mission 14:mouth-to-mouth ~キスの雨が降ってくる~
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「ネロアンジェロ、お前も戻ったか。
ずいぶんと遅かったな」
俺が城の一室へ入ると、そこには侵入者の2度目の排除に出かけたばかりのグリフォンが戻ってきていた。
当たり前だがディーヴァは出迎えてくれない。すでにここから逃亡し、今はあの赤いコートの男の元だ。
顔を合わせたのが、ここ数時間で小うるさく囀るグリフォンとは。気分が落ち込む。
「なんだヨ、雑巾みたいにボロボロだな。
負けたからか?浮かない顔してるぜ。仮面のせいで顔わからないけど!」
「グリフォン、貴様こそボロボロな見た目だが?」
グリフォンも口元を特徴あるマスクで覆っている。
猛禽のような鋭い目つきだけで判別する他ないが、くたびれたような表情をしているように見えた。目は口程にものをいうからな。
「いや〜、負けた負けた。
あの赤いコートの男、なかなかしぶといしすばしっこい。船の上をウロチョロするもんだから仕留め損ねてしまった。
ふふふ、お互いソー・ルーザーズってわけだ!」
「同じ枠組みに入れられたら迷惑だ」
負け犬のレッテルを自ら背負うなどまっぴらごめんである。……ああ、グリフォンの場合は負け鳥か。
「ま、ムンドゥス様から与えられた罰の方が厄介だったけども」
そう言ってグリフォンは、苦痛に表情を歪ませている。全身をさすっているところを見るに、その傷のほとんどがあの男ではなく魔帝からの仕置きによるものなのだろう。同意見だ、俺もキツかった。
鷲掴みにされた心臓を握り潰されるような激しい痛みの後、より闇に侵食されていく感覚。
もう元にあの頃の自分に戻れなくなるのではないか。そう思わせた。
だが、あの頃とは一体……。頭痛がする。
「こっちも強いが、男は一枚上手。強かったなあ。
罰を受ける羽目になりたくはなかったが、次は絶対に負けない。脚で地べたに縫いとめて啄んで首を持ち帰ってきてやるううう!」
「難易度高そうだな」
「ふっふっふ。
ムンドゥス様から与えられたのは罰だけじゃない。強い魔力も与えていただけたから次は俺の勝ちだ」
「悪魔が慈悲を?弱者に無慈悲で、裏切りが常な悪魔が……それも頂点に立つムンドゥス様が?」
耳を疑う。
他の者に大切な魔力を分け与えるほどに、赤いコートの男を我が身に降りかかる火の粉だと思っているのか。
こんな場所でも俺はあいつと比べて劣って見られて……ん、俺はなぜそう思ったんだ?
比べて劣る、などという考えはどこから来た。
「俺は特別なんだよ!なにせ、腹心だからな。
ムンドゥス様がお前をどこでヘッドハンティングしてきたのかは知らん。だがお前も腹心になった方がいいぞ。まず給料があがる!」
考え込んでいれば現実に無理やり引き戻すが如く、背中をバシバシと叩かれた。
話の内容と痛みで、肉体的にも精神的にも衝撃が大きい。
「給料……」
そ ん な も の 貰 っ た 事 な い が ?
しかし、馴れ馴れしい鳥だ。
ディーヴァが来てからだろうか、やたら気さくになったし、お互いの距離は近くなった。本性を知るほどに。
それがいい事なのか悪い事なのか全くわからないが、ディーヴァの影響だろう。
「グリフォン、まさかムンドゥス様の前でもそんな口調になったりしてないだろうな。馴れ馴れしいぞ」
気がつけば口にも出ていた。
「そんな失態おかすかヨッ!
