mission 33:devil castle ~悪魔だらけの依頼~
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ダンテとピーターが帰ったのは日付を跨いだ夜中だったが、ディーヴァはまだ起きて待っていてくれた。
いつもは寝てるというのに珍しい。
アレか!このウサギがいるからか!ずるい!とか思ったけど言わない、だってオレはもう大人だから。
「ただいまディーヴァ」
「おかえりなさい」
さらにこの後労いの言葉と共におかえりのキスを頬に頂戴する。
その唇はほんのりと少しだけ冷えていた。
「真夏の盛りとはいえ夜は冷える。風邪ひくぞ」
「ちょっとだけだから大丈夫だよ~、でもありがと。ダンテこそ怪我は?」
「してない、大丈夫だ」
ディーヴァの肩にいつも羽織るカーディガンをかけ、それから今夜もすっかりお世話になってしまった武器をテーブルにおろす。
ついでにずっとコート裏にくっついていたひっつき虫も。
「ピーター…角が折れてるんだけど?」
「特に支障ないみたいだ。ホントにちょっとみたいだしな」
ディーヴァは下におろされたピーターを両手で抱え上げ、腕に抱いてその頭から耳にかけての柔い毛並みを撫でる。
気持ちよさそうに目を細めるそれを視界に入れながら、ダンテに尋ねた。
「他は大丈夫だったの?」
「ああ、ちとトラウマを相手にする羽目になったが、活躍してくれたぞ」
「トラウマ?」
「合成獣は犬の頭を持つって言ったろ?今回の依頼相手のソイツに怪我させられたらしい」
「え!?危ないじゃないの!ちゃんと退治しなきゃ!また怪我させられたら大変!!」
「落ち着けよディーヴァ。もう退治したって」
ほらこの通り、そう言ってテーブルの上にジャラリと広げた悪魔の血が結晶と化した何よりの証拠。
「あ、そっか。そうだよね…」
「それにキチッと働き分は動いた。な?」
「…きゅ、」
腕の中の存在が目を閉じてディーヴァの行為を甘受しつつ、ダンテの問いに返事を返した。
小さい声だが、会話が成り立っている。
「まぁ仲良くしてるならそれでいいかな」
「は、仲良い…?コイツと仲良くなんかしてねぇって!」
「きゅっきゅきゅきゅー!」
心外だと、2人揃って抗議。
そのタイミングがバッチリ合っているところも、仲良しの証拠に思えた。
「ぷっ!息ピッタリ。だけど2人が言うなら、そういう事にしといてあげるね」
「だーかーらー!!」
ぐきゅるるるる~。
きゅるっ。
「「……………」」
「うわぁ、お腹の音のタイミングまで一緒だ!」
「はぁ…たまたまだ。ディーヴァ、腹減った。なんかあるか?」
「きゅ」
「うふふ、あーるよっ!…と言っても夜遅いしあまりたくさん食べると体に毒でしょ?
ダンテにはトマトたっぷりのスープリゾット、ピーターにはスティックサラダ用意しときましたー」
腹が減ったら素直に認めておいたほうがいい。
ダンテもピーターもディーヴァに逆らうことはせず、無事食卓にありつけた。
「ピーター、お疲れ様」
「きゅ」
「ディーヴァオレは?」
「もちろんダンテもお疲れ様、ね?」
ディーヴァは愛おしそうに目元を弛ませてピーター、そしてダンテの食事風景を見守った。
…それから3日程だろうか、依頼と取れなさそうな依頼…というかその招待状が来たのは………。
その男が現れたのはディーヴァが事務所の前の通りを草むしりしている時だった。
まだ日は高く、照りつける太陽がこちらの体力を否応にも奪うような暑さの中、紺色の長袖のスーツをかっちりと着込んだ男が事務所を見上げていたのだ。
「あの…何かご用ですか?」
「…ぇ、ああ……」
遠慮がちに尋ねると、声をかけられて初めてディーヴァの存在に気がついたというような反応が返ってきた。
その双眸の色は影となりよくわからず、しいて言えば事務所前で草むしりに精を出すディーヴァを飛び越え事務所すらも飛び越え、中でいまだベッドの住民となっているであろうダンテを見ているような…透視でもしているんじゃないかと思わせられた。
