mission 34:lost ~剣と髪~
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「こういう時ばっかり客が来ないとか言うなって……」
ディーヴァの手をどかし、自分の姿を見て一瞬言葉を失った。
「………おいおい、これはないだろ」
伸びた髪はうなじに小さな三つ編みを作って、後ろに垂らされていた。
それはまだいい方。
前髪は残った髪ごと、オールバックのように、でも少し違う感じに上にまとめ上げられ、真っ赤なリボンが結ばれている。
その様子は、まるでパイナップルの葉がぴょん、と上に突き出ているかのような有様だった。
「いいじゃない、かわいいよ?」
今度はにこにこ笑顔のディーヴァが、自分自身の髪を上にまとめ、ダンテの髪を結わえているのと同じリボンを使っているではないか。
「はい、おそろーい!」
「…………」
なんとまあ、珍しく化粧をするとき以外で、猫の額のように小さく可愛らしいおでこが出ているのを見ることができようとは。
これはレアだ。
お揃い、と嬉しそうに言われて少し絆されそうになった。
それでも怒りの方が大きい。
怒鳴りたくなる思いをぐっと堪え、ダンテはさっと頭上・うなじ、両方のゴムを解いた。
「はい終了。解く」
「あーあ、せっかく結んだのにぃ…」
「いらん遊びすな。たく、あとで床屋行ってくる」
「床屋さん…いいなあ」
ディーヴァは表情がころころと変わる。
今は床屋の言葉を聞き、唇を尖らせて拗ねているようだ。
「羨ましがるところなんかあるか?」
「あるよ。だってあたしは髪、短かくしたくなっても、切ったら伸びないからそのあと伸ばせないもの」
つまり、切れない。
「今のあたしにとって無縁の場所でしょ?」
「いや、ずっと無縁だろ。そんだけ綺麗なんだ、ディーヴァの髪は絶対切らせない」
「いやいや、切っても伸びるんだったら1度くらいはイメチェンして切りますけど?」
「いやいやいや、切って伸びても切らせねぇよ」
「「……………」」
堂々巡り。
お互い目が少しだけ据わったところで、ディーヴァがお揃い、と結んでいたリボンを解いて頭をなでつけ髪を元に戻す。
結わえていた跡は多少残っているが、ディーヴァの潤ったキューティクルはいつも健在、すぐに消えるだろう。
「ふんだ。あたしダンテと暮らしてから髪切ったことあるもん」
「……は?」
なんとも聞き捨てならぬ言葉が飛び出した。
ダンテは出会った頃の早い段階で、ディーヴァに髪は長い方が好き、切るなと口を酸っぱくして言っていた。
それに、ディーヴァも何度も返事していたはずだ。
「前にね、試しにちょっとだけ髪の毛切って、数か月様子を見たんだけど、」
「切るなってあれほど言っただろうが!」
「ちょっとだしいいじゃないの。内側の数十本だよ。ほらここ」
長い髪一房を手に取って掻き分け、ディーヴァは該当する箇所をダンテに見せる。
確かに少しだけ短い髪の毛束が、そこには存在していた。
「うわー!何してんだーーーっ!!」
「叫ぶほどのこと…?」
「だめだだめだだめだだめだっ!!ディーヴァが許しても天使様が許してもお天道様が許しても、そんなのオレが許さねえ!ついでに管理人も許さねえって言ってるぜ!」
「管理人はどうでもいいよ」
ひどい。
「それに今更怒っても意味ないし~。昔のこと~」
「くっ…!」
もう終わった事だ。
覆水盆に返らず、後の祭り、後悔したってもう遅い。
ディーヴァの貴重な髪の毛は、永遠に失われた。
「そ、れ、よ、り」
ダンテの肩に手を置きながら、ディーヴァがスタッカートの利いた言葉で話す。
言い方がまるでネヴァンのそれだとか思ったのは内緒な。
こんなとき女って奴ぁ、大抵ろくなこと言わない。
「ね、床屋さんに行くくらいなら、あたし切っていい?」
「え゛」
ほら、やっぱりろくなことじゃなかった。
「いや…それはやめといた方がいいんじゃないか…?」
「なんで?どうして?床屋さん代、浮くよ?」
「浮く、けど。でも、そこまでして節約する必要は、」
「ダンテはまだ借金あるのにそんなことよく言えるよね」
「…………」
にこぉ…と、含みある笑みで事実を言われた。
反論は許されない。
「………とか言ってお前、ただ切ってみたいだけだろ」
「えへ?」
「わかったよ。オレの髪は玩具じゃねぇっての、覚えとけ」
「うんっ!ありがとー」
惚れた弱みか、ダンテはディーヴァに弱く、強く言われてしまえばいつだって勝てない。
苦虫噛み潰したような顔をしながらも、結局ディーヴァの言い分を許してしまう。
ハサミ、櫛など、ディーヴァはヘアーカットができそうな準備をし、ダンテの首にはタオルとビニールをくるりと巻きつけ垂らす。
そして、先の細いハサミを持って、蟹さんよろしくチョキチョキと動かした。
「ふふ、1度美容師さんになりたいって夢もあったんだよね~」
「夢はいいから、オレの髪を切りすぎるならまだしも、自分の手は切るなよ?」
「うん。わかって…」
ザクッ!
