mission 33:devil castle ~悪魔だらけの依頼~
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はてさて、始まったパーティー。
パーティー会場はたくさんの人で溢れており、ガヤガヤと賑やかだった。
綺麗なお姉さんから、結構な高齢のお爺さんまで、年齢性別は様々。
これ全員が全員、便利屋だとは思えないが、よく考えてみれば知り合いのレディとてぱっと見は素敵なお姉さんだ、そういうイメージだけの考えは彼女にも失礼だろう。
それにしたって嫌な感じは拭えない。
せっかく着替えたってのに、変な汗が背中を伝う感覚。
パーティー会場に来てからそれはより強まった。
気分は蛇に睨まれた蛙、といったところ。
それもそうだ、ダンテとディーヴァに向けられる視線の数々と言ったら、会場にいるほぼすべての人間から。
口や表情では周りとの会話に華を咲かせつつ、その目はどれもこちらを値踏みするように凝視。
ねっとりと体に絡み付く視線、視線、視線。
気持ち悪いったらありゃしない。
会場を動き回るボーイに勧められたが、飲食はあまり受け付けない。
ディーヴァは形だけ受け取ったシャンパングラスを両手で包み込み、ただひたすらダンテの後にくっ付いて、主催者側の話に耳を傾けていた。
ダンテはダンテで、同業者達の挨拶をどこか面倒くさそうに、でもしっかりと談笑しつつ受けている。
周りに気なんか使わないダンテがなんと珍しいことか。
「まぁ、これで便利屋のお知り合いとか増えたらめっけもん、ってやつだよね」
交流の場が設けられ、仲間が出来れば、それだけ情報の交換やら協力体制やらがしっかりして、仕事がスムーズになる筈だ。
うんうん1人で頷いて完結、主催者側へ再び目を戻してみる。
今はちょうど今回の話を持ってきた依頼者が、主催者だろう主人に付き従って付いて回っているところだ。
ジッと見ていると、付き従っているかどうか微妙な感じだけれども。
そしてたまにその目は周り同様ダンテを見ている気がしてならない。
否、確実に見ている。
こんなに沢山の便利屋がいるというのに、なぜダンテだけを…?
「ディーヴァ、とりあえず終わったぞ。…ディーヴァ?」
「えっ!あ、ごめんダンテ。お疲れ様」
「大丈夫かよ…」
どこかの便利屋に挨拶されていたダンテが戻ってきたのに気がつかなかった。
それだけ依頼者を見つめていたとは…。
ダンテはディーヴァの顔の前で数回手をひらひらさせていたが、何か思い出したか向こうの方のテーブルに指を向けた。
「あ、お前何も食ってねぇだろ?
少し腹になんか入れた方がいいんじゃねぇか。あっちにチーズ料理あるって言ってたぞ」
「チーズゥ!!
あー、でもいいや。やめとく……」
「なん…だと…?チーズ人間ディーヴァがチーズを食べない、だと……?
明日は槍が降るかもな」
「もー!失礼しちゃうなー。おうち帰ってから食べるからいいの!」
帰りは夜中。
ここに泊まってもいいと言われたが、夜中でも送ってくれるという事なので、申し訳ないのですが…と、夜中の送迎をお願いしてある。
夜中にしかも到着は朝方になるだろう時間に、食事するのはどうだろうとも思ったのだが、家で食べたい。
それになんだかあまり食べない方がいい気がするのだ。
ダンテはともかく、自分は特に。
「あたしの代わりにダンテがいっぱい食べといてくれてもいいんだよ?」
「いや、ディーヴァが食べないならオレもやめておく。家で一緒に食おうぜ」
「ん…」
その時、先ほどまでディーヴァが注目していた依頼者が声をかけてきた。
なんでも、主催者である主人を紹介したいらしい。
「ダンテ、あたしはあっちに行ってるね。ごゆっくり~」
「ディーヴァ1人で大丈夫か?」
「ピーターがいるからヘーキ」
「そうか。…お前、ちゃんとディーヴァを守れよな?」
「きゅう」
長くなりそうな気配を感じたディーヴァは、ダンテから離れる旨を伝え、今度こそ壁の華へとその身を変えた。
ダンテは心配そうだが、ディーヴァを疲れさせるのも…と諦め、ピーターに任せて会話に戻った。
「お嬢さん、少し宜しいかな」
「はい?」
壁沿いのテーブル席でピーターと戯れながらダンテの帰りを待っていれば、その体に暗い影がかかる。
振り返るとジェントルマン、といった風の初老の男性が立って微笑んでいた。
何の用だろうと聞いてみれば、会場外のどこかに煙管パイプを置いてきてしまったとの事。
ボーイ達に頼もうとも思ったが忙しそうで声もかけられず、壁沿いで休んでいるディーヴァに気がついたのだという。
