mission 34:lost ~剣と髪~
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暗がりの中、ようやく悪魔のその全貌が明らかとなった。
「やっと姿を見せたな」
黒々とした丸い体、太い8本の長い脚と一本爪、それらにはびっしりと硬い毛が生えおり、黒点が無数にあるようなたくさんの目と鋭い虫の牙があった。
まだこれが小さな虫なら、拡大鏡でみた蜘蛛そのままだ。
だが、その大きさは軽く1、2mある。
それに口から吐き出しているのは、毒を含んでいそうな魔の瘴気だ。
「…ん、……!?ぎゃ、ぎゃーーーーー!!」
「おうディーヴァ、無事か?」
「こんな気持ち悪い状態のどこが!無事なわけないでしょ!!」
「一応無事だな」
ディーヴァの嫌いなものの一つに、虫がある。
ゴキブリが特にダメとは言っていたものの、最近はうねうね系も脚が多い百足系も嫌い、そして蜘蛛も、もちろん嫌い。
意識を戻したディーヴァは、未だ蜘蛛なんぞに抱えられているという状況に、叫けばざるを得なかった。
ドスッ!
「っ!?」
「ディーヴァっ!!」
獲物のうるささに、蜘蛛の鋭い爪が、ディーヴァに突き立てられた。
…顔のすぐわきに。
「ディーヴァ、すぐ助けるからしずかにな」
「………」
あと少しで串刺し…さすがに黙るディーヴァ。
相手を知らずには、倒すことはおろか、ディーヴァを助けるために迂闊に動くことはできない。
ダンテは戦況と悪魔を一瞥して確認した。
先ほどのダンテが消しとばした脚から伝う液体が下に落ちるたび、ジュウジュウと落ち葉やら草やらを溶かして抉る。
見れば、放物線を描いて飛び散ったそれも、同じく地面を溶かしていた。
燻るそこから臭う香りで、酸性が強いというよりは毒に近いのがわかる。
「…毒蜘蛛か」
鋭い牙と爪は脅威だが、毒性ある体液を持つということは、口からも毒を吐く可能性が高い。
それに、ディーヴァにかかってしまうので、下手に斬るのは危険だ。
そしてリベリオンが滑ったのは、硬い毛の装甲がため。
斬る場所によって刃は通ろう。
しかし、こういう時こそ、ケルベロスやらベオウルフが必要だったなと思った。
アレらは対象を斬ったり貫くものでなく、殴りつけたり蹴りつけたり叩き潰す方が得意だ。
…今更言っても仕方ないが。
「ならば…!」
ケル&ベオ形式で行くとして、体術でまずボコろう。
思ったと同時、風切る速さでダンテは相手の懐に飛び込む。
そのまま渾身のアッパーを、蜘蛛の体の下部から繰り出した。
別にベオウルフは装備していないが、技を当てはめるにライジングドラゴン、といったところ。
蜘蛛の巨体が風船のように浮いて持ち上がった。
そのままひっくり返りそうだったのだが、蜘蛛は太い脚でなんとか踏みとどまったようだ。
「ひぃぃ…!」
蜘蛛の恐ろしさとダンテが蜘蛛を殴ったことからくる弊害、2つの意味合いでか細く悲鳴をあげるディーヴァ。
視界までぐるぐる回って、少し気持ち悪い。
しかし殴られてもなお、ディーヴァという獲物を蜘蛛が離すことはなかった。
「まだディーヴァを離さねぇってか。その根性だけは認めてやる」
怒った蜘蛛が、ダンテ目掛けて口から体液と同じ黄ばんだ緑の毒を吐き出す。
スピードは速いが、ダンテの速さはそれを軽く抜く。
「おっと、てめぇの吐く毒なんかがオレに当たるとでも?…おらっ!」
