mission 35:total eclipse, demon world~魔界、そして太陽と月~
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本日は数年に一度の、皆既日蝕がこの地域で見られる日。
テレビも新聞も、世間はそのことを話題に、やたらお祭り騒ぎだ。
イベント好きなディーヴァやダンテも、そうだった。
「日蝕眼鏡、おっけー。位置の確認、おっけー。時間帯の確認、おっけー」
「準備万端だな」
「うんっ!まーね!」
「オレも楽しみだけど、ぶっちゃけ日蝕なんて月と太陽が重なってるだけにしか見えないんだよなぁ…」
悪魔の血を引く者は、視力もいい。
実は日蝕眼鏡を使わずとも、ダンテには太陽と月が重なっているのが見える。
だからこそ、これまで何度か目にしてきた日蝕についても少しはわかるつもりだ。
「確かにそうだけど…。でも、それ言っちゃおしまいだよー?」
用意した日蝕眼鏡を弄りながら、苦笑いするディーヴァ。
日蝕が起きるメカニズムはわかっていても、やはり人は日蝕にロマンを求めるものだ。
とは言っても、古くから日蝕は凶事として恐れられてきたことの方が歴史では数多く残っている。
神話にも『太陽を食べる狼スコル』という怪物が登場し、それの大元となったのは、やはり日蝕である。
それが本当に日蝕を元に想像された怪物なのか、あるいは元々悪魔の類いなのかは、定かではないが。
「しかし、ダッサい眼鏡だな。ぺっらぺらの紙で出来た玩具の眼鏡じゃねぇか」
オレのかっこよさが半減しちまうぜ、と文句を垂れつつ、ダンテがすぐ曲がって壊れそうな眼鏡をかける。
誰も似合わないだろうし、似合いたくもないペラペラ紙の眼鏡だから仕方ないが、ダンテとてやはりこの眼鏡をかけた方が日蝕は見やすいよう。
「そんなことないよ。大丈夫、ダンテは何つけてもかっこいいから」
「え、本当か?」
「うんうん。あたし、惚れちゃうよ。ダンテがこの間髪切った時みたいに惚れ直しちゃう」
ディーヴァは、一生懸命、というより棒読みに近いがそう言って褒め、ダンテに眼鏡をかけさせた。
ちょろい。
「さて、位置と時間はどこだって?」
「あ、うん。ここからでもよく見えるみたいだよ。時間はお昼ご飯食べてちょっとしたらくらい、かな?」
というわけで今日のお昼は、簡単な物です!
と、クロワッサンのようなベーグルのようなパンに焼いた厚切りベーコンやスクランブルエッグ、たっぷりの野菜を挟んだサンドイッチ、バターナッツのポタージュスープを差し出してくるディーヴァ。
簡単と言っているが、バターナッツのポタージュを朝から作っていたのを見るに、手抜きの影は見当たらない。
「ん、サンキュ」
「どういたしましてー。温かい内に食べちゃお。そしたら、屋根の上連れてって?」
「りょーかい」
温かなサンドイッチにかぶりつき、まだ熱々のスープをフーフーやっつけながら啜る。
このクロワッサンとベーグルの合いの子のようなパンは、クレーグルと言って本当にそれの合いの子らしい。
表面はさっくり、中はもっちりで、どちらの食感も好きな人には良さそうだ。
そこに挟まれた油と塩味あるたんぱく質厚切りベーコンと、シャッキリレタスにフレッシュトマト、ディーヴァの好物の濃厚チェダーチーズがたっぷりに、ピリッとしたマスタードの風味。
うむ、今日もディーヴァのメシは美味い。
家事は得意だしかわいい天使である、ディーヴァのような彼女をこうして捕まえた自分を褒め讃えたくなる。
それにしても、窓から覗いて見るのではなく、屋根の上で見るとは初耳。
ああ…だから先日、屋根の上の掃除をさせられたのか。
あれは悪魔退治より骨が折れた。
食事を終わらせ食後の一服とも言うべき、一杯の紅茶を飲み、時間までゆるりと過ごす。
ディーヴァの血の中には多少なりとはいえイギリスの血も入っているからか、それともただ単に紅茶が好きなだけなのか、ディーヴァはこのゆったりした時間を愛していた。
人生において刺激とは必要なものである。
それはダンテの持論だ。
しかし、ディーヴァが平和を愛するから、ダンテ自身も平和でいたいし、平和を愛したい。
特に、ディーヴァと過ごすちょっとしたこの平和を、いつまでも続けていきたいと、守りたいと、そう思うのだ。
刺激なんて料理における『塩胡椒少々』のように本当にほんの少しだけでいい、とさえ。
ゆったりとしたお茶の時間はその筆頭である。
ダンテとしてはその中に是非、ディーヴァとの情事の時間も加えたいと思うのだが、まあディーヴァには無理だろう。
それでも、最近の悪魔退治の状態やら、前の依頼もどきの件での強い悪魔との対峙。
あれを思い出すに、これからは今まで通りとはいかなくなる気がする。
ディーヴァだけは守りたい、いや、守らなければ。
「ダンテ、そろそろ行こ!」
「ん?ああ…」
考えていたら時間が近づいて来たか、ディーヴァに袖をちょいちょいと引っ張られた。
その手には屋根の上で飲むのだろう、水筒が日蝕眼鏡の他に持たれている。
そのまま夜から依頼に行く予定があり、いつもの赤いコートを羽織るダンテ。
依頼とは言うが、それは悪魔退治の依頼ではなく、ダンテの気乗りしないものであり、ともすればボイコットかますような内容である。
よしサボろう!なんて、心の中では既に決まっているほど。
ディーヴァを抱えて屋根に飛ぶと、一瞬で降り立つと、そこは先日の掃除のおかげか、ピカピカで綺麗であり、何かを敷かなくても座れる状態になっている。
それでも心配だったダンテは、そっとディーヴァを降ろした先に、小脇にかかえて持参したクッションをディーヴァのためにと敷いた。
「ここに座れよ」
「え、あ、ありがと…。ダンテの分は?」
「オレはいい。分厚いコートに分厚いズボン、これだけで充分にクッションがわりだ」
それよりあと少しっぽいぞ?
