mission 33:devil castle ~悪魔だらけの依頼~
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さてさて、ピーターを連れてダンテがやってきましたのは悪魔が住まう廃墟。
昼間はあんなにもカンカン照りで晴れていたのに、夕暮れ時の空に立ち込めるは雷雨を伴う暗雲。
雷が嫌いだというディーヴァが少し心配だが、家にはケルベロスもいるし平気か。
とりあえずとっとと終わらせてとっとと帰れば良い。
ダンテがそう考えながら目の前の暗雲と魔の気配で覆われた廃墟を睨みつけているというのに、連れてきたピーターはのほほんと鼻をヒクヒクと動かしてぼけらっとしていた。
「おいお前、大丈夫なんだろうな?」
本人に確認の言葉をかけるも相手がダンテなせいか、今度はボリボリボリと器用に後ろ脚で頭をかくばかり。
おまけにくぁ…と大きなあくびをしてダンテのことはガン無視である。
連れてきたのはダンテのはずだが、今更少しばかり不安。
「信用して大丈夫かよ…」
信用して起用したのも自分である。
だが多分このままここから動かない…なんてこともありえる。
現にディーヴァに行ってらっしゃいを言われる事務所を出るまではやる気満々、出てからはこの調子でダンテの後ろ数メールをついてきていただけだ。
まるで「ダンテの手伝いをするなんて事なんで言っちゃったんだろう」という感じ。
「はあ……。別にオレのためでなくていい。ディーヴァのためだ。
悪~い悪魔共をここで野放しにしとけばその内巡り巡ってディーヴァに危険が及ぶのはわかるだろ?」
ダンテにはピーターの考えがなんとなくわかった。
しゃがみこんだダンテが、『ディーヴァ』の名前を出して言い聞かせると、やっとピーターはおとなしく聞き耳をたてる。
「ディーヴァの安全がオレの願い。んでディーヴァを主としたお前の願いでもある。
……というわけでディーヴァのためにお前には囮になって中にいる悪魔をここまで誘きだしてほしいんだ。出来ないならそれでいいが、…やってくれるか?」
「きゅ!」
頷く代わりに返ってきたのは、そんなひと鳴き。
そのままピーターは勇ましく飛び跳ねながら、悪魔の潜む廃墟の中へと消えて行った。
真っ暗な廃墟の中にピーターの悪魔特有、と言うよりウサギ特有の赤い瞳がぼんやり浮かび上がる。
ピーターがぴょんぴょんとまっすぐ進めるのは、ずっと感じている魔の気配と、長い耳が拾う獣の呼吸音を感じたから。
それによれば相手は眠っているようだった。
実を言うと鼻はそこまで利く方ではない。
もちろん獣並みの嗅覚は持っていようが、犬やら猫やらのそれとは比べ物にならない程度。
目はまだ利く方だがこれも他の悪魔からすればそこまで強くない。
ピーターが胸を張って自慢出来るのは長い耳…聴覚だけであった。
そして進んだ1番奥に位置する空間、そこにはピーターの倍どころではないダンテの数倍ありそうな図体の合成獣が寝そべっていた。
その眠る大きな獣を見て、ピーターは来た事をひどく後悔したらしい。
傷が残っていないはずの背中が疼く。
犬に噛み千切られたぐちゃぐちゃな傷跡も、治る途中生じたケロイドも既に無く、ふわふわの毛で覆われている。
しかし、心には深い傷を負わせたその場所。
何故なら目の前で寝息を立てるその悪魔こそ、ピーターを手負いにした悪魔である。
ピーターは震え、そしてその場でそれ以上進めず立ち止まった。
思い出すだけで足が竦むというにあろう事かトラウマが目の前にいるのだ、当たり前だろう。
犬の顔がピクリとし、次いでその場で鼻がふんふんとせわしなく動いた。
相手の顔の素体は犬、嗅覚がより優れている犬だ。
眠っていてもピーターの匂いに、獲物になり得るウサギの匂いに気がついたのかもしれない。
ぱち、大きな顔に見合う大きさの目が開き視界にピーターを入れると同時、ゆらりと立ち上がる虎の体と鎌首をもたげた大蛇の尻尾。
ピーターの小さな目いっぱいに広がる、大きな合成獣。
合成獣が大きな体をあらわにすればするほど、縮こまって怖気付くピーターの小さな体。
