mission 35:total eclipse, demon world~魔界、そして太陽と月~
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ぽっかりと魔界の空に出現した大きな穴。
そこから、魔界にはおよそ似つかわしくない5枚の白い翼を生やした天使、ディーヴァが落ちてきた。
まるで罪と罰をその身に背負った天使が、天界から堕天してくる神話の場面のようだが、その場合は既に堕天使のように外見も悪魔に成り下がっているだろう。
結論、やはり魔界にディーヴァは似合わない。
ディーヴァの落ちてゆく空は赤く昏く、血で染めたように気持ちが悪く、遥か下に広がる地表は真っ黒に焼け焦げてからからに乾いた砂漠のようだ。
ここでは人間界の生き物は生きていけないだろう。
「おち、おち、落ちるぅぅぅぅーーーーーっ」
ヒュルルルル、ただ落ちゆく定めなのか。
掴むものなど皆無だった中、ディーヴァの落ちるその空に、黒い竜巻のような渦が発生していた。
その中心へ狙いすましたかのように落ちていくディーヴァ。
ちょっとでも落ちるスピードを遅くできる物…!
無我夢中で手を伸ばそうとするも、それの実態を知ってやっぱやめた。
というか、その中心に落ちたくない。
絶対に落ちたくない。
黒い竜巻に見えたもの、それは黒くテラテラと光る、巨大なムカデ。
テメンニグルでダンテが相手をしたアイツ…ギガピート達が無数に蠢き、空中で螺旋を描く渦だったのだ。
いやー!誰か助けてー!気持ちわるーい!!
あまりの気持ちの悪さに鳥肌を立て、涙目になるディーヴァ。
その目から落ちる涙は、体積の軽さでディーヴァの頭上へと虚しく置き去りにされて行った。
翼は何の役にも立たない。
悪魔を追い払うための聖なる風や光を作り出すのに役に立ったとして、飛ぶことには使えた試しがない。
どんなに羽ばたこうとしても、空を切るばかりでただのお飾り羽根にすぎないそれ。
必死且つ無駄な抵抗むなしく、ディーヴァは吸い込まれるようにしてムカデ達が螺旋織り成す混沌の坩堝へと落ちていく。
真っ黒なムカデの道を潜りながら、ディーヴァの声はやがて小さくなり。
「いやだああぁぁぁぁぁーーー……………」
その声が聞こえなくなって姿すら星になった頃、ようやく地表に到達した。
「うぶっ!!」
…顔面から。
その衝撃で翼がもともとなかったかのように忽然と消え失せる。
もくもくと埃らしき煙が立つ中、ディーヴァが顔を勢いよくあげて声を張り上げた。
「いっっったぁぁぁっ…、くない…?」
あんな高さから落ちてきたのに、鼻が少しばかり縮んだ気がする以外は、特に問題はない。
実は鼻も縮んでいない。
ディーヴァの落ちたすぐ下にあったのは、赤と白の水玉に彩られた毒々しくも可愛らしいきのこ。
落ちてきたということは体が触れたということ。
触っても平気なそれを試しに指で突くとあら不思議、ゴム毬のそれより弾力性に富み、ぽよよーんと思い切り弾んだ。
なるほど、このきのこのおかげで助かったようだ。
そこでようやく周りを見渡す。
辺りにはディーヴァの体と同じくらいの大きさの毒々しいきのこが、そこら一帯にぽこぽこと生えていた。
変な場所だ。
「ここ、魔界…?……だよねぇ…?」
そしてその向こうには、まばらに生えたハエトリソウもどき。
これもやたら大きくて、ディーヴァが近づいたら一口でぱくりと食べられてしまいそうだ。
きのこだけなら毒々しいとはいえ多少ファンシーに感じるが、ハエトリソウもどきを見るに「あ、やっぱりここ魔界だ」と理解せざるを得ない。
とりあえず近づくのはやめておこう。
君子危うきに近寄らずとはこのことである。
うんうん、近づくのはやめておこ…え?
