mission 16:named nightmare ~夕闇の城~
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ーーグリフォンが敗れた。
次は自分の番。敗北は決して許されない。
次の失敗はイコール死である。
とはいえ、グリフォンの場合ダンテに負けたといっても、最期は魔帝からのトドメの一撃で敗北につながったらしい。
力を求めた配下の願いを叶えぬかわり、魔帝はグリフォンへと鉄槌をくだした。
蘇りの要になる部分まで魔帝に潰されたのだ。
関わりある媒体へと魔力を与え蘇えらせる方法も、悪魔召喚の儀式すらも要を失ったグリフォンには使えまい。
小煩い悪魔だったが、嫌いではなかった。
惜しい仲魔をなくしたと、今ではそう思える。
前はそんなこと、思ったこともなかった。
感情を覚えてまだ2日、いや……2日も経っていないくらいだ。
グリフォンを仲魔などと思えるようになったのは、ディーヴァのおかげかもしれないな。
彼女には感情、それも「心」が芽生える手伝いをしてもらった恩がある。
魔帝に捕まって欲しくはない。
といっても、ディーヴァを捕まえるだとか、ダンテを殺すだとか。
自分の出番が来るかどうかは危ういものだ。
自分の前にプラズマやフロスト、そしてこの魔帝から託された悪魔がいる。
ダンテが普通の人間でないことは理解しているが、不死身ではないだろう。油断すれば、俺の元へと辿り着く前にジ・エンドだ。
そう思いながら、託された悪魔の核を見る。
手のひらサイズに縮小された黒い鉄球のようなこれこそ、悪魔の核。
つまり、心臓や魂と呼ばれる部分だ。
グリフォンが蘇る事が出来ないのも、この核を壊されたからだ。
して。
悪魔を大聖堂に配置するように命ぜられたが、一体この核はなんだ?
乗せているだけで燃えるように熱い。
握りこめば、魔帝と張れるくらい強力な魔力を感じ取ることができた。
この小さな核の中にどれほどの魔力が内包されているのか……。全く想像がつかない。
『ナイトメア』。
そう名づけられたこの悪魔は、魔帝ですら御しきれず拘束具をはめている状態だという。
核とは、心臓であり魂であると同時に、その悪魔の魔力そのものでもある。
これを、この核を取り込めばあるいは……。
力なくば何も守れずに奪われるだけだと、頭の中で声がした。
力が欲しい。
何者にも負けない、強い力が。
それは魔帝のためなはずなのに、自らのためやヒトのためと答えたい自分がいる。
自らのためはわかる。
だがなぜ、ヒトのためと思う?疑問だ。
とは言いつつも、この核を取り込むような真似はしないがな。
下手に取り込めば内側から侵食されドロドロに溶かされ、自我を保てずにナイトメアに成り代わられてしまう。
もっと悪ければ、魔力を御し切れずに俺の体が自分の核ごと爆発しておわりだろう。ナイトメアの核だけが何事もなかったかのようにその場に残った状態で、な。
力が欲しくば、俺はもっと確実な方法を取る。
浮かぶ思考を振り払うと、悪魔の核に施された封印を解呪する。
一度ドロリと液状化したそれは床の上で水たまりを作り、巨大なスライムのような姿に変わった。
汚泥色のスライムの体には、数多の人骨だけではない。下級悪魔の骨やガラクタをゲルの中に取り込んでいる。
もはや悪魔溜まりといえよう。
あのスライムに触れてはいけない。そう思った時には遅く、体を取り込まれた。
「っ!」
なんだここは。
視点が縮んでいるような気がする。手も人間のそれのようでふくふくとしており、小さく見える。
俺のいる場所もなんだか狭い。城の中ではなさそうだ。
漂うのはむせ返る人間の血の匂い。あたりは火の海だ。
そんな中、下級悪魔の軍勢が俺の首を狙ってきた。同じ悪魔の俺になぜ?俺に敵対してくるのは、こいつらが魔帝の息がかかった悪魔ではないからか?
歯向かうならば殺すまでだ。俺は気怠げに悪魔の刃をかわし、いつのまにか手にしていた日本刀で斬り伏せた。
そうして気がつけば、ナイトメアがどっしりと構える大聖堂のすみへと、体を投げ出している状態だった。
「今のはなんだ……?」
いやいい。深く考えるのはやめよう。
ドロドロしたスライムから離れた瞬間、ナイトメアから小型のミサイルが無数に発射された。
「ふ、敵味方見境なしか」
そのどれもが、自分めがけて向かってくるのを見るに誘導ミサイルか。
次々に迫るそれを剣を振り、すべて無に返す。
目に入る全てが殲滅対象。ナイトメアは根っからの殺戮兵器のようだ。
これでは、俺は敵じゃないと教えたところで伝わらぬだろう。
続け様に放たれた氷のように冷たい光線を紙一重で避けきると、ナイトメアの中から笑い声が聞こえた。
頭の中に直接響くようなそれ。
『キャッキャッ』
なんだ?楽しんでいる?