「グルゥゥゥゥ……」
「きゅ、」
低い唸り声が腹の底まで染み込んでくる。
ピーターが動くのと悪魔が飛びかかってきたのは同時だった。
ピーターのいた場所に勢いよく振り下ろされた虎の爪。
コンクリートの床が粉々に粉砕、ここまで破片の飛んでくるその威力を見たピーターの目は丸く見開かれた。
見開かれたと同時にヒヤリとした。
そのままあの場にいたらと思うとぞっとするが、あとはダンテのいる戦いやすい拓けた場所へ誘導さえすればそれでいいのだ。
それに逃げ足にはディーヴァのそれと遠く及ばなくとも、追うもの追われるもので言えば追われる側たるウサギの素体を持つ悪魔故、多少の自信はあった。
以前は逃げ場のない状況だったが、今はまだ逃げる場所がある。
周りを豪快に破壊しながらこちらを追ってくる合成獣を、その牙、爪、攻撃を上手くかわしきって駆けていく。
なんだ、足が意外と遅いじゃないか。
お調子者なのはダンテだけでいい、自分までダンテに感化されたか否か、それはわからないが、ここで調子に乗らなければよかった。
合成獣を小馬鹿にするようにその周りをウロチョロ回ったのが仇となったか、ピーターは部屋の中に張り巡らされた配管のひとつ、小さなパイプの出っ張りに引っかかった。
…頭に生えたジャッカロープの特徴、鹿の角が。
「きゅぅぃっ!?」
慌てたピーターは、スタンピングよろしくダンテを、そして元いた群れの仲間を呼んだ。
が、そんなすぐに仲間であるジャッカロープがくるはずもなく、ダンテがウサギのスタンピングくらいでくるわけもなかった。
自分でどうにかしようにも角が引っかかって抜けないのに、合成獣の爪はスピードを緩めず迫ってくる。
と、一瞬その動きが止まった。
犬の頭と尻尾についた蛇の頭が喧嘩しだしたのだ。
だがどちらにせよこのままではやばい、危ない。
必死の思いでぐっと体を押し込んだ。
ミシミシ、嫌な音が響く。
バキッ!!
間一髪。
命あっての物種とはよく言ったもので、角が少し折れてしまったがなんとかそこから逃げ出すことに成功。
ピーターは命からがら、ダンテの待つ場所へと今度こそ一目散に駆けぬけた。
昼間はあんなにもカンカン照りで晴れていたのに、夕暮れ時の空に立ち込めるは雷雨を伴う暗雲。
雷が嫌いだというディーヴァが少し心配だが、家にはケルベロスもいるし平気か。
とりあえずとっとと終わらせてとっとと帰れば良い。
ダンテがそう考えながら目の前の暗雲と魔の気配で覆われた廃墟を睨みつけているというのに、連れてきたピーターはのほほんと鼻をヒクヒクと動かしてぼけらっとしていた。
「おいお前、大丈夫なんだろうな?」
本人に確認の言葉をかけるも相手がダンテなせいか、今度はボリボリボリと器用に後ろ脚で頭をかくばかり。
おまけにくぁ…と大きなあくびをしてダンテのことはガン無視である。
連れてきたのはダンテのはずだが、今更少しばかり不安。
「信用して大丈夫かよ…」
信用して起用したのも自分である。
だが多分このままここから動かない…なんてこともありえる。
現にディーヴァに行ってらっしゃいを言われる事務所を出るまではやる気満々、出てからはこの調子でダンテの後ろ数メールをついてきていただけだ。
まるで「ダンテの手伝いをするなんて事なんで言っちゃったんだろう」という感じ。
「はあ……。別にオレのためでなくていい。ディーヴァのためだ。
悪~い悪魔共をここで野放しにしとけばその内巡り巡ってディーヴァに危険が及ぶのはわかるだろ?」
ダンテにはピーターの考えがなんとなくわかった。
しゃがみこんだダンテが、『ディーヴァ』の名前を出して言い聞かせると、やっとピーターはおとなしく聞き耳をたてる。
「ディーヴァの安全がオレの願い。んでディーヴァを主としたお前の願いでもある。
……というわけでディーヴァのためにお前には囮になって中にいる悪魔をここまで誘きだしてほしいんだ。出来ないならそれでいいが、…やってくれるか?」
「きゅ!」
頷く代わりに返ってきたのは、そんなひと鳴き。
