mission 32:Jackalope ~天使の飼う悪魔~
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そこは何も変わった事のなさそうなスラム街の廃墟。
ダンテが触れる事でその魔力が印され、許されし者のみが通る事のできる通行手形となる。
ディーヴァも『許されし者』の1人にはなるのだが、魔力は使えないし周辺は危険でいっぱい。
この場所へ来る時は必ずダンテが一緒である。
「お久しぶりです、ロダンさん」
「よう、ロダン。元気にしてるか?」
と、そんな感じで開かれたそこは、廃墟とは全く違う異空間。
たった一歩踏み出すだけでロダンの経営する悪魔のバー、ゲイツ・オブ・ヘルの敷地内となる。
つるりと磨かれた床を靴音鳴らして入れば、強面ながらどこか憎めぬ店主のロダンがカウンターの内側でダンテとディーヴァを快く迎えてくれた。
「そろそろ来るだろうと思ってデザートを焼いておいた。このチェリーパイ、上手く出来ているだろう?」
下級悪魔なら、というかディーヴァですら怖気付くようなロダンが持つのは似合わなさそうな、紅くて艶々の美味しそうなチェリーパイ。
焼きたてほやほやで湯気が上がり、甘酸っぱい匂いがこちらまで届く。
快く迎えてくれた…というより準備万端の用意周到。
行くことを誰も一言たりとも連絡していないというのに、先読みしていたというのか。
席についたダンテとディーヴァのため、パイを切り分けるべく後ろを向いたロダン。
そのロダンに見えぬ位置で、2人は小さく話した。
「ねぇダンテ。なんでロダンさんは、あたし達が来ることわかってたんだろ…」
「さあな。謎を通り越して怖ぇよな」
「おい、2人とも、」
「はひっ!」
「うおっ!?」
「驚き方が大袈裟だぞ」
綺麗に切り分けられ、生クリームとミントの葉を飾って皿の上にデコレートしてあるチェリーパイをディーヴァ達の目の前に置いたロダンが声をかける。
「用意したから食え」
「うわぁ、美味しそう…!いっただっきまーす!」
「どれどれ。……ふぅん、ストサンもいいが、こういうのも美味いな」
「うんうん、美味しいね~」
甘酸っぱい香りに誘われ、ピーターがディーヴァの膝の上からカウンターテーブルに顔を出し、鼻をひくつかせる。
ロダンはそれをしばらく眺めていたが、ディーヴァが食べ終えて一息つくまで待ってくれた。
「で。魔女でもないのに『ファミリアー』なんか連れてどうした?」
チェリーパイと共に出されたアイスティーをディーヴァが飲み終えてしばらく、ロダンがピーターを顎でしゃくってディーヴァにそう聞いてきた。
「『ファミリアー』、ですか?」
ファミリー…家族ってことかなぁ。
ディーヴァが膝の上のピーターを見つめてキョトンと首を傾げると、ピーターもディーヴァの真似をして首を傾げてみせた。
なんだか和む。
「『ファミリアー』は魔女にとっての黒猫やカラスといった存在。所謂使い魔のことだ」
「ははっ!使い魔!こんな弱っちいこいつがか?」
ウサギの使い魔なんて聞いたことがない!