そう言うダンテがはるか遠くを仰ぎ見る。
ダンテの心遣いに感謝しながら、同じようにディーヴァも、ダンテの視線の先を見てみた。
しかし、未だ日蝕の片鱗はなさそう…?
目を凝らしてもよく見えなかった。
「うーん…まだじゃない?」
「いや?結構遠くの方からだが、でけぇ影がこっちに向かって来てる。影がかかってる地域は夕暮れみたいに朱く染まってるぜ」
「じゃあ、そろそろかな」
羨ましいと思う。
半分悪魔の体を持つダンテの視力と、肉体的にはただの人間であるディーヴァの視力は、まるで違う。
ディーヴァはダンテの隣に置かれたクッションにちょこんと腰を下ろし、水筒の中身をダンテと分け合いながらその時を待った。
雲ひとつなく、晴れている空。
その中心に輝き、人々を地球を照らす太陽。
これから月に隠れ、これが暗闇に少しずつ覆われて行くと言うのだ。
暗闇は怖くとも、ダンテと一緒に見るのだから大丈夫。
このゆったりとして温かな時間が、ずっと続けばいいのに。
テレビも新聞も、世間はそのことを話題に、やたらお祭り騒ぎだ。
イベント好きなディーヴァやダンテも、そうだった。
「日蝕眼鏡、おっけー。位置の確認、おっけー。時間帯の確認、おっけー」
「準備万端だな」
「うんっ!まーね!」
「オレも楽しみだけど、ぶっちゃけ日蝕なんて月と太陽が重なってるだけにしか見えないんだよなぁ…」
悪魔の血を引く者は、視力もいい。
実は日蝕眼鏡を使わずとも、ダンテには太陽と月が重なっているのが見える。
だからこそ、これまで何度か目にしてきた日蝕についても少しはわかるつもりだ。
「確かにそうだけど…。でも、それ言っちゃおしまいだよー?」
用意した日蝕眼鏡を弄りながら、苦笑いするディーヴァ。
日蝕が起きるメカニズムはわかっていても、やはり人は日蝕にロマンを求めるものだ。
とは言っても、古くから日蝕は凶事として恐れられてきたことの方が歴史では数多く残っている。
神話にも『太陽を食べる狼スコル』という怪物が登場し、それの大元となったのは、やはり日蝕である。
それが本当に日蝕を元に想像された怪物なのか、あるいは元々悪魔の類いなのかは、定かではないが。
「しかし、ダッサい眼鏡だな。ぺっらぺらの紙で出来た玩具の眼鏡じゃねぇか」
オレのかっこよさが半減しちまうぜ、と文句を垂れつつ、ダンテがすぐ曲がって壊れそうな眼鏡をかける。
誰も似合わないだろうし、似合いたくもないペラペラ紙の眼鏡だから仕方ないが、ダンテとてやはりこの眼鏡をかけた方が日蝕は見やすいよう。
「そんなことないよ。大丈夫、ダンテは何つけてもかっこいいから」
「え、本当か?」
「うんうん。あたし、惚れちゃうよ。ダンテがこの間髪切った時みたいに惚れ直しちゃう」
ディーヴァは、一生懸命、というより棒読みに近いがそう言って褒め、ダンテに眼鏡をかけさせた。
ちょろい。
「さて、位置と時間はどこだって?」
「あ、うん。ここからでもよく見えるみたいだよ。時間はお昼ご飯食べてちょっとしたらくらい、かな?」
というわけで今日のお昼は、簡単な物です!
