mission 35:total eclipse, demon world~魔界、そして太陽と月~
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「はぁ、はぁ、鏡…探しながら、…逃げ、なきゃ、…ね…」
逃げても逃げても、悪魔の攻撃は繰り返され、隠れた先から破壊され崩れる岩壁。
その場に残るのは、血で薄汚れた服の切れ端。
期せずして破れた物だが、血がたっぷりと染み込んでいたことで、悪魔の鼻は誤魔化せたよう。
悪魔は血の匂いでむせ返るそこを、集中的に攻撃しだした。
その合間や隙間を縫い、ディーヴァはなんとか命からがら進む。
逃げたことに気づいていないというなら、それでよし!
その内気づいて追ってくるだろうが、少しの時間稼ぎにはなりそうだ。
しかし、せっかくひと時は休んで回復したというのに、また目が霞んできて見えにくくなってきた。
出血が多かったから、血がまた足りなくなってきたのだろうが、死が近くて目を閉じたらそこで試合どころか人生終了…とかだったら困るなぁ、なーんて。
何それありえそうで笑えない。
「あ、やっぱ進むのもう無理ぃ…」
なんとか這うようにして入った洞穴状の一室。
ずるずると体をもたれかからせた場所。
物置と化したその奥、様々な物でごちゃごちゃと溢れかえる場所にひっそりと佇む物があった。
背が高く埃の色を纏う布で覆われたそれこそ。
「もし、かして…」
ずるり、布を取り払うと現れたのは、ずっと探していた、自分の姿を映す鈍色に輝くもの。
「…か、鏡……!?鏡だぁーーーー!!」
チャチャチャ、チャ、チャッチャッチャー!!
気分は勇者。
大冒険の末に最高のお宝を手に入れる、とかのような、なんとかクエストの主人公さながら。
「ああ、良かった…!諦めなくて良かった…!!」
どの世界でも鏡は鏡。
ひんやりとした質感と、日の目を見なかったことから曇らなかった輝きが、ディーヴァを迎え入れる。
傷口が疼いて発生した熱を冷ますその冷たさがなんだか心地よい。
気分的なものだと思うが、貧血も落ち着いたような錯覚も覚えた。
すりすり、頬ずりすれば目に入る、指が触れた鏡にぺっとりと着いた自分の血液。
「ハッ!!そうだった。ダンテ呼ばなきゃ!ダンテーーー!!」
血を見たら現実を思い出した。
ダンテのこと考えてダンテのことを呼ぶ。
それだけでいいのに。
大きな声を出す必要なんかないのに。
ヒーローを呼ぶ時のヒロインそのままに、ディーヴァはダンテの名前を大声で呼んだ。
ぐるぐると鏡の表面が波打ち、映し出す人物はダンテその人。
「ああ、良かった!ダンテ、また会えた…!」
ホッとして鏡に抱きつく勢いで、その表面に近寄る。
「…ーディーヴァ…ー、ろ、」
「え、何?聞こえないよ、ダンテ」
「…逃げろ、ディーヴァ…!後ろだ!!」
「っ!?」
ダンテの言葉に後ろを振り返る。
そのダンテがきちんと形を成すその前に、ディーヴァの大声でやってきてしまったらしい、先ほどの狼悪魔2匹がいた。
呼んではならぬ者を先に呼んでしまった、そう思った時には遅く、ディーヴァの背中の翼が悪魔の振りかぶる鋭い爪で切り裂かれた。
「うっ…あ゛ぁぁぁぁ!!」
血に染まった羽根が、無残にもはらはらと周りに落ちて行った。
皮一枚くっ付いてさえいれば後で元どおりに回復できる便利な翼だが、その神経は体と繋がっている。
つまり痛覚は体と同じように感じ、翼から出血すればその分の血も失う。
想像を絶する痛みがディーヴァを襲った。
鏡から眩い光が溢れたのは、その時だった。
気を失いそうな痛みを、どっと噴き出る汗と気力だけで押さえ込み、体を震わすディーヴァの目の前に待ちに待ち望んでいたダンテその人が鏡を通ってストンと降り立った。
「遅くなってごめんな、ディーヴァ」
「ダン、テ…」
今にも倒れそうなディーヴァを抱きとめて支え、その顔色をそっと伺う。
疲労困憊貧血状態なようで、いつもの血色良い薔薇色の頬も病的に青白く変わっていた。
「ううん、あたし、待って、ない…。今来た、ところ…だよ?…えへへ」
まるでデートの待ち合わせ。
そんな風に笑ってくれるディーヴァが安心できるよう、その頭を優しく撫で、ダンテは薄く微笑み返した。
「もう大丈夫だ。そこでゆっくり休んでてくれ」
痛みで苦しいだろうに、冗談を交えて返してくるディーヴァには申し訳なさしか浮かばない。
この償いは、いくら返しても返しきれないが、まずは目の前に構えている2匹の悪魔に代償を払わせようと思う。
ダンテはこれ以上ないほど怒っていた。
「ディーヴァ、決してオレの後ろからは出てくれるなよ?」
「うん…」
愛する者にかける言葉はどこまでも優しい。
…優しい、のだが。
ディーヴァからはうかがい知る事が出来ないが、悪魔に向けるダンテの顔は、これ以上ないくらい悪魔たる凶悪な表情。
こめかみには青筋を浮かべ、ポキポキと指を鳴らし、これから始まる事に備えているのだが、凶悪な表情の割には、笑顔だ。
あ、この笑顔、こわいかもしれない。
「さぁて、ディーヴァをこんなになるまで傷つけた礼をさせてもらおうか?
