mission 35:total eclipse, demon world~魔界、そして太陽と月~
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「うあああ!ディーヴァ!!ああぁ、ようやく繋がったッ!!」
涙を浮かべていたらしく、心底ホッとした様子のダンテのドアップが、水面いっぱいに映っていた。
声も森全体に響き渡りそうなほど大きい。
近所迷惑というか、余計な悪魔を呼びそうでちょっと怖い。
「ダンテ、怖かった…!こわ、かったよ……!うわぁぁぁん!!」
悪魔を呼び出してしまう叫びも構わず、幼子のようにビャービャー泣き喚くディーヴァ。
おい誰かこの2人の大音量止めてくれ。
「ズビーーー」
「うぅ、ひっく、ふぇ、」
しばらく泣いて落ち着いたか、ダンテはティッシュで鼻をかみ目の端を拭き、ディーヴァは袖で目元をぬぐうと、静かに話し始めた。
「ディーヴァ、今どこにいるのかわかるか?」
「うん。最初はナントカって言う人間界と魔界の狭間に連れて来られてたんだけど、そのあと魔界に落ちちゃって…だから今は魔界にいるっぽい…」
「魔界…か」
ナントカ、じゃなくてきちんとその世界にも名前があったのだが、まあそれは置いておくとして。
魔界、という言葉を聞き、口に出しながら反芻するダンテ。
ディーヴァのようなか弱い天使が、魔界なんかに落ちて怖くないはずない。
その心情を察し、ダンテは心痛めた。
「すっごく怖いよ。もうボロボロのキズキズ。さみしいよ、怖いよ、このままじゃあたし、死んじゃうかもしれない…」
ぽろぽろ、ディーヴァ本人もダンテの想像通り、とても辛そうに泣きながら心の内を吐露する。
「ディーヴァ、すまない。
こっちからは、門が簡単に開けられないんだ。日蝕も終わっちまったし…」
悔しそうに、苦しそうに唇をギリギリと強く噛み締めながら、ダンテは言う。
そして沈んだ様相のディーヴァは微かに笑って答える。
「ううん、大丈夫…。でもねダンテ。
あたし、どうやってそっちに帰ればいいかわからないの。どうしていいか、わかんない、んだぁ…あはは、困っちゃうよね……」
無理して笑っているのは、誰が見ても明らかだ。
「ディーヴァ…」
嗚呼、この鏡越しの世界がひどく憎たらしい。
ディーヴァの姿を見せるだけ見せておいて、撫でることも触れることも、抱きしめることも出来ないなんて。
「鏡…、そうだ。なあディーヴァ、お前今手鏡かなんか持ってねぇか?」
「え?鏡?そんなの屋根に登るのに持ってたわけないじゃない…」
「だよなぁ」
別れの直前にしていたことは日蝕観察で、持っていたのなんて日蝕眼鏡と水筒くらい。
それすらも屋根に置き去りで、ディーヴァは違う世界へと渡った。
水鏡という常に動きのある媒体では、ディーヴァの元へは行けなさそうだ。
不変の無機物、鏡でなくては双方ともに世界を行き来するのは難しいだろうとダンテは推察する。
「ダンテに会いたい…」
「オレもだ。ディーヴァに触れたい…抱きしめたい…一晩中キスしてたいくらいだ」
「ふふ、珍しいことにあたしもおんなじ気持ち…」
「それはそれは、珍しいことだな」
「ん、今のあたし、すっごくダンテ不足なの」
ぴとり、鏡に手を当てて映っているディーヴァの頬に触れる。
伝わってくるのは、鏡の冷たい感触だけ。
ディーヴァの柔らかで滑らかで温かな体温はどこにも感じない。
同じようにディーヴァも水面に映るダンテに手を伸ばすが、触れればダンテの姿がかき消されて、ただ指が濡れるのみ。
すぐそこに見えるのに、なのに。
こんなにも近くて遠い。
こんなにももどかしく、苦しく、焦がれる想いは久しぶりだった。
互いを想い合う中、ディーヴァに近づいてくる者があった。