「御依頼の方でしたらどうぞお入りください」
便利屋なんかに仕事を依頼する人間の中には、挙動不審だったり変わっていたりする者も少なくない。
少々不審に思いつつも、事務所へ案内してみるディーヴァ。
「簡単に中に通すとは、な…」
その呟きはディーヴァに届かなかった。
「すみません、こちらにかけてお待ちください」
事務所に置いてある応接用のソファーに腰掛けさせ、自分はダンテの元へ。
あの寝坊助さんを早いとこ起こさなければ。
おはようのキスを要求される事覚悟で、ディーヴァはダンテ起床に臨んだ。
ディーヴァの覚悟と裏腹に、その時ダンテは深かった眠りの底からちょうど一気に浮上したところだった。
ダンテが起き上がった拍子にベッドから落ちたらしい、同じく眠っていたピーターも起床する。
「ん…なんだこの違和感……」
例えばそれはより強い悪魔が目の前に現れた時の高揚感に似ていた。
だが、この中は安全圏の事務所だし、悪魔に襲われたと叫ぶディーヴァの声もしない。
ましてや寝起きだ。
きっと夢の中で強い悪魔と戦ってでもいたのだろう……残念な事に覚えていないが。
「ダンテ起き……あ、起きてた!ピーターも!」
「ハヨ、ディーヴァ。ちょうど起きたところだ。ンなに慌ててどうかしたのか?」
「慌てるも何もとっくに太陽は昇ってるしおはようタイムはおしまい!
それよりお客様がお見えになっておりますわよ、デビルメイクライの店主さん?」
「まじか」
バン!とダンテの部屋の扉を開け放ったディーヴァは、起こすついでに持ってきた今朝の朝食のサンドイッチとアイスコーヒーをダンテに手渡す。
「とりあえず急いで朝ごはん食べて、顔洗って着替えて、お客様のとこ行った行った!」
いつもは行儀悪いと叱られるが、今日はここで食べてしまっていいということらしい。
カーテンを開け放ち、ダンテの着替えを用意したら、サンドイッチに齧り付く寝起きダンテのボンバーヘッドに後ろから櫛を入れる。
ディーヴァも母親家業に手馴れたものだ、母親ではないが。
ダンテの支度が終わって階下へ行く頃には、ディーヴァが既に客にコーヒーを出し終えて待っているところだった。
いつの間に挽いたのか、上質のコーヒー豆の香りまで漂っていた。
そしてピーターはちゃっかりとディーヴァの隣に行儀よく座っているが、なぜか客をじっと睨みつける感じだ。
「悪い、待たせたな。で、おたくはどんな依頼をご所望で?」
「ああ、主人の所有する城で行われるパーティーに参加して欲しい」
「…城?」
主人の、ということは使いの者らしい男がダンテの鸚鵡返しに小さく頷く。
「ふぅん。パーティは参加だけか?
要人、例えばアンタの主人の護衛だとか、出席者の中の誰かを捕まえてくれ、だとかないのか」
悪魔の依頼が増えてきたとはいえ、一般人かもしれない相手にその名前を出すのは躊躇われた。
表向きの依頼内容で思いつく限りをリストアップしてみる。
「そんなことは全くない。ただ単に便利屋ばかりを集めたパーティーだ。参加さえしてくれればいい」
「ってことは他の便利屋さんもいるのかなあ…」
「だろうな。しかし、表より裏に住む人間ばっかの便利屋を、ねぇ…。オレも有名になったもんだ」
皮肉じみた言い方をする割には、満更でもなさそう。
「便利屋同士の交流の場…とでも思ってくれて構わない」
「交流の場、か。そんなのがあるなんて、エンツォに聞いたことないけどな」
アイツならこっちが聞かずともすぐにベラベラ喋りだしそうなものだが…まあいいか。
「ダンスパーティーもある。ペアで参加するといい」
「ディーヴァ、ダンスだとよ。どうする?」
「あたしは遠慮する。あたし自体は便利屋さんじゃないし」
「へぇ…ディーヴァはオレが他の女の便利屋と踊ってもいいんだな?」
「うっ!それはヤダ…から!せっかくだし行こうかな…。
お城とか、気になる…し?」
「そうこなくっちゃな」