ディーヴァは二つ返事で失せ物探しに協力する事にした。
会場を出て静かな廊下をくまなく調べながら進む。
ワインレッド一色の固い絨毯が敷き詰められた廊下は、すべての音を吸収し、会場から漏れるどこか遠い音楽しか聞こえない。
もしかしたら待合の部屋に忘れたかもしれない、と申し出る男性に連れられ、ピーターをその腕に抱いたディーヴァが会場から少し離れた部屋へ入る。
キョロキョロと手分けして探す中、窓枠の縁にキラリと光るそれは見つかった。
「あ。ありましたよ!これじゃないですか?」
「おお、よかったよかった。ありがとうな、お嬢さん」
「どういたしまして!」
見つかってよかったさあダンテのいる会場へ戻ろう、そう思って男性に笑顔を向けたあと、部屋の外へと向かうディーヴァ。
「本当にありがとう」
ディーヴァの背後で男性の声が少しだけひしゃげた声に変わる。
せっかく見つけた煙管パイプを持つその手がブルブルと震え、パイプがミシミシと音を立てている。
「きゅ!!!」
変な気配。
ディーヴァの腕の中のピーターの毛が一瞬にしてぶわりと逆立ち、危険を察知した鋭い鳴き声が響いた。
そしてパイプがバキッと割れる音。
「…え?」
気がついたディーヴァがピーターを見、そして背後を振り返る。
男性はとうに男性ではなかった。
『お礼に……』
低く唸るような声。
人間であった頃の衣服の欠片が、体を覆う毛皮に申し訳程度に張り付いている。
人間の骨格にはありえない、隆起して盛り上がった肩口と背骨にかけてが、獲物に飛びかかる前の姿勢のように丸まっていた。
尖った鼻面の下の口にズラリと並んだ牙、縞模様の鮮やかな体毛に太い腕と鋭い爪、そして鞭のようにしなる蛇の尾。
ダンテが相手したと言った姿そのままの犬と虎と蛇の合成獣、キメラがそこにはいた。
『喰ろうてやるわ!!』
ぐわぱ!
そんな音がしそうなくらい大きく開かれた口から、声とともに恐ろしい吠え声が響いた。
「………っ!!?」
人は恐怖がキャパシティーオーバーすると、声も出ないそうだ。
ディーヴァも例に漏れなかった。
言葉が出ないどころか、その場から動くこともできずにただピーターを抱きしめて、へたり込むしかなかった。
パーティー会場はたくさんの人で溢れており、ガヤガヤと賑やかだった。
綺麗なお姉さんから、結構な高齢のお爺さんまで、年齢性別は様々。
これ全員が全員、便利屋だとは思えないが、よく考えてみれば知り合いのレディとてぱっと見は素敵なお姉さんだ、そういうイメージだけの考えは彼女にも失礼だろう。
それにしたって嫌な感じは拭えない。
せっかく着替えたってのに、変な汗が背中を伝う感覚。
パーティー会場に来てからそれはより強まった。
気分は蛇に睨まれた蛙、といったところ。
それもそうだ、ダンテとディーヴァに向けられる視線の数々と言ったら、会場にいるほぼすべての人間から。
口や表情では周りとの会話に華を咲かせつつ、その目はどれもこちらを値踏みするように凝視。
ねっとりと体に絡み付く視線、視線、視線。
気持ち悪いったらありゃしない。
会場を動き回るボーイに勧められたが、飲食はあまり受け付けない。
ディーヴァは形だけ受け取ったシャンパングラスを両手で包み込み、ただひたすらダンテの後にくっ付いて、主催者側の話に耳を傾けていた。
ダンテはダンテで、同業者達の挨拶をどこか面倒くさそうに、でもしっかりと談笑しつつ受けている。
周りに気なんか使わないダンテがなんと珍しいことか。
「まぁ、これで便利屋のお知り合いとか増えたらめっけもん、ってやつだよね」
交流の場が設けられ、仲間が出来れば、それだけ情報の交換やら協力体制やらがしっかりして、仕事がスムーズになる筈だ。
うんうん1人で頷いて完結、主催者側へ再び目を戻してみる。
今はちょうど今回の話を持ってきた依頼者が、主催者だろう主人に付き従って付いて回っているところだ。
ジッと見ていると、付き従っているかどうか微妙な感じだけれども。
そしてたまにその目は周り同様ダンテを見ている気がしてならない。
否、確実に見ている。
こんなに沢山の便利屋がいるというのに、なぜダンテだけを…?
「ディーヴァ、とりあえず終わったぞ。…ディーヴァ?」
「えっ!あ、ごめんダンテ。お疲れ様」
「大丈夫かよ…」
どこかの便利屋に挨拶されていたダンテが戻ってきたのに気がつかなかった。
それだけ依頼者を見つめていたとは…。
ダンテはディーヴァの顔の前で数回手をひらひらさせていたが、何か思い出したか向こうの方のテーブルに指を向けた。
「あ、お前何も食ってねぇだろ?
