mission 13:sunken ship ~脱出~
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「ああもう、ダンテの腰まで来てる。
なんでこんな怖い思いしなきゃいけないの?ほんとヤだわ……」
物凄い勢いで水嵩が増してきていた。
腰付近にまで到達したそれも、目を離せばすぐに胸まで届くだろう。
ダンテより背の低いあたしなら、机から降りればすでに胸の辺りまで来ているはず。
水の中を歩くより、そろそろ泳ぐほかないかもしれない。
「嫌だろうが行くしかない。完全に水没する前にな」
もともとそれは決まっていた事で、結局水の中を泳いで進むほか道はなかったのだ。
深いため息を吐き出し、本当の意味での覚悟を決める。……キスの覚悟ではなくて。
『ならもっと早めに脱出しとけばよかったんじゃない?ってディーヴァは言いたいんだと思うよ』
アラストルは感が鋭いというかなんというか。
あたしの気持ちを代弁してツッコミを入れてくれる事が多い。もしかしてこの世界には数が少ない常識人かな?
「沈没時に下へ向かう水の流れが渦になるのはわかるな?下手に早くから脱出しようとしたらアレに巻き込まれて水底に引き込まれる。
渦が落ち着くまでの時間稼ぎでもあったわけだ」
『何もキスして時間稼ぐことないと思うんだけどねえ。ウブな俺にあんな濃厚なモノ見せつけてくれちゃってさー』
「ただのキスじゃないってのはもうわかってんだろ?蒸し返すなよ」
最後に恥ずかしくなる事をアラストルに蒸し返された。
ほんと、蒸し返さないでよもうっ。
「さ、話は終わりだ。
ディーヴァ、何回か浅く小さめの呼吸を繰り返せ。そのまま息を止めろ」
さらば机。
ダンテに抱えられ机から下ろされた。冷たい水が全身が飲み込まれ、不安感ばかり募ってくる。
「息止める前って、大きく息を吸うんじゃなくていいの?」
小さな呼吸じゃ、酸素の絶対量が足りなくなる。ダンテが言っていたジ・エンドそのままだ。
だが、ダンテが引用してきたのは、珍しく学生時代の勉学だった。
「オレが言った方法の方が長く息を止めていられる。学校の授業で習ってただろ?」
「あんまり覚えてない」
「何のために学校通ったんだか」
数学が嫌いだったあたしは、理数系全般が苦手なほうだ。実験だってあまり得意じゃなかった。
ダンテは高校への潜入捜査時に、興味本位で教科書を眺めていたが、聞けばその時に覚えたらしい。
いつの間に……!やはり、ダンテがきちんと幼少期から学校に通っていたならば、そうとうオツムが優れていただろう。
胸の内に一瞬謎の嫉妬心がわいたが、無視しよう。
「ただし何回かの呼吸ってのは10秒くらいの長さにしとけ。やりすぎは逆効果だ」
「浅く小さく、吸って吐いて吸って吐いて10秒……、」
ガシャン!!
「ひっ!?」
練習していたら部屋につり下がっていたシャンデリア型の蝋燭の明かりが落ちた。
せっかくの呼吸法が途中で変に止まって息が詰まった。
そして何より、唯一の光源が水に落ちてジュッという音と共に消えてしまい、部屋が真っ暗になる。
暗闇は数学以上に大嫌い。
「ななななんでこのタイミングで明かり消えちゃうかな!?」
暗くなった瞬間にダンテが抱きしめてくれたからいいものの、ダンテが触れている事がわからなかったら、泣き出していたろう。
水音も激しくなるばかりだ。
「ここは幅が狭くて1人ずつしか通れない。
オレが先に行く。
潜ったらオレに続いて通気口くぐればいい、オレが抱きとめる。
ディーヴァはオレの首に手を回してろ!