毒の連続攻撃を見事に避け切ったダンテが、蜘蛛に突っ込む。
早く助けてほしい。
ダンテがやられても恐ろしいことになるし、自分が捕まっている今、蜘蛛がやられてもひどいことになりそうだと、ディーヴァは気が気じゃなかったが。
戦う術を持たぬ一介の人間、否、守られるほかないただの天使には、そう思うことしかできない。
「ギャシャーー!」
背に、身体にダンテの拳やら蹴りが炸裂する横で、蜘蛛のぷっくりした臀部が海老反りに持ち上がった。
蜘蛛がお尻から出すものといえば…。
「ぶへっ!い、糸…!?」
蜘蛛という生き物が、糸を使うのを忘れていた。
ダンテの身体めがけ、思い切り蜘蛛の糸が吐き出されたのだ。
粘つき絡まり、動きづらい。
「くそっ!」
ダンテが四苦八苦しているうちに、蜘蛛は獲物を抱えてカサカサカサと這って逃げる。
「うそでしょーー!」
木々の奥へ消えていくディーヴァと、小さくなっていくその叫び声。
「ディーヴァ!…逃がすか、よっ!!」
立て続けに撃った弾丸が、逃げる蜘蛛の後ろ脚の付け根に命中したのを、ダンテは決して見逃さなかった。
赤く張り巡らされた悪魔の結界で広くなったか、そこはただの木の集合体というより、もはや森。
そこまで逃げた蜘蛛は、ディーヴァともどもゴロゴロと転がり落ちる。
「ギャギギギギシャー!」
「ったぁ~!…でも、今のうちに逃げなきゃ!」
1本だけではない。
8本の脚の内、後ろの3本もの脚が使い物にならなくなった。
後ろ脚がない。
つまり、重い体を支えることもままならないのだろう。
獲物であるディーヴァを放り出し、だらりと下がる脚の様子にかまけている。
蜘蛛はどこからどうやってかしらないが、魔界から出てきたばかりなのかもしれない。
捕まっていてわかったのだが、ひどく腹をすかせている、と言った感じだった。
あちらが気づかぬうちに逃げなくては。
ディーヴァは打った腰をさすりつつ、そろりと抜け出し、駆けた。
野犬のものだろう、真新しい白骨があちらこちらに散らばっている。
白骨には食べ残した肉片がこびりついていて、肉片はまだ赤く腐敗は進んでいないのだが、この寒い闇夜でも餌を求め、小蝿がプンプン集っていた。
ともすればコレと同じになる。
無残にも食べ散らかされ、骨と化し、蝿の集るモノに。
「あ、あたしも、食べられちゃう…!」
背筋が凍る。
蜘蛛にはいい思い出がない。
脳裏をよぎるのは、テメンニグルで蜘蛛の悪魔に殺されかけた一件。
そもそも虫は無視!大っ嫌いなのだから。
「やっと姿を見せたな」
黒々とした丸い体、太い8本の長い脚と一本爪、それらにはびっしりと硬い毛が生えおり、黒点が無数にあるようなたくさんの目と鋭い虫の牙があった。
まだこれが小さな虫なら、拡大鏡でみた蜘蛛そのままだ。
だが、その大きさは軽く1、2mある。
それに口から吐き出しているのは、毒を含んでいそうな魔の瘴気だ。
「…ん、……!?ぎゃ、ぎゃーーーーー!!」
「おうディーヴァ、無事か?」
「こんな気持ち悪い状態のどこが!無事なわけないでしょ!!」
「一応無事だな」
ディーヴァの嫌いなものの一つに、虫がある。
ゴキブリが特にダメとは言っていたものの、最近はうねうね系も脚が多い百足系も嫌い、そして蜘蛛も、もちろん嫌い。
意識を戻したディーヴァは、未だ蜘蛛なんぞに抱えられているという状況に、叫けばざるを得なかった。
ドスッ!
