪魔の世界の上下関係なんて、力だけのものがほとんどだ。なんて悲しい世界。
だがコロシアムでグリフォンが魔帝によって屠られたあの時のダンテの表情。あれが目に焼き付いて離れない。
彼は敵の悪魔のために、怒りをあらわにしていた。
あれからふとした時に、小さな疑問が浮かび上がってくる。
すべては力だけではない。相手を思いやる心や、愛のなんだのという体がむず痒くなりそうな言葉が頭を支配する。
だが、相手は私の創造主。
作られたものは、作り手に従わなければ。
余計なことは考えてはならない。
「仰せのままに」
首を垂れ命令に従うと、わたしは魔帝の前から立ち去った。
***
バージルが扉へと足を向け、つぶやく。
「確か複葉機の名はカーニバル号だったか。悪魔蔓延る城にふさわしくないふざけた名だ」
「悪魔とお祭り騒ぎ。これ以上なくイイ名前だと思うけどな」
「お前の頭の中じゃあるまいし祭り騒ぎなど要らん」
その呟きを拾い返すダンテへ、嫌そうに口元を歪め眉間の皺をいつにも増して刻むバージル。
憎まれ口でも良い。またこうして2人が軽口を叩き合う姿が見られるなんて。と、ひとり胸を暖かくしていると、バージルがわずかによろけた。
「おっと!」
まだ本調子じゃなさそう。
ダンテが心配してかさりげなく手を貸したのを、あたしは初めて見たかもしれない。
喧嘩が多くたって、仲が悪くたって、相手はたったひとりの家族だもんね。
「いらんと言っておろうが」
その手を取らず突っぱねたバージルも、攻撃するような手の払い方ではなかった。ダンテの胸を小さく押しのけただけだった。
「ふーん……そんな装備で大丈夫か?」
「何を言っている。どうともないし装備はこの大剣だけだ」
「そこは、『大丈夫だ、問題ない』だろ。オレの言葉にノれよ」
「絶対に嫌だ」
バージルの気持ちもわかる。
ダンテ、それは少し定型文が過ぎるんだと思うよ。ちょっぴり古いし。
「ねえバージル、ほんとに大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫だ。俺はダンテより強いし物を整備するスピードも早い。
道中の面倒な雑魚悪魔の退治も俺が引き受けておくから心配するな」
「おいこら」
ダンテの陰からそっと顔を覗かせ、遠慮がちに聞いてみる。
自身を物理的に挟みながらも無視するやり取り。そしてあくまで弟より上の存在だとアピールするバージルに、ダンテが青筋を浮かべる。
もう、バージルが関わるとすーぐ沸点低くなるんだから。
「それは頼もしいんだけど、でも……」
アラストルは、バージルには心臓の他に悪魔の心臓である核ができつつあるって言っていたっけ。
あれってどうなったのだろう。
「悪魔としての心臓代わりの核ってなくなったの?」
「そういえば、いつの間にかなくなっているようだ。今俺にあるのは心臓だけだ」
自分の胸付近をさすって確認するバージル。
「お、オレと同じで串刺しにしてもなかなか死なない心臓だな?」
「ほお……ならば貴様の心臓を串刺しにしてやろうか」
「おいおい。必要のない痛みは勘弁してくれ」
そんなバージルをダンテが茶化して喧嘩に発展しそうになったけど、バージルの幻影剣は作られなかった。
ダンテがそれ以上近寄らないので警告に終わったみたい。
それを待ってあたしはダンテとバージルの間に入り込んだ。
バージルをじっと見つめると、不思議そうな青い目と合う。顔の作りは違ってもダンテと同じ色。なんて綺麗な瞳。
とすっ。
血の匂いと魔の匂いがする胸元へ、あたしは吸い込まれるように抱きついた。
「は……。ディーヴァ!?」
後ろからはダンテの声。
そして、手をどこに置いていいのか戸惑い、空を彷徨うバージルの気配を身近に感じる。
「ディーヴァ何を……いや、別にいいのだが」
「シッ!心臓の音確認してるの」
トクン、トクン。ああ、生きてる。
ダンテと同じ鼓動。バージル自身の匂いもダンテとどこか似ている。
あっちょっと心音速くなった!
うーん、心臓のはね方がどこか嬉しそう。あたしは心音を確認してるだけなのになあ。
でも、なんて優しい音。
生きてて嬉しい。