ダンテの頭を撫でる行為は嫌いじゃない。
それは子ども扱いのようでもあり全く違うもの。
いわゆる２人の愛情表現の１つなのである。

「それはともかく、だ」

数回のその行為ののち、突然ダンテの空気が変わった。
ちょっと怖い感じがしてディーヴァは下がる。

「……なあ、ディーヴァ…。なんでドレスを選んでるんだ？プロムってなんだ？
教えてくれよ……」
「え、えーと…」

空気だけではなかった。
声までが低く、何やら怒りをはらんでいる。
教えてくれよ、とは言っているが教えろ、と命令されてるのとなんらかわりない。

「その雑誌みたいに隠そうとするなよ？」
「か、隠すつもりなんか…」

半魔であるダンテの暖かな手がディーヴァの頬に触れる。
暖かいというより、熱いくらいだ。
その熱さと同じ熱を宿した瞳がディーヴァを射抜いた。

「オレはディーヴァのすべてを知っていたい。頭のてっぺんから爪の先まで、その血の一滴、肉のひと切れ、骨のひと欠片、魂までも、な…」

そのまま喰い尽くされてしまいそうな、そんな熱視線で見つめられる。
ダンテの表現通り、頭のてっぺんから爪の先まで、魂まで、すべてを…。

今、自分は獲物の顔をして青ざめているに違いない。
ディーヴァは蚊の鳴くような震えた声を出した。

「ダンテ…。その表現も、声も…とっても怖い…」

怯えさせるのが目的ではなかった。
もうすぐでまた満月、少し狂気に飲まれ始めていたかもしれない。

ダンテは小さく呼吸を整え直し、いつもの声音に戻した。

「そんくらい愛してるってことさ」
「そ、そうなんだ！ありがとね」

よかった。
ちょっと怖かったけどいつものダンテだ。
愛してる、その言葉に顔を赤くしつつもディーヴァもいつも通りに振る舞った。


そして、バレてしまったらしかたない…とプロムのことについて説明をしだしたのである。