mission 32:Jackalope ~天使の飼う悪魔~
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突然ダンテが立ち上がった。
「よし。なら、たまには一緒に酒でも飲むか!」
「え?…………なんでお兄ちゃんの話からお酒の話になるの?」
あまりにも脈絡もなく意味がわからない、とディーヴァが不思議そうに首を傾げる。
「気晴らしだよ、気晴らし。昔の事でも思い出しながらちびちびやろうぜ」
そう言ってダンテがドン!とテーブルの上に置いた物は。
「あ!今日ダンテがこっそり買ってた瓶!!」
琥珀色の液体が入ったずんぐりした瓶。
実はこれ、買い物先でダンテが買い物カゴにこっそり入れていたのだが、残念な事にディーヴァが会計前にそれに気がついてしまった物。
その為、ダンテは自分の財布の中身を渋々出した。
「そ。ウッドフォードリザーブのストレートバーボン。度数も値段も高いちょっと贅沢な高級バーボンウイスキーだぜ」
「いくらしたの」
「ナイショだ。今回はオレのポケットマネーから買ってるんだから別にいいだろ」
「うん…まあ、いいけどさ…」
瓶だけでなくあれよあれよの間に、ディーヴァ用の小さめグラスまで用意してくるダンテ。
これまでした事がなかったが、いよいよ家飲みデビュー。
またひとつ、ディーヴァの『初めて』を他でもない自分が得られた事に嬉しさがこみ上げる。
小さな事だが、ダンテにはとても大切な事。
ふわり、封を開ければ広がる重厚な芳香。
その香りにつられたのか、ピーターの耳と鼻がピクピクと動き、目がキランと光った気がした。
「オレの飲み方は断然ストレートかロックだな。チェイサーなんて必要ねぇぜ」
「じゃあこの牛乳はなぁに?」
牛乳パックまで用意してある。
これはダンテがストレートで飲む時に口直しに飲むのだと思っていたが…?
「ディーヴァの牛乳だ。カウボーイを飲めって事」
「カウボーイは人だよ、飲み物じゃないよ?」
「牛乳で割って飲むのをカウボーイっていうんだよ。それでも強いからな、ゆっくり飲めよ」
「う、うん…」
そう言ってディーヴァのグラスに牛乳とウイスキーを注いでマドラーでかき混ぜるダンテ。
ストレートで強いお酒も飲めないお子ちゃま扱いされている気分だが、まぁそんなに強い方でもないし飲み慣れぬ身だ、不満に思わないでおこう。
そしてダンテも自分のグラスに琥珀色の液体を並々と注いで持ち上げる。
「んじゃ、かんぱ……」
その瞬間、シュッ!という風切り音とともに、何かがダンテの手の近くを素早く通り抜けた。
「え、あれ?オレのグラスは…?」
そしてダンテの手にあったグラスが消えた。
周りを見回すと、あらら。
ダンテのグラスはピーターが全身を使って抱え込んでおり、その鼻先をウイスキーに浸すようにして美味しそうに飲んでいたのだ。
「あーーー!オレの酒ーーーー!!」
「ピーター…何でお酒なんか……」
器用にも一気にぐびぐびと飲み干し、げふ!と一発腹から空気を出して、空のグラスを床に転がす。
その速さと言ったら、ダンテが駆け寄るより速い。
「てめ…!オレの酒をよくも飲みやがったな!?高いんだぞ!!」
「ダンテ、相手はうさぎの悪魔さんじゃない!うさぎはストレスにすっごく弱いんだから扱いに気をつけてよ!」
「コイツがストレスに弱いってタマかっ!」
「弱いよ!それにお酒はまだあるんだからそんなに怒っちゃダメ!!」
「うっ…そうかもしんねぇけどよ…」
詰め寄ったダンテはその軽い体を持ち上げて揺さぶる。
ディーヴァはそんな興奮と憤怒でいっぱいのダンテを、上手く説明してなんとか落ち着かせた。
「それより、血や肉を食べるはずの悪魔が、お酒大好きなんて面白いよね。うさぎさんだから人参食べるってとこはまだわかるんだけど」