と、ダンテは小馬鹿にするようにひとしきり笑う。
と、そこでピーターからダンテの下あごに向けてアッパーの如き回し飛び蹴り。
脳震盪を起こしそうなレベルの痛みと衝撃がダンテを襲った。
「ぐっ!………ンのやろ……!」
「きゅきゅっ!」
すぐ復活すると、ピーターの首根っこを掴んで宙ぶらりん。
慌ててダンテの手から救出したディーヴァは、ダンテに非難がましい目を向けて注意する。
「蹴られてとーぜん!今のはダンテの言い方が悪いんだよ?」
「ほう、ピーターという名の使い魔か」
自分の事を全く心配してくれないディーヴァと、観点のズレているロダンにぶすったれて机に片頬杖をつくダンテ。
「ケッ!こんな躾のなってない奴が使い魔なわけがねぇ」
ペペペっ!とピーターの方へ向かって唾を吐き出すレベルだが、ダンテは至極真面目な表情を見せて契約について話した。
「そもそも形はどうであれオレとケルベロスやネヴァンのように契約結ばねぇと使い魔ってのにならないんだろ。
もちろんディーヴァは魔女じゃねぇし、天使を主に認める悪魔なんて普通いない。ましてや見てる限りじゃ契約してない。だよな、ディーヴァ?」
「うん…ピーターと契約した覚えないよ」
まさかダンテとケルベロス達のように力を示すなんてありえないし、契約なんてどうやるのかいまいちよくわからないが。
その点で言えばディーヴァよりは、昼間ずっとピーターと一緒にいてガチバトルを続けていたダンテとの方が、主従関係があってもおかしくはない。
「だがピーターはディーヴァを主と認めているようだぞ」
それを証拠にディーヴァにべったり。
離れれば離れた分以上に距離を縮めてくるしまつだ。
それは親鳥の後を追う雛のようでもあり、そうではなく、ダンテのようないやらしい悪魔(笑)から姫を守ろうとする従者のようでもあった。
「ディーヴァはピーターに噛まれたんじゃないか?」
「えっ!?うん、まあ…最初だけ噛まれたけど……それがどうかしたんですか?」
「やはりな。噛んだ時にディーヴァの血を少し舐めたんだろう。弱い悪魔相手ならば、悪魔側が主人にならず、こちら側が主人になることもある。
それで知らずの内に契約成立したのだと俺は思う」
「すごいちょっとだけですよ?」
「『すごいちょっと』でも契約できる」
出血量は大したことがなく、血が軽く滲んだ程度だった。
だが、そんな少量で使い魔になることが出来るというのだから驚きである。
「はぁ、また『血』か…。ディーヴァ、オレ以外の悪魔には血をやるなって言ってるだろうが。だから巷で『sweet blood』なんて呼称が蔓延るんだ。ったく、気をつけろよ?」
「うう、今回は別にあげたくてあげたわけじゃないのにぃ…」
「相手が下級悪魔で良かったな」
ダンテに珍しく説教を受けてしまった。
不甲斐ない思いでしょんぼりするディーヴァを見て、ロダンは微笑ましい光景だ、などとサングラスの奥で目を細めて笑った。
「あの…それでこの子、結局どんな悪魔なんでしょう」
「今日の来店目的はそれか」
「ああ。ウサギのナリしてるから人参食べるってのはわかる。けど、酒をめちゃくちゃ飲むんだ」
「お酒が好きみたいなんだよねぇ。うーん、お酒飲むって変だよね」
自分のバッグから取り出したピーター用のおやつ…人参スティックをピーターに差し出して食べさせながら、ディーヴァは不思議そうに唸る。
「酒の種類はウイスキーだろ」
「なんでわかる」
「それがジャッカロープだからさ」
「ジャッカ、ロープ?」
「人間達にはUMAとして伝わっているようだが、ワイオミング州でよく見かける悪魔で、好物はウイスキーだ」
昔からワイオミング州に生息しており、見た目がウサギの頭に鹿の角が生えているというだけの、人間への被害もないある意味プレーリードッグやキツネなどの害獣よりも人畜無害な悪魔、ということらしい。
ちなみに、ワイオミング州はこちらが住んでいる州より、カナダの方が近いくらいの場所である。
