mission 35:total eclipse, demon world~魔界、そして太陽と月~
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例えるならトンネル。
真っ暗で歪んだ淀みの中、背に生えたまま戻らぬ翼の光を頼りに歩く事しばらく、何者かの放った弾丸が一発、ディーヴァの足元を抉った。
「もしかしてダンテ!なんで撃っ……ひゃ!?」
いや、よく音を聞けば、いつもダンテが扱う物と異なる銃弾だということもわかったろうに、それだけディーヴァは焦っていた。
ディーヴァの足を止めるべく放たれた、もう一発。
それは、ディーヴァの頬をスレスレで掠めて飛んで行った。
「随分可愛らしい天使だこと」
暗闇から溶け出すように出てきたのは、黒尽くめの服でぴっちり体を包み、眼鏡をかけたものすごい美女。
カラスみたいだ、とディーヴァは思った。
人間の姿をしているが、この人も悪魔なのだろうか?
よく見ればその人は、両手両足にやたら大きな銃を装備している。
どんな撃ち方をするのか想像もつかないが、知的にも見えるのにどこかダンテの『ナンデモアリでヒジョーシキ』なところを連想させた。
「敵である魔女が目の前にいるのに、襲って来ないのかしら?」
銃をくるくると腕の中で弄りながら、ディーヴァの周りを回ってじろじろ見る。
かと思いきや、興味深そうにディーヴァの顎をくいっと持ち上げて顔を至近距離で見つめられ、戸惑うばかり。
「あの、えー…と?魔女…さんなんですか」
「そう、ただの魔女よ。あらあなた、悪魔のお手付きなのね。残念…」
「お手、付き?」
ディーヴァにくっついたダンテの魔力の気配を辿り、魔女にしては素晴らしいプロポーションとそれを晒すフィットスーツという格好の、自称魔女がそう言う。
「わからなくて結構。私が相手にするのとは、毛色が全く違うのがわかったからいい」
興味を失ったか、魔女は頭の上にまとめた長い髪と赤いリボンを揺らし、もともと歩いていたであろう方面へと踵を返す。
1人にされてはたまらないと、ディーヴァはグッと開いたその背中を呼び止める。
「ちょ、待ってください!」
「まだ何か?これでも暇じゃないんだけれど」
「ご、ごめんなさい…。あの、ここはどこでどうやったら元いた場所に戻れるんですか?
あたし…、悪魔に連れて来られて…それで、なんとかここまで逃げて来たんです……」
「はあ…」
場所もわからず、真っ暗で右も左もわからずにいる迷子。
ディーヴァはそんな自分を恥じつつ、少し尻込みしながら魔女に聞いた。
「ここはプルガトリオ。人間の世界でも天使の世界でも、ましてや悪魔の世界でもない場所。その狭間というべきところよ、迷子の天使のお嬢ちゃん」
「プルガトリオ…」
その三つの世界があるのは知っている。
しかし、その狭間があるのは知らなかった。
知らなかったということは、そこから脱出する方法はおろか、どこに行けばいいのかも何もわからない。
どこなのかわかった分、悩みが増えた。
「仕方ないから、途中まで送ってあげるわ」
「っ!!ありがとうございますっ!」
不憫に思ったか、魔女がディーヴァの元へ戻って来た。
天使は敵というが、優しい魔女だ。
「ああ、よかったあ!」
「げんきんねぇ。…あ、そっちは魔界に繋がってるから行っちゃダメよ」
スラッとした長身がモデルのように歩くのをディーヴァはちょこちょこと追う。
まるで雛鳥がついて歩く錯覚を覚えながら、魔女は何か思いついたか懐に保管されたある物を取り出した。
「これあげるわ」
たぷん、赤い液体か入った極々小さな小瓶がディーヴァに渡される。
「これは…?まさか悪魔の血じゃ…」
「悪魔の血なんて要らないわよ。レッドホットショット。無事に帰りたいなら飲んだ方がいいわよ?」
無事に帰りたいなら、などと脅すように言われてしまえば、飲む他ない。
きゅぽん!と蓋を開けて、ほんの少しのそれを、一息で飲み干した。
舌先が痛い。
次いで喉が焼けるように熱い、そして口中が痺れ、その症状が胃の中にまで広がる。
酒だった。