と、クロワッサンのようなベーグルのようなパンに焼いた厚切りベーコンやスクランブルエッグ、たっぷりの野菜を挟んだサンドイッチ、バターナッツのポタージュスープを差し出してくるディーヴァ。
簡単と言っているが、バターナッツのポタージュを朝から作っていたのを見るに、手抜きの影は見当たらない。
「ん、サンキュ」
「どういたしましてー。温かい内に食べちゃお。そしたら、屋根の上連れてって?」
「りょーかい」
温かなサンドイッチにかぶりつき、まだ熱々のスープをフーフーやっつけながら啜る。
このクロワッサンとベーグルの合いの子のようなパンは、クレーグルと言って本当にそれの合いの子らしい。
表面はさっくり、中はもっちりで、どちらの食感も好きな人には良さそうだ。
そこに挟まれた油と塩味あるたんぱく質厚切りベーコンと、シャッキリレタスにフレッシュトマト、ディーヴァの好物の濃厚チェダーチーズがたっぷりに、ピリッとしたマスタードの風味。
うむ、今日もディーヴァのメシは美味い。
家事は得意だしかわいい天使である、ディーヴァのような彼女をこうして捕まえた自分を褒め讃えたくなる。
それにしても、窓から覗いて見るのではなく、屋根の上で見るとは初耳。
ああ…だから先日、屋根の上の掃除をさせられたのか。
あれは悪魔退治より骨が折れた。
食事を終わらせ食後の一服とも言うべき、一杯の紅茶を飲み、時間までゆるりと過ごす。
ディーヴァの血の中には多少なりとはいえイギリスの血も入っているからか、それともただ単に紅茶が好きなだけなのか、ディーヴァはこのゆったりした時間を愛していた。
人生において刺激とは必要なものである。
それはダンテの持論だ。
しかし、ディーヴァが平和を愛するから、ダンテ自身も平和でいたいし、平和を愛したい。
特に、ディーヴァと過ごすちょっとしたこの平和を、いつまでも続けていきたいと、守りたいと、そう思うのだ。
刺激なんて料理における『塩胡椒少々』のように本当にほんの少しだけでいい、とさえ。
ゆったりとしたお茶の時間はその筆頭である。
ダンテとしてはその中に是非、ディーヴァとの情事の時間も加えたいと思うのだが、まあディーヴァには無理だろう。
それでも、最近の悪魔退治の状態やら、前の依頼もどきの件での強い悪魔との対峙。
あれを思い出すに、これからは今まで通りとはいかなくなる気がする。
ディーヴァだけは守りたい、いや、守らなければ。
「ダンテ、そろそろ行こ!」
「ん?ああ…」
考えていたら時間が近づいて来たか、ディーヴァに袖をちょいちょいと引っ張られた。
その手には屋根の上で飲むのだろう、水筒が日蝕眼鏡の他に持たれている。
そのまま夜から依頼に行く予定があり、いつもの赤いコートを羽織るダンテ。
依頼とは言うが、それは悪魔退治の依頼ではなく、ダンテの気乗りしないものであり、ともすればボイコットかますような内容である。
よしサボろう!なんて、心の中では既に決まっているほど。
ディーヴァを抱えて屋根に飛ぶと、一瞬で降り立つと、そこは先日の掃除のおかげか、ピカピカで綺麗であり、何かを敷かなくても座れる状態になっている。
それでも心配だったダンテは、そっとディーヴァを降ろした先に、小脇にかかえて持参したクッションをディーヴァのためにと敷いた。
「ここに座れよ」
「え、あ、ありがと…。ダンテの分は?」
「オレはいい。分厚いコートに分厚いズボン、これだけで充分にクッションがわりだ」
それよりあと少しっぽいぞ?
そう言うダンテがはるか遠くを仰ぎ見る。
ダンテの心遣いに感謝しながら、同じようにディーヴァも、ダンテの視線の先を見てみた。
しかし、未だ日蝕の片鱗はなさそう…?
目を凝らしてもよく見えなかった。
「うーん…まだじゃない?」
「いや?結構遠くの方からだが、でけぇ影がこっちに向かって来てる。影がかかってる地域は夕暮れみたいに朱く染まってるぜ」
「じゃあ、そろそろかな」
羨ましいと思う。
半分悪魔の体を持つダンテの視力と、肉体的にはただの人間であるディーヴァの視力は、まるで違う。
ディーヴァはダンテの隣に置かれたクッションにちょこんと腰を下ろし、水筒の中身をダンテと分け合いながらその時を待った。
雲ひとつなく、晴れている空。
その中心に輝き、人々を地球を照らす太陽。
これから月に隠れ、これが暗闇に少しずつ覆われて行くと言うのだ。
暗闇は怖くとも、ダンテと一緒に見るのだから大丈夫。
このゆったりとして温かな時間が、ずっと続けばいいのに。