mission 35:total eclipse, demon world~魔界、そして太陽と月~
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「ひっ…!」
恐怖、絶望、不安、そして死。
ありとあらゆる悪い心象を抱く言葉が、浮かんでは消える。
恐ろしいものの全体像が目の前に見えているわけではなく、ただの3つの赤い光だというに、ただそれだけで足がすくむというのは初めてだ。
天使の血族であるディーヴァがこれだけ恐れるのも当たり前。
この時のディーヴァには知る由もないが、3つ目の正体はダンテが探し求める宿敵、魔帝。
魔界で一番強く恐ろしい独裁者。
『やはり、あの時の天使か』
赤い3つ目が、ディーヴァの上から下までを射抜くように言う。
これはかなり後から分かった事なのだが、皆既日蝕とは、魔帝の目が人間の住む世界まで届く数少ない時。
以前ダンテやディーヴァがテメンニグルから侵入した魔界で、偶然にも魔帝に目撃されてしまったのがきっかけとして、この時はディーヴァを連れ去ろうとしていたらしい。
恐ろしい事に、ディーヴァはあのテメンニグルの一件から、既に目をつけられていたのだ。
『行け、お前達。そいつと遊んでやれ』
どれだけの悪魔が配置されていたのだろう。
正確な位置こそ見当もつかないが、ディーヴァの周りにいたのであろう、悪魔が動く気配がする。
その第一陣の振るう刃が、聞いた事のない高笑いと共にディーヴァに振り下ろされた。
「ーーーッ!!」
死神に似た悪魔を相手にしたのは数知れず。
とは言いつつも相手にしたのはディーヴァではなく、ダンテなのだが。
しかし、ディーヴァを傷つけようと迫る悪魔達は、テメンニグルで見た死神そっくりのヘル・バンガードなどとは違う悪魔だった。
巨大な鎌や鋏を使うところも姿形も似通っているのだが、まず違う点。
変に宙に浮いているし、足がない。
そして響く高笑い。
高笑いについては、ヘル・バンガードには似ていないこともない、か…。
こちらのほうが遥かに死神を冠しているように、ディーヴァには見えた。
恐怖で竦みそうになる足を叱咤し、ディーヴァは間一髪で刃を避けて転がる。
少しだけ足を擦って傷がジクジクと痛むが、今はそれどころではなく、ともすれば首チョンパや真っ二つ。
ギラリと鈍く光る大きな鎌と鋏が、ディーヴァを傷つけようと迫ってくるのが見え、ゾッとする思い。
って、首チョンパに、真っ二つ?
「そんなのやだっ!」
暗闇を右往左往する自分を、まるで嘲笑うかのような高笑いが聞こえない方へ、時折転びながらも駆けていく。
その間にも死神の鎌や鋏がジャキジャキと切り刻むべく刃閃く。
違うジャンルの話になるが、ダンテだったら「シ●ーマンかよ!」などと叫んでいたかもしれない。
そんなどこか他人事じみたことを思いつつ、ディーヴァは悪魔の切っ先で時折浅く傷つけられながらも、暗闇を逃げ続けた。
逃げれば逃げただけ、群がるように後方に連なる悪魔の声。
そう、ここはこの死神悪魔の巣食う、真っ暗で恐ろしい異空間だったのだ。
それでも、息が切れても、心臓がその速さに悲鳴をあげても、足が疲れて動けなくなっても、ダンテがいない今、自力で逃げる他ない。
足を止めたら終わり。
感覚で逃げるのに精一杯で、息がはあはあと切れるディーヴァ。
切れているのは息だけではない。
大怪我こそしていないが、ディーヴァは今や満身創痍で、そこかしこから出血していた。
それでも、どこまで逃げても、悪魔は追いかけてくる。
窮鼠猫を噛む…一度でいい。
昔、聖なる光で初めて悪魔を祓った時のように、相手に一度でも攻撃できたら…。
「きゃあっ!」
逃げ回るディーヴァの足を、鎌を握っていたはずの骨ばった手が掴んで持ち上げた。
その手は氷のように鋭い冷たさで、掴まれているだけで命を吸い取られそう。
「さわ、らない…でっ!!」
涙目になって、半狂乱で叫び、振り解こうと手をかざしたと同時、ディーヴァの望む光がその背に輝いた。
神々しく羽ばたくは、白き5枚の翼。
闇があるからこそ、光は輝く。
闇の中では、光はより一層強く、強く全てを照らす。
「やっ………た、…!」
姿は死神でも、本物の死神でない一介の悪魔が聖なる力に抗えるはずもなく、ディーヴァからは離れざるを得なかった。
滅っされるのを恐れ、しばらくは近寄ってこない。
『ほう…?翼が5枚。天使、それも翼ある勝利の女神、ニケ?
