mission 34:lost ~剣と髪~
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ダンテマジかっこいい事件(仮)から数日、ディーヴァもさすがに毎日見てるおかげで慣れた。
今夜のディーヴァの仕事は夕食時の混雑時間帯で、こんな時、ダンテは必ず送迎をしてくれる。
鋭い視線をどこかに向けつつ、腕を組み足も軽く組み、壁沿いで待つダンテ。
たまに中にまで迎えに来てコーヒーの一杯やら飲んで待つ時もあるが、中が忙しい日はこのようにカフェレストランを出てすぐの壁に寄りかかって待ってくれている。
ディーヴァがレストランから出てくる気配だけで気づくのだろう、その眼光は優しさを帯びて迎えてくれる。
「お疲れ、ディーヴァ。帰ろうぜ」
「うん、いつもありがとうダンテ」
「お安い御用だ。…それは?」
ディーヴァが鞄以外に携えている物が目に入る。
白の緩衝材にぐるぐると包まれた中には、琥珀色の液体がちゃぷんと揺れる角瓶が。
「間違えてたくさん発注しちゃったんだって、マスターがくれたの」
そのパッケージには、テキーラと明記されていた。
テキーラ自体は嫌いじゃないが、それを見たダンテは眉根を寄せた。
「テキーラか。うわ、これオレがそんなに好きじゃない銘柄だ」
「文句言わないの」
ディーヴァの荷物を受け取り、その手をしっかり握り取って、帰路の道を歩き出す2人。
いつもならここに、ゴールデンレトリバーの姿をしたケルベロスも散歩と称して歩いていたのだが、今魔具達は誰1人としていない。
少し寂しいが、ダンテがいればこわくはない。
今夜のように、真っ暗な夜でも。
今夜は澄み切って寒い空の下だというに、分厚い雲が空を覆い尽くしており、お月様は見えない。
本当なら上弦の月が優しく照らしていたはずの夜道。
そこかしこ切れかかっている街灯だけでは心もとない明るさ。
慣れたとはいえ、ここはスラムにほど近い地区だ。
何か出そうな…と言い表せるような、暗がりがそこかしこに存在している。
少し怖い。
ディーヴァはダンテの手をきゅっと握り、彼の先導に従って歩いた。
ダンテの眼光がまた鋭くなった。
それが射抜く先は、すぐ隣の公園の奥の森。
風なのか、森が生きているかのように、ざわざわと中の木々が揺れ動いている。
ーただの風ではなさそうだ。
「悪魔か」
「えっ、何?」
ディーヴァも悪魔の敵意や殺意には鋭い方だが、仕事で疲れ切っている今、ダンテのそれには遠く及ばない。
ダンテは手の中の荷物をディーヴァに渡し、公園の中へと進み出た。
「ディーヴァ、先に帰れ」
「え、やだ、やだよぅ…。ダンテから離れたらもっと怖い…こんな暗いのに1人でなんて帰れないよ」
自分で帰るのに慣れていたとしたら、あきらめがついていた。
しかし、ダンテによってどろどろに甘やかされて育ったディーヴァにとって、夜道を1人で歩く…というのは恐怖。
特に真っ暗闇なんて、トラウマに他ならない。
「…だよな。すまん、わかってる」
「弱くてごめん……」
「いいさ。なら、オレの傍からは絶対離れるな」
震えるディーヴァの頭に手をポンと置き、ダンテは背のリベリオン、ホルスターの双銃を確認する。
こくり、隣でディーヴァが頷く気配がした。
1番は家に帰っていて欲しいが、ともにいると決めたなら、せめて確実に悪魔の待ち構えている木々の中でなく、公園の中にでも待っていて欲しい。
何よりも、誰よりも大切なディーヴァを守れないーなんてことはありえないが、もし傷付けてしまったら?