「この辺りではあまり見かけない悪魔だが、住処でも追われたか、仲間とははぐれたかしたんだろう。近くに仲間はいなかったか?どこかにいるはずだが…」
ロダンはそう聞きながら、ピーターの口元へ人参を近づけ餌付けして遊んでいる。
「うーん…見かけなかった、です。怪我しててうずくまってたよ」
「結構深い傷を負ってたんだぜ。ディーヴァの力で治ってきてるけど、背中にまだ痕が残ってる」
そのダンテとディーヴァの言葉に、頭から背中にかけてをゆるりと撫でつつ、言われた箇所の傷を確認。
他の場所よりも短めに毛が生えているそこを掻き分けると、確かにケロイド化した傷跡が背中にギザギザと走っていた。
「そのようだな。ギザギザした形状の鋭い牙で噛みつかれた痕がある」
この牙の形を見るにヘルハウンドかキメラか…どちらかといえばキメラの噛み跡に近く感じる。
キメラはキメラでも、猫系ではなく犬系か…。
猫の噛み傷なら傷口はスッパリと、犬の噛み傷ならばその傷口はギザギザと裂けたような痕が生じる。
犬が主体となっているキメラ…最近魔界の様子もあまり良くないようであることだしその影響か。
はたまた誰か悪意ある者に連れてこられたか。
こちら側の世界ににたくさんの悪魔が湧き始めているのはわかる。
ダンテが触れる事でその魔力が印され、許されし者のみが通る事のできる通行手形となる。
ディーヴァも『許されし者』の1人にはなるのだが、魔力は使えないし周辺は危険でいっぱい。
この場所へ来る時は必ずダンテが一緒である。
「お久しぶりです、ロダンさん」
「よう、ロダン。元気にしてるか?」
と、そんな感じで開かれたそこは、廃墟とは全く違う異空間。
たった一歩踏み出すだけでロダンの経営する悪魔のバー、ゲイツ・オブ・ヘルの敷地内となる。
つるりと磨かれた床を靴音鳴らして入れば、強面ながらどこか憎めぬ店主のロダンがカウンターの内側でダンテとディーヴァを快く迎えてくれた。
「そろそろ来るだろうと思ってデザートを焼いておいた。このチェリーパイ、上手く出来ているだろう?」
下級悪魔なら、というかディーヴァですら怖気付くようなロダンが持つのは似合わなさそうな、紅くて艶々の美味しそうなチェリーパイ。
焼きたてほやほやで湯気が上がり、甘酸っぱい匂いがこちらまで届く。
快く迎えてくれた…というより準備万端の用意周到。
行くことを誰も一言たりとも連絡していないというのに、先読みしていたというのか。
席についたダンテとディーヴァのため、パイを切り分けるべく後ろを向いたロダン。
そのロダンに見えぬ位置で、2人は小さく話した。
「ねぇダンテ。なんでロダンさんは、あたし達が来ることわかってたんだろ…」
「さあな。謎を通り越して怖ぇよな」
「おい、2人とも、」
「はひっ!」
「うおっ!?」
「驚き方が大袈裟だぞ」
綺麗に切り分けられ、生クリームとミントの葉を飾って皿の上にデコレートしてあるチェリーパイをディーヴァ達の目の前に置いたロダンが声をかける。
「用意したから食え」
「うわぁ、美味しそう…!いっただっきまーす!」
「どれどれ。……ふぅん、ストサンもいいが、こういうのも美味いな」
「うんうん、美味しいね~」
甘酸っぱい香りに誘われ、ピーターがディーヴァの膝の上からカウンターテーブルに顔を出し、鼻をひくつかせる。
ロダンはそれをしばらく眺めていたが、ディーヴァが食べ終えて一息つくまで待ってくれた。
「で。魔女でもないのに『ファミリアー』なんか連れてどうした?」
チェリーパイと共に出されたアイスティーをディーヴァが飲み終えてしばらく、ロダンがピーターを顎でしゃくってディーヴァにそう聞いてきた。
「『ファミリアー』、ですか?」
ファミリー…家族ってことかなぁ。
ディーヴァが膝の上のピーターを見つめてキョトンと首を傾げると、ピーターもディーヴァの真似をして首を傾げてみせた。
なんだか和む。
「『ファミリアー』は魔女にとっての黒猫やカラスといった存在。所謂使い魔のことだ」
「ははっ!使い魔!こんな弱っちいこいつがか?」
ウサギの使い魔なんて聞いたことがない!