…………いや違う。お前は大天使ミカエル……?』
だが、その聖なる力はひどく脆弱で、とてもではないが攻撃には向いていないもの。
弱っているとでもいうのか?もしそうだとすれば…。
しかし配下の悪魔の苦労も知らず、ものすごい上から目線で、ディーヴァをここへと連れ去る指示をした張本人が目を見張るのがわかった。
一目置かれたといっても過言ではないのに、なんだかとても不愉快だ。
『遊ぶのはやめだ。そいつを生け捕りにし、連れて来い』
こちらが強くなるための餌として、これほど申し分ない獲物はいまい。
どれほどたくさんの生贄の人間と比べても、その価値はかなりの物。
魔帝が考えていた事、それはこの異空間に連れ去ったディーヴァの力量や天使としての利用価値を確かめるという計画。
それは魔帝のお眼鏡に充分叶うものだったようだ。
…全く嬉しくない。
ディーヴァの翼の光は衰えるどころか、より一層暗闇を煌々と照らしているが、その実一度身を引いた悪魔が戻ってきていたのだ。
聖なる力が少しずつ弱まっている。
飛ぶことのできない、ただのお飾り翼になってしまうのは時間の問題。
3つ目の魔の手が、その配下の悪魔が、ディーヴァを捕らえようと迫る。
捕まるわけにはいかない。
ディーヴァは自分に伸ばされた大量の悪魔の腕を無意識で放った聖なる風で振り払い、更なる深淵へ、より深い闇へと駆け出した。
逃げる途中も決して向かわなかった、けれど翼で照らされてもっと危なく見える、暗い昏いそこへ。
『逃げられたか…。しかし、あのまま行けば向かう先は魔界の真っ只中。他の悪魔に捕らえられる前に見つけ出せばよい』
悪魔はそれ以上追って来なかった。
恐怖、絶望、不安、そして死。
ありとあらゆる悪い心象を抱く言葉が、浮かんでは消える。
恐ろしいものの全体像が目の前に見えているわけではなく、ただの3つの赤い光だというに、ただそれだけで足がすくむというのは初めてだ。
天使の血族であるディーヴァがこれだけ恐れるのも当たり前。
この時のディーヴァには知る由もないが、3つ目の正体はダンテが探し求める宿敵、魔帝。
魔界で一番強く恐ろしい独裁者。
『やはり、あの時の天使か』
赤い3つ目が、ディーヴァの上から下までを射抜くように言う。
これはかなり後から分かった事なのだが、皆既日蝕とは、魔帝の目が人間の住む世界まで届く数少ない時。
以前ダンテやディーヴァがテメンニグルから侵入した魔界で、偶然にも魔帝に目撃されてしまったのがきっかけとして、この時はディーヴァを連れ去ろうとしていたらしい。
恐ろしい事に、ディーヴァはあのテメンニグルの一件から、既に目をつけられていたのだ。
『行け、お前達。そいつと遊んでやれ』
どれだけの悪魔が配置されていたのだろう。
正確な位置こそ見当もつかないが、ディーヴァの周りにいたのであろう、悪魔が動く気配がする。
その第一陣の振るう刃が、聞いた事のない高笑いと共にディーヴァに振り下ろされた。
「ーーーッ!!」
死神に似た悪魔を相手にしたのは数知れず。
とは言いつつも相手にしたのはディーヴァではなく、ダンテなのだが。
しかし、ディーヴァを傷つけようと迫る悪魔達は、テメンニグルで見た死神そっくりのヘル・バンガードなどとは違う悪魔だった。
巨大な鎌や鋏を使うところも姿形も似通っているのだが、まず違う点。
変に宙に浮いているし、足がない。
そして響く高笑い。
高笑いについては、ヘル・バンガードには似ていないこともない、か…。
こちらのほうが遥かに死神を冠しているように、ディーヴァには見えた。
恐怖で竦みそうになる足を叱咤し、ディーヴァは間一髪で刃を避けて転がる。
少しだけ足を擦って傷がジクジクと痛むが、今はそれどころではなく、ともすれば首チョンパや真っ二つ。
ギラリと鈍く光る大きな鎌と鋏が、ディーヴァを傷つけようと迫ってくるのが見え、ゾッとする思い。
って、首チョンパに、真っ二つ?