それから当日の招待状を受け取り、日時をきっちりと確認したあと、依頼者は帰って行った。
やけに真新しすぎる紺色スーツの、合っていない裾を伸ばしながら。
いつもは寝てるというのに珍しい。
アレか!このウサギがいるからか!ずるい!とか思ったけど言わない、だってオレはもう大人だから。
「ただいまディーヴァ」
「おかえりなさい」
さらにこの後労いの言葉と共におかえりのキスを頬に頂戴する。
その唇はほんのりと少しだけ冷えていた。
「真夏の盛りとはいえ夜は冷える。風邪ひくぞ」
「ちょっとだけだから大丈夫だよ~、でもありがと。ダンテこそ怪我は?」
「してない、大丈夫だ」
ディーヴァの肩にいつも羽織るカーディガンをかけ、それから今夜もすっかりお世話になってしまった武器をテーブルにおろす。
ついでにずっとコート裏にくっついていたひっつき虫も。
「ピーター…角が折れてるんだけど?」
「特に支障ないみたいだ。ホントにちょっとみたいだしな」
ディーヴァは下におろされたピーターを両手で抱え上げ、腕に抱いてその頭から耳にかけての柔い毛並みを撫でる。
気持ちよさそうに目を細めるそれを視界に入れながら、ダンテに尋ねた。
「他は大丈夫だったの?」
「ああ、ちとトラウマを相手にする羽目になったが、活躍してくれたぞ」
「トラウマ?」
「合成獣は犬の頭を持つって言ったろ?今回の依頼相手のソイツに怪我させられたらしい」
「え!?危ないじゃないの!ちゃんと退治しなきゃ!また怪我させられたら大変!!」
「落ち着けよディーヴァ。もう退治したって」
ほらこの通り、そう言ってテーブルの上にジャラリと広げた悪魔の血が結晶と化した何よりの証拠。
「あ、そっか。そうだよね…」
「それにキチッと働き分は動いた。な?」
「…きゅ、」
腕の中の存在が目を閉じてディーヴァの行為を甘受しつつ、ダンテの問いに返事を返した。
小さい声だが、会話が成り立っている。
「まぁ仲良くしてるならそれでいいかな」
「は、仲良い…?コイツと仲良くなんかしてねぇって!」
「きゅっきゅきゅきゅー!」
心外だと、2人揃って抗議。
そのタイミングがバッチリ合っているところも、仲良しの証拠に思えた。
「ぷっ!息ピッタリ。だけど2人が言うなら、そういう事にしといてあげるね」
「だーかーらー!!」
ぐきゅるるるる~。
きゅるっ。
「「……………」」
「うわぁ、お腹の音のタイミングまで一緒だ!」
「はぁ…たまたまだ。ディーヴァ、腹減った。なんかあるか?」
「きゅ」
「うふふ、あーるよっ!…と言っても夜遅いしあまりたくさん食べると体に毒でしょ?
ダンテにはトマトたっぷりのスープリゾット、ピーターにはスティックサラダ用意しときましたー」
腹が減ったら素直に認めておいたほうがいい。
ダンテもピーターもディーヴァに逆らうことはせず、無事食卓にありつけた。
「ピーター、お疲れ様」
「きゅ」
「ディーヴァオレは?」
「もちろんダンテもお疲れ様、ね?」
ディーヴァは愛おしそうに目元を弛ませてピーター、そしてダンテの食事風景を見守った。
…それから3日程だろうか、依頼と取れなさそうな依頼…というかその招待状が来たのは………。
その男が現れたのはディーヴァが事務所の前の通りを草むしりしている時だった。
まだ日は高く、照りつける太陽がこちらの体力を否応にも奪うような暑さの中、紺色の長袖のスーツをかっちりと着込んだ男が事務所を見上げていたのだ。
「あの…何かご用ですか?」
「…ぇ、ああ……」
遠慮がちに尋ねると、声をかけられて初めてディーヴァの存在に気がついたというような反応が返ってきた。
その双眸の色は影となりよくわからず、しいて言えば事務所前で草むしりに精を出すディーヴァを飛び越え事務所すらも飛び越え、中でいまだベッドの住民となっているであろうダンテを見ているような…透視でもしているんじゃないかと思わせられた。
「御依頼の方でしたらどうぞお入りください」
