mission 35:total eclipse, demon world~魔界、そして太陽と月~
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音もなく巨大な影が迫ってくる。
まるで、映画。
それも、地球を侵略しに来た宇宙人の母船の影が空を覆い尽くすという恐ろしくも圧倒される場面のよう。
その様子をじっと見続けていると首が痛くなりそうだったが、ディーヴァもダンテも、お構い無しに空に目を向けた。
ダンテがはるか遠くに見た通り、暗くなってから地上が夕焼け空のように朱く染まってきていた。
朱い空と暗い空が同時に存在を主張し合い、暗い空の中には夜にしか見えない惑星や一等星二等星くらいの明るい星々が煌めいている。
暗闇の恐怖、というよりも、幻想的。
その言葉がよく似合う。
「そろそろ日蝕のはじまりだよ。…綺麗だね」
「ああ、綺麗だな」
言っている内に朱がナリを潜め、夜中のような暗闇にすっぽりと覆われてしまった。
2人は眼鏡をかけ、今に始まる日蝕に備える。
きっとこの瞬間、日蝕を楽しみにしていた人々は、ディーヴァ達と同じように空を見上げていることだろう。
いつにも増して注目されるのを恥ずかしがるかのように、月の裏側へと太陽が隠れ始めた。
太陽の半分が月の形に沿って隠れた。
その様子はよく聞く神話の言う通り、太陽を喰らう魔狼、スコルにでも食べられているかのよう。
「太陽が食べられちゃってるみたいに見える…こう、がぶりとクッキーか何かみたいにひとかじり、さ」
「そうだな。てことはオレも普段、日蝕起こしてるってことだよな?」
「なんで?ダンテって狼だっけ?」
「太陽を食べる月、つまりディーヴァを食べ「あ、もう結構です」あっそ」
しょうもない会話をして楽しみながら、日蝕観察を楽しむのも、また一興。
空に輝いていた太陽がどんどんと闇に覆われるに従い、太陽光線が次第に弱まっていく。
太陽の周りを包む希薄なコロナが、うっすらヴェールように、ふんわりと太陽にかかっているのが、眼鏡の内側からしっかりと見て取れた。
ほとんど隠れた太陽。
コロナと一緒に、太陽の縁にピンク色から紫へと変わっていく赤い炎…プロミネンスが見え始めた。
それが見えた直後、完全に隠される前にと、太陽がひときわ強く光を放つ。
暗い月の縁から少しだけ覗くそれは、まるで大粒のダイヤモンドがついた指輪のよう。
その美しさを残し、太陽の姿は地上から消えてしまった。
「まっくら…なんだかちょっと怖いね」
「怖いか?真っ暗だけど、ほら…日蝕眼鏡で目が慣れて来たらすっげー綺麗だぞ」
綺麗で、幻想的で、そしてロマンチック。
太陽が完全に隠れるまでは、そう思っていたし、多分世の中の人々の大半は、現在進行形で美しいと、感動していると思う。
けれどもなぜだろうか。
ディーヴァはこんなに綺麗な皆既日蝕を前にして、薄ら寒い気配と、心の奥底から這い上がるような強い恐怖を感じ始めていた。
『見つけた』
何か、聞こえた。
それと同時に、キィンと強い耳鳴りと頭痛も感じたような…?