手を叩いて喜んでいるような感情がナイトメアから読み取れた。
……兵器が感情を持っている??
母を求める子のように、伸ばされた触手状の手。
だがそれは鋭い針の形をしていて、こちらを串刺しにしようと迫る危険極まりないものでもあった。
続く笑い声。
破壊と殺戮のみを目的に動く兵器との話だったが、それは誤りのようだ。
こやつ、ただの殺戮兵器じゃない。まるで赤子ではないか。
針をかわしながらも頭には打算的な考えが浮かぶ。
今は四つん這い状態だが、そのうちヒトのように立って歩けるようにもなろう。
この魔力量のまま成長し知能を持ってしまえば、魔帝すら負かしかねん恐ろしい悪魔になるかもしれん。
手駒にしてやりたい。
『ア゛ーア゛ー!』
……だが今は遊び相手が欲しいようだ。
一瞬立ち止まっただけで足元が凍った。
無理やり氷から脱出し、壁に紋章。床には紋章と連動する拘束紋様。
それらを構築する魔道具を使用する。
四隅に設置していけば目に見えてナイトメアの動きが弱まった。頭部と尾部に小ぶりなコアが浮かんでいる。
詳しくは知らないが、この紋章へと魔力を与えることでナイトメアの力を多少拘束できるようになっているらしい。
こうでもしないと、この悪魔はこの部屋を出て城内を魔界ごと破壊しかねない。
加減を知らぬ子供には拘束が必要だ。
それがたとえ、ダンテに対抗手段を与えてしまうとしても。
俺に任されたのはこの場にナイトメアを配置し、ダンテと対峙させることだけ。
奴を捕らえ殺し、同じく捕らえた天使を捕まえておくこと。
曰く、ナイトメアは天使に触れることはできても物理的に殺すことはできないのだという。
それもそうか。今、ディーヴァは物理的に死ぬ状態じゃない。
余計なことはしてはならない。
ナイトメアをこちらに引き込む。それすなわち裏切り行為。
魔帝を裏切るような真似、勘付かれたら俺でも終わりだ。
「この場で待て。お前の遊び相手はじきにくる」
ナイトメアはおとなしく、ただの水たまりへと変身した。
次は自分の番。敗北は決して許されない。
次の失敗はイコール死である。
とはいえ、グリフォンの場合ダンテに負けたといっても、最期は魔帝からのトドメの一撃で敗北につながったらしい。
力を求めた配下の願いを叶えぬかわり、魔帝はグリフォンへと鉄槌をくだした。
蘇りの要になる部分まで魔帝に潰されたのだ。
関わりある媒体へと魔力を与え蘇えらせる方法も、悪魔召喚の儀式すらも要を失ったグリフォンには使えまい。
小煩い悪魔だったが、嫌いではなかった。
惜しい仲魔をなくしたと、今ではそう思える。
前はそんなこと、思ったこともなかった。
感情を覚えてまだ2日、いや……2日も経っていないくらいだ。
グリフォンを仲魔などと思えるようになったのは、ディーヴァのおかげかもしれないな。
彼女には感情、それも「心」が芽生える手伝いをしてもらった恩がある。
魔帝に捕まって欲しくはない。
といっても、ディーヴァを捕まえるだとか、ダンテを殺すだとか。
自分の出番が来るかどうかは危ういものだ。
自分の前にプラズマやフロスト、そしてこの魔帝から託された悪魔がいる。
ダンテが普通の人間でないことは理解しているが、不死身ではないだろう。油断すれば、俺の元へと辿り着く前にジ・エンドだ。
そう思いながら、託された悪魔の核を見る。
手のひらサイズに縮小された黒い鉄球のようなこれこそ、悪魔の核。
つまり、心臓や魂と呼ばれる部分だ。
グリフォンが蘇る事が出来ないのも、この核を壊されたからだ。
して。
悪魔を大聖堂に配置するように命ぜられたが、一体この核はなんだ?