少し腹になんか入れた方がいいんじゃねぇか。あっちにチーズ料理あるって言ってたぞ」
「チーズゥ!!
あー、でもいいや。やめとく……」
「なん…だと…?チーズ人間ディーヴァがチーズを食べない、だと……?
明日は槍が降るかもな」
「もー!失礼しちゃうなー。おうち帰ってから食べるからいいの!」
帰りは夜中。
ここに泊まってもいいと言われたが、夜中でも送ってくれるという事なので、申し訳ないのですが…と、夜中の送迎をお願いしてある。
夜中にしかも到着は朝方になるだろう時間に、食事するのはどうだろうとも思ったのだが、家で食べたい。
それになんだかあまり食べない方がいい気がするのだ。
ダンテはともかく、自分は特に。
「あたしの代わりにダンテがいっぱい食べといてくれてもいいんだよ?」
「いや、ディーヴァが食べないならオレもやめておく。家で一緒に食おうぜ」
「ん…」
その時、先ほどまでディーヴァが注目していた依頼者が声をかけてきた。
なんでも、主催者である主人を紹介したいらしい。
「ダンテ、あたしはあっちに行ってるね。ごゆっくり~」
「ディーヴァ1人で大丈夫か?」
「ピーターがいるからヘーキ」
「そうか。…お前、ちゃんとディーヴァを守れよな?」
「きゅう」
長くなりそうな気配を感じたディーヴァは、ダンテから離れる旨を伝え、今度こそ壁の華へとその身を変えた。
ダンテは心配そうだが、ディーヴァを疲れさせるのも…と諦め、ピーターに任せて会話に戻った。
「お嬢さん、少し宜しいかな」
「はい?」
壁沿いのテーブル席でピーターと戯れながらダンテの帰りを待っていれば、その体に暗い影がかかる。
振り返るとジェントルマン、といった風の初老の男性が立って微笑んでいた。
何の用だろうと聞いてみれば、会場外のどこかに煙管パイプを置いてきてしまったとの事。
ボーイ達に頼もうとも思ったが忙しそうで声もかけられず、壁沿いで休んでいるディーヴァに気がついたのだという。
ディーヴァは二つ返事で失せ物探しに協力する事にした。
会場を出て静かな廊下をくまなく調べながら進む。
ワインレッド一色の固い絨毯が敷き詰められた廊下は、すべての音を吸収し、会場から漏れるどこか遠い音楽しか聞こえない。
もしかしたら待合の部屋に忘れたかもしれない、と申し出る男性に連れられ、ピーターをその腕に抱いたディーヴァが会場から少し離れた部屋へ入る。
キョロキョロと手分けして探す中、窓枠の縁にキラリと光るそれは見つかった。
「あ。ありましたよ!これじゃないですか?」
「おお、よかったよかった。ありがとうな、お嬢さん」
「どういたしまして!」
見つかってよかったさあダンテのいる会場へ戻ろう、そう思って男性に笑顔を向けたあと、部屋の外へと向かうディーヴァ。
「本当にありがとう」
ディーヴァの背後で男性の声が少しだけひしゃげた声に変わる。
せっかく見つけた煙管パイプを持つその手がブルブルと震え、パイプがミシミシと音を立てている。
「きゅ!!!」
変な気配。
ディーヴァの腕の中のピーターの毛が一瞬にしてぶわりと逆立ち、危険を察知した鋭い鳴き声が響いた。
そしてパイプがバキッと割れる音。
「…え?」
気がついたディーヴァがピーターを見、そして背後を振り返る。
男性はとうに男性ではなかった。
『お礼に……』
低く唸るような声。
人間であった頃の衣服の欠片が、体を覆う毛皮に申し訳程度に張り付いている。
人間の骨格にはありえない、隆起して盛り上がった肩口と背骨にかけてが、獲物に飛びかかる前の姿勢のように丸まっていた。
尖った鼻面の下の口にズラリと並んだ牙、縞模様の鮮やかな体毛に太い腕と鋭い爪、そして鞭のようにしなる蛇の尾。
ダンテが相手したと言った姿そのままの犬と虎と蛇の合成獣、キメラがそこにはいた。
『喰ろうてやるわ!!』
ぐわぱ!
そんな音がしそうなくらい大きく開かれた口から、声とともに恐ろしい吠え声が響いた。
「………っ!!?」
人は恐怖がキャパシティーオーバーすると、声も出ないそうだ。
ディーヴァも例に漏れなかった。
言葉が出ないどころか、その場から動くこともできずにただピーターを抱きしめて、へたり込むしかなかった。