「そんなのやだっ!」
暗闇を右往左往する自分を、まるで嘲笑うかのような高笑いが聞こえない方へ、時折転びながらも駆けていく。
その間にも死神の鎌や鋏がジャキジャキと切り刻むべく刃閃く。
違うジャンルの話になるが、ダンテだったら「シ●ーマンかよ!」などと叫んでいたかもしれない。
そんなどこか他人事じみたことを思いつつ、ディーヴァは悪魔の切っ先で時折浅く傷つけられながらも、暗闇を逃げ続けた。
逃げれば逃げただけ、群がるように後方に連なる悪魔の声。
そう、ここはこの死神悪魔の巣食う、真っ暗で恐ろしい異空間だったのだ。
それでも、息が切れても、心臓がその速さに悲鳴をあげても、足が疲れて動けなくなっても、ダンテがいない今、自力で逃げる他ない。
足を止めたら終わり。
感覚で逃げるのに精一杯で、息がはあはあと切れるディーヴァ。
切れているのは息だけではない。
大怪我こそしていないが、ディーヴァは今や満身創痍で、そこかしこから出血していた。
それでも、どこまで逃げても、悪魔は追いかけてくる。
窮鼠猫を噛む…一度でいい。
昔、聖なる光で初めて悪魔を祓った時のように、相手に一度でも攻撃できたら…。
「きゃあっ!」
逃げ回るディーヴァの足を、鎌を握っていたはずの骨ばった手が掴んで持ち上げた。
その手は氷のように鋭い冷たさで、掴まれているだけで命を吸い取られそう。
「さわ、らない…でっ!!」
涙目になって、半狂乱で叫び、振り解こうと手をかざしたと同時、ディーヴァの望む光がその背に輝いた。
神々しく羽ばたくは、白き5枚の翼。
闇があるからこそ、光は輝く。
闇の中では、光はより一層強く、強く全てを照らす。
「やっ………た、…!」
姿は死神でも、本物の死神でない一介の悪魔が聖なる力に抗えるはずもなく、ディーヴァからは離れざるを得なかった。
滅っされるのを恐れ、しばらくは近寄ってこない。
『ほう…?翼が5枚。天使、それも翼ある勝利の女神、ニケ?
…………いや違う。お前は大天使ミカエル……?』
だが、その聖なる力はひどく脆弱で、とてもではないが攻撃には向いていないもの。
弱っているとでもいうのか?もしそうだとすれば…。
しかし配下の悪魔の苦労も知らず、ものすごい上から目線で、ディーヴァをここへと連れ去る指示をした張本人が目を見張るのがわかった。
一目置かれたといっても過言ではないのに、なんだかとても不愉快だ。
『遊ぶのはやめだ。そいつを生け捕りにし、連れて来い』
こちらが強くなるための餌として、これほど申し分ない獲物はいまい。
どれほどたくさんの生贄の人間と比べても、その価値はかなりの物。
魔帝が考えていた事、それはこの異空間に連れ去ったディーヴァの力量や天使としての利用価値を確かめるという計画。
それは魔帝のお眼鏡に充分叶うものだったようだ。
…全く嬉しくない。
ディーヴァの翼の光は衰えるどころか、より一層暗闇を煌々と照らしているが、その実一度身を引いた悪魔が戻ってきていたのだ。
聖なる力が少しずつ弱まっている。
飛ぶことのできない、ただのお飾り翼になってしまうのは時間の問題。
3つ目の魔の手が、その配下の悪魔が、ディーヴァを捕らえようと迫る。
捕まるわけにはいかない。
ディーヴァは自分に伸ばされた大量の悪魔の腕を無意識で放った聖なる風で振り払い、更なる深淵へ、より深い闇へと駆け出した。
逃げる途中も決して向かわなかった、けれど翼で照らされてもっと危なく見える、暗い昏いそこへ。
『逃げられたか…。しかし、あのまま行けば向かう先は魔界の真っ只中。他の悪魔に捕らえられる前に見つけ出せばよい』
悪魔はそれ以上追って来なかった。