mission 35:total eclipse, demon world~魔界、そして太陽と月~
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ディーヴァ本人は魔界の中を右往左往していたが、ダンテがいる人間界からは見れば、不思議なことにまったく移動していなかった。
ディーヴァが見えなくなってまず最初にダンテのしたこと。
それは、慌てふためいてパニックを起こし、次いで沸いてきた怒りに身を任せて拳を屋根にぶつけたことだった。
予想はついたろうが、屋根はダンテの馬鹿力の前に大破したとだけ言っておく。
きっと、この事務所兼自宅はその内出て行くことになるかもしれない。
嗚呼、静かなる笑顔で怒り狂ったディーヴァに殺されそうだ。
「やべえ…」
屋根の様子を目にし、サッと青くなるダンテが少しだけ落ち着きを取り戻した次、ダンテは受話器を手に取る。
忙しなく回転式のダイヤルを回してかけた先は。
「ロダン、大変だ!ディーヴァが消えた!」
ゲイツオブヘルのロダンの元だった。
彼ならば魔界の事やソウイウ事情にも詳しいだろうと踏んでの、連絡である。
だが、慌てるダンテとは反対に、ロダンは至極落ち着き払った声音。
ディーヴァが連れ去られた先にダンテをロダンが連れて行くことは難しくも、ディーヴァ側から道を繋ぐことなら可能との事だ。
しかし、ディーヴァが世界の繋ぎ方など知るはずもなく。
終わった…、と落ち込むダンテに光射す一言。
『鏡を見張れ』
と言っても、ただ単に鏡を見ていればいいわけではない。
鏡に向き合い、自分の魔力を鏡を割らない程度にぶつけ、見たい者、見たい存在を思い浮かべる。
最初は自分の姿しか映らなくとも、その内鏡の表面は違う世界を映し出す。
魔力のなせる技だ、と。
ディーヴァも同じ気持ちでいれば、必ず糸口は見えてくるだろう……。
そんなわけでダンテは、今度はロダンの言うまま、事務所にある姿見をしばらくの間監視することにした。
愛しい者、ディーヴァを脳裏に、まぶたの裏にしっかりと思い浮かべながら。
正直言うとそれを言われた後もかなり慌てたし、パニックで多少おかしくなった。
ま、その様子は想像に難くないだろうし、その失態はダンテのためにもここで晒さないでおこう。
なぜ鏡か。
それは、鏡とは元来魔の領域に属する無機物だからだ。
誰しも一度は聞いたことあるだろう、都市伝説でもよく鏡は登場する。
合わせ鏡や紫鏡、45度の角度でのお辞儀や鏡に向かってお前は誰だ、と聞き続けるなど。
どれもこれも、まずろくなことにはならないが、もし悪魔を呼びたいのならそれらをお薦めするので、自己責任でやってみるといい。
というわけで、ダンテは他に何もできない自分に始終イライラしながら、ディーヴァへの道を鏡の前で待っていた。
今はただ、銀髪の男…自分の映る、鏡の表面を睨みつけつつ。
***
「ん…。ああ、やっぱり、夢じゃない…」
ディーヴァが目覚めると、そこはさきほど眠った木の影のまま。
夢オチを期待したい気持ちはずっとあるが、そうでないのは既に理解していた。
それでも落ち込むし、ため息は出る。
そんな状態でも、眠っている間に考えてみた事がある。
魔界と人間界は普通、そうそう簡単に繋がったりしないはずで、現にディーヴァが最初に連れ込まれたのは出会った魔女さん曰く、ナントカっていう狭間の世界だった。
ならば、その狭間につながる場所へ行けばいい。
魔界へ落ちた、あの穴へと。
ただそこは。
「空の上、なんだよね。あたし飛べないし困ったねぇ」
休憩前にも思った事なのだが、ムカデ道の先に待つのがその穴だと信じていた。
なのに辿り着いた先は森の中。
途中でも飛ぼうと頑張ってはみたが、無駄に終わった。
この危ない魔界の中ではその背に翼を生やすことは容易いだろうが、だからと言ってディーヴァの翼には、パタパタと空中を自由に飛ぶ機能は備わっていないのである。
だめだこりゃ。
「なんのための翼なんだか…」
再びため息を吐き出し、そして意を決したようによいしょと立ち上がる。
10分も休んではいないだろうが、一応動けるだけの体力は戻った。
血は止まってはいないが。
「ああ、喉渇いた…」
しかしここまで動き漬けだったためか、喉にひりつくほどの渇きを覚えるのにはほとほと困り果てた。
魔界の水なんて、怖くて飲めるわけがない。
でもよく考えてみよう。
ここは森だ。
森の中には泉があるかもしれない。
その水が飲めなくとも、水を触る事でその涼しさという恩恵を少しでも感じられないだろうか?