そのあと怖かったら目を閉じてて構わない。むしろ怖い思いしたくないなら目を閉じてろ。いいな?」
その音に掻き消えてしまいそうなダンテの必死な声を、頭に叩き込むようにしっかり聞く。
ダンテに続いて潜り抜けてダンテの首に手を回して目をつぶる。
内容は簡単なはずなのに、命にも関わりそうなそれはとても難しく聞こえた。
「無事にディーヴァを連れ出すから心配するな」
水が鎖骨まで到達してきた。
そんなに不安そうな顔してたのかな。あやすように軽く頭をぽんぽんと叩かれる。
ひどく安心するダンテの頭ぽんぽんだ。
安心するけど、そこは行ってきますなキスじゃないんだ。
多分、キスは無事にここを抜けてからいっぱいされるだろうけど。
「オレが潜ったらさっき言った10秒の呼吸始めろよ!がんばれディーヴァ!」
早口でそう言い残すと、ダンテは素早く水中に潜った。
その動きには躊躇する隙すらない。
行ってきますの言葉を発する暇がなかった。それだけ事態は深刻なのだ。水嵩を見れば丸わかりだ。
ダンテを信じよう。
言われた通りの呼吸をする。なんとかの呼吸、なんて悪ふざけする暇もない。
「すぅっ……!」
水嵩が口元まで到達したのは、潜ったと同時だった。
そうして潜った水中は水の上よりもさらに暗く、見ているものの目には深海のように映る。
ダンテに続いて、とは言われたがあまりにも何も見えない。
通気口の位置が二時の方向だと分かっていなければ、積んでいた。
とはいえ暗すぎるそこは、水の流れを感じ取って動くほかなく、目ばかりを頼らずに手探りで泳いでいく。
暗闇の中で小粒の泡が浮かんでいるのだけがよく見えていた。
これだ。この気泡が目印だ。
ゴン!!!!
痛い。
通気口だと思ったのに、沈んだこの部屋の装飾品や瓶だったらしい。額にぶつかり、手に取って初めて確信する。
紛らわしいなぁ。酸素が漏れちゃったじゃない。
使った分の酸素を補給するしかなく、この部屋に残ったわずかな酸素を求めて息継ぎにあがる。
ほんの少しだけ酸素を得ると、もう一度潜り今度こそダンテの待つ部屋の外へと向かう。
そのタイミングは、部屋が完全に水中へと飲み込まれる時だった。
くぐり抜けた、と思った瞬間ぐいと腕を引っ張られた。
ああ、この強いけれどどこか優しい力加減はダンテの腕だ。
部屋内よりは明るい水中とはいえ、至近距離に来たダンテの姿がかろうじてわかるくらい。
そのままダンテの首へ誘導され、手を回してしがみつくようジェスチャーで伝えられた。
しっかりと掴まれば、あとは大きな掌が目の上を覆う。目を閉じてろ、って言ってたもんね。
目を閉じてダンテの動きに身を委ねる。
あとはただ、酸素を使わないようにして呼吸をひたすら止めるだけ。
すでにちょっぴり苦しいけど、ダンテだって苦しいはずだ。
大人しくダンテを信じて待つ、そう決めたじゃないか。
なんでこんな怖い思いしなきゃいけないの?ほんとヤだわ……」
物凄い勢いで水嵩が増してきていた。
腰付近にまで到達したそれも、目を離せばすぐに胸まで届くだろう。
ダンテより背の低いあたしなら、机から降りればすでに胸の辺りまで来ているはず。
水の中を歩くより、そろそろ泳ぐほかないかもしれない。
「嫌だろうが行くしかない。完全に水没する前にな」
もともとそれは決まっていた事で、結局水の中を泳いで進むほか道はなかったのだ。
深いため息を吐き出し、本当の意味での覚悟を決める。……キスの覚悟ではなくて。
『ならもっと早めに脱出しとけばよかったんじゃない?ってディーヴァは言いたいんだと思うよ』
アラストルは感が鋭いというかなんというか。
あたしの気持ちを代弁してツッコミを入れてくれる事が多い。もしかしてこの世界には数が少ない常識人かな?
「沈没時に下へ向かう水の流れが渦になるのはわかるな?下手に早くから脱出しようとしたらアレに巻き込まれて水底に引き込まれる。
渦が落ち着くまでの時間稼ぎでもあったわけだ」
『何もキスして時間稼ぐことないと思うんだけどねえ。ウブな俺にあんな濃厚なモノ見せつけてくれちゃってさー』
「ただのキスじゃないってのはもうわかってんだろ?蒸し返すなよ」
最後に恥ずかしくなる事をアラストルに蒸し返された。
ほんと、蒸し返さないでよもうっ。
「さ、話は終わりだ。
ディーヴァ、何回か浅く小さめの呼吸を繰り返せ。そのまま息を止めろ」
さらば机。
ダンテに抱えられ机から下ろされた。冷たい水が全身が飲み込まれ、不安感ばかり募ってくる。
「息止める前って、大きく息を吸うんじゃなくていいの?」
小さな呼吸じゃ、酸素の絶対量が足りなくなる。ダンテが言っていたジ・エンドそのままだ。
だが、ダンテが引用してきたのは、珍しく学生時代の勉学だった。
「オレが言った方法の方が長く息を止めていられる。学校の授業で習ってただろ?」
「あんまり覚えてない」
「何のために学校通ったんだか」
数学が嫌いだったあたしは、理数系全般が苦手なほうだ。実験だってあまり得意じゃなかった。
ダンテは高校への潜入捜査時に、興味本位で教科書を眺めていたが、聞けばその時に覚えたらしい。
いつの間に……!やはり、ダンテがきちんと幼少期から学校に通っていたならば、そうとうオツムが優れていただろう。
胸の内に一瞬謎の嫉妬心がわいたが、無視しよう。
「ただし何回かの呼吸ってのは10秒くらいの長さにしとけ。やりすぎは逆効果だ」
「浅く小さく、吸って吐いて吸って吐いて10秒……、」
ガシャン!!