ダンテの手から受け取ったピーターを撫でながらディーヴァが不思議そうに首をかしげる。
「確かに酒好き悪魔なんて変わり種だよな。それも併せてロダンに聞いてみるか」
ピーターは満腹もさる事ながら、ディーヴァに撫でられて満更でもないのか満足そうに、そして自分に危害を加えようとしたダンテを恨みがましいような表情で見た。
「……とりあえず、こいつには酒盗られないように死守する」
「あはは、そうだね」
と言ってもピーターはもう満腹おねむ状態だ、言わなくてももう飲まないと思う。
夜は夏でもひんやりとしている廊下に置いた小ぶりのダンボール箱…ディーヴァはそこにピーターを寝かしつけて置いてきた。
ディーヴァが戻ってみれば、少々疲れたような様子のダンテの手の中には、すでに新しいグラスと酒が。
「はぁ…邪魔が入ったが、気を取り直して、」
「うん」
「「乾杯」」
チン!とグラスを合わせると小気味良い音が響く。
ダンテは琥珀色の酒をぐびりと、ディーヴァはミルクティー色に変わった酒を一口飲んだ。
「く~~~!鼻にヌケるこの味がたまんねぇぜ。ディーヴァどうだ?」
「ん。牛乳がいっぱい入ってるからかな。前に飲んだカクテルより飲みやすくて美味しいよ」
「そうだろうな。あれは『ほぼ酒だけ』のカクテルだったからな」
2人共に言っているのは、ディーヴァが初めてお酒を飲む席で飲んだ、マンハッタンというカクテルの事。
材料の全てがほとんどアルコールで出来たカクテルに比べれば、牛乳で割ってあるディーヴァのカクテルの方が飲みやすいのは当たり前である。
「酒ってのはいい。必ずってわけじゃねぇが、自分が会いたい人に会わせてくれる…」
お酒の香りを纏わせたダンテが、ふぅ…とため息まじりにそう言う。
どこか遠いところに思いを馳せ、憂いを帯びたような表情で言うので、少々酔っているのかとも思ったがそうでもなさそうだ。
ディーヴァはこくりとグラスの中身を飲み下しながら相槌をうった。
「うん、そうかもしれない」
「とは言え、オレが幻覚見るほど酔うなんてそうそうないけどな」
「お酒強いもんね~」
「強いのは酒だけじゃないぜ?」
「はいはい、力も強いよね」
「フッフッフッ…力だけでなくアッチの欲求も強いぞ~?」
「ひゃあ!」
言うが早いか、グラスを置いてディーヴァの方に覆い被さるように抱きつくダンテ。
ディーヴァは持っていた空のグラスを落とさぬよう気をつけて、そのいきなりの抱擁を受け入れた。
「危ないでしょ」
「あー。気持ちいい…」
謝る代わりにディーヴァのむっちりした胸の膨らみ、柔らかでなめらかな肌に顔を埋めて自身を癒すダンテ。
疲れているのかと問いたくなるようなその行動に怒る気が失せた。
ディーヴァは自分の顔のすぐ下にある、ダンテの髪を愛し気に梳き、撫でた。
さっきはディーヴァの兄の話が、今は会いたい人の話が出た。
ならばきっとダンテが会いたい人物というのは……。
「……バージルに会いたい?」
「ま、たまにだがな」
ふと会いたくなる時がある。
それでも、会いたいような会いたくないようなどっちつかずの気持ちになるのは、理由はどうであれ次もまた殺し合いのような喧嘩をするに決まっているから。
「せめて夢の中で会えるといいね」
「んー?夢の中で会うなら、ディーヴァがいいな」
「ふぅ~ん。夢の中のあたしと、ここにいるあたし、ダンテはどっちがいいの?」
ダンテの顔を挑発気味に覗き込んで言えば、返ってきた笑顔と唇へ軽くて、でも甘いキス。
「夢の中の自分に嫉妬してるのか。バカだな、そんなの今ここにいるディーヴァの方がいいに決まってるだろ?」
「ん…」
酔った、と言えるほど酔ってはいないがほろ酔い気分のダンテとディーヴァは、空いたグラスはそのままに寝室へなだれ込む。
