mission 34:lost ~剣と髪~
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ディーヴァの誕生日である9月29日も過ぎ、23歳になってそこそこ経つ。
もうすぐ11月の第4木曜日。
アメリカでは、クリスマスに次ぐ大きい祝日である、サンクスギビングー感謝祭である。
ディーヴァは今夜の感謝祭のため、朝の内からせっせとご馳走作りに勤しんでいた。
買ってきた七面鳥に、詰め物していくのももはや手馴れたもの。
ダンテと暮らし始めた最初の年なんかは、まだ母の作り方もろくに覚えておらず、それはもう、試行錯誤したものだ。
今でこそ、ディーヴァ独自の味が確固たるものとなっているが、本当に大変だった。
いつも思うが、焼く前の七面鳥の肉の塊は、ちょっと恐ろしい。
これが少し前まで動いていた、少し前まで空洞部分には内臓が入って体を支えていた。
そう考えると、せっかくのターキーが、食べづらくなってくる。
生きるため食べるため、鶏だの豚だの牛だのを殺めている人間が言うことではないのだが。
よく塩揉み洗いをした七面鳥の内側に、玉ねぎとにんにくのみじん切り、セロリ、レモン、ハラペーニョ。
そしてフレッシュでジューシーな味わいに仕上げるため、りんご、オレンジ、プルーンにたくさんのハーブをもスタフィングとしてパンパンに詰め込む。
仕上げに塩胡椒を多めに振り、下に滲み出てきた肉汁をかけつつ、じっくりと数時間オーブンで焼く。
続いてキャンディード・ヤムという、内側がオレンジ色をしたヤム芋を使った料理。
これは、茹でた芋にバターなどを乗せて焼き、更にマシュマロを乗せて焼く甘い甘~い物。
甘党のダンテにはぴったりである。
「あたしは普通に串に刺して焼きマシュマロする方が好きだけどね~」
ダンテのいない内に、一串だけ焼いて食べた。
前はいちいち火傷していたが、今は食べ方も上手になっている。
…うん、美味しい。
そして、ターキーに添える物として、マッシュポテトとグリーンビーンキャセロール、それに、ターキーを焼いた時に出る肉汁で作るグレービーソース、クランベリーソースを作る。
どれも感謝祭には欠かせないものだ。
それから、主食にコーンブレッド、デザートにアップルパイを用意すれば完璧だね。
手際が良かったため、色々と焼く時間が多い以外は、特にご馳走の準備に時間を取られず済みそうだ。
ある程度の支度が終わり、落ち着いているところにダンテが登場。
「おお、今日はターキーディだったか。楽しみだな」
グリーンビーンキャセロールをつまみ食いしようと、手を伸ばすダンテ。
「イテッ」
その手をはたき落として、ディーヴァはダンテを注意した。
つまみ食いをでは無く、今日が何の日かわかっていなかったという、事実をだ。
「もう!街は感謝祭で賑わってるのに、ダンテったら気がつかなかったの?」
「オレはいつもお前の事しか見てないからな」
「あ、そうなの。それはありがとう…って違う!」
さらっとこっちが赤くなるような事を言うのは嬉しいが、カレンダーくらいいい加減見て欲しいものである。
あとは焼き終わりまで、ゆっくりとアメフトでもテレビで見ていよう。
ダンテに2人分の飲み物を渡し、ソファーに行くよう促す。
「何だ?ソファーで今からイイコトやるのか?」
変なこと考えてニヤニヤするダンテに、ディーヴァはポテトチップスの袋を投げつけた。
「今日明日は依頼ないの?」