いつも危惧するのはそこばかり。
だが、傍で守りたいというのもダンテの本心。
感情とはいつだってひどく矛盾を生み、葛藤を繰り返し、そして悩むものだ。
それに、離れるなと言ったのはダンテ。
自分の言葉には責任を持たなくてはならない。
ダンテが公園を通り抜け、木々…むしろ森と言って差し支えなさそうなソコに踏み入れる。
不安そうなディーヴァがそのすぐ後に続いた。
闇夜の中では、木々の闇はより深い。
何者かが蠢く気配と、悪魔特有の吐き溜めの臭い、そして自分達が足元の木の葉を踏む音だけが辺りを包む。
「おかしいな、こんなに悪魔の気配がするのに、いない」
「ダンテの思い違いだったんじゃない?こんな暗い夜だし。ねえ、帰ろうよ」
蠢く気配は野生動物の、と思い込むことはできる。
だが、ダンテの研ぎ澄まされた嗅覚とハンターとしての感覚は、悪魔がいると伝えていた。
ディーヴァだって天使だ、本当はわかっているはず。
一旦帰るか…、そう思いすぐ出せるようにしていた銃から手を離し、代わりにディーヴァに手を伸ばす。
そのディーヴァの上に、大きな影がかかっていた。
「ディーヴァ!上だっ!」
「えっ、ーーーっ!?」
ドスン、ダンテを押しのけてディーヴァの真上に着地したもの、それは真っ黒な大蜘蛛。
ろくな悲鳴もあげず、ディーヴァはその長い一本爪で抱えられて一瞬で木の上へ。
「ディーヴァ!!」
「やー!ダンテーーー!」
とっさに振るうリベリオンも、びっしりと生えた硬い毛に滑って功をなさなかった。
たった数センチ、すぐ後ろにいたディーヴァが襲われた。
「く、く、蜘蛛…!?気持ち悪…ぅ……」
「ディーヴァっ!」
間近も間近、至近距離で蜘蛛を見てしまったディーヴァは、あまりの事態にそのまま気を失う。
意識のない獲物はさぞや食しやすいだろう。
ダンテは高い跳躍力で蜘蛛を追い、その眼力で蜘蛛の脚…その関節部分を狙う。
エボニーとアイボリーはダンテの照準に的確に答えてくれた。
「キシャァァァァ!!」
「ビンゴ」
脚の一本が途中から折れて消し飛んだ。
黄ばんだ緑の液体が、空中に放物線を描いて撒き散らされる。
それでも獲物は離さない。
折れた脚を気にしながら、蜘蛛はようやく木々の間に着地して、獲物を横取りしようとしてくるダンテに向き直った。
横取りなどではなく、ダンテは悪魔の裏切り者でありただの敵対者なのだが、この蜘蛛の悪魔、知性はないのかそんなことはどうでもいいらしい。
今夜のディーヴァの仕事は夕食時の混雑時間帯で、こんな時、ダンテは必ず送迎をしてくれる。
鋭い視線をどこかに向けつつ、腕を組み足も軽く組み、壁沿いで待つダンテ。
たまに中にまで迎えに来てコーヒーの一杯やら飲んで待つ時もあるが、中が忙しい日はこのようにカフェレストランを出てすぐの壁に寄りかかって待ってくれている。
ディーヴァがレストランから出てくる気配だけで気づくのだろう、その眼光は優しさを帯びて迎えてくれる。
「お疲れ、ディーヴァ。帰ろうぜ」
「うん、いつもありがとうダンテ」
「お安い御用だ。…それは?」
ディーヴァが鞄以外に携えている物が目に入る。
白の緩衝材にぐるぐると包まれた中には、琥珀色の液体がちゃぷんと揺れる角瓶が。
「間違えてたくさん発注しちゃったんだって、マスターがくれたの」
そのパッケージには、テキーラと明記されていた。
テキーラ自体は嫌いじゃないが、それを見たダンテは眉根を寄せた。
「テキーラか。うわ、これオレがそんなに好きじゃない銘柄だ」
「文句言わないの」
ディーヴァの荷物を受け取り、その手をしっかり握り取って、帰路の道を歩き出す2人。
いつもならここに、ゴールデンレトリバーの姿をしたケルベロスも散歩と称して歩いていたのだが、今魔具達は誰1人としていない。
少し寂しいが、ダンテがいればこわくはない。
今夜のように、真っ暗な夜でも。
今夜は澄み切って寒い空の下だというに、分厚い雲が空を覆い尽くしており、お月様は見えない。
本当なら上弦の月が優しく照らしていたはずの夜道。
そこかしこ切れかかっている街灯だけでは心もとない明るさ。