「っ!?」
「ディーヴァっ!!」
獲物のうるささに、蜘蛛の鋭い爪が、ディーヴァに突き立てられた。
…顔のすぐわきに。
「ディーヴァ、すぐ助けるからしずかにな」
「………」
あと少しで串刺し…さすがに黙るディーヴァ。
相手を知らずには、倒すことはおろか、ディーヴァを助けるために迂闊に動くことはできない。
ダンテは戦況と悪魔を一瞥して確認した。
先ほどのダンテが消しとばした脚から伝う液体が下に落ちるたび、ジュウジュウと落ち葉やら草やらを溶かして抉る。
見れば、放物線を描いて飛び散ったそれも、同じく地面を溶かしていた。
燻るそこから臭う香りで、酸性が強いというよりは毒に近いのがわかる。
「…毒蜘蛛か」
鋭い牙と爪は脅威だが、毒性ある体液を持つということは、口からも毒を吐く可能性が高い。
それに、ディーヴァにかかってしまうので、下手に斬るのは危険だ。
そしてリベリオンが滑ったのは、硬い毛の装甲がため。
斬る場所によって刃は通ろう。
しかし、こういう時こそ、ケルベロスやらベオウルフが必要だったなと思った。
アレらは対象を斬ったり貫くものでなく、殴りつけたり蹴りつけたり叩き潰す方が得意だ。
…今更言っても仕方ないが。
「ならば…!」
ケル&ベオ形式で行くとして、体術でまずボコろう。
思ったと同時、風切る速さでダンテは相手の懐に飛び込む。
そのまま渾身のアッパーを、蜘蛛の体の下部から繰り出した。
別にベオウルフは装備していないが、技を当てはめるにライジングドラゴン、といったところ。
蜘蛛の巨体が風船のように浮いて持ち上がった。
そのままひっくり返りそうだったのだが、蜘蛛は太い脚でなんとか踏みとどまったようだ。
「ひぃぃ…!」
蜘蛛の恐ろしさとダンテが蜘蛛を殴ったことからくる弊害、2つの意味合いでか細く悲鳴をあげるディーヴァ。
視界までぐるぐる回って、少し気持ち悪い。
しかし殴られてもなお、ディーヴァという獲物を蜘蛛が離すことはなかった。
「まだディーヴァを離さねぇってか。その根性だけは認めてやる」
怒った蜘蛛が、ダンテ目掛けて口から体液と同じ黄ばんだ緑の毒を吐き出す。
スピードは速いが、ダンテの速さはそれを軽く抜く。
「おっと、てめぇの吐く毒なんかがオレに当たるとでも?…おらっ!」
毒の連続攻撃を見事に避け切ったダンテが、蜘蛛に突っ込む。
早く助けてほしい。
ダンテがやられても恐ろしいことになるし、自分が捕まっている今、蜘蛛がやられてもひどいことになりそうだと、ディーヴァは気が気じゃなかったが。
戦う術を持たぬ一介の人間、否、守られるほかないただの天使には、そう思うことしかできない。
「ギャシャーー!」
背に、身体にダンテの拳やら蹴りが炸裂する横で、蜘蛛のぷっくりした臀部が海老反りに持ち上がった。
蜘蛛がお尻から出すものといえば…。
「ぶへっ!い、糸…!?」
蜘蛛という生き物が、糸を使うのを忘れていた。
ダンテの身体めがけ、思い切り蜘蛛の糸が吐き出されたのだ。
粘つき絡まり、動きづらい。
「くそっ!」
ダンテが四苦八苦しているうちに、蜘蛛は獲物を抱えてカサカサカサと這って逃げる。
「うそでしょーー!」
木々の奥へ消えていくディーヴァと、小さくなっていくその叫び声。
「ディーヴァ!…逃がすか、よっ!!」
立て続けに撃った弾丸が、逃げる蜘蛛の後ろ脚の付け根に命中したのを、ダンテは決して見逃さなかった。
赤く張り巡らされた悪魔の結界で広くなったか、そこはただの木の集合体というより、もはや森。
そこまで逃げた蜘蛛は、ディーヴァともどもゴロゴロと転がり落ちる。
「ギャギギギギシャー!」
「ったぁ~!…でも、今のうちに逃げなきゃ!」
1本だけではない。
8本の脚の内、後ろの3本もの脚が使い物にならなくなった。
後ろ脚がない。
つまり、重い体を支えることもままならないのだろう。
獲物であるディーヴァを放り出し、だらりと下がる脚の様子にかまけている。
蜘蛛はどこからどうやってかしらないが、魔界から出てきたばかりなのかもしれない。
捕まっていてわかったのだが、ひどく腹をすかせている、と言った感じだった。
あちらが気づかぬうちに逃げなくては。
ディーヴァは打った腰をさすりつつ、そろりと抜け出し、駆けた。
野犬のものだろう、真新しい白骨があちらこちらに散らばっている。
白骨には食べ残した肉片がこびりついていて、肉片はまだ赤く腐敗は進んでいないのだが、この寒い闇夜でも餌を求め、小蝿がプンプン集っていた。
ともすればコレと同じになる。
無残にも食べ散らかされ、骨と化し、蝿の集るモノに。
「あ、あたしも、食べられちゃう…!」
背筋が凍る。
蜘蛛にはいい思い出がない。
脳裏をよぎるのは、テメンニグルで蜘蛛の悪魔に殺されかけた一件。
そもそも虫は無視!大っ嫌いなのだから。