mission 35:total eclipse, demon world~魔界、そして太陽と月~
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感じた恐怖が直接的なきっかけとなったか、突風を巻き起こしながら背中に再び現る5枚の翼。
突風は聖なる鎌鼬と魔を退ける結界となり、今一度ディーヴァに飛びかかろうとしていた悪魔を弾き飛ばす。
「ギャンッ!?」
吹っ飛ばされた悪魔はディーヴァの数メートル先にあった岩にぶち当たった。
軽く脳震盪でも起こしたか、意識は失えど死んではいない。
「よっしゃ!ディーヴァの翼が間に合ったな!間一髪だったぜ…。けどディーヴァ、大丈夫か?」
「うっ…痛い、けど大丈夫…!」
傷つけられた脇腹を手で押さえつつ、ディーヴァは軽く笑顔を作ってみせた。
その手の隙間からは血がぽたり、ぽたりと滴り、破けた服にわずかながら紅いシミを落とす。
その額には痛みを我慢した証拠の脂汗をかいていた。
替われることなら替わりたい。
ディーヴァと違って半分悪魔である自分は傷の治りが早いし、愛する者が痛がる姿をこれ以上見ていたくない。
「ディーヴァ、ほんとごめん。ほんとにごめんな……」
「大丈夫だから、気にしないで……ね?それよりもダンテ、どうしよう。このあとどうすればいいの?」
下手に攻撃してしまった今、起き上がった悪魔は怒り狂ってディーヴァの血の匂いを辿り、どこまでもどこまでも追ってくるだろう。
それ以前にこれ以上ないご馳走天使、一度狙いをつけておきながら逃すはずがないのだ。
「どうすればって…、とにかく逃げろ。あと鏡だ、でかい鏡探せ!」
「か、鏡!?そんな無茶な!おっきい鏡なんて、そんなのあるわけないじゃない!ここ魔界の森だよ!?」
「わかってる。でも諦めんな!
鏡がねぇとオレがディーヴァを助けに行けないんだっての!」
森に鏡があるはずかない、そう決めつけて乗り気を削がれたままのディーヴァに、ダンテは頑張るよう言った。
「………ディーヴァはそんなとこで死ぬのと鏡探して助かるのどっちがいい?」
おどろおどろしく、低めの声を使ってそう追加して。
「が、頑張って探してみる!」
「よぅし、それでこそオレのディーヴァだ」
ダンテのひっくい声が効いたようでディーヴァは慌てるように、そして悪魔から離れるようにしてそこを後にしようとする。
頑張りをみせる小さな背中に向かって、ダンテは声を張り上げた。
「鏡が見つかったらオレの事考えてオレの名前を呼べ!!」
「ダンテ…。うん、わかった!」
今度こそディーヴァは森の奥へと消えた。
周りには何も建造物ひとつ見当たらないが、もしかしたら森の奥に鏡を保持する建物が建ってるかもしれない、そんな望みを抱いて。
「くそっ!」
ディーヴァの姿が消えてから、ダンテは力任せに床へ拳を叩きつけた。
拳は床にめり込み、ささくれ立った床材が皮膚に突き刺さるが、その痛みは怒りと焦りからかほとんど感じない。
あんな風に言って無理やり行動させたが、助けられない自分が歯がゆくてたまらない。
もしもディーヴァを失うようなことがあれば、自分は自分を許せない。
そもそも、ディーヴァが危険な目に合ってばかりなのは、元を辿ればダンテと一緒にいたからだ。
ダンテと共にいなければ、出会わなければこんなことにはならなかった。
それでも、あの時、始まりの日…ディーヴァを助けずにいたら。
見殺しにしていたら。
そんなの考えたくもない。
ディーヴァが好きだ。
愛している。
ディーヴァと出会わなければよかったなんて、一度も考えたこと無い。
あの時助けなかったら、オレはオレでいられなかった。
後悔なんて全くしてない。
だから、ディーヴァにも後悔してほしくない。
生きることを、諦めて欲しくない。
「絶対、鏡見つけろよな…」
血が滴るのも構わず、ダンテはその指が食い込むのも構わず、手のひらを握り締めた。
ディーヴァが消えてすぐダンテ側の鏡は、魔界を映さなくなった。