「痛っ」
「どうした、ディーヴァ?」
頭痛ではなく、紙で出来た日蝕眼鏡の一部が耳に当たって痛んだのかと、眼鏡を一度外して確認してみる。
ダンテも同じように外し、ディーヴァの顔を心配そうに覗いた。
特に変わったところはなさそう。
真っ暗な中に浮かび上がるダンテの顔を見て、ホッとした。
寒気と恐怖を少し感じたのはきっと気のせい。
ダンテに笑いかけるディーヴァ。
「ううん、なんでもな」
ディーヴァのその姿が、一瞬で消えた。
ろうそくの火を吹き消した時のそれよりも早くフッと。
「え…ディーヴァ?……はぁ!?ディーヴァ!!?ちょ、おいディーヴァどこだっ!!ディーヴァーーーーッ!!」
いきなりの事で、もちろん慌てふためくダンテ。
だが、すぐに思い出した。
ディーヴァの聖なる気配を追うことと、自身がディーヴァに施した魔力による追跡機能を。
目を閉じて集中し、ディーヴァを思い浮かべてみる。
だが、その聖なる気配は太陽の周りのコロナ同様とても希薄で、仕方なしにダンテの魔力の方を辿れば。
「ここ?今と同じで、でも違う場所………?」
消えたところと同じ場所にいる、けれど実際にはいない。
なんだかクイズのようで難しいが、つまり次元の違う現在地にいる、ということか。
違う場所といっても今はかろうじで魔界ではなさそうだが魔の気配を濃く感じる『異空間』それがディーヴァの居場所だった。
危ないことに変わりはないが、こちらから道を開ける方法は、今のダンテには見当もつかない。
***
「う…、いたーいっ!」
ディーヴァが落とされたのは、皆既日蝕のそれよりも、闇よりも真っ暗な場所。
ほんの一瞬、ほんの数秒の皆既日蝕で、誰かに、いや何かにどこかへと連れ去られたのだけはわかった。
「…何ここ、どこ?」
どこ、というよりも、目の前には何も見えない真っ暗闇がどこまでも広がっている。
「ダンテー!…って、あたしだけだよね。うん、ダンテがいないのはわかってた…」
怖い。
心や頭、体を支配するのは暗闇への純粋な恐怖。
けれど、悪魔や死と隣り合わせの生活に慣れたのか、妙に落ち着いていた。
誰か、もしくは何か、いないのかな?
自分はどこに行けばいいのかな?
右も左もわからないけれど、立ち上がって足をそろりそろりと、一歩一歩踏み出す。
それと同時に、周りに広がる『魔』の気配を探る。
「はあ…。悪魔、いるみたい…」
やはりというべきか、魔の気配はそこかしこに点々と感じられてうんざりした。
しかし、これだけ鮮明にも悪魔を感じられるということは、それだけディーヴァも強くなったということだろうか?
もしかしてダンテと同じようにデビルハンターになれるかもしれない。
…なんて、調子に乗りすぎました。
『やっと、見つけた』
「な、なにっ!?」
ここに来る直前、聞いた声だ。
ぼう…と、暗闇に赤い光が3つ、暗闇の中心に灯った。
これが光源として意味をなすようなものだったら、どんなに心強かったことだろう。
だがそれは、それとは反対に、かつてないほどの魔の気配に満ちていた。
まるで、映画。
それも、地球を侵略しに来た宇宙人の母船の影が空を覆い尽くすという恐ろしくも圧倒される場面のよう。
その様子をじっと見続けていると首が痛くなりそうだったが、ディーヴァもダンテも、お構い無しに空に目を向けた。
ダンテがはるか遠くに見た通り、暗くなってから地上が夕焼け空のように朱く染まってきていた。
朱い空と暗い空が同時に存在を主張し合い、暗い空の中には夜にしか見えない惑星や一等星二等星くらいの明るい星々が煌めいている。
暗闇の恐怖、というよりも、幻想的。
その言葉がよく似合う。
「そろそろ日蝕のはじまりだよ。…綺麗だね」
「ああ、綺麗だな」
言っている内に朱がナリを潜め、夜中のような暗闇にすっぽりと覆われてしまった。
2人は眼鏡をかけ、今に始まる日蝕に備える。
きっとこの瞬間、日蝕を楽しみにしていた人々は、ディーヴァ達と同じように空を見上げていることだろう。
いつにも増して注目されるのを恥ずかしがるかのように、月の裏側へと太陽が隠れ始めた。
太陽の半分が月の形に沿って隠れた。
その様子はよく聞く神話の言う通り、太陽を喰らう魔狼、スコルにでも食べられているかのよう。
「太陽が食べられちゃってるみたいに見える…こう、がぶりとクッキーか何かみたいにひとかじり、さ」
「そうだな。てことはオレも普段、日蝕起こしてるってことだよな?」
「なんで?ダンテって狼だっけ?」
「太陽を食べる月、つまりディーヴァを食べ「あ、もう結構です」あっそ」
しょうもない会話をして楽しみながら、日蝕観察を楽しむのも、また一興。
空に輝いていた太陽がどんどんと闇に覆われるに従い、太陽光線が次第に弱まっていく。
太陽の周りを包む希薄なコロナが、うっすらヴェールように、ふんわりと太陽にかかっているのが、眼鏡の内側からしっかりと見て取れた。
ほとんど隠れた太陽。
コロナと一緒に、太陽の縁にピンク色から紫へと変わっていく赤い炎…プロミネンスが見え始めた。
それが見えた直後、完全に隠される前にと、太陽がひときわ強く光を放つ。
暗い月の縁から少しだけ覗くそれは、まるで大粒のダイヤモンドがついた指輪のよう。
その美しさを残し、太陽の姿は地上から消えてしまった。
「まっくら…なんだかちょっと怖いね」
「怖いか?真っ暗だけど、ほら…日蝕眼鏡で目が慣れて来たらすっげー綺麗だぞ」
綺麗で、幻想的で、そしてロマンチック。
太陽が完全に隠れるまでは、そう思っていたし、多分世の中の人々の大半は、現在進行形で美しいと、感動していると思う。
けれどもなぜだろうか。
ディーヴァはこんなに綺麗な皆既日蝕を前にして、薄ら寒い気配と、心の奥底から這い上がるような強い恐怖を感じ始めていた。
『見つけた』
何か、聞こえた。
それと同時に、キィンと強い耳鳴りと頭痛も感じたような…?