「今のところない。この瞬間に依頼の電話が来ないことを祈るぜ…。そしたらたまにはディーヴァとゆっくり出来るからな」
「そうだねぇ」
周りは感謝祭のおかげですっかり祝日ムード全開。
悪魔には感謝祭なんて関係ないかもしれないが、皆んなが休んでいる時にダンテだけ休めないというのは、なんだかやるせない。
まあ、そんな事を言ったら「不定期の仕事なんだから年中休んでるだろ?」とか怒られてしまいそうだが。
とは言え、悪魔の依頼がなくとも、こちとら悪魔に狙われたり、獲物として追われたりの身である。
いつどこで、悪魔が襲ってくるとも限らない。
ひょっとしたら、知らぬ間に魔の手は忍び寄り、既に事件に巻き込まれているって事もあったりなかったり…おいこらどっちだ。
「まあ、今日はなーんもないよ、きっとね!あるとしても、パレードの最中とか…?」
「おいやめろ、ディーヴァが言うとシャレにならねぇ」
ポテトチップスの袋が一つ空になるまでには、アメフトの試合が終わり、テレビでは今、感謝祭のパレードが生中継されている。
時のニューヨークで行われるメイシーズ・サンクスギビング・パレードという、有名なパレードだ。
著名人、大スターが参加し、ダンスや、巨大バルーン、たくさんの催しが開かれるそれ。
大きな催し物だからこそ、悪魔が出没なんて事になったら大惨事だ。
なのに、ディーヴァのこの発言。
ディーヴァが嫌な予感がする、だの変な事を言うと、これまでほとんど何かあった。
だから言って欲しくないのだ。
「なによ~、まるで事件起こるところ必ずあたし有り、探偵物の漫画の主人公みたいに言わないでよね」
それは名探偵●ナンのことか。
「本当のことだろ?」
「それを言うならダンテだって悪魔バキュームじゃないの。あ、ハリウッドスター出てる…かっこいいね」
「悪魔吸引力の変わらないただ一つのディーヴァに言われたかないね。…ハリウッドスターなんかより、オレのがかっこいいだろ?」
「ダンテはかっこいいよ。けど、本当のイケメンは自分でかっこいいとか言わないの」
「本当のことだろ?」
「「……………」」
なんとも似たり寄ったり堂々巡りな言い合いだった。
そうこうしてる間にパレードの生中継も終わり、ターキーを焼いていたオーブンも止まった。
キッチンからは香ばしく美味しそうな匂いが漂ってきている。
この匂いを嗅いでいると、ポテトチップスを食べたばかりだというにもうお腹が空いてくる気がする。
人間の体とは摩訶不思議なものよ。
結局、感謝祭である本日は一度も事務所の電話がなることはなかった。
しいて言えば、ディーヴァの学生時代の
友人から、珍しく電話がかかってきた事くらいか。
内容まで聞いていないのでダンテは知らないが、多分世間話だろう。
「今日の平和に感謝だね」
「ああ、たまには刺激も必要だが、それは普段が平和だからこそ活きてくるもんだからな」
「うんうん。そういうわけで、食べ物に感謝。美味し糧!いっただっきまーす」
「ディーヴァのメシに今日も感謝。いただきます」
お皿に切り分けたターキーにはその中に入っていたスタフィング、クランベリーソースをかけて。
同じ皿に添えたマッシュポテトは濃厚なグレービーソースで味付けして。
フォーク片手にもぐもぐお食事タイム。
「七面鳥、外で食った事あるんだけどさ、パッサパサでソースは酸っぱいだけだったな…。でも、ディーヴァの作ったのはジューシーで、ソースも程よく甘酸っぱくて美味い」
身内びいきじゃねぇぞ?