乗せているだけで燃えるように熱い。
握りこめば、魔帝と張れるくらい強力な魔力を感じ取ることができた。
この小さな核の中にどれほどの魔力が内包されているのか……。全く想像がつかない。
『ナイトメア』。
そう名づけられたこの悪魔は、魔帝ですら御しきれず拘束具をはめている状態だという。
核とは、心臓であり魂であると同時に、その悪魔の魔力そのものでもある。
これを、この核を取り込めばあるいは……。
力なくば何も守れずに奪われるだけだと、頭の中で声がした。
力が欲しい。
何者にも負けない、強い力が。
それは魔帝のためなはずなのに、自らのためやヒトのためと答えたい自分がいる。
自らのためはわかる。
だがなぜ、ヒトのためと思う?疑問だ。
とは言いつつも、この核を取り込むような真似はしないがな。
下手に取り込めば内側から侵食されドロドロに溶かされ、自我を保てずにナイトメアに成り代わられてしまう。
もっと悪ければ、魔力を御し切れずに俺の体が自分の核ごと爆発しておわりだろう。ナイトメアの核だけが何事もなかったかのようにその場に残った状態で、な。
力が欲しくば、俺はもっと確実な方法を取る。
浮かぶ思考を振り払うと、悪魔の核に施された封印を解呪する。
一度ドロリと液状化したそれは床の上で水たまりを作り、巨大なスライムのような姿に変わった。
汚泥色のスライムの体には、数多の人骨だけではない。下級悪魔の骨やガラクタをゲルの中に取り込んでいる。
もはや悪魔溜まりといえよう。
あのスライムに触れてはいけない。そう思った時には遅く、体を取り込まれた。
「っ!」
なんだここは。
視点が縮んでいるような気がする。手も人間のそれのようでふくふくとしており、小さく見える。
俺のいる場所もなんだか狭い。城の中ではなさそうだ。
漂うのはむせ返る人間の血の匂い。あたりは火の海だ。
そんな中、下級悪魔の軍勢が俺の首を狙ってきた。同じ悪魔の俺になぜ?俺に敵対してくるのは、こいつらが魔帝の息がかかった悪魔ではないからか?
歯向かうならば殺すまでだ。俺は気怠げに悪魔の刃をかわし、いつのまにか手にしていた日本刀で斬り伏せた。
そうして気がつけば、ナイトメアがどっしりと構える大聖堂のすみへと、体を投げ出している状態だった。
「今のはなんだ……?」
いやいい。深く考えるのはやめよう。
ドロドロしたスライムから離れた瞬間、ナイトメアから小型のミサイルが無数に発射された。
「ふ、敵味方見境なしか」
そのどれもが、自分めがけて向かってくるのを見るに誘導ミサイルか。
次々に迫るそれを剣を振り、すべて無に返す。
目に入る全てが殲滅対象。ナイトメアは根っからの殺戮兵器のようだ。
これでは、俺は敵じゃないと教えたところで伝わらぬだろう。
続け様に放たれた氷のように冷たい光線を紙一重で避けきると、ナイトメアの中から笑い声が聞こえた。
頭の中に直接響くようなそれ。
『キャッキャッ』
なんだ?楽しんでいる?
手を叩いて喜んでいるような感情がナイトメアから読み取れた。
……兵器が感情を持っている??
母を求める子のように、伸ばされた触手状の手。
だがそれは鋭い針の形をしていて、こちらを串刺しにしようと迫る危険極まりないものでもあった。
続く笑い声。
破壊と殺戮のみを目的に動く兵器との話だったが、それは誤りのようだ。
こやつ、ただの殺戮兵器じゃない。まるで赤子ではないか。
針をかわしながらも頭には打算的な考えが浮かぶ。
今は四つん這い状態だが、そのうちヒトのように立って歩けるようにもなろう。
この魔力量のまま成長し知能を持ってしまえば、魔帝すら負かしかねん恐ろしい悪魔になるかもしれん。
手駒にしてやりたい。
『ア゛ーア゛ー!』
……だが今は遊び相手が欲しいようだ。
一瞬立ち止まっただけで足元が凍った。
無理やり氷から脱出し、壁に紋章。床には紋章と連動する拘束紋様。
それらを構築する魔道具を使用する。
四隅に設置していけば目に見えてナイトメアの動きが弱まった。頭部と尾部に小ぶりなコアが浮かんでいる。
詳しくは知らないが、この紋章へと魔力を与えることでナイトメアの力を多少拘束できるようになっているらしい。
こうでもしないと、この悪魔はこの部屋を出て城内を魔界ごと破壊しかねない。
加減を知らぬ子供には拘束が必要だ。
それがたとえ、ダンテに対抗手段を与えてしまうとしても。
俺に任されたのはこの場にナイトメアを配置し、ダンテと対峙させることだけ。
奴を捕らえ殺し、同じく捕らえた天使を捕まえておくこと。
曰く、ナイトメアは天使に触れることはできても物理的に殺すことはできないのだという。
それもそうか。今、ディーヴァは物理的に死ぬ状態じゃない。
余計なことはしてはならない。
ナイトメアをこちらに引き込む。それすなわち裏切り行為。
魔帝を裏切るような真似、勘付かれたら俺でも終わりだ。
「この場で待て。お前の遊び相手はじきにくる」
ナイトメアはおとなしく、ただの水たまりへと変身した。