ネロアンジェロの前では素を隠す必要感じないからだ。気にするな」
「はぁ……クールな姿に似合わん口調だ。
そのふざけたような底抜けに明るい口調、グリフォンよりもファントムのほうが似合っていたろうに」
「ムッ。反逆罪になった奴の事なんか言うな」
結局反逆罪扱いか。自分の思い通りに動かぬ駒は、魔帝にとってすべて反逆罪に見なされるのだろう。
しかしなぜファントムは魔帝との楔が解けたのだろうか。そこにもディーヴァの存在が関わってきそうだが、深く考えるのはよそう。
「けど、そうだな……。
ファントム、あれは御しきれない悪魔だし、もう一度あやつが排除しに行っていればあるいは……ムムム」
子を多数踏み潰されたと怒り狂っていたファントム。
もともと沸点は低く炎を吐いて怒るのか、怒りはそのまま力になるタイプだったようで、魔帝ですら時には手を焼いていたとの話だ。
「なるほど。グリフォンとは比べられないほど止められない奴だった、という事か」
「いや、俺だって簡単に止められない暴君なんだぞ!」
「貴様はパッと見は違うが、実はトリアタマで頭が悪……単純だから御しやすい」
「なっ!?!!
今何つった!アタマワルイって言いかけたか!?
だ〜れが三歩歩けば忘れるやつだと!?」
口が滑った。
が、そういうところだ。そういうところが単純で御し易いというのだ。
「何もそこまで言ってない」
「チクショ〜赤いコートの男にも言われた事を!」
あの男……敵ながら思考が似ているのか。
それはそれは、敵でなかったらいい酒が飲めそうだ。
グリフォンが地団駄を踏んでいる中、下級悪魔からあの男がコロシアムを開くための盾を取り外したとの報告が入った。
迎え撃つのはグリフォンだ。
だが、下級悪魔の前での威厳はどこへやら、ぷんすかと怒っているグリフォンにはその報告は聞こえていまい。
幸いまだ時間はある。
落ち着かせてから向かわせなくては、勝てる戦も負けてしまうだろう事は想像に難くなかった。
「そういえば天使は見つけたのか?」
「あ?見つけてたら男なんぞほっぽって鷲掴んで連れてくるに決まってんだロォ!
でないと、ムンドゥス様に殺されちまう」
ディーヴァがあの男よりも優先順位が高いのは、変わらないようだ。
「それだと、命令だからではなく殺されたくないから連れ戻す。そう言っているように聞こえるな」
「そ、そんなことよりお前は見つけるも何も、目の前にいたんだろ!
戦いを楽しみすぎて命令忘れたあげく、連れ去る予定の天使を助けたらしいな!?」
「ああ。おかげで首根っこ掴んで連れてくるのも出来なかった」
「ネロアンジェロこそ次はないんだぞ……」
そうだ。
グリフォンが負けなければいい話だが、もしも自分に役が回ってくる事があれば。
もしも負けてしまえば。
今度こそ命はない。
それを想像してか、背筋へ冷たいものが走る感覚が互いにあった。
「じゃあそろそろあの男を仕留めにいくかね。そばに天使もいるなら、連れ帰るのに好都合だ。
あれは天使の本体じゃないけどな!」
そうだ。ディーヴァの器はここにある。
ひんやりとして仮死状態に近いこの体は、服のところどころに血がしみこみひどく痛々しい。
顔や手足についた血を拭き取るには苦労した。なにせ、その血の香りが悪魔の欲を刺激するのだから。
ディーヴァの青白い顔を見つめていれば、最後のグリフォンの声がかかり、現実に引き戻された。
「お前の獲物は俺がいただくが恨むなよ。ネロアンジェロ?」
「ああ。好きにしろ。
……そういえばあの男、ダンテという名前らしい。どこかで聞いた名だ」
「はぁ?どこで聞いたよ」
ディーヴァがそう呼んでいた事をふと思い出した。
