mission 33:devil castle ~悪魔だらけの依頼~
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車の中から流れゆく夜空には弦月が朧げに輝いていた。
迎えの車に乗り込んだダンテとディーヴァ、そしてピーターはそれをじっと無言で見つめる事で長い距離を過ごしていた。
本来ならばピーターはお留守番。
代わりに魔具としてケルベロスが行く話になっていたのだが、ディーヴァがいくら引き離そうとしてもピーターは決してディーヴァから離れなかったのだ。
かわいい我儘でも、続けば考えものだとは思う。
どこの山奥を走っているのだろう?
弦月が照らすはずの夜道は真っ暗で、夜目の利くダンテにすら一寸先は闇、どこを走っているかわからず、ただただ山を走っているのか道無き道を行くかのような、道の悪さを進む感覚だけがあった。
麓から進む事3時間ほどだろうか、本当に山の中に光に包まれ煌めく城が建っていた。
「どう見たって場違いだな」
「うん…でもなんだか怖いよ。
とっても綺麗で素敵なのに、厳かな感じがひとつもしないんだもの」
真夏の熱帯夜になりそうな天気なのに、どこか肌寒く嫌な感じがする、とはダンテも思った。
ディーヴァは自分を守るようにピーターを抱きしめる。
ダンテはそんな怖がるディーヴァを落ち着かせようと、その手に触れて優しく握ってやった。
「では中へどうぞ」
後ろからいきなり声をかけられ、2人と1匹はビクッと肩を震わせる。
気配に鋭いダンテすら気がつかなかった。
ここまで運んでくれた運転手が、駐車スペースの方へハイヤーを停めてきたらしく、中へと入るよう促してきたのだ。
扉もそうだが、扉までのアプローチすら豪華な造りで、なかなか入るまでの気が進まない。
そうこうしている内に扉は中から開き、中にもいたらしい使用人達に、あれよあれよの間に連れ込まれてしまった。
背後で無情にも閉まる扉。
どこまで嫌な感じが拭えないのだろう、化け物の腹の中へ足を踏み入れる気分だったが、ダンテとディーヴァは顔を見合わせてため息を吐き、帰りまで全てを耐える事にした。
「サッサと終わらせて帰ろうぜ」
「うん、そうだね」
「でも、せっかくだからオレの為に似合うドレスくらいは着てくれな?」
「はいはい。ダンテの性格上、そう言うだろうとわかってましたよ」
貸し衣裳部屋に半ば閉じ込められるようにして、着替えるよう言われた2人。
ズラ~リと並ぶ紳士用淑女用のドレスにタキシード、アクセサリーにパンプス革靴etc…。
二手に分かれて自分の着るものを選んでいくのだが、選ぶ間だけは少しだけ気持ちも楽になった。
そのうち、ディーヴァはシャンパンゴールドの色合いで一式揃えて着る事に決めた。
ストンと下へさがったシンプルなデザインに、片側のみ控えめに入ったスリットが見る者の想像を掻き立てるような、ディーヴァが着るには少し大人っぽいドレスだ。
ディーヴァが着るにはと言ったが、本当の年齢的には着てもなんらおかしくないデザインである。
そこに少し薄いサーモンピンクのストールが差し色でパッと華やぐ。
アクセサリーもゴールドカラーが多く、足元もシャンパンゴールドで揃えていた。
選んで着替えてしまえば再び襲われる、不安感。
鏡に映る自分も不安顔で、せっかく着替えた煌びやかな衣装の魅力は死んでいた。
「ほんと早く帰りたいな…。なんかこう、この場所にいるだけで、胃のあたりがざわざわするよ」
簡素ながら男女別に別けられたパーテーションの試着ルーム。
そこから出てすぐ傍の、開け放たれた出窓から霞のかかった弦月を見上げ、独りごちるディーヴァ。
そんなディーヴァに、ピーターが出窓の縁に立った。
「きゅーぅうるーるるるー」
鳴き声を応用した、細く遠く夜空の奥へ消えていくような歌声がピーターの喉を震わす。
その声は少しだけディーヴァの心を安らかにさせた。
ピーターだって悪魔なのに。
「あら、慰めてくれるの?ピーター」
あたしも少しだけ歌おうかな。
そう微笑んだディーヴァも、夜空に消えゆく物静かな歌を口ずさんだ。
たまに響くスタッカートのような、ピーターのスタンピング音も合わさり、物静かな中にも軽快さがプラスされ、まだまだ歌っていたいとさえ思った。
歌や音楽の力はすごい。