慣れたとはいえ、ここはスラムにほど近い地区だ。
何か出そうな…と言い表せるような、暗がりがそこかしこに存在している。
少し怖い。
ディーヴァはダンテの手をきゅっと握り、彼の先導に従って歩いた。
ダンテの眼光がまた鋭くなった。
それが射抜く先は、すぐ隣の公園の奥の森。
風なのか、森が生きているかのように、ざわざわと中の木々が揺れ動いている。
ーただの風ではなさそうだ。
「悪魔か」
「えっ、何?」
ディーヴァも悪魔の敵意や殺意には鋭い方だが、仕事で疲れ切っている今、ダンテのそれには遠く及ばない。
ダンテは手の中の荷物をディーヴァに渡し、公園の中へと進み出た。
「ディーヴァ、先に帰れ」
「え、やだ、やだよぅ…。ダンテから離れたらもっと怖い…こんな暗いのに1人でなんて帰れないよ」
自分で帰るのに慣れていたとしたら、あきらめがついていた。
しかし、ダンテによってどろどろに甘やかされて育ったディーヴァにとって、夜道を1人で歩く…というのは恐怖。
特に真っ暗闇なんて、トラウマに他ならない。
「…だよな。すまん、わかってる」
「弱くてごめん……」
「いいさ。なら、オレの傍からは絶対離れるな」
震えるディーヴァの頭に手をポンと置き、ダンテは背のリベリオン、ホルスターの双銃を確認する。
こくり、隣でディーヴァが頷く気配がした。
1番は家に帰っていて欲しいが、ともにいると決めたなら、せめて確実に悪魔の待ち構えている木々の中でなく、公園の中にでも待っていて欲しい。
何よりも、誰よりも大切なディーヴァを守れないーなんてことはありえないが、もし傷付けてしまったら?
いつも危惧するのはそこばかり。
だが、傍で守りたいというのもダンテの本心。
感情とはいつだってひどく矛盾を生み、葛藤を繰り返し、そして悩むものだ。
それに、離れるなと言ったのはダンテ。
自分の言葉には責任を持たなくてはならない。
ダンテが公園を通り抜け、木々…むしろ森と言って差し支えなさそうなソコに踏み入れる。
不安そうなディーヴァがそのすぐ後に続いた。
闇夜の中では、木々の闇はより深い。
何者かが蠢く気配と、悪魔特有の吐き溜めの臭い、そして自分達が足元の木の葉を踏む音だけが辺りを包む。
「おかしいな、こんなに悪魔の気配がするのに、いない」
「ダンテの思い違いだったんじゃない?こんな暗い夜だし。ねえ、帰ろうよ」
蠢く気配は野生動物の、と思い込むことはできる。
だが、ダンテの研ぎ澄まされた嗅覚とハンターとしての感覚は、悪魔がいると伝えていた。
ディーヴァだって天使だ、本当はわかっているはず。
一旦帰るか…、そう思いすぐ出せるようにしていた銃から手を離し、代わりにディーヴァに手を伸ばす。
そのディーヴァの上に、大きな影がかかっていた。
「ディーヴァ!上だっ!」
「えっ、ーーーっ!?」
ドスン、ダンテを押しのけてディーヴァの真上に着地したもの、それは真っ黒な大蜘蛛。
ろくな悲鳴もあげず、ディーヴァはその長い一本爪で抱えられて一瞬で木の上へ。
「ディーヴァ!!」
「やー!ダンテーーー!」
とっさに振るうリベリオンも、びっしりと生えた硬い毛に滑って功をなさなかった。
たった数センチ、すぐ後ろにいたディーヴァが襲われた。
「く、く、蜘蛛…!?気持ち悪…ぅ……」
「ディーヴァっ!」
間近も間近、至近距離で蜘蛛を見てしまったディーヴァは、あまりの事態にそのまま気を失う。
意識のない獲物はさぞや食しやすいだろう。
ダンテは高い跳躍力で蜘蛛を追い、その眼力で蜘蛛の脚…その関節部分を狙う。
エボニーとアイボリーはダンテの照準に的確に答えてくれた。
「キシャァァァァ!!」
「ビンゴ」
脚の一本が途中から折れて消し飛んだ。
黄ばんだ緑の液体が、空中に放物線を描いて撒き散らされる。
それでも獲物は離さない。
折れた脚を気にしながら、蜘蛛はようやく木々の間に着地して、獲物を横取りしようとしてくるダンテに向き直った。
横取りなどではなく、ダンテは悪魔の裏切り者でありただの敵対者なのだが、この蜘蛛の悪魔、知性はないのかそんなことはどうでもいいらしい。