便利屋なんかに仕事を依頼する人間の中には、挙動不審だったり変わっていたりする者も少なくない。
少々不審に思いつつも、事務所へ案内してみるディーヴァ。
「簡単に中に通すとは、な…」
その呟きはディーヴァに届かなかった。
「すみません、こちらにかけてお待ちください」
事務所に置いてある応接用のソファーに腰掛けさせ、自分はダンテの元へ。
あの寝坊助さんを早いとこ起こさなければ。
おはようのキスを要求される事覚悟で、ディーヴァはダンテ起床に臨んだ。
ディーヴァの覚悟と裏腹に、その時ダンテは深かった眠りの底からちょうど一気に浮上したところだった。
ダンテが起き上がった拍子にベッドから落ちたらしい、同じく眠っていたピーターも起床する。
「ん…なんだこの違和感……」
例えばそれはより強い悪魔が目の前に現れた時の高揚感に似ていた。
だが、この中は安全圏の事務所だし、悪魔に襲われたと叫ぶディーヴァの声もしない。
ましてや寝起きだ。
きっと夢の中で強い悪魔と戦ってでもいたのだろう……残念な事に覚えていないが。
「ダンテ起き……あ、起きてた!ピーターも!」
「ハヨ、ディーヴァ。ちょうど起きたところだ。ンなに慌ててどうかしたのか?」
「慌てるも何もとっくに太陽は昇ってるしおはようタイムはおしまい!
それよりお客様がお見えになっておりますわよ、デビルメイクライの店主さん?」
「まじか」
バン!とダンテの部屋の扉を開け放ったディーヴァは、起こすついでに持ってきた今朝の朝食のサンドイッチとアイスコーヒーをダンテに手渡す。
「とりあえず急いで朝ごはん食べて、顔洗って着替えて、お客様のとこ行った行った!」
いつもは行儀悪いと叱られるが、今日はここで食べてしまっていいということらしい。
カーテンを開け放ち、ダンテの着替えを用意したら、サンドイッチに齧り付く寝起きダンテのボンバーヘッドに後ろから櫛を入れる。
ディーヴァも母親家業に手馴れたものだ、母親ではないが。
ダンテの支度が終わって階下へ行く頃には、ディーヴァが既に客にコーヒーを出し終えて待っているところだった。
いつの間に挽いたのか、上質のコーヒー豆の香りまで漂っていた。
そしてピーターはちゃっかりとディーヴァの隣に行儀よく座っているが、なぜか客をじっと睨みつける感じだ。
「悪い、待たせたな。で、おたくはどんな依頼をご所望で?」
「ああ、主人の所有する城で行われるパーティーに参加して欲しい」
「…城?」
主人の、ということは使いの者らしい男がダンテの鸚鵡返しに小さく頷く。
「ふぅん。パーティは参加だけか?
要人、例えばアンタの主人の護衛だとか、出席者の中の誰かを捕まえてくれ、だとかないのか」
悪魔の依頼が増えてきたとはいえ、一般人かもしれない相手にその名前を出すのは躊躇われた。
表向きの依頼内容で思いつく限りをリストアップしてみる。
「そんなことは全くない。ただ単に便利屋ばかりを集めたパーティーだ。参加さえしてくれればいい」
「ってことは他の便利屋さんもいるのかなあ…」
「だろうな。しかし、表より裏に住む人間ばっかの便利屋を、ねぇ…。オレも有名になったもんだ」
皮肉じみた言い方をする割には、満更でもなさそう。
「便利屋同士の交流の場…とでも思ってくれて構わない」
「交流の場、か。そんなのがあるなんて、エンツォに聞いたことないけどな」
アイツならこっちが聞かずともすぐにベラベラ喋りだしそうなものだが…まあいいか。
「ダンスパーティーもある。ペアで参加するといい」
「ディーヴァ、ダンスだとよ。どうする?」
「あたしは遠慮する。あたし自体は便利屋さんじゃないし」
「へぇ…ディーヴァはオレが他の女の便利屋と踊ってもいいんだな?」
「うっ!それはヤダ…から!せっかくだし行こうかな…。
お城とか、気になる…し?」
「そうこなくっちゃな」
それから当日の招待状を受け取り、日時をきっちりと確認したあと、依頼者は帰って行った。
やけに真新しすぎる紺色スーツの、合っていない裾を伸ばしながら。