「う゛!しびびびれれれれ、喉が痺れたみたいに痛いっ!これお酒だ!!物凄く強いお酒っ!!」
「アルコールに弱いのね。でも赤き電気鞭って名前だから痺れるのは仕方ないわよ?」
「うう、ほんのちょっとだったから良かったけど、なんて物飲ませるんですか…」
「それより、他に体に異変はない?胸が苦しいとか、体がバラバラになりそうだとか」
「え゛。そういうこと、起こり得るんですか?」
「あ…まぁ、魔女の薬だから、天使には毒かもと思って、ね?」
サッと視線を泳がし、言いづらそうに言うところを見るに、実験台だったのかもしれない。
「ひどい!!」
「そうは言っても、聖水なんかより、あとで役に立つと思うわよ」
「今死んだら意味ないです…」
げっそりしながら、再び歩き出した魔女についていくディーヴァ。
しかし、あとで役に立つというのはどういう意味か?疑問に思ったが、なんとなく内緒にされそうな気がして、聞くのはやめておいた。
「ちなみに、魔女さんの名前はなんていうんですか?」
人の形の影ではなく、蝶々の形の影を持っているその人は、名前はまた今度ね、悪戯っぽくそう笑った。
その正面から、教会の鐘の音のような物が聞こえてくる。
顔を上げて見てみれば、鳥のような人のようなエジプトの神に似た白い姿に翼を携え、錫杖を構えた化け物が数匹、空からこちらに降りて来ていた。
その全てが、神々しいというよりただ眩しいという光を纏っている。
「何、あれ…」
「私の大事なオモチャ、天使の皆さん」
「て、天使!?あれが…!?」
どこから見ても悪魔やモンスターにしか見えない見た目のコレが、どうしたら天使といえるのだろうか?
自分も「天使だ」と胸を這う事ができはしないが、自分の方がよっぽど天使に見えた。
「天使のお嬢ちゃんは、離れてた方がいいわよ。私と行動してた罪で同じ天使に裁かれたくはないでしょう?」
「も、もちろんです!」
「イイ子」
少し離れすぎではないかと問いたくなるほどそこから離れたディーヴァを確認すると、微かに笑い、魔女は目の前の敵へと向かい合った。
「さあ、私をイカせてちょうだい!」
台詞回しがネヴァンみたいだ、そう思った彼女の戦い方は、ある意味ダンテのものよりも見応えのあるものだった。
どうやっているのかはわからないが、相手の攻撃スレスレで全てをかわし、自分の攻撃をカウンターのように当てる。
くるくるよく回る関節と柔らかい体で、相手を完膚なきまでに叩きのめしていた。
スポーツ観戦よろしく魅入るディーヴァのそばに、敵の一匹が近づく。
「避けなさいっ!」
「え…、きゃあっ!?」
右手に構えた錫杖ではなく、悪魔の物と大して変わらないであろう左手の鋭い爪がディーヴァに迫る。
持ち前の勘と逃げるのに長けた反射神経のおかげか、間一髪避けたディーヴァは魔女と同じ攻撃スレスレで避けるのに似ていててちょっぴりかっこいいかも、なんて頭の隅でアホな事を考えた。
だが、ディーヴァには攻撃手段も何もあったもんじゃない。
その風圧だけで面白いほど吹っ飛ばされたディーヴァの軽い体は、遠くまで転がり『落ちた』。
魔女が魔界に繋がっていると注意した方面…そこにぽっかりと大きく存在する、空間の裂け目の中へと。
「お嬢ちゃん!!」
「ひぇっ!?わ、う、うそーーーーんっ!!」
戦闘中の魔女が手を伸ばそうとも遅く、ディーヴァはこだます叫びを残して、そこから消えた。
真っ暗で歪んだ淀みの中、背に生えたまま戻らぬ翼の光を頼りに歩く事しばらく、何者かの放った弾丸が一発、ディーヴァの足元を抉った。
「もしかしてダンテ!なんで撃っ……ひゃ!?」
いや、よく音を聞けば、いつもダンテが扱う物と異なる銃弾だということもわかったろうに、それだけディーヴァは焦っていた。
ディーヴァの足を止めるべく放たれた、もう一発。
それは、ディーヴァの頬をスレスレで掠めて飛んで行った。
「随分可愛らしい天使だこと」
暗闇から溶け出すように出てきたのは、黒尽くめの服でぴっちり体を包み、眼鏡をかけたものすごい美女。
カラスみたいだ、とディーヴァは思った。
人間の姿をしているが、この人も悪魔なのだろうか?