いや、触れたら飲むのを我慢できるかどうか…。
いやいやいや、魔界の水でも何でもいい、魔界の水って感じに赤い色ではなく、濁ってもいなくて透明で、尚且つ湧き水レベルで綺麗なら飲めるのではないか??
自分に都合のいい方向に考えているところを見るに、ディーヴァは正常な判断の出来なほどにはヘトヘトだった。
そこより森の奥深くへ歩く事数分、水の音を拾ったディーヴァは、ようやく水のある場所へと辿り着く。
色は無色透明、濁っているどころか湧き水のように澄んでいてとても綺麗。
飲むのはやはり少し怖いので、今のところやめておくが、触るのは出来そうだ。
「はー、命の源…!水ぅ…!」
よく考えればわかることだ。
いくら魔界でも、赤い水ばかり摂取するような悪魔はいないだろうし、テメンニグルの中とて赤い水ばかりではなかった。
悪魔だって、水で体を清めるくらいするのだから、綺麗な水があって当然だ。
何より、ディーヴァが言う通り水は命の源で、悪魔も天使も人間も水がないとこの星には誕生しなかった……多分。
嬉々としてぱしゃぱしゃと水に触れるディーヴァ。
ピリピリしたり拒絶反応も感じないので、ついでに服を少しだけ破き、水で固く絞り腕や足、顔を丁寧に拭いてゆく。
薄汚れた体が、綺麗にそしてひんやりと冷やされて気分が良かった。
「ふふ、気持ちいい…この分なら、飲んでもヘーキかな」
あーあ、ダンテと一緒に美味しい紅茶が飲みたいなあ。
ダンテ、どうしてるかな…。
ダンテの事ばかり考えながら、両手で水を掬おうと、手を水面に伸ばす。
掬う直前、水の中に映る自分の顔が、ゆらりとおかしな波紋を描く揺れ方をし、そして違う顔を映し始めた。
「ダ、ダンテ!?」
水面に映ったのは、ずっと会いたかったダンテその人だった。
ディーヴァが見えなくなってまず最初にダンテのしたこと。
それは、慌てふためいてパニックを起こし、次いで沸いてきた怒りに身を任せて拳を屋根にぶつけたことだった。
予想はついたろうが、屋根はダンテの馬鹿力の前に大破したとだけ言っておく。
きっと、この事務所兼自宅はその内出て行くことになるかもしれない。
嗚呼、静かなる笑顔で怒り狂ったディーヴァに殺されそうだ。
「やべえ…」
屋根の様子を目にし、サッと青くなるダンテが少しだけ落ち着きを取り戻した次、ダンテは受話器を手に取る。
忙しなく回転式のダイヤルを回してかけた先は。
「ロダン、大変だ!ディーヴァが消えた!」
ゲイツオブヘルのロダンの元だった。
彼ならば魔界の事やソウイウ事情にも詳しいだろうと踏んでの、連絡である。
だが、慌てるダンテとは反対に、ロダンは至極落ち着き払った声音。
ディーヴァが連れ去られた先にダンテをロダンが連れて行くことは難しくも、ディーヴァ側から道を繋ぐことなら可能との事だ。
しかし、ディーヴァが世界の繋ぎ方など知るはずもなく。
終わった…、と落ち込むダンテに光射す一言。
『鏡を見張れ』
と言っても、ただ単に鏡を見ていればいいわけではない。
鏡に向き合い、自分の魔力を鏡を割らない程度にぶつけ、見たい者、見たい存在を思い浮かべる。
最初は自分の姿しか映らなくとも、その内鏡の表面は違う世界を映し出す。
魔力のなせる技だ、と。
ディーヴァも同じ気持ちでいれば、必ず糸口は見えてくるだろう……。
そんなわけでダンテは、今度はロダンの言うまま、事務所にある姿見をしばらくの間監視することにした。
愛しい者、ディーヴァを脳裏に、まぶたの裏にしっかりと思い浮かべながら。
正直言うとそれを言われた後もかなり慌てたし、パニックで多少おかしくなった。
ま、その様子は想像に難くないだろうし、その失態はダンテのためにもここで晒さないでおこう。
なぜ鏡か。
それは、鏡とは元来魔の領域に属する無機物だからだ。
誰しも一度は聞いたことあるだろう、都市伝説でもよく鏡は登場する。