そう言いながら、ターキーにとろりとしたクランベリーソースを絡め、ダンテは美味しそうに頬張った。
笑顔で美味しく食べてくれる人がいる、それを見ていると、思わずこちらも笑顔になれる。
「なら良かった。これ、ママの味なんだよね…。やっとあたしの中にこの味が定着したってことかぁ、嬉しいな~」
「お袋の味、だな。
あー…手で掴んで食いてぇな」
「お行儀悪いからだーめ」
食卓での『母親』はディーヴァだ。
ダメと言われたら大人しく従うほかない。
もうすぐ11月の第4木曜日。
アメリカでは、クリスマスに次ぐ大きい祝日である、サンクスギビングー感謝祭である。
ディーヴァは今夜の感謝祭のため、朝の内からせっせとご馳走作りに勤しんでいた。
買ってきた七面鳥に、詰め物していくのももはや手馴れたもの。
ダンテと暮らし始めた最初の年なんかは、まだ母の作り方もろくに覚えておらず、それはもう、試行錯誤したものだ。
今でこそ、ディーヴァ独自の味が確固たるものとなっているが、本当に大変だった。
いつも思うが、焼く前の七面鳥の肉の塊は、ちょっと恐ろしい。
これが少し前まで動いていた、少し前まで空洞部分には内臓が入って体を支えていた。
そう考えると、せっかくのターキーが、食べづらくなってくる。
生きるため食べるため、鶏だの豚だの牛だのを殺めている人間が言うことではないのだが。
よく塩揉み洗いをした七面鳥の内側に、玉ねぎとにんにくのみじん切り、セロリ、レモン、ハラペーニョ。
そしてフレッシュでジューシーな味わいに仕上げるため、りんご、オレンジ、プルーンにたくさんのハーブをもスタフィングとしてパンパンに詰め込む。
仕上げに塩胡椒を多めに振り、下に滲み出てきた肉汁をかけつつ、じっくりと数時間オーブンで焼く。
続いてキャンディード・ヤムという、内側がオレンジ色をしたヤム芋を使った料理。
これは、茹でた芋にバターなどを乗せて焼き、更にマシュマロを乗せて焼く甘い甘~い物。
甘党のダンテにはぴったりである。
「あたしは普通に串に刺して焼きマシュマロする方が好きだけどね~」
ダンテのいない内に、一串だけ焼いて食べた。
前はいちいち火傷していたが、今は食べ方も上手になっている。
…うん、美味しい。
そして、ターキーに添える物として、マッシュポテトとグリーンビーンキャセロール、それに、ターキーを焼いた時に出る肉汁で作るグレービーソース、クランベリーソースを作る。
どれも感謝祭には欠かせないものだ。
それから、主食にコーンブレッド、デザートにアップルパイを用意すれば完璧だね。
手際が良かったため、色々と焼く時間が多い以外は、特にご馳走の準備に時間を取られず済みそうだ。
ある程度の支度が終わり、落ち着いているところにダンテが登場。
「おお、今日はターキーディだったか。楽しみだな」
グリーンビーンキャセロールをつまみ食いしようと、手を伸ばすダンテ。
「イテッ」
その手をはたき落として、ディーヴァはダンテを注意した。
つまみ食いをでは無く、今日が何の日かわかっていなかったという、事実をだ。
「もう!街は感謝祭で賑わってるのに、ダンテったら気がつかなかったの?」
「オレはいつもお前の事しか見てないからな」
「あ、そうなの。それはありがとう…って違う!」
さらっとこっちが赤くなるような事を言うのは嬉しいが、カレンダーくらいいい加減見て欲しいものである。
あとは焼き終わりまで、ゆっくりとアメフトでもテレビで見ていよう。
ダンテに2人分の飲み物を渡し、ソファーに行くよう促す。
「何だ?ソファーで今からイイコトやるのか?」
変なこと考えてニヤニヤするダンテに、ディーヴァはポテトチップスの袋を投げつけた。
「今日明日は依頼ないの?」
「今のところない。この瞬間に依頼の電話が来ないことを祈るぜ…。そしたらたまにはディーヴァとゆっくり出来るからな」