目の錯覚だったのか、悲痛な叫びでダンテの名を呼ぶ姿は、昔どこかで見た気がしてならない。
ああ……俺の名もあの時のように呼んでくれたなら。
「どこだろうな」
また頭痛がする。
あの男と、そして天使のディーヴァ。
あの2人について詳しく考えようとすればするほど、記憶に靄がかかってしまう。
思い出せそうで、でもなぜか、思い出せない。
ずいぶんと遅かったな」
俺が城の一室へ入ると、そこには侵入者の2度目の排除に出かけたばかりのグリフォンが戻ってきていた。
当たり前だがディーヴァは出迎えてくれない。すでにここから逃亡し、今はあの赤いコートの男の元だ。
顔を合わせたのが、ここ数時間で小うるさく囀るグリフォンとは。気分が落ち込む。
「なんだヨ、雑巾みたいにボロボロだな。
負けたからか?浮かない顔してるぜ。仮面のせいで顔わからないけど!」
「グリフォン、貴様こそボロボロな見た目だが?」
グリフォンも口元を特徴あるマスクで覆っている。
猛禽のような鋭い目つきだけで判別する他ないが、くたびれたような表情をしているように見えた。目は口程にものをいうからな。
「いや〜、負けた負けた。
あの赤いコートの男、なかなかしぶといしすばしっこい。船の上をウロチョロするもんだから仕留め損ねてしまった。
ふふふ、お互いソー・ルーザーズってわけだ!」
「同じ枠組みに入れられたら迷惑だ」
負け犬のレッテルを自ら背負うなどまっぴらごめんである。……ああ、グリフォンの場合は負け鳥か。
「ま、ムンドゥス様から与えられた罰の方が厄介だったけども」
そう言ってグリフォンは、苦痛に表情を歪ませている。全身をさすっているところを見るに、その傷のほとんどがあの男ではなく魔帝からの仕置きによるものなのだろう。同意見だ、俺もキツかった。
鷲掴みにされた心臓を握り潰されるような激しい痛みの後、より闇に侵食されていく感覚。
もう元にあの頃の自分に戻れなくなるのではないか。そう思わせた。
だが、あの頃とは一体……。頭痛がする。
「こっちも強いが、男は一枚上手。強かったなあ。
罰を受ける羽目になりたくはなかったが、次は絶対に負けない。脚で地べたに縫いとめて啄んで首を持ち帰ってきてやるううう!」
「難易度高そうだな」
「ふっふっふ。
ムンドゥス様から与えられたのは罰だけじゃない。強い魔力も与えていただけたから次は俺の勝ちだ」
「悪魔が慈悲を?弱者に無慈悲で、裏切りが常な悪魔が……それも頂点に立つムンドゥス様が?」
耳を疑う。
他の者に大切な魔力を分け与えるほどに、赤いコートの男を我が身に降りかかる火の粉だと思っているのか。
こんな場所でも俺はあいつと比べて劣って見られて……ん、俺はなぜそう思ったんだ?
比べて劣る、などという考えはどこから来た。
「俺は特別なんだよ!なにせ、腹心だからな。
ムンドゥス様がお前をどこでヘッドハンティングしてきたのかは知らん。だがお前も腹心になった方がいいぞ。まず給料があがる!」
考え込んでいれば現実に無理やり引き戻すが如く、背中をバシバシと叩かれた。
話の内容と痛みで、肉体的にも精神的にも衝撃が大きい。
「給料……」
そ ん な も の 貰 っ た 事 な い が ?
しかし、馴れ馴れしい鳥だ。
ディーヴァが来てからだろうか、やたら気さくになったし、お互いの距離は近くなった。本性を知るほどに。
それがいい事なのか悪い事なのか全くわからないが、ディーヴァの影響だろう。
「グリフォン、まさかムンドゥス様の前でもそんな口調になったりしてないだろうな。馴れ馴れしいぞ」
気がつけば口にも出ていた。
「そんな失態おかすかヨッ!