「ひっ!?」
練習していたら部屋につり下がっていたシャンデリア型の蝋燭の明かりが落ちた。
せっかくの呼吸法が途中で変に止まって息が詰まった。
そして何より、唯一の光源が水に落ちてジュッという音と共に消えてしまい、部屋が真っ暗になる。
暗闇は数学以上に大嫌い。
「ななななんでこのタイミングで明かり消えちゃうかな!?」
暗くなった瞬間にダンテが抱きしめてくれたからいいものの、ダンテが触れている事がわからなかったら、泣き出していたろう。
水音も激しくなるばかりだ。
「ここは幅が狭くて1人ずつしか通れない。
オレが先に行く。
潜ったらオレに続いて通気口くぐればいい、オレが抱きとめる。
ディーヴァはオレの首に手を回してろ!
そのあと怖かったら目を閉じてて構わない。むしろ怖い思いしたくないなら目を閉じてろ。いいな?」
その音に掻き消えてしまいそうなダンテの必死な声を、頭に叩き込むようにしっかり聞く。
ダンテに続いて潜り抜けてダンテの首に手を回して目をつぶる。
内容は簡単なはずなのに、命にも関わりそうなそれはとても難しく聞こえた。
「無事にディーヴァを連れ出すから心配するな」
水が鎖骨まで到達してきた。
そんなに不安そうな顔してたのかな。あやすように軽く頭をぽんぽんと叩かれる。
ひどく安心するダンテの頭ぽんぽんだ。
安心するけど、そこは行ってきますなキスじゃないんだ。
多分、キスは無事にここを抜けてからいっぱいされるだろうけど。
「オレが潜ったらさっき言った10秒の呼吸始めろよ!がんばれディーヴァ!」
早口でそう言い残すと、ダンテは素早く水中に潜った。
その動きには躊躇する隙すらない。
行ってきますの言葉を発する暇がなかった。それだけ事態は深刻なのだ。水嵩を見れば丸わかりだ。
ダンテを信じよう。
言われた通りの呼吸をする。なんとかの呼吸、なんて悪ふざけする暇もない。
「すぅっ……!」
水嵩が口元まで到達したのは、潜ったと同時だった。
そうして潜った水中は水の上よりもさらに暗く、見ているものの目には深海のように映る。
ダンテに続いて、とは言われたがあまりにも何も見えない。
通気口の位置が二時の方向だと分かっていなければ、積んでいた。
とはいえ暗すぎるそこは、水の流れを感じ取って動くほかなく、目ばかりを頼らずに手探りで泳いでいく。
暗闇の中で小粒の泡が浮かんでいるのだけがよく見えていた。
これだ。この気泡が目印だ。
ゴン!!!!
痛い。
通気口だと思ったのに、沈んだこの部屋の装飾品や瓶だったらしい。額にぶつかり、手に取って初めて確信する。
紛らわしいなぁ。酸素が漏れちゃったじゃない。
使った分の酸素を補給するしかなく、この部屋に残ったわずかな酸素を求めて息継ぎにあがる。
ほんの少しだけ酸素を得ると、もう一度潜り今度こそダンテの待つ部屋の外へと向かう。
そのタイミングは、部屋が完全に水中へと飲み込まれる時だった。
くぐり抜けた、と思った瞬間ぐいと腕を引っ張られた。
ああ、この強いけれどどこか優しい力加減はダンテの腕だ。
部屋内よりは明るい水中とはいえ、至近距離に来たダンテの姿がかろうじてわかるくらい。
そのままダンテの首へ誘導され、手を回してしがみつくようジェスチャーで伝えられた。
しっかりと掴まれば、あとは大きな掌が目の上を覆う。目を閉じてろ、って言ってたもんね。
目を閉じてダンテの動きに身を委ねる。
あとはただ、酸素を使わないようにして呼吸をひたすら止めるだけ。
すでにちょっぴり苦しいけど、ダンテだって苦しいはずだ。
大人しくダンテを信じて待つ、そう決めたじゃないか。