「そうだねぇ」
周りは感謝祭のおかげですっかり祝日ムード全開。
悪魔には感謝祭なんて関係ないかもしれないが、皆んなが休んでいる時にダンテだけ休めないというのは、なんだかやるせない。
まあ、そんな事を言ったら「不定期の仕事なんだから年中休んでるだろ?」とか怒られてしまいそうだが。
とは言え、悪魔の依頼がなくとも、こちとら悪魔に狙われたり、獲物として追われたりの身である。
いつどこで、悪魔が襲ってくるとも限らない。
ひょっとしたら、知らぬ間に魔の手は忍び寄り、既に事件に巻き込まれているって事もあったりなかったり…おいこらどっちだ。
「まあ、今日はなーんもないよ、きっとね!あるとしても、パレードの最中とか…?」
「おいやめろ、ディーヴァが言うとシャレにならねぇ」
ポテトチップスの袋が一つ空になるまでには、アメフトの試合が終わり、テレビでは今、感謝祭のパレードが生中継されている。
時のニューヨークで行われるメイシーズ・サンクスギビング・パレードという、有名なパレードだ。
著名人、大スターが参加し、ダンスや、巨大バルーン、たくさんの催しが開かれるそれ。
大きな催し物だからこそ、悪魔が出没なんて事になったら大惨事だ。
なのに、ディーヴァのこの発言。
ディーヴァが嫌な予感がする、だの変な事を言うと、これまでほとんど何かあった。
だから言って欲しくないのだ。
「なによ~、まるで事件起こるところ必ずあたし有り、探偵物の漫画の主人公みたいに言わないでよね」
それは名探偵●ナンのことか。
「本当のことだろ?」
「それを言うならダンテだって悪魔バキュームじゃないの。あ、ハリウッドスター出てる…かっこいいね」
「悪魔吸引力の変わらないただ一つのディーヴァに言われたかないね。…ハリウッドスターなんかより、オレのがかっこいいだろ?」
「ダンテはかっこいいよ。けど、本当のイケメンは自分でかっこいいとか言わないの」
「本当のことだろ?」
「「……………」」
なんとも似たり寄ったり堂々巡りな言い合いだった。
そうこうしてる間にパレードの生中継も終わり、ターキーを焼いていたオーブンも止まった。
キッチンからは香ばしく美味しそうな匂いが漂ってきている。
この匂いを嗅いでいると、ポテトチップスを食べたばかりだというにもうお腹が空いてくる気がする。
人間の体とは摩訶不思議なものよ。
結局、感謝祭である本日は一度も事務所の電話がなることはなかった。
しいて言えば、ディーヴァの学生時代の
友人から、珍しく電話がかかってきた事くらいか。
内容まで聞いていないのでダンテは知らないが、多分世間話だろう。
「今日の平和に感謝だね」
「ああ、たまには刺激も必要だが、それは普段が平和だからこそ活きてくるもんだからな」
「うんうん。そういうわけで、食べ物に感謝。美味し糧!いっただっきまーす」
「ディーヴァのメシに今日も感謝。いただきます」
お皿に切り分けたターキーにはその中に入っていたスタフィング、クランベリーソースをかけて。
同じ皿に添えたマッシュポテトは濃厚なグレービーソースで味付けして。
フォーク片手にもぐもぐお食事タイム。
「七面鳥、外で食った事あるんだけどさ、パッサパサでソースは酸っぱいだけだったな…。でも、ディーヴァの作ったのはジューシーで、ソースも程よく甘酸っぱくて美味い」
身内びいきじゃねぇぞ?
そう言いながら、ターキーにとろりとしたクランベリーソースを絡め、ダンテは美味しそうに頬張った。
笑顔で美味しく食べてくれる人がいる、それを見ていると、思わずこちらも笑顔になれる。
「なら良かった。これ、ママの味なんだよね…。やっとあたしの中にこの味が定着したってことかぁ、嬉しいな~」
「お袋の味、だな。
あー…手で掴んで食いてぇな」
「お行儀悪いからだーめ」
食卓での『母親』はディーヴァだ。
ダメと言われたら大人しく従うほかない。