歌っている間は、嫌な事も頭の隅に追いやる事ができた……完全に忘れる事は出来なかったけれど。
しばらく歌っていれば、サイズあたりで戸惑っていたのだろう、隣からダンテがひょっこりと顔を覗かせた。
合唱しているディーヴァとピーターを、怪訝な表情で見つめる。
「…何やってるんだ?」
「何って、ピーターと歌ってるの」
「ふぅん。まぁ、着替えたなら行くぞ」
「ん……」
パーテーションを完全に出てみたら、妙にかっちりしたタキシード姿のダンテがいた。
「前見た時の方がすごく様になってた気がする」
「それはオレも思った」
「けど…カッコいいよ。ダンテはそこにいるだけですごく素敵でカッコいいって思う」
「嬉しい事言ってくれるねぇ。ディーヴァはいつもいつでも可愛いな」
「何着ても似合うから大丈夫って言われてるきぶーん!」
「ンな言い方するわけないだろ、違うって。
貸し衣裳にしては良い仕事してるってこと。よく似合うよ、かわいい。…ああ、でも……美しい、の方が合ってるかもな」
「あ、ありがと…」
前見た時、というのは遡ること数年前、当時ディーヴァがまだ学生だった頃の話。
ディーヴァの卒業プロムナードの際、ダンテが着てきてくれた、黒のタキシード姿の事を指している。
素直にベタ褒めしてみたのはいいが、その後の返答を少しだけ、意地悪言ってみたら、逆にサラリと口説かれてしまった。
…頬っぺたをする~りと撫でられながら。
わぁ、久しぶりに顔から火が出そう!
「美しいお姫様、私にエスコートさせていただけませんか?」
「はい、喜んで……」
赤くなりそうな顔を悟られないよう気をつけ、ダンテが差し出してきた手をそっと取ると。
「ピ、ピーターも行くよっ!」
「きゅ」
その勢いで後ろに振り向いて、ピーターに声をかける。
ダンテの目に映るピーター、ジャッカロープも、なぜここにあったのだろう?と問いたくなるようなペット用のタキシードを着用していた。
ご丁寧な事に、胸元には蝶ネクタイまで。
「おっ!お前も随分別嬪さんになったなぁ」
「ぎゅぎゅっ!?」
「ダンテ、ピーターは男の子でしょ」
「知ってる」
ダンテはケラケラ笑うと、ピーターの少しだけ欠けた角に、新しくどピンクのリボンを追加した。
「ダンテ、それは冗談きついよ…」
その直後、ピーターのお得意の跳び蹴りがダンテを襲うのはいつもの事。
迎えの車に乗り込んだダンテとディーヴァ、そしてピーターはそれをじっと無言で見つめる事で長い距離を過ごしていた。
本来ならばピーターはお留守番。
代わりに魔具としてケルベロスが行く話になっていたのだが、ディーヴァがいくら引き離そうとしてもピーターは決してディーヴァから離れなかったのだ。
かわいい我儘でも、続けば考えものだとは思う。
どこの山奥を走っているのだろう?
弦月が照らすはずの夜道は真っ暗で、夜目の利くダンテにすら一寸先は闇、どこを走っているかわからず、ただただ山を走っているのか道無き道を行くかのような、道の悪さを進む感覚だけがあった。
麓から進む事3時間ほどだろうか、本当に山の中に光に包まれ煌めく城が建っていた。
「どう見たって場違いだな」
「うん…でもなんだか怖いよ。
とっても綺麗で素敵なのに、厳かな感じがひとつもしないんだもの」
真夏の熱帯夜になりそうな天気なのに、どこか肌寒く嫌な感じがする、とはダンテも思った。
ディーヴァは自分を守るようにピーターを抱きしめる。
ダンテはそんな怖がるディーヴァを落ち着かせようと、その手に触れて優しく握ってやった。
「では中へどうぞ」
後ろからいきなり声をかけられ、2人と1匹はビクッと肩を震わせる。
気配に鋭いダンテすら気がつかなかった。
ここまで運んでくれた運転手が、駐車スペースの方へハイヤーを停めてきたらしく、中へと入るよう促してきたのだ。
扉もそうだが、扉までのアプローチすら豪華な造りで、なかなか入るまでの気が進まない。
そうこうしている内に扉は中から開き、中にもいたらしい使用人達に、あれよあれよの間に連れ込まれてしまった。
背後で無情にも閉まる扉。
どこまで嫌な感じが拭えないのだろう、化け物の腹の中へ足を踏み入れる気分だったが、ダンテとディーヴァは顔を見合わせてため息を吐き、帰りまで全てを耐える事にした。
「サッサと終わらせて帰ろうぜ」
「うん、そうだね」
「でも、せっかくだからオレの為に似合うドレスくらいは着てくれな?」
