ベオウルフはダンテとよく似たクロを少しばかり嫌そうにもしながら、話をする。

「奴はお前が抜けたことに気がついたか？」

ふるふるふる、首をふって否定する。

ディーヴァは話を聞いていてわかってきた。
ベオウルフが言っている奴とはダンテのこと。
それからクロは、ベオウルフによって本人のうかがい知らぬところで影から勝手に出たということ。

つまり、ダンテはクロがいなくなったことに気づいてないのだろう。

「まさか気がつかないとは…ぬるい奴め」
「ダンテは今依頼中だからそんな暇ないんだよ、きっと！」

すかさずディーヴァはフォローするが、ベオウルフは鼻で笑った。

「だといいのだがな」

自分の一部が消えても、気が付かぬほどぬるま湯に浸かってばかりの生活に慣れてしまったらしいダンテ。
今ならクロですら勝てる！…かもしれない。

「クロ、やれるな？」

コクリ。

ベオウルフとクロの２人はアイコンタクトをかわし合う。

「夜道だ。…影討ちを狙うなら、夜道が王道と言うものだろう、頼んだぞ」

『夜道で影討ち』。
その言葉が聞こえた瞬間、ディーヴァは勢いよく２人を見た。

「え…！！あ、あのさぁ……危ないことは…しないで、ね？」

影からこそこそ攻撃なんてしたら、いくら半魔なダンテといえど、怪我をする恐れがある。

「油断していなければ大丈夫であろう」
「油断…うーん……そう、だね」

しれっと言ってのけるベオウルフとうんうん頷くクロに、ディーヴァは不安そうにしながらも同意した。