と、ダンテは小馬鹿にするようにひとしきり笑う。
と、そこでピーターからダンテの下あごに向けてアッパーの如き回し飛び蹴り。
脳震盪を起こしそうなレベルの痛みと衝撃がダンテを襲った。
「ぐっ!………ンのやろ……!」
「きゅきゅっ!」
すぐ復活すると、ピーターの首根っこを掴んで宙ぶらりん。
慌ててダンテの手から救出したディーヴァは、ダンテに非難がましい目を向けて注意する。
「蹴られてとーぜん!今のはダンテの言い方が悪いんだよ?」
「ほう、ピーターという名の使い魔か」
自分の事を全く心配してくれないディーヴァと、観点のズレているロダンにぶすったれて机に片頬杖をつくダンテ。
「ケッ!こんな躾のなってない奴が使い魔なわけがねぇ」
ペペペっ!とピーターの方へ向かって唾を吐き出すレベルだが、ダンテは至極真面目な表情を見せて契約について話した。
「そもそも形はどうであれオレとケルベロスやネヴァンのように契約結ばねぇと使い魔ってのにならないんだろ。
もちろんディーヴァは魔女じゃねぇし、天使を主に認める悪魔なんて普通いない。ましてや見てる限りじゃ契約してない。だよな、ディーヴァ?」
「うん…ピーターと契約した覚えないよ」
まさかダンテとケルベロス達のように力を示すなんてありえないし、契約なんてどうやるのかいまいちよくわからないが。
その点で言えばディーヴァよりは、昼間ずっとピーターと一緒にいてガチバトルを続けていたダンテとの方が、主従関係があってもおかしくはない。
「だがピーターはディーヴァを主と認めているようだぞ」
それを証拠にディーヴァにべったり。
離れれば離れた分以上に距離を縮めてくるしまつだ。
それは親鳥の後を追う雛のようでもあり、そうではなく、ダンテのようないやらしい悪魔(笑)から姫を守ろうとする従者のようでもあった。
「ディーヴァはピーターに噛まれたんじゃないか?」
「えっ!?うん、まあ…最初だけ噛まれたけど……それがどうかしたんですか?」
「やはりな。噛んだ時にディーヴァの血を少し舐めたんだろう。弱い悪魔相手ならば、悪魔側が主人にならず、こちら側が主人になることもある。
それで知らずの内に契約成立したのだと俺は思う」
「すごいちょっとだけですよ?」
「『すごいちょっと』でも契約できる」
出血量は大したことがなく、血が軽く滲んだ程度だった。
だが、そんな少量で使い魔になることが出来るというのだから驚きである。
「はぁ、また『血』か…。ディーヴァ、オレ以外の悪魔には血をやるなって言ってるだろうが。だから巷で『sweet blood』なんて呼称が蔓延るんだ。ったく、気をつけろよ?」
「うう、今回は別にあげたくてあげたわけじゃないのにぃ…」
「相手が下級悪魔で良かったな」
ダンテに珍しく説教を受けてしまった。
不甲斐ない思いでしょんぼりするディーヴァを見て、ロダンは微笑ましい光景だ、などとサングラスの奥で目を細めて笑った。
「あの…それでこの子、結局どんな悪魔なんでしょう」
「今日の来店目的はそれか」
「ああ。ウサギのナリしてるから人参食べるってのはわかる。けど、酒をめちゃくちゃ飲むんだ」
「お酒が好きみたいなんだよねぇ。うーん、お酒飲むって変だよね」
自分のバッグから取り出したピーター用のおやつ…人参スティックをピーターに差し出して食べさせながら、ディーヴァは不思議そうに唸る。
「酒の種類はウイスキーだろ」
「なんでわかる」
「それがジャッカロープだからさ」
「ジャッカ、ロープ?」
「人間達にはUMAとして伝わっているようだが、ワイオミング州でよく見かける悪魔で、好物はウイスキーだ」
昔からワイオミング州に生息しており、見た目がウサギの頭に鹿の角が生えているというだけの、人間への被害もないある意味プレーリードッグやキツネなどの害獣よりも人畜無害な悪魔、ということらしい。
ちなみに、ワイオミング州はこちらが住んでいる州より、カナダの方が近いくらいの場所である。
「この辺りではあまり見かけない悪魔だが、住処でも追われたか、仲間とははぐれたかしたんだろう。近くに仲間はいなかったか?どこかにいるはずだが…」
ロダンはそう聞きながら、ピーターの口元へ人参を近づけ餌付けして遊んでいる。
「うーん…見かけなかった、です。怪我しててうずくまってたよ」
「結構深い傷を負ってたんだぜ。ディーヴァの力で治ってきてるけど、背中にまだ痕が残ってる」
そのダンテとディーヴァの言葉に、頭から背中にかけてをゆるりと撫でつつ、言われた箇所の傷を確認。
他の場所よりも短めに毛が生えているそこを掻き分けると、確かにケロイド化した傷跡が背中にギザギザと走っていた。
「そのようだな。ギザギザした形状の鋭い牙で噛みつかれた痕がある」
この牙の形を見るにヘルハウンドかキメラか…どちらかといえばキメラの噛み跡に近く感じる。
キメラはキメラでも、猫系ではなく犬系か…。
猫の噛み傷なら傷口はスッパリと、犬の噛み傷ならばその傷口はギザギザと裂けたような痕が生じる。
犬が主体となっているキメラ…最近魔界の様子もあまり良くないようであることだしその影響か。
はたまた誰か悪意ある者に連れてこられたか。
こちら側の世界ににたくさんの悪魔が湧き始めているのはわかる。