そんなただの水面と化した森の水場で、立ち上がる影ひとつ。
いや、正確にはふたつ。
ディーヴァがぶっ飛ばした扱いの赤黒い体毛を震わせ立ち上がる狼と、その横に新しく番いのごとく着いた青黒い狼。
2匹は揃って唸り声をあげると、血の香りを頼りにディーヴァが消えていった方向へと駆け出した。
鋭い牙のギラつく口の中いっぱいに唾液を溜めて。
***
がむしゃら、と言うべきだろう。
森の中をただひたすらジグザグに駆けてきた結果、ディーヴァの目の前には、木々に囲まれた崩れ朽ちた岩壁が現れた。
「はぁはぁ、こ、ここは…!?」
かすり傷から酷い傷、大小様々な細かな傷や脇腹などに刻まれた怪我を庇い、ディーヴァは周りを見渡す。
魔界でなければゆっくり観光したいとも思わせるような古い遺跡、いや古墳のような石と岩がゴロゴロとそこかしこに転がっている。
作りを確認すればピラミッドのそれ。
位の高い悪魔の墓標にも見えるが、そうではなく、もしかしたら城塞跡地かもしれないし、ただ単に悪魔の住処…なんてことも考えられる。
ところどころの崩れがそこがなんなのかをこちらに悟らせなかった。
「お墓じゃありませんように。あ、でも悪魔の住処はもっと困るから、お墓の方がいいかな…」
こんな暗い場所、怖くてたまらないし、暗闇に巣食う悪魔なんてたくさんいると思う。
例えばレッドキャップやゾンビみたいなのとか。
ゾンビには効かないけれど、万が一の時のため、聖書の一文を口の中で唱えておこう。
ちなみにレッドキャップとは、小人のような大きさで血染めの帽子をかぶった悪鬼であり、持っている斧で相手を殺してその血で更に帽子を赤く染めるらしい。
その悪鬼の苦手な物が、ロザリオや聖書とのこと。
だからこそ、ディーヴァは口中で聖書を唱えていたりする。
暗闇はやはり怖い。
心臓が飛び出しそうなほどバクバクと音を立てている。
恐怖ゆえアドレナリンが体の中に大量分泌されているのか、体が硬直して中々足が進まない。
この調子だと、1時間たっても進めなさそうだ。
「ぴゃっ!!」
背後でガタンと大きな物音がした。
びっくりして今度はノルアドレナリンが分泌されたのだろう、恐怖と驚愕は紙一重とは言うが、多少違うようで体が動く…というか逃走本能が活性化された。
ノルアドレナリンはアドレナリンと反対のホルモン。
敵との遭遇時等に爆発的に血圧や心拍を上げて闘争または逃避の行動を起こさせる、いわば火事場の馬鹿力を出すものだ。
結論、ディーヴァ今ならどこまでも走れそう。
突風は聖なる鎌鼬と魔を退ける結界となり、今一度ディーヴァに飛びかかろうとしていた悪魔を弾き飛ばす。
「ギャンッ!?」
吹っ飛ばされた悪魔はディーヴァの数メートル先にあった岩にぶち当たった。
軽く脳震盪でも起こしたか、意識は失えど死んではいない。
「よっしゃ!ディーヴァの翼が間に合ったな!間一髪だったぜ…。けどディーヴァ、大丈夫か?」
「うっ…痛い、けど大丈夫…!」
傷つけられた脇腹を手で押さえつつ、ディーヴァは軽く笑顔を作ってみせた。
その手の隙間からは血がぽたり、ぽたりと滴り、破けた服にわずかながら紅いシミを落とす。
その額には痛みを我慢した証拠の脂汗をかいていた。
替われることなら替わりたい。
ディーヴァと違って半分悪魔である自分は傷の治りが早いし、愛する者が痛がる姿をこれ以上見ていたくない。
「ディーヴァ、ほんとごめん。ほんとにごめんな……」
「大丈夫だから、気にしないで……ね?それよりもダンテ、どうしよう。このあとどうすればいいの?」
下手に攻撃してしまった今、起き上がった悪魔は怒り狂ってディーヴァの血の匂いを辿り、どこまでもどこまでも追ってくるだろう。
それ以前にこれ以上ないご馳走天使、一度狙いをつけておきながら逃すはずがないのだ。
「どうすればって…、とにかく逃げろ。あと鏡だ、でかい鏡探せ!」
「か、鏡!?そんな無茶な!おっきい鏡なんて、そんなのあるわけないじゃない!ここ魔界の森だよ!?」
「わかってる。でも諦めんな!