「痛っ」
「どうした、ディーヴァ?」
頭痛ではなく、紙で出来た日蝕眼鏡の一部が耳に当たって痛んだのかと、眼鏡を一度外して確認してみる。
ダンテも同じように外し、ディーヴァの顔を心配そうに覗いた。
特に変わったところはなさそう。
真っ暗な中に浮かび上がるダンテの顔を見て、ホッとした。
寒気と恐怖を少し感じたのはきっと気のせい。
ダンテに笑いかけるディーヴァ。
「ううん、なんでもな」
ディーヴァのその姿が、一瞬で消えた。
ろうそくの火を吹き消した時のそれよりも早くフッと。
「え…ディーヴァ?……はぁ!?ディーヴァ!!?ちょ、おいディーヴァどこだっ!!ディーヴァーーーーッ!!」
いきなりの事で、もちろん慌てふためくダンテ。
だが、すぐに思い出した。
ディーヴァの聖なる気配を追うことと、自身がディーヴァに施した魔力による追跡機能を。
目を閉じて集中し、ディーヴァを思い浮かべてみる。
だが、その聖なる気配は太陽の周りのコロナ同様とても希薄で、仕方なしにダンテの魔力の方を辿れば。
「ここ?今と同じで、でも違う場所………?」
消えたところと同じ場所にいる、けれど実際にはいない。
なんだかクイズのようで難しいが、つまり次元の違う現在地にいる、ということか。
違う場所といっても今はかろうじで魔界ではなさそうだが魔の気配を濃く感じる『異空間』それがディーヴァの居場所だった。
危ないことに変わりはないが、こちらから道を開ける方法は、今のダンテには見当もつかない。
***
「う…、いたーいっ!」
ディーヴァが落とされたのは、皆既日蝕のそれよりも、闇よりも真っ暗な場所。
ほんの一瞬、ほんの数秒の皆既日蝕で、誰かに、いや何かにどこかへと連れ去られたのだけはわかった。
「…何ここ、どこ?」
どこ、というよりも、目の前には何も見えない真っ暗闇がどこまでも広がっている。
「ダンテー!…って、あたしだけだよね。うん、ダンテがいないのはわかってた…」
怖い。
心や頭、体を支配するのは暗闇への純粋な恐怖。
けれど、悪魔や死と隣り合わせの生活に慣れたのか、妙に落ち着いていた。
誰か、もしくは何か、いないのかな?
自分はどこに行けばいいのかな?
右も左もわからないけれど、立ち上がって足をそろりそろりと、一歩一歩踏み出す。
それと同時に、周りに広がる『魔』の気配を探る。
「はあ…。悪魔、いるみたい…」
やはりというべきか、魔の気配はそこかしこに点々と感じられてうんざりした。
しかし、これだけ鮮明にも悪魔を感じられるということは、それだけディーヴァも強くなったということだろうか?
もしかしてダンテと同じようにデビルハンターになれるかもしれない。
…なんて、調子に乗りすぎました。
『やっと、見つけた』
「な、なにっ!?」
ここに来る直前、聞いた声だ。
ぼう…と、暗闇に赤い光が3つ、暗闇の中心に灯った。
これが光源として意味をなすようなものだったら、どんなに心強かったことだろう。
だがそれは、それとは反対に、かつてないほどの魔の気配に満ちていた。