そしてほんのりと明るい下弦の月が優しく照らすベッドで、ディーヴァが飲んでいたカクテルのようにほろ苦く、どこか甘い濃密な時間を過ごしたのだった。
「よし。なら、たまには一緒に酒でも飲むか!」
「え?…………なんでお兄ちゃんの話からお酒の話になるの?」
あまりにも脈絡もなく意味がわからない、とディーヴァが不思議そうに首を傾げる。
「気晴らしだよ、気晴らし。昔の事でも思い出しながらちびちびやろうぜ」
そう言ってダンテがドン!とテーブルの上に置いた物は。
「あ!今日ダンテがこっそり買ってた瓶!!」
琥珀色の液体が入ったずんぐりした瓶。
実はこれ、買い物先でダンテが買い物カゴにこっそり入れていたのだが、残念な事にディーヴァが会計前にそれに気がついてしまった物。
その為、ダンテは自分の財布の中身を渋々出した。
「そ。ウッドフォードリザーブのストレートバーボン。度数も値段も高いちょっと贅沢な高級バーボンウイスキーだぜ」
「いくらしたの」
「ナイショだ。今回はオレのポケットマネーから買ってるんだから別にいいだろ」
「うん…まあ、いいけどさ…」
瓶だけでなくあれよあれよの間に、ディーヴァ用の小さめグラスまで用意してくるダンテ。
これまでした事がなかったが、いよいよ家飲みデビュー。
またひとつ、ディーヴァの『初めて』を他でもない自分が得られた事に嬉しさがこみ上げる。
小さな事だが、ダンテにはとても大切な事。
ふわり、封を開ければ広がる重厚な芳香。
その香りにつられたのか、ピーターの耳と鼻がピクピクと動き、目がキランと光った気がした。
「オレの飲み方は断然ストレートかロックだな。チェイサーなんて必要ねぇぜ」
「じゃあこの牛乳はなぁに?」
牛乳パックまで用意してある。
これはダンテがストレートで飲む時に口直しに飲むのだと思っていたが…?
「ディーヴァの牛乳だ。カウボーイを飲めって事」
「カウボーイは人だよ、飲み物じゃないよ?」
「牛乳で割って飲むのをカウボーイっていうんだよ。それでも強いからな、ゆっくり飲めよ」
「う、うん…」
そう言ってディーヴァのグラスに牛乳とウイスキーを注いでマドラーでかき混ぜるダンテ。
ストレートで強いお酒も飲めないお子ちゃま扱いされている気分だが、まぁそんなに強い方でもないし飲み慣れぬ身だ、不満に思わないでおこう。
そしてダンテも自分のグラスに琥珀色の液体を並々と注いで持ち上げる。
「んじゃ、かんぱ……」
その瞬間、シュッ!という風切り音とともに、何かがダンテの手の近くを素早く通り抜けた。
「え、あれ?オレのグラスは…?」
そしてダンテの手にあったグラスが消えた。
周りを見回すと、あらら。
ダンテのグラスはピーターが全身を使って抱え込んでおり、その鼻先をウイスキーに浸すようにして美味しそうに飲んでいたのだ。
「あーーー!オレの酒ーーーー!!」
「ピーター…何でお酒なんか……」
器用にも一気にぐびぐびと飲み干し、げふ!と一発腹から空気を出して、空のグラスを床に転がす。
その速さと言ったら、ダンテが駆け寄るより速い。
「てめ…!オレの酒をよくも飲みやがったな!?高いんだぞ!!」
「ダンテ、相手はうさぎの悪魔さんじゃない!うさぎはストレスにすっごく弱いんだから扱いに気をつけてよ!」
「コイツがストレスに弱いってタマかっ!」
「弱いよ!それにお酒はまだあるんだからそんなに怒っちゃダメ!!」
「うっ…そうかもしんねぇけどよ…」
詰め寄ったダンテはその軽い体を持ち上げて揺さぶる。
ディーヴァはそんな興奮と憤怒でいっぱいのダンテを、上手く説明してなんとか落ち着かせた。
「それより、血や肉を食べるはずの悪魔が、お酒大好きなんて面白いよね。うさぎさんだから人参食べるってとこはまだわかるんだけど」
ダンテの手から受け取ったピーターを撫でながらディーヴァが不思議そうに首をかしげる。