一瞬視線を外してから、もう一度目を向けると、そのハエトリソウもどきが近くなった気がする。
「………」
また嫌な予感。
背中に嫌な汗をじわりとかく。
ハエトリソウもどきから視線を外さぬままそろりと後ずさり。
立ち上がったディーヴァは、毒々しいけどちょっとかわいいきのこ、おばけのようなハエトリソウの群生地から逃れることにした。
ガサリ。
音がしたのは、ダンテも近くにいない今は危険そうなトコロからはさっさと逃げ出すに限る、そう思って踵を返し足を踏み出そうとした時。
ビビリのディーヴァは盛大に「ぴゃいっ!」と飛び上がり、足を止めず駆けだした。
走りながらもガサリとした音はついて来る。
駆けながら後ろを確認してみると、やはりというかなんというか、お約束の展開が待ち受けていた。
ハエトリソウの側面には赤くまぁるい目玉がぎょろりと動き、その口が大きくこちらに開け放たれた状態で足…根っこを器用に動かして追いかけてきていた。
「あああ、やっぱり…!あたしなんて食べても美味しくないよ!ハエトリソウはハエトリソウらしく虫を食べててよっ!!」
叫び声を上げながらそこを走り抜けるディーヴァ。
双葉のような形状のトゲトゲの口から唾液を滴らせて、ハエトリソウの悪魔はどこまでもディーヴァを追う気満々。
逃げ足が速くて良かった。
ぴゅーっと脱兎の如く逃げ出したディーヴァの足の速さに、根っこで歩くような悪魔が勝てるはずもない。
大きく悪魔を引き離し、ディーヴァは偶然見つけた枯れ大木の裏へとその身を隠した。
ハエトリソウはそのまま、ディーヴァに気がつかず、どこかへと消えるはずだ。
「はあ、はあ…これで大丈夫かな………ひょえっ!?」
今度は足を踏み外した。
大木の裏は、崖になっていたようだ。
ズザザザザ、体を滑らせ、その下へ落ちて行くディーヴァ。
足の骨には異常もなさそうだが、既に傷だらけのディーヴァにとって、落ちる際に傷口に入り込む埃や砂もダメージ大だった。
魔界の埃や砂なんて破傷風にかかるどころじゃすまなさそうな気がするが、その辺は大丈夫なのだろうか。
ちょっと気になる。
「いたた…。うう、なんであたしがこんな目にぃ…」
踏んだり蹴ったりどころではない。
食べられかかったり殺されかかったり、これまで天使の血のせいでろくな目にあっていない。
自分の中に覚醒して溶け込む天使の血を、呪ってしまうほどには憎く感じる。
「もう、やだな…」
せっかく止まりかけていた涙が、じわりと目の中に玉を作って視界を歪ませる。
これから先、ずっと、ずーーーっとこうなのだろうか。
死ぬまで、いや、死んで魂と化しても、こうなのかもしれない。
いつもはダンテが近くにいたからこんなことは考えないが、今はダンテがいないせいか、良くないことばかり考えてしまう。
考えを止められない。
滑り降りるように落ちた場所はジメッとして少しだけ腐臭の漂う、ダンテ風に言うと「吐き溜め臭い」場所。
さっきまでの少しは植物が生えている場所と違い、木が一本も生えていない場所だ。
そんな場所でもいい。
いじけてここで丸くなって、もうゆっくりと逃げるように眠ってしまいたい。
体育座りで地面にのの字を書いてしまいたいとさえ思う。
SAN値は今も尚ぐんぐん低下中。
ディーヴァの精神はいっぱいいっぱいになりつつあった。
そこから、魔界にはおよそ似つかわしくない5枚の白い翼を生やした天使、ディーヴァが落ちてきた。
まるで罪と罰をその身に背負った天使が、天界から堕天してくる神話の場面のようだが、その場合は既に堕天使のように外見も悪魔に成り下がっているだろう。
結論、やはり魔界にディーヴァは似合わない。
ディーヴァの落ちてゆく空は赤く昏く、血で染めたように気持ちが悪く、遥か下に広がる地表は真っ黒に焼け焦げてからからに乾いた砂漠のようだ。
ここでは人間界の生き物は生きていけないだろう。
「おち、おち、落ちるぅぅぅぅーーーーーっ」
ヒュルルルル、ただ落ちゆく定めなのか。
掴むものなど皆無だった中、ディーヴァの落ちるその空に、黒い竜巻のような渦が発生していた。
その中心へ狙いすましたかのように落ちていくディーヴァ。
ちょっとでも落ちるスピードを遅くできる物…!
無我夢中で手を伸ばそうとするも、それの実態を知ってやっぱやめた。
というか、その中心に落ちたくない。
絶対に落ちたくない。
黒い竜巻に見えたもの、それは黒くテラテラと光る、巨大なムカデ。
テメンニグルでダンテが相手をしたアイツ…ギガピート達が無数に蠢き、空中で螺旋を描く渦だったのだ。
いやー!誰か助けてー!気持ちわるーい!!