獣特有の息遣いを吐き出して森の中を駆けてくるそれに、人間界にいるダンテは気がつかない。
しかし、天使であるディーヴァはここが魔界だからか、悪意と敵意のある魔の気配に素早く気がついた。
「っ!!何か来る…!」
まるで2人の逢瀬を引き裂くように、木々の間を縫って宙に繰り出し、飛び出てきたのは、赤黒い体躯と毛色を持つ、大きな狼だった。
「グルルルルゥ…」
「ひっ!お、狼…っ!!」
軽い着地音とともにディーヴァの数メートル先に降り立つ狼。
牙を剥き出しにして、低い姿勢で唸る様相を見るに、これからディーヴァを襲う気満々といったところ。
その様子は、水面に映るダンテからもよく見えたようだ。
虫の悪魔の時ならまだよかった。
けれど、肉食獣型の悪魔からなんて逃げられる気がしない。
それも、森の狩人であり、ただでさえ恐ろしいとされる、狼の姿をとった悪魔など。
かわいそうに、ディーヴァは恐怖でカタカタと震え、動けないでいる。
しかし、動かなければそのうち狼は飛びかかる。
それを証拠に、毒気を帯びていそうな息と唾液を垂らしながら、ギラついた赤い目がディーヴァを襲う機会を伺っていた。
オレの太陽、ディーヴァを食おうってか。
まさにディーヴァが話をしていた神話に登場する太陽を食らう狼、スコルのようだとダンテは思った。
「おいディーヴァ…、奴から絶対に目を逸らすなよ。逸らした瞬間に襲って来る」
「う、うん…」
「オレが3つ数え終えたら走れ」
「え!?ど、どっちに走れば…!?」
「あっ馬鹿!目を逸らすなって!」
言ってるそばから、目を逸らしてキョロキョロと周辺を見回してしまったディーヴァ。
それを逃す悪魔ではない。
構えを解き小さく飛び上がったかと思うと、ディーヴァの体目掛け牙を剥く。
ガッ!!
「うぁ…っ!、つぅ……!!」
そのまま同じ場所に留まっていればもっと大怪我していたろう、さっと身を横に倒したディーヴァの脇腹を悪魔の牙が薙ぐように掠った。
傷口が燃えるように熱く痛い。
少し掠っただけでこんなにも痛みを感じるのか、と今更ながらひどく恐怖した。
涙を浮かべていたらしく、心底ホッとした様子のダンテのドアップが、水面いっぱいに映っていた。
声も森全体に響き渡りそうなほど大きい。
近所迷惑というか、余計な悪魔を呼びそうでちょっと怖い。
「ダンテ、怖かった…!こわ、かったよ……!うわぁぁぁん!!」
悪魔を呼び出してしまう叫びも構わず、幼子のようにビャービャー泣き喚くディーヴァ。
おい誰かこの2人の大音量止めてくれ。
「ズビーーー」
「うぅ、ひっく、ふぇ、」
しばらく泣いて落ち着いたか、ダンテはティッシュで鼻をかみ目の端を拭き、ディーヴァは袖で目元をぬぐうと、静かに話し始めた。
「ディーヴァ、今どこにいるのかわかるか?」
「うん。最初はナントカって言う人間界と魔界の狭間に連れて来られてたんだけど、そのあと魔界に落ちちゃって…だから今は魔界にいるっぽい…」
「魔界…か」
ナントカ、じゃなくてきちんとその世界にも名前があったのだが、まあそれは置いておくとして。
魔界、という言葉を聞き、口に出しながら反芻するダンテ。
ディーヴァのようなか弱い天使が、魔界なんかに落ちて怖くないはずない。
その心情を察し、ダンテは心痛めた。
「すっごく怖いよ。もうボロボロのキズキズ。さみしいよ、怖いよ、このままじゃあたし、死んじゃうかもしれない…」
ぽろぽろ、ディーヴァ本人もダンテの想像通り、とても辛そうに泣きながら心の内を吐露する。
「ディーヴァ、すまない。
こっちからは、門が簡単に開けられないんだ。日蝕も終わっちまったし…」
悔しそうに、苦しそうに唇をギリギリと強く噛み締めながら、ダンテは言う。
そして沈んだ様相のディーヴァは微かに笑って答える。
「ううん、大丈夫…。でもねダンテ。