「確かに酒好き悪魔なんて変わり種だよな。それも併せてロダンに聞いてみるか」
ピーターは満腹もさる事ながら、ディーヴァに撫でられて満更でもないのか満足そうに、そして自分に危害を加えようとしたダンテを恨みがましいような表情で見た。
「……とりあえず、こいつには酒盗られないように死守する」
「あはは、そうだね」
と言ってもピーターはもう満腹おねむ状態だ、言わなくてももう飲まないと思う。
夜は夏でもひんやりとしている廊下に置いた小ぶりのダンボール箱…ディーヴァはそこにピーターを寝かしつけて置いてきた。
ディーヴァが戻ってみれば、少々疲れたような様子のダンテの手の中には、すでに新しいグラスと酒が。
「はぁ…邪魔が入ったが、気を取り直して、」
「うん」
「「乾杯」」
チン!とグラスを合わせると小気味良い音が響く。
ダンテは琥珀色の酒をぐびりと、ディーヴァはミルクティー色に変わった酒を一口飲んだ。
「く~~~!鼻にヌケるこの味がたまんねぇぜ。ディーヴァどうだ?」
「ん。牛乳がいっぱい入ってるからかな。前に飲んだカクテルより飲みやすくて美味しいよ」
「そうだろうな。あれは『ほぼ酒だけ』のカクテルだったからな」
2人共に言っているのは、ディーヴァが初めてお酒を飲む席で飲んだ、マンハッタンというカクテルの事。
材料の全てがほとんどアルコールで出来たカクテルに比べれば、牛乳で割ってあるディーヴァのカクテルの方が飲みやすいのは当たり前である。
「酒ってのはいい。必ずってわけじゃねぇが、自分が会いたい人に会わせてくれる…」
お酒の香りを纏わせたダンテが、ふぅ…とため息まじりにそう言う。
どこか遠いところに思いを馳せ、憂いを帯びたような表情で言うので、少々酔っているのかとも思ったがそうでもなさそうだ。
ディーヴァはこくりとグラスの中身を飲み下しながら相槌をうった。
「うん、そうかもしれない」
「とは言え、オレが幻覚見るほど酔うなんてそうそうないけどな」
「お酒強いもんね~」
「強いのは酒だけじゃないぜ?」
「はいはい、力も強いよね」
「フッフッフッ…力だけでなくアッチの欲求も強いぞ~?」
「ひゃあ!」
言うが早いか、グラスを置いてディーヴァの方に覆い被さるように抱きつくダンテ。
ディーヴァは持っていた空のグラスを落とさぬよう気をつけて、そのいきなりの抱擁を受け入れた。
「危ないでしょ」
「あー。気持ちいい…」
謝る代わりにディーヴァのむっちりした胸の膨らみ、柔らかでなめらかな肌に顔を埋めて自身を癒すダンテ。
疲れているのかと問いたくなるようなその行動に怒る気が失せた。
ディーヴァは自分の顔のすぐ下にある、ダンテの髪を愛し気に梳き、撫でた。
さっきはディーヴァの兄の話が、今は会いたい人の話が出た。
ならばきっとダンテが会いたい人物というのは……。
「……バージルに会いたい?」
「ま、たまにだがな」
ふと会いたくなる時がある。
それでも、会いたいような会いたくないようなどっちつかずの気持ちになるのは、理由はどうであれ次もまた殺し合いのような喧嘩をするに決まっているから。
「せめて夢の中で会えるといいね」
「んー?夢の中で会うなら、ディーヴァがいいな」
「ふぅ~ん。夢の中のあたしと、ここにいるあたし、ダンテはどっちがいいの?」
ダンテの顔を挑発気味に覗き込んで言えば、返ってきた笑顔と唇へ軽くて、でも甘いキス。
「夢の中の自分に嫉妬してるのか。バカだな、そんなの今ここにいるディーヴァの方がいいに決まってるだろ?」
「ん…」
酔った、と言えるほど酔ってはいないがほろ酔い気分のダンテとディーヴァは、空いたグラスはそのままに寝室へなだれ込む。
そしてほんのりと明るい下弦の月が優しく照らすベッドで、ディーヴァが飲んでいたカクテルのようにほろ苦く、どこか甘い濃密な時間を過ごしたのだった。