よく見ればその人は、両手両足にやたら大きな銃を装備している。
どんな撃ち方をするのか想像もつかないが、知的にも見えるのにどこかダンテの『ナンデモアリでヒジョーシキ』なところを連想させた。
「敵である魔女が目の前にいるのに、襲って来ないのかしら?」
銃をくるくると腕の中で弄りながら、ディーヴァの周りを回ってじろじろ見る。
かと思いきや、興味深そうにディーヴァの顎をくいっと持ち上げて顔を至近距離で見つめられ、戸惑うばかり。
「あの、えー…と?魔女…さんなんですか」
「そう、ただの魔女よ。あらあなた、悪魔のお手付きなのね。残念…」
「お手、付き?」
ディーヴァにくっついたダンテの魔力の気配を辿り、魔女にしては素晴らしいプロポーションとそれを晒すフィットスーツという格好の、自称魔女がそう言う。
「わからなくて結構。私が相手にするのとは、毛色が全く違うのがわかったからいい」
興味を失ったか、魔女は頭の上にまとめた長い髪と赤いリボンを揺らし、もともと歩いていたであろう方面へと踵を返す。
1人にされてはたまらないと、ディーヴァはグッと開いたその背中を呼び止める。
「ちょ、待ってください!」
「まだ何か?これでも暇じゃないんだけれど」
「ご、ごめんなさい…。あの、ここはどこでどうやったら元いた場所に戻れるんですか?
あたし…、悪魔に連れて来られて…それで、なんとかここまで逃げて来たんです……」
「はあ…」
場所もわからず、真っ暗で右も左もわからずにいる迷子。
ディーヴァはそんな自分を恥じつつ、少し尻込みしながら魔女に聞いた。
「ここはプルガトリオ。人間の世界でも天使の世界でも、ましてや悪魔の世界でもない場所。その狭間というべきところよ、迷子の天使のお嬢ちゃん」
「プルガトリオ…」
その三つの世界があるのは知っている。
しかし、その狭間があるのは知らなかった。
知らなかったということは、そこから脱出する方法はおろか、どこに行けばいいのかも何もわからない。
どこなのかわかった分、悩みが増えた。
「仕方ないから、途中まで送ってあげるわ」
「っ!!ありがとうございますっ!」
不憫に思ったか、魔女がディーヴァの元へ戻って来た。
天使は敵というが、優しい魔女だ。
「ああ、よかったあ!」
「げんきんねぇ。…あ、そっちは魔界に繋がってるから行っちゃダメよ」
スラッとした長身がモデルのように歩くのをディーヴァはちょこちょこと追う。
まるで雛鳥がついて歩く錯覚を覚えながら、魔女は何か思いついたか懐に保管されたある物を取り出した。
「これあげるわ」
たぷん、赤い液体か入った極々小さな小瓶がディーヴァに渡される。
「これは…?まさか悪魔の血じゃ…」
「悪魔の血なんて要らないわよ。レッドホットショット。無事に帰りたいなら飲んだ方がいいわよ?」
無事に帰りたいなら、などと脅すように言われてしまえば、飲む他ない。
きゅぽん!と蓋を開けて、ほんの少しのそれを、一息で飲み干した。
舌先が痛い。
次いで喉が焼けるように熱い、そして口中が痺れ、その症状が胃の中にまで広がる。
酒だった。
「う゛!しびびびれれれれ、喉が痺れたみたいに痛いっ!これお酒だ!!物凄く強いお酒っ!!」