あまりの気持ちの悪さに鳥肌を立て、涙目になるディーヴァ。
その目から落ちる涙は、体積の軽さでディーヴァの頭上へと虚しく置き去りにされて行った。
翼は何の役にも立たない。
悪魔を追い払うための聖なる風や光を作り出すのに役に立ったとして、飛ぶことには使えた試しがない。
どんなに羽ばたこうとしても、空を切るばかりでただのお飾り羽根にすぎないそれ。
必死且つ無駄な抵抗むなしく、ディーヴァは吸い込まれるようにしてムカデ達が螺旋織り成す混沌の坩堝へと落ちていく。
真っ黒なムカデの道を潜りながら、ディーヴァの声はやがて小さくなり。
「いやだああぁぁぁぁぁーーー……………」
その声が聞こえなくなって姿すら星になった頃、ようやく地表に到達した。
「うぶっ!!」
…顔面から。
その衝撃で翼がもともとなかったかのように忽然と消え失せる。
もくもくと埃らしき煙が立つ中、ディーヴァが顔を勢いよくあげて声を張り上げた。
「いっっったぁぁぁっ…、くない…?」
あんな高さから落ちてきたのに、鼻が少しばかり縮んだ気がする以外は、特に問題はない。
実は鼻も縮んでいない。
ディーヴァの落ちたすぐ下にあったのは、赤と白の水玉に彩られた毒々しくも可愛らしいきのこ。
落ちてきたということは体が触れたということ。
触っても平気なそれを試しに指で突くとあら不思議、ゴム毬のそれより弾力性に富み、ぽよよーんと思い切り弾んだ。
なるほど、このきのこのおかげで助かったようだ。
そこでようやく周りを見渡す。
辺りにはディーヴァの体と同じくらいの大きさの毒々しいきのこが、そこら一帯にぽこぽこと生えていた。
変な場所だ。
「ここ、魔界…?……だよねぇ…?」
そしてその向こうには、まばらに生えたハエトリソウもどき。
これもやたら大きくて、ディーヴァが近づいたら一口でぱくりと食べられてしまいそうだ。
きのこだけなら毒々しいとはいえ多少ファンシーに感じるが、ハエトリソウもどきを見るに「あ、やっぱりここ魔界だ」と理解せざるを得ない。
とりあえず近づくのはやめておこう。
君子危うきに近寄らずとはこのことである。
うんうん、近づくのはやめておこ…え?
一瞬視線を外してから、もう一度目を向けると、そのハエトリソウもどきが近くなった気がする。
「………」
また嫌な予感。
背中に嫌な汗をじわりとかく。
ハエトリソウもどきから視線を外さぬままそろりと後ずさり。
立ち上がったディーヴァは、毒々しいけどちょっとかわいいきのこ、おばけのようなハエトリソウの群生地から逃れることにした。
ガサリ。
音がしたのは、ダンテも近くにいない今は危険そうなトコロからはさっさと逃げ出すに限る、そう思って踵を返し足を踏み出そうとした時。
ビビリのディーヴァは盛大に「ぴゃいっ!」と飛び上がり、足を止めず駆けだした。
走りながらもガサリとした音はついて来る。
駆けながら後ろを確認してみると、やはりというかなんというか、お約束の展開が待ち受けていた。
ハエトリソウの側面には赤くまぁるい目玉がぎょろりと動き、その口が大きくこちらに開け放たれた状態で足…根っこを器用に動かして追いかけてきていた。
「あああ、やっぱり…!あたしなんて食べても美味しくないよ!ハエトリソウはハエトリソウらしく虫を食べててよっ!!」
叫び声を上げながらそこを走り抜けるディーヴァ。
双葉のような形状のトゲトゲの口から唾液を滴らせて、ハエトリソウの悪魔はどこまでもディーヴァを追う気満々。
逃げ足が速くて良かった。
ぴゅーっと脱兎の如く逃げ出したディーヴァの足の速さに、根っこで歩くような悪魔が勝てるはずもない。
大きく悪魔を引き離し、ディーヴァは偶然見つけた枯れ大木の裏へとその身を隠した。
ハエトリソウはそのまま、ディーヴァに気がつかず、どこかへと消えるはずだ。
「はあ、はあ…これで大丈夫かな………ひょえっ!?」
今度は足を踏み外した。
大木の裏は、崖になっていたようだ。
ズザザザザ、体を滑らせ、その下へ落ちて行くディーヴァ。
足の骨には異常もなさそうだが、既に傷だらけのディーヴァにとって、落ちる際に傷口に入り込む埃や砂もダメージ大だった。
魔界の埃や砂なんて破傷風にかかるどころじゃすまなさそうな気がするが、その辺は大丈夫なのだろうか。
ちょっと気になる。
「いたた…。うう、なんであたしがこんな目にぃ…」
踏んだり蹴ったりどころではない。
食べられかかったり殺されかかったり、これまで天使の血のせいでろくな目にあっていない。
自分の中に覚醒して溶け込む天使の血を、呪ってしまうほどには憎く感じる。
「もう、やだな…」
せっかく止まりかけていた涙が、じわりと目の中に玉を作って視界を歪ませる。
これから先、ずっと、ずーーーっとこうなのだろうか。
死ぬまで、いや、死んで魂と化しても、こうなのかもしれない。
いつもはダンテが近くにいたからこんなことは考えないが、今はダンテがいないせいか、良くないことばかり考えてしまう。
考えを止められない。
滑り降りるように落ちた場所はジメッとして少しだけ腐臭の漂う、ダンテ風に言うと「吐き溜め臭い」場所。
さっきまでの少しは植物が生えている場所と違い、木が一本も生えていない場所だ。
そんな場所でもいい。
いじけてここで丸くなって、もうゆっくりと逃げるように眠ってしまいたい。
体育座りで地面にのの字を書いてしまいたいとさえ思う。
SAN値は今も尚ぐんぐん低下中。
ディーヴァの精神はいっぱいいっぱいになりつつあった。