「はいはい。ダンテの性格上、そう言うだろうとわかってましたよ」
貸し衣裳部屋に半ば閉じ込められるようにして、着替えるよう言われた2人。
ズラ~リと並ぶ紳士用淑女用のドレスにタキシード、アクセサリーにパンプス革靴etc…。
二手に分かれて自分の着るものを選んでいくのだが、選ぶ間だけは少しだけ気持ちも楽になった。
そのうち、ディーヴァはシャンパンゴールドの色合いで一式揃えて着る事に決めた。
ストンと下へさがったシンプルなデザインに、片側のみ控えめに入ったスリットが見る者の想像を掻き立てるような、ディーヴァが着るには少し大人っぽいドレスだ。
ディーヴァが着るにはと言ったが、本当の年齢的には着てもなんらおかしくないデザインである。
そこに少し薄いサーモンピンクのストールが差し色でパッと華やぐ。
アクセサリーもゴールドカラーが多く、足元もシャンパンゴールドで揃えていた。
選んで着替えてしまえば再び襲われる、不安感。
鏡に映る自分も不安顔で、せっかく着替えた煌びやかな衣装の魅力は死んでいた。
「ほんと早く帰りたいな…。なんかこう、この場所にいるだけで、胃のあたりがざわざわするよ」
簡素ながら男女別に別けられたパーテーションの試着ルーム。
そこから出てすぐ傍の、開け放たれた出窓から霞のかかった弦月を見上げ、独りごちるディーヴァ。
そんなディーヴァに、ピーターが出窓の縁に立った。
「きゅーぅうるーるるるー」
鳴き声を応用した、細く遠く夜空の奥へ消えていくような歌声がピーターの喉を震わす。
その声は少しだけディーヴァの心を安らかにさせた。
ピーターだって悪魔なのに。
「あら、慰めてくれるの?ピーター」
あたしも少しだけ歌おうかな。
そう微笑んだディーヴァも、夜空に消えゆく物静かな歌を口ずさんだ。
たまに響くスタッカートのような、ピーターのスタンピング音も合わさり、物静かな中にも軽快さがプラスされ、まだまだ歌っていたいとさえ思った。
歌や音楽の力はすごい。
歌っている間は、嫌な事も頭の隅に追いやる事ができた……完全に忘れる事は出来なかったけれど。
しばらく歌っていれば、サイズあたりで戸惑っていたのだろう、隣からダンテがひょっこりと顔を覗かせた。
合唱しているディーヴァとピーターを、怪訝な表情で見つめる。
「…何やってるんだ?」
「何って、ピーターと歌ってるの」
「ふぅん。まぁ、着替えたなら行くぞ」
「ん……」
パーテーションを完全に出てみたら、妙にかっちりしたタキシード姿のダンテがいた。
「前見た時の方がすごく様になってた気がする」
「それはオレも思った」
「けど…カッコいいよ。ダンテはそこにいるだけですごく素敵でカッコいいって思う」
「嬉しい事言ってくれるねぇ。ディーヴァはいつもいつでも可愛いな」
「何着ても似合うから大丈夫って言われてるきぶーん!」
「ンな言い方するわけないだろ、違うって。
貸し衣裳にしては良い仕事してるってこと。よく似合うよ、かわいい。…ああ、でも……美しい、の方が合ってるかもな」
「あ、ありがと…」
前見た時、というのは遡ること数年前、当時ディーヴァがまだ学生だった頃の話。
ディーヴァの卒業プロムナードの際、ダンテが着てきてくれた、黒のタキシード姿の事を指している。
素直にベタ褒めしてみたのはいいが、その後の返答を少しだけ、意地悪言ってみたら、逆にサラリと口説かれてしまった。
…頬っぺたをする~りと撫でられながら。
わぁ、久しぶりに顔から火が出そう!
「美しいお姫様、私にエスコートさせていただけませんか?」
「はい、喜んで……」
赤くなりそうな顔を悟られないよう気をつけ、ダンテが差し出してきた手をそっと取ると。
「ピ、ピーターも行くよっ!」
「きゅ」
その勢いで後ろに振り向いて、ピーターに声をかける。
ダンテの目に映るピーター、ジャッカロープも、なぜここにあったのだろう?と問いたくなるようなペット用のタキシードを着用していた。
ご丁寧な事に、胸元には蝶ネクタイまで。
「おっ!お前も随分別嬪さんになったなぁ」
「ぎゅぎゅっ!?」
「ダンテ、ピーターは男の子でしょ」
「知ってる」
ダンテはケラケラ笑うと、ピーターの少しだけ欠けた角に、新しくどピンクのリボンを追加した。
「ダンテ、それは冗談きついよ…」
その直後、ピーターのお得意の跳び蹴りがダンテを襲うのはいつもの事。