合わせ鏡や紫鏡、45度の角度でのお辞儀や鏡に向かってお前は誰だ、と聞き続けるなど。
どれもこれも、まずろくなことにはならないが、もし悪魔を呼びたいのならそれらをお薦めするので、自己責任でやってみるといい。
というわけで、ダンテは他に何もできない自分に始終イライラしながら、ディーヴァへの道を鏡の前で待っていた。
今はただ、銀髪の男…自分の映る、鏡の表面を睨みつけつつ。
***
「ん…。ああ、やっぱり、夢じゃない…」
ディーヴァが目覚めると、そこはさきほど眠った木の影のまま。
夢オチを期待したい気持ちはずっとあるが、そうでないのは既に理解していた。
それでも落ち込むし、ため息は出る。
そんな状態でも、眠っている間に考えてみた事がある。
魔界と人間界は普通、そうそう簡単に繋がったりしないはずで、現にディーヴァが最初に連れ込まれたのは出会った魔女さん曰く、ナントカっていう狭間の世界だった。
ならば、その狭間につながる場所へ行けばいい。
魔界へ落ちた、あの穴へと。
ただそこは。
「空の上、なんだよね。あたし飛べないし困ったねぇ」
休憩前にも思った事なのだが、ムカデ道の先に待つのがその穴だと信じていた。
なのに辿り着いた先は森の中。
途中でも飛ぼうと頑張ってはみたが、無駄に終わった。
この危ない魔界の中ではその背に翼を生やすことは容易いだろうが、だからと言ってディーヴァの翼には、パタパタと空中を自由に飛ぶ機能は備わっていないのである。
だめだこりゃ。
「なんのための翼なんだか…」
再びため息を吐き出し、そして意を決したようによいしょと立ち上がる。
10分も休んではいないだろうが、一応動けるだけの体力は戻った。
血は止まってはいないが。
「ああ、喉渇いた…」
しかしここまで動き漬けだったためか、喉にひりつくほどの渇きを覚えるのにはほとほと困り果てた。
魔界の水なんて、怖くて飲めるわけがない。
でもよく考えてみよう。
ここは森だ。
森の中には泉があるかもしれない。
その水が飲めなくとも、水を触る事でその涼しさという恩恵を少しでも感じられないだろうか?
いや、触れたら飲むのを我慢できるかどうか…。
いやいやいや、魔界の水でも何でもいい、魔界の水って感じに赤い色ではなく、濁ってもいなくて透明で、尚且つ湧き水レベルで綺麗なら飲めるのではないか??
自分に都合のいい方向に考えているところを見るに、ディーヴァは正常な判断の出来なほどにはヘトヘトだった。
そこより森の奥深くへ歩く事数分、水の音を拾ったディーヴァは、ようやく水のある場所へと辿り着く。
色は無色透明、濁っているどころか湧き水のように澄んでいてとても綺麗。
飲むのはやはり少し怖いので、今のところやめておくが、触るのは出来そうだ。
「はー、命の源…!水ぅ…!」
よく考えればわかることだ。
いくら魔界でも、赤い水ばかり摂取するような悪魔はいないだろうし、テメンニグルの中とて赤い水ばかりではなかった。
悪魔だって、水で体を清めるくらいするのだから、綺麗な水があって当然だ。
何より、ディーヴァが言う通り水は命の源で、悪魔も天使も人間も水がないとこの星には誕生しなかった……多分。
嬉々としてぱしゃぱしゃと水に触れるディーヴァ。
ピリピリしたり拒絶反応も感じないので、ついでに服を少しだけ破き、水で固く絞り腕や足、顔を丁寧に拭いてゆく。
薄汚れた体が、綺麗にそしてひんやりと冷やされて気分が良かった。
「ふふ、気持ちいい…この分なら、飲んでもヘーキかな」
あーあ、ダンテと一緒に美味しい紅茶が飲みたいなあ。
ダンテ、どうしてるかな…。
ダンテの事ばかり考えながら、両手で水を掬おうと、手を水面に伸ばす。
掬う直前、水の中に映る自分の顔が、ゆらりとおかしな波紋を描く揺れ方をし、そして違う顔を映し始めた。
「ダ、ダンテ!?」
水面に映ったのは、ずっと会いたかったダンテその人だった。