…てめぇらだよなぁ。ディーヴァの白い太ももに傷をつけたのは。かわいい小さな頭にもか。ああ、首にも顔にも脛にも腕にも、全身に怪我、負わせたよなァァ!?」
全部が全部、この狼悪魔の仕業ではないが、ダンテは聞いちゃいないだろう。
狼も怖気付く事なく、構えを解いていない。
と、くればだ。
「「ガゥルルルルゥ…」」
「いいぜ、てめぇらもやる気か。その命でオトシマエ、つけさせてもらうぞ…!」
お互い一歩もひかないということで、さもそれが当たり前かのように、戦いの火蓋が切って落とされた。
抜き身にしたフォースエッジを構え、ダンテが相手2匹に斬りかかる。
……この狭苦しい部屋内で。
「せりゃあぁ……っ!」
天井を、床を、そして壁をも破壊する勢いで振るわれる剣、悪魔の牙と爪、そして闇に響いてはそこかしこに大穴を穿つダンテの弾丸。
狭い室内だからか、優勢も劣勢もなく、その実力は僅差でダンテに…いや、今はまだ拮抗していた。
それよりもだ。
逃げても逃げても、悪魔の攻撃は繰り返され、隠れた先から破壊され崩れる岩壁。
その場に残るのは、血で薄汚れた服の切れ端。
期せずして破れた物だが、血がたっぷりと染み込んでいたことで、悪魔の鼻は誤魔化せたよう。
悪魔は血の匂いでむせ返るそこを、集中的に攻撃しだした。
その合間や隙間を縫い、ディーヴァはなんとか命からがら進む。
逃げたことに気づいていないというなら、それでよし!
その内気づいて追ってくるだろうが、少しの時間稼ぎにはなりそうだ。
しかし、せっかくひと時は休んで回復したというのに、また目が霞んできて見えにくくなってきた。
出血が多かったから、血がまた足りなくなってきたのだろうが、死が近くて目を閉じたらそこで試合どころか人生終了…とかだったら困るなぁ、なーんて。
何それありえそうで笑えない。
「あ、やっぱ進むのもう無理ぃ…」
なんとか這うようにして入った洞穴状の一室。
ずるずると体をもたれかからせた場所。
物置と化したその奥、様々な物でごちゃごちゃと溢れかえる場所にひっそりと佇む物があった。
背が高く埃の色を纏う布で覆われたそれこそ。
「もし、かして…」
ずるり、布を取り払うと現れたのは、ずっと探していた、自分の姿を映す鈍色に輝くもの。
「…か、鏡……!?鏡だぁーーーー!!」
チャチャチャ、チャ、チャッチャッチャー!!