「アルコールに弱いのね。でも赤き電気鞭って名前だから痺れるのは仕方ないわよ?」
「うう、ほんのちょっとだったから良かったけど、なんて物飲ませるんですか…」
「それより、他に体に異変はない?胸が苦しいとか、体がバラバラになりそうだとか」
「え゛。そういうこと、起こり得るんですか?」
「あ…まぁ、魔女の薬だから、天使には毒かもと思って、ね?」
サッと視線を泳がし、言いづらそうに言うところを見るに、実験台だったのかもしれない。
「ひどい!!」
「そうは言っても、聖水なんかより、あとで役に立つと思うわよ」
「今死んだら意味ないです…」
げっそりしながら、再び歩き出した魔女についていくディーヴァ。
しかし、あとで役に立つというのはどういう意味か?疑問に思ったが、なんとなく内緒にされそうな気がして、聞くのはやめておいた。
「ちなみに、魔女さんの名前はなんていうんですか?」
人の形の影ではなく、蝶々の形の影を持っているその人は、名前はまた今度ね、悪戯っぽくそう笑った。
その正面から、教会の鐘の音のような物が聞こえてくる。
顔を上げて見てみれば、鳥のような人のようなエジプトの神に似た白い姿に翼を携え、錫杖を構えた化け物が数匹、空からこちらに降りて来ていた。
その全てが、神々しいというよりただ眩しいという光を纏っている。
「何、あれ…」
「私の大事なオモチャ、天使の皆さん」
「て、天使!?あれが…!?」
どこから見ても悪魔やモンスターにしか見えない見た目のコレが、どうしたら天使といえるのだろうか?
自分も「天使だ」と胸を這う事ができはしないが、自分の方がよっぽど天使に見えた。
「天使のお嬢ちゃんは、離れてた方がいいわよ。私と行動してた罪で同じ天使に裁かれたくはないでしょう?」
「も、もちろんです!」
「イイ子」
少し離れすぎではないかと問いたくなるほどそこから離れたディーヴァを確認すると、微かに笑い、魔女は目の前の敵へと向かい合った。
「さあ、私をイカせてちょうだい!」
台詞回しがネヴァンみたいだ、そう思った彼女の戦い方は、ある意味ダンテのものよりも見応えのあるものだった。
どうやっているのかはわからないが、相手の攻撃スレスレで全てをかわし、自分の攻撃をカウンターのように当てる。
くるくるよく回る関節と柔らかい体で、相手を完膚なきまでに叩きのめしていた。
スポーツ観戦よろしく魅入るディーヴァのそばに、敵の一匹が近づく。
「避けなさいっ!」
「え…、きゃあっ!?」
右手に構えた錫杖ではなく、悪魔の物と大して変わらないであろう左手の鋭い爪がディーヴァに迫る。
持ち前の勘と逃げるのに長けた反射神経のおかげか、間一髪避けたディーヴァは魔女と同じ攻撃スレスレで避けるのに似ていててちょっぴりかっこいいかも、なんて頭の隅でアホな事を考えた。
だが、ディーヴァには攻撃手段も何もあったもんじゃない。
その風圧だけで面白いほど吹っ飛ばされたディーヴァの軽い体は、遠くまで転がり『落ちた』。
魔女が魔界に繋がっていると注意した方面…そこにぽっかりと大きく存在する、空間の裂け目の中へと。
「お嬢ちゃん!!」
「ひぇっ!?わ、う、うそーーーーんっ!!」
戦闘中の魔女が手を伸ばそうとも遅く、ディーヴァはこだます叫びを残して、そこから消えた。