あたし、どうやってそっちに帰ればいいかわからないの。どうしていいか、わかんない、んだぁ…あはは、困っちゃうよね……」
無理して笑っているのは、誰が見ても明らかだ。
「ディーヴァ…」
嗚呼、この鏡越しの世界がひどく憎たらしい。
ディーヴァの姿を見せるだけ見せておいて、撫でることも触れることも、抱きしめることも出来ないなんて。
「鏡…、そうだ。なあディーヴァ、お前今手鏡かなんか持ってねぇか?」
「え?鏡?そんなの屋根に登るのに持ってたわけないじゃない…」
「だよなぁ」
別れの直前にしていたことは日蝕観察で、持っていたのなんて日蝕眼鏡と水筒くらい。
それすらも屋根に置き去りで、ディーヴァは違う世界へと渡った。
水鏡という常に動きのある媒体では、ディーヴァの元へは行けなさそうだ。
不変の無機物、鏡でなくては双方ともに世界を行き来するのは難しいだろうとダンテは推察する。
「ダンテに会いたい…」
「オレもだ。ディーヴァに触れたい…抱きしめたい…一晩中キスしてたいくらいだ」
「ふふ、珍しいことにあたしもおんなじ気持ち…」
「それはそれは、珍しいことだな」
「ん、今のあたし、すっごくダンテ不足なの」
ぴとり、鏡に手を当てて映っているディーヴァの頬に触れる。
伝わってくるのは、鏡の冷たい感触だけ。
ディーヴァの柔らかで滑らかで温かな体温はどこにも感じない。
同じようにディーヴァも水面に映るダンテに手を伸ばすが、触れればダンテの姿がかき消されて、ただ指が濡れるのみ。
すぐそこに見えるのに、なのに。
こんなにも近くて遠い。
こんなにももどかしく、苦しく、焦がれる想いは久しぶりだった。
互いを想い合う中、ディーヴァに近づいてくる者があった。
獣特有の息遣いを吐き出して森の中を駆けてくるそれに、人間界にいるダンテは気がつかない。
しかし、天使であるディーヴァはここが魔界だからか、悪意と敵意のある魔の気配に素早く気がついた。
「っ!!何か来る…!」
まるで2人の逢瀬を引き裂くように、木々の間を縫って宙に繰り出し、飛び出てきたのは、赤黒い体躯と毛色を持つ、大きな狼だった。
「グルルルルゥ…」
「ひっ!お、狼…っ!!」
軽い着地音とともにディーヴァの数メートル先に降り立つ狼。
牙を剥き出しにして、低い姿勢で唸る様相を見るに、これからディーヴァを襲う気満々といったところ。
その様子は、水面に映るダンテからもよく見えたようだ。
虫の悪魔の時ならまだよかった。
けれど、肉食獣型の悪魔からなんて逃げられる気がしない。
それも、森の狩人であり、ただでさえ恐ろしいとされる、狼の姿をとった悪魔など。
かわいそうに、ディーヴァは恐怖でカタカタと震え、動けないでいる。
しかし、動かなければそのうち狼は飛びかかる。
それを証拠に、毒気を帯びていそうな息と唾液を垂らしながら、ギラついた赤い目がディーヴァを襲う機会を伺っていた。
オレの太陽、ディーヴァを食おうってか。
まさにディーヴァが話をしていた神話に登場する太陽を食らう狼、スコルのようだとダンテは思った。
「おいディーヴァ…、奴から絶対に目を逸らすなよ。逸らした瞬間に襲って来る」
「う、うん…」
「オレが3つ数え終えたら走れ」
「え!?ど、どっちに走れば…!?」
「あっ馬鹿!目を逸らすなって!」
言ってるそばから、目を逸らしてキョロキョロと周辺を見回してしまったディーヴァ。
それを逃す悪魔ではない。
構えを解き小さく飛び上がったかと思うと、ディーヴァの体目掛け牙を剥く。
ガッ!!
「うぁ…っ!、つぅ……!!」
そのまま同じ場所に留まっていればもっと大怪我していたろう、さっと身を横に倒したディーヴァの脇腹を悪魔の牙が薙ぐように掠った。
傷口が燃えるように熱く痛い。
少し掠っただけでこんなにも痛みを感じるのか、と今更ながらひどく恐怖した。