気分は勇者。
大冒険の末に最高のお宝を手に入れる、とかのような、なんとかクエストの主人公さながら。
「ああ、良かった…!諦めなくて良かった…!!」
どの世界でも鏡は鏡。
ひんやりとした質感と、日の目を見なかったことから曇らなかった輝きが、ディーヴァを迎え入れる。
傷口が疼いて発生した熱を冷ますその冷たさがなんだか心地よい。
気分的なものだと思うが、貧血も落ち着いたような錯覚も覚えた。
すりすり、頬ずりすれば目に入る、指が触れた鏡にぺっとりと着いた自分の血液。
「ハッ!!そうだった。ダンテ呼ばなきゃ!ダンテーーー!!」
血を見たら現実を思い出した。
ダンテのこと考えてダンテのことを呼ぶ。
それだけでいいのに。
大きな声を出す必要なんかないのに。
ヒーローを呼ぶ時のヒロインそのままに、ディーヴァはダンテの名前を大声で呼んだ。
ぐるぐると鏡の表面が波打ち、映し出す人物はダンテその人。
「ああ、良かった!ダンテ、また会えた…!」
ホッとして鏡に抱きつく勢いで、その表面に近寄る。
「…ーディーヴァ…ー、ろ、」
「え、何?聞こえないよ、ダンテ」
「…逃げろ、ディーヴァ…!後ろだ!!」
「っ!?」
ダンテの言葉に後ろを振り返る。
そのダンテがきちんと形を成すその前に、ディーヴァの大声でやってきてしまったらしい、先ほどの狼悪魔2匹がいた。
呼んではならぬ者を先に呼んでしまった、そう思った時には遅く、ディーヴァの背中の翼が悪魔の振りかぶる鋭い爪で切り裂かれた。
「うっ…あ゛ぁぁぁぁ!!」
血に染まった羽根が、無残にもはらはらと周りに落ちて行った。
皮一枚くっ付いてさえいれば後で元どおりに回復できる便利な翼だが、その神経は体と繋がっている。
つまり痛覚は体と同じように感じ、翼から出血すればその分の血も失う。
想像を絶する痛みがディーヴァを襲った。
鏡から眩い光が溢れたのは、その時だった。
気を失いそうな痛みを、どっと噴き出る汗と気力だけで押さえ込み、体を震わすディーヴァの目の前に待ちに待ち望んでいたダンテその人が鏡を通ってストンと降り立った。
「遅くなってごめんな、ディーヴァ」
「ダン、テ…」
今にも倒れそうなディーヴァを抱きとめて支え、その顔色をそっと伺う。
疲労困憊貧血状態なようで、いつもの血色良い薔薇色の頬も病的に青白く変わっていた。
「ううん、あたし、待って、ない…。今来た、ところ…だよ?…えへへ」
まるでデートの待ち合わせ。
そんな風に笑ってくれるディーヴァが安心できるよう、その頭を優しく撫で、ダンテは薄く微笑み返した。
「もう大丈夫だ。そこでゆっくり休んでてくれ」
痛みで苦しいだろうに、冗談を交えて返してくるディーヴァには申し訳なさしか浮かばない。
この償いは、いくら返しても返しきれないが、まずは目の前に構えている2匹の悪魔に代償を払わせようと思う。
ダンテはこれ以上ないほど怒っていた。
「ディーヴァ、決してオレの後ろからは出てくれるなよ?」
「うん…」
愛する者にかける言葉はどこまでも優しい。
…優しい、のだが。
ディーヴァからはうかがい知る事が出来ないが、悪魔に向けるダンテの顔は、これ以上ないくらい悪魔たる凶悪な表情。
こめかみには青筋を浮かべ、ポキポキと指を鳴らし、これから始まる事に備えているのだが、凶悪な表情の割には、笑顔だ。
あ、この笑顔、こわいかもしれない。
「さぁて、ディーヴァをこんなになるまで傷つけた礼をさせてもらおうか?
…てめぇらだよなぁ。ディーヴァの白い太ももに傷をつけたのは。かわいい小さな頭にもか。ああ、首にも顔にも脛にも腕にも、全身に怪我、負わせたよなァァ!?」
全部が全部、この狼悪魔の仕業ではないが、ダンテは聞いちゃいないだろう。
狼も怖気付く事なく、構えを解いていない。
と、くればだ。
「「ガゥルルルルゥ…」」
「いいぜ、てめぇらもやる気か。その命でオトシマエ、つけさせてもらうぞ…!」
お互い一歩もひかないということで、さもそれが当たり前かのように、戦いの火蓋が切って落とされた。
抜き身にしたフォースエッジを構え、ダンテが相手2匹に斬りかかる。
……この狭苦しい部屋内で。
「せりゃあぁ……っ!」
天井を、床を、そして壁をも破壊する勢いで振るわれる剣、悪魔の牙と爪、そして闇に響いてはそこかしこに大穴を穿つダンテの弾丸。
狭い室内だからか、優勢も劣勢もなく、その実力は僅差でダンテに…いや、今はまだ拮抗していた。
それよりもだ。