次の瞬間、目を開けていられないほどの光が、ベオウルフ全体から放たれた。

「わ、眩しい！」

ディーヴァはそれを目を固く閉じてやり過ごす。

これなんて富竹フラッシュ！？
光がおさまってもしばらく目をチカチカさせていたディーヴァ。

「すまぬ。今の状態で一気に力を放出すると、どうしてもこうなってしまうのだ」

しばしののち、その場は再びほの暗い収納スペースへと戻る。
ディーヴァがあまりの眩しさに閉じていたまぶたを、ゆっくりと開けるとそこにいたのは…。

「え、クロ！？」

ダンテのドッペルゲンガーのクロだった。

「どうしてここにクロが？ベオウルフ、どうやったの？」

普段はダンテの影として、その体の中にいるドッペルゲンガー。
彼はダンテが魔力を代価に呼び出すことで、そこから実体をもって出てくるのである。

ディーヴァが疑問に思ってベオウルフに聞いた。
ベオウルフは表情が見えれば、絶対ドヤ顔であろう声音で言う。

「力を使って呼んだのだ。光あるところ、影あり。光の力を解放すればなんのこれしき！」
「そんな使い方もできるんだぁ…すごいんだね」

ベオウルフの光属性の力で、影たる存在のドッペルゲンガーを呼び出したらしい。


「クロ、久しぶりだね」

ディーヴァはクロに向き直り嬉しそうに挨拶した。

ダンテが必要にかられて外に出さない限り、表に出ることのないクロ。
前に会った時からかなりの時間が経っている。

ニコリ、ふんわりとした笑顔を浮かべ、ディーヴァを優しく撫でると小さくハグしてくる。
ディーヴァもそれを拒否することなく受け入れた。

ダンテとは似て非なる笑顔を浮かべるクロ。
その表情はとても心優しく、いつぞやも思った気がするがまるで兄のようだった。

ハグをかわしたあと、クロをじっと見つめるディーヴァ。

「あれ？なんか…前とちょっと雰囲気が変わった、よね？」

クロはダンテと同じ姿形をしているが、前はもっとそっくりだった。
だが、今は少し違う。

その目の色がダンテとは正反対なのだ。

瞳孔は黒を交えたような真紅に輝き、光彩は赤くぼうっと幽かに光を放っている。
そしてまわりを囲む強膜は白ではなく、闇の漆黒色に染まっていた。

まさに悪魔！と言ったその色合い…ディーヴァは少しこわく感じるのだった。