何か切り落とす音が響く。
「る、よ…?」
「まさか、言ってる傍から手を切ったのか?」
血の香りはしないので振り返らないが、ディーヴァが青ざめているのはわかる。
「違う………ダンテの髪、変に切っちゃった」
「はぁ…」
「ま、いっか!」
「いいわけあるか!」
「まあまあ、あたしに任せて~」
任せたくねえ、と今度はダンテが青ざめる番だった。
ディーヴァの手をどかし、自分の姿を見て一瞬言葉を失った。
「………おいおい、これはないだろ」
伸びた髪はうなじに小さな三つ編みを作って、後ろに垂らされていた。
それはまだいい方。
前髪は残った髪ごと、オールバックのように、でも少し違う感じに上にまとめ上げられ、真っ赤なリボンが結ばれている。
その様子は、まるでパイナップルの葉がぴょん、と上に突き出ているかのような有様だった。
「いいじゃない、かわいいよ?」
今度はにこにこ笑顔のディーヴァが、自分自身の髪を上にまとめ、ダンテの髪を結わえているのと同じリボンを使っているではないか。
「はい、おそろーい!」
「…………」
なんとまあ、珍しく化粧をするとき以外で、猫の額のように小さく可愛らしいおでこが出ているのを見ることができようとは。
これはレアだ。
お揃い、と嬉しそうに言われて少し絆されそうになった。
それでも怒りの方が大きい。
怒鳴りたくなる思いをぐっと堪え、ダンテはさっと頭上・うなじ、両方のゴムを解いた。
「はい終了。解く」
「あーあ、せっかく結んだのにぃ…」
「いらん遊びすな。たく、あとで床屋行ってくる」
「床屋さん…いいなあ」
ディーヴァは表情がころころと変わる。
今は床屋の言葉を聞き、唇を尖らせて拗ねているようだ。
「羨ましがるところなんかあるか?」
「あるよ。だってあたしは髪、短かくしたくなっても、切ったら伸びないからそのあと伸ばせないもの」
つまり、切れない。
「今のあたしにとって無縁の場所でしょ?」
「いや、ずっと無縁だろ。そんだけ綺麗なんだ、ディーヴァの髪は絶対切らせない」
「いやいや、切っても伸びるんだったら1度くらいはイメチェンして切りますけど?」
「いやいやいや、切って伸びても切らせねぇよ」
「「……………」」
堂々巡り。
お互い目が少しだけ据わったところで、ディーヴァがお揃い、と結んでいたリボンを解いて頭をなでつけ髪を元に戻す。
結わえていた跡は多少残っているが、ディーヴァの潤ったキューティクルはいつも健在、すぐに消えるだろう。
「ふんだ。あたしダンテと暮らしてから髪切ったことあるもん」
「……は?」
なんとも聞き捨てならぬ言葉が飛び出した。
ダンテは出会った頃の早い段階で、ディーヴァに髪は長い方が好き、切るなと口を酸っぱくして言っていた。
それに、ディーヴァも何度も返事していたはずだ。
「前にね、試しにちょっとだけ髪の毛切って、数か月様子を見たんだけど、」
「切るなってあれほど言っただろうが!」
「ちょっとだしいいじゃないの。内側の数十本だよ。ほらここ」
長い髪一房を手に取って掻き分け、ディーヴァは該当する箇所をダンテに見せる。
確かに少しだけ短い髪の毛束が、そこには存在していた。
「うわー!何してんだーーーっ!!」
「叫ぶほどのこと…?」
「だめだだめだだめだだめだっ!!ディーヴァが許しても天使様が許してもお天道様が許しても、そんなのオレが許さねえ!ついでに管理人も許さねえって言ってるぜ!」
「管理人はどうでもいいよ」
ひどい。
「それに今更怒っても意味ないし~。昔のこと~」
「くっ…!」
もう終わった事だ。
覆水盆に返らず、後の祭り、後悔したってもう遅い。
ディーヴァの貴重な髪の毛は、永遠に失われた。
「そ、れ、よ、り」
ダンテの肩に手を置きながら、ディーヴァがスタッカートの利いた言葉で話す。
言い方がまるでネヴァンのそれだとか思ったのは内緒な。
こんなとき女って奴ぁ、大抵ろくなこと言わない。
「ね、床屋さんに行くくらいなら、あたし切っていい?」
「え゛」
ほら、やっぱりろくなことじゃなかった。
「いや…それはやめといた方がいいんじゃないか…?」
「なんで?どうして?床屋さん代、浮くよ?」
「浮く、けど。でも、そこまでして節約する必要は、」
「ダンテはまだ借金あるのにそんなことよく言えるよね」
「…………」
にこぉ…と、含みある笑みで事実を言われた。
反論は許されない。
「………とか言ってお前、ただ切ってみたいだけだろ」
「えへ?」
「わかったよ。オレの髪は玩具じゃねぇっての、覚えとけ」
「うんっ!ありがとー」
惚れた弱みか、ダンテはディーヴァに弱く、強く言われてしまえばいつだって勝てない。
苦虫噛み潰したような顔をしながらも、結局ディーヴァの言い分を許してしまう。
ハサミ、櫛など、ディーヴァはヘアーカットができそうな準備をし、ダンテの首にはタオルとビニールをくるりと巻きつけ垂らす。
そして、先の細いハサミを持って、蟹さんよろしくチョキチョキと動かした。
「ふふ、1度美容師さんになりたいって夢もあったんだよね~」
「夢はいいから、オレの髪を切りすぎるならまだしも、自分の手は切るなよ?」
「うん。わかって…」
ザクッ!
何か切り落とす音が響く。
「る、よ…?」
「まさか、言ってる傍から手を切ったのか?」
血の香りはしないので振り返らないが、ディーヴァが青ざめているのはわかる。
「違う………ダンテの髪、変に切っちゃった」
「はぁ…」
「ま、いっか!」
「いいわけあるか!」
「まあまあ、あたしに任せて~」
任せたくねえ、と今度はダンテが青ざめる番だった。