鏡がねぇとオレがディーヴァを助けに行けないんだっての!」
森に鏡があるはずかない、そう決めつけて乗り気を削がれたままのディーヴァに、ダンテは頑張るよう言った。
「………ディーヴァはそんなとこで死ぬのと鏡探して助かるのどっちがいい?」
おどろおどろしく、低めの声を使ってそう追加して。
「が、頑張って探してみる!」
「よぅし、それでこそオレのディーヴァだ」
ダンテのひっくい声が効いたようでディーヴァは慌てるように、そして悪魔から離れるようにしてそこを後にしようとする。
頑張りをみせる小さな背中に向かって、ダンテは声を張り上げた。
「鏡が見つかったらオレの事考えてオレの名前を呼べ!!」
「ダンテ…。うん、わかった!」
今度こそディーヴァは森の奥へと消えた。
周りには何も建造物ひとつ見当たらないが、もしかしたら森の奥に鏡を保持する建物が建ってるかもしれない、そんな望みを抱いて。
「くそっ!」
ディーヴァの姿が消えてから、ダンテは力任せに床へ拳を叩きつけた。
拳は床にめり込み、ささくれ立った床材が皮膚に突き刺さるが、その痛みは怒りと焦りからかほとんど感じない。
あんな風に言って無理やり行動させたが、助けられない自分が歯がゆくてたまらない。
もしもディーヴァを失うようなことがあれば、自分は自分を許せない。
そもそも、ディーヴァが危険な目に合ってばかりなのは、元を辿ればダンテと一緒にいたからだ。
ダンテと共にいなければ、出会わなければこんなことにはならなかった。
それでも、あの時、始まりの日…ディーヴァを助けずにいたら。
見殺しにしていたら。
そんなの考えたくもない。
ディーヴァが好きだ。
愛している。
ディーヴァと出会わなければよかったなんて、一度も考えたこと無い。
あの時助けなかったら、オレはオレでいられなかった。
後悔なんて全くしてない。
だから、ディーヴァにも後悔してほしくない。
生きることを、諦めて欲しくない。
「絶対、鏡見つけろよな…」
血が滴るのも構わず、ダンテはその指が食い込むのも構わず、手のひらを握り締めた。
ディーヴァが消えてすぐダンテ側の鏡は、魔界を映さなくなった。
そんなただの水面と化した森の水場で、立ち上がる影ひとつ。
いや、正確にはふたつ。
ディーヴァがぶっ飛ばした扱いの赤黒い体毛を震わせ立ち上がる狼と、その横に新しく番いのごとく着いた青黒い狼。
2匹は揃って唸り声をあげると、血の香りを頼りにディーヴァが消えていった方向へと駆け出した。
鋭い牙のギラつく口の中いっぱいに唾液を溜めて。
***
がむしゃら、と言うべきだろう。
森の中をただひたすらジグザグに駆けてきた結果、ディーヴァの目の前には、木々に囲まれた崩れ朽ちた岩壁が現れた。
「はぁはぁ、こ、ここは…!?」
かすり傷から酷い傷、大小様々な細かな傷や脇腹などに刻まれた怪我を庇い、ディーヴァは周りを見渡す。
魔界でなければゆっくり観光したいとも思わせるような古い遺跡、いや古墳のような石と岩がゴロゴロとそこかしこに転がっている。
作りを確認すればピラミッドのそれ。
位の高い悪魔の墓標にも見えるが、そうではなく、もしかしたら城塞跡地かもしれないし、ただ単に悪魔の住処…なんてことも考えられる。
ところどころの崩れがそこがなんなのかをこちらに悟らせなかった。
「お墓じゃありませんように。あ、でも悪魔の住処はもっと困るから、お墓の方がいいかな…」
こんな暗い場所、怖くてたまらないし、暗闇に巣食う悪魔なんてたくさんいると思う。
例えばレッドキャップやゾンビみたいなのとか。
ゾンビには効かないけれど、万が一の時のため、聖書の一文を口の中で唱えておこう。
ちなみにレッドキャップとは、小人のような大きさで血染めの帽子をかぶった悪鬼であり、持っている斧で相手を殺してその血で更に帽子を赤く染めるらしい。
その悪鬼の苦手な物が、ロザリオや聖書とのこと。
だからこそ、ディーヴァは口中で聖書を唱えていたりする。
暗闇はやはり怖い。
心臓が飛び出しそうなほどバクバクと音を立てている。
恐怖ゆえアドレナリンが体の中に大量分泌されているのか、体が硬直して中々足が進まない。
この調子だと、1時間たっても進めなさそうだ。
「ぴゃっ!!」
背後でガタンと大きな物音がした。
びっくりして今度はノルアドレナリンが分泌されたのだろう、恐怖と驚愕は紙一重とは言うが、多少違うようで体が動く…というか逃走本能が活性化された。
ノルアドレナリンはアドレナリンと反対のホルモン。
敵との遭遇時等に爆発的に血圧や心拍を上げて闘争または逃避の行動を起こさせる、いわば火事場の馬鹿力を出すものだ。
結論、ディーヴァ今ならどこまでも走れそう。