ネロアンジェロの前では素を隠す必要感じないからだ。気にするな」
「はぁ……クールな姿に似合わん口調だ。
そのふざけたような底抜けに明るい口調、グリフォンよりもファントムのほうが似合っていたろうに」
「ムッ。反逆罪になった奴の事なんか言うな」
結局反逆罪扱いか。自分の思い通りに動かぬ駒は、魔帝にとってすべて反逆罪に見なされるのだろう。
しかしなぜファントムは魔帝との楔が解けたのだろうか。そこにもディーヴァの存在が関わってきそうだが、深く考えるのはよそう。
「けど、そうだな……。
ファントム、あれは御しきれない悪魔だし、もう一度あやつが排除しに行っていればあるいは……ムムム」
子を多数踏み潰されたと怒り狂っていたファントム。
もともと沸点は低く炎を吐いて怒るのか、怒りはそのまま力になるタイプだったようで、魔帝ですら時には手を焼いていたとの話だ。
「なるほど。グリフォンとは比べられないほど止められない奴だった、という事か」
「いや、俺だって簡単に止められない暴君なんだぞ!」
「貴様はパッと見は違うが、実はトリアタマで頭が悪……単純だから御しやすい」
「なっ!?!!
今何つった!アタマワルイって言いかけたか!?
だ〜れが三歩歩けば忘れるやつだと!?」
口が滑った。
が、そういうところだ。そういうところが単純で御し易いというのだ。
「何もそこまで言ってない」
「チクショ〜赤いコートの男にも言われた事を!」
あの男……敵ながら思考が似ているのか。
それはそれは、敵でなかったらいい酒が飲めそうだ。
グリフォンが地団駄を踏んでいる中、下級悪魔からあの男がコロシアムを開くための盾を取り外したとの報告が入った。
迎え撃つのはグリフォンだ。
だが、下級悪魔の前での威厳はどこへやら、ぷんすかと怒っているグリフォンにはその報告は聞こえていまい。
幸いまだ時間はある。
落ち着かせてから向かわせなくては、勝てる戦も負けてしまうだろう事は想像に難くなかった。
「そういえば天使は見つけたのか?」
「あ?見つけてたら男なんぞほっぽって鷲掴んで連れてくるに決まってんだロォ!
でないと、ムンドゥス様に殺されちまう」
ディーヴァがあの男よりも優先順位が高いのは、変わらないようだ。
「それだと、命令だからではなく殺されたくないから連れ戻す。そう言っているように聞こえるな」
「そ、そんなことよりお前は見つけるも何も、目の前にいたんだろ!
戦いを楽しみすぎて命令忘れたあげく、連れ去る予定の天使を助けたらしいな!?」
「ああ。おかげで首根っこ掴んで連れてくるのも出来なかった」
「ネロアンジェロこそ次はないんだぞ……」
そうだ。
グリフォンが負けなければいい話だが、もしも自分に役が回ってくる事があれば。
もしも負けてしまえば。
今度こそ命はない。
それを想像してか、背筋へ冷たいものが走る感覚が互いにあった。
「じゃあそろそろあの男を仕留めにいくかね。そばに天使もいるなら、連れ帰るのに好都合だ。
あれは天使の本体じゃないけどな!」
そうだ。ディーヴァの器はここにある。
ひんやりとして仮死状態に近いこの体は、服のところどころに血がしみこみひどく痛々しい。
顔や手足についた血を拭き取るには苦労した。なにせ、その血の香りが悪魔の欲を刺激するのだから。
ディーヴァの青白い顔を見つめていれば、最後のグリフォンの声がかかり、現実に引き戻された。
「お前の獲物は俺がいただくが恨むなよ。ネロアンジェロ?」
「ああ。好きにしろ。
……そういえばあの男、ダンテという名前らしい。どこかで聞いた名だ」
「はぁ?どこで聞いたよ」
ディーヴァがそう呼んでいた事をふと思い出した。
目の錯覚だったのか、悲痛な叫びでダンテの名を呼ぶ姿は、昔どこかで見た気がしてならない。
ああ……俺の名もあの時のように呼んでくれたなら。
「どこだろうな」
また頭痛がする。
あの男と、そして天使のディーヴァ。
あの2人について詳しく考えようとすればするほど、記憶に靄がかかってしまう。
思い出せそうで、でもなぜか、思い出せない。