そのままピーターは勇ましく飛び跳ねながら、悪魔の潜む廃墟の中へと消えて行った。
真っ暗な廃墟の中にピーターの悪魔特有、と言うよりウサギ特有の赤い瞳がぼんやり浮かび上がる。
ピーターがぴょんぴょんとまっすぐ進めるのは、ずっと感じている魔の気配と、長い耳が拾う獣の呼吸音を感じたから。
それによれば相手は眠っているようだった。
実を言うと鼻はそこまで利く方ではない。
もちろん獣並みの嗅覚は持っていようが、犬やら猫やらのそれとは比べ物にならない程度。
目はまだ利く方だがこれも他の悪魔からすればそこまで強くない。
ピーターが胸を張って自慢出来るのは長い耳…聴覚だけであった。
そして進んだ1番奥に位置する空間、そこにはピーターの倍どころではないダンテの数倍ありそうな図体の合成獣が寝そべっていた。
その眠る大きな獣を見て、ピーターは来た事をひどく後悔したらしい。
傷が残っていないはずの背中が疼く。
犬に噛み千切られたぐちゃぐちゃな傷跡も、治る途中生じたケロイドも既に無く、ふわふわの毛で覆われている。
しかし、心には深い傷を負わせたその場所。
何故なら目の前で寝息を立てるその悪魔こそ、ピーターを手負いにした悪魔である。
ピーターは震え、そしてその場でそれ以上進めず立ち止まった。
思い出すだけで足が竦むというにあろう事かトラウマが目の前にいるのだ、当たり前だろう。
犬の顔がピクリとし、次いでその場で鼻がふんふんとせわしなく動いた。
相手の顔の素体は犬、嗅覚がより優れている犬だ。
眠っていてもピーターの匂いに、獲物になり得るウサギの匂いに気がついたのかもしれない。
ぱち、大きな顔に見合う大きさの目が開き視界にピーターを入れると同時、ゆらりと立ち上がる虎の体と鎌首をもたげた大蛇の尻尾。
ピーターの小さな目いっぱいに広がる、大きな合成獣。
合成獣が大きな体をあらわにすればするほど、縮こまって怖気付くピーターの小さな体。
「グルゥゥゥゥ……」
「きゅ、」
低い唸り声が腹の底まで染み込んでくる。
ピーターが動くのと悪魔が飛びかかってきたのは同時だった。
ピーターのいた場所に勢いよく振り下ろされた虎の爪。
コンクリートの床が粉々に粉砕、ここまで破片の飛んでくるその威力を見たピーターの目は丸く見開かれた。
見開かれたと同時にヒヤリとした。
そのままあの場にいたらと思うとぞっとするが、あとはダンテのいる戦いやすい拓けた場所へ誘導さえすればそれでいいのだ。
それに逃げ足にはディーヴァのそれと遠く及ばなくとも、追うもの追われるもので言えば追われる側たるウサギの素体を持つ悪魔故、多少の自信はあった。
以前は逃げ場のない状況だったが、今はまだ逃げる場所がある。
周りを豪快に破壊しながらこちらを追ってくる合成獣を、その牙、爪、攻撃を上手くかわしきって駆けていく。
なんだ、足が意外と遅いじゃないか。
お調子者なのはダンテだけでいい、自分までダンテに感化されたか否か、それはわからないが、ここで調子に乗らなければよかった。
合成獣を小馬鹿にするようにその周りをウロチョロ回ったのが仇となったか、ピーターは部屋の中に張り巡らされた配管のひとつ、小さなパイプの出っ張りに引っかかった。
…頭に生えたジャッカロープの特徴、鹿の角が。
「きゅぅぃっ!?」
慌てたピーターは、スタンピングよろしくダンテを、そして元いた群れの仲間を呼んだ。
が、そんなすぐに仲間であるジャッカロープがくるはずもなく、ダンテがウサギのスタンピングくらいでくるわけもなかった。
自分でどうにかしようにも角が引っかかって抜けないのに、合成獣の爪はスピードを緩めず迫ってくる。
と、一瞬その動きが止まった。
犬の頭と尻尾についた蛇の頭が喧嘩しだしたのだ。
だがどちらにせよこのままではやばい、危ない。
必死の思いでぐっと体を押し込んだ。
ミシミシ、嫌な音が響く。
バキッ!!
間一髪。
命あっての物種とはよく言ったもので、角が少し折れてしまったがなんとかそこから逃げ出すことに成功。
ピーターは命からがら、ダンテの待つ場所へと今度こそ一目散に駆けぬけた。