mission 30:going to travel ~日本~
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風呂から上がればちょうどいい時間。
体力が減れば腹が減るもので、朝ごはんと相成った。
「わぁ。美味しそう…!これはなぁに?お餅入りのポトフ?」
「餅、よく伸びるよな」
朝食にと出されたのは、ぷくりと焼かれたお餅と人参や鶏肉、牛蒡に大根、里芋、それにネギなどが入った和風のスープだ。
食欲をそそるいい香りと湯気が椀から漂っている。
「これはお雑煮」
「日本の正月にはよく食べられるモンだ」
「へー!具材がいっぱいで体にも良さそうだね。いただきまーす!」
ディーヴァのいただきますの合唱を合図に、4人はそれぞれ箸やフォークを手に食べ始める。
昨日も思ったが、こんなに賑やかな食卓はいつぶりだろうか。
感動しながら食べると、あら、また感動。
ダシが利いている。
繊細なダシ汁をじゅわりと十分吸った餅が、これまた美味しい。
「ん……美味し~…」
「ばーさん、料理上手だな」
「ふふふ、ありがとう」
「ウチでついた餅だからまだいっぱいあるでな。たんと食え」
家族っていいなぁとディーヴァもダンテも思いながら、食卓を囲むのだった。
そして食後のお茶を飲みながらだった。
「ディーヴァ、お年玉あげるからおいで」
ちょいちょいと手招きされ祖父の元へ行ってみると、渡されたのは膨らんだぽち袋。
袋にはかわいいうさぎの絵柄がプリントされている。
ポテッ、と手の上に置かれたそれと祖父の顔を不思議そうに見比べるディーヴァ。
「おじいちゃんとおばあちゃんからだよ。初めてのお年玉だからね、奮発じゃ」
「お年玉?」
「アメリカじゃ馴染みないことかもしれないが、まぁ、日本の古き良き習慣みたいなもんだ、気にするな」
「お小遣いだと思って受け取ってね」
「え……?お小、遣い…。開けてみてもいい?」
うんうんと頷き、先を促す。
ゆっくりと開けて中身を手の上に出してみると、何枚かの日本円での札束と、大きなパールがいくつか連なったティアラを模した髪飾りが入っていた。
よく目を凝らして見ると、イミテーションではなく本真珠に見える。
「こんなにお金いいよ!それにこんな高価な物、貰えない…」
「お金はなくて損をすることはあれど、あって損はない。もっとけもっとけ」
「それに、サムシングフォー…近い未来にあなた達がする結婚式にはなにかひとつの古いものも必要なのでしょう?古いもので身に付ける物は蓮の形見の中にあるでしょうけど、私からはこれを贈るわ。昔、おじいちゃんに貰ったものなのよ」
手持ち無沙汰気味のそれをディーヴァの髪に飾ってやり、祖母は微笑む。
「じいさんからのプレゼントをいくら孫とはいえ、そう簡単に渡しちまっていいのか」
「いいの。蓮にもあげたかったけれどそれは叶わなかったの。その時は結婚しましたって事後報告だけだったから…」
今まで可愛がれなかった分、プレゼントしたくてたまらない、可愛がりたくてたまらなかったのだと祖父母は語った。
それを聞いたディーヴァは、漸く素直にありがたく受け取るのだった。
***
ダンテとディーヴァにあてがわれた部屋に戻り布団にゴロンとしながら、ディーヴァは髪飾りの入ったぽち袋を見つめる。
その隣でダンテも横になって肘をつき、嬉しそうなディーヴァを撫でる。
「お年玉貰えてよかったな」
「うん。いつか結婚する時、髪につけたいな」
「ああ、オレがつけてやるさ」
「ありがと。…でも何でお年玉って言うんだろ」
「年の玉、ねぇ…玉、玉……。…あ、その中身なら、オレもディーヴァにくれてやれるぜ。あとでディーヴァにたっぷりあげようか」
「玉の、中身?」
「ここじゃくれづらいから、あとで、な」
ちょいちょい下ネタを投下してくるダンテだが、うといディーヴァにはまだ理解できず。
内心ニヤニヤとしながら、ダンテは苦笑して更に撫でてやった。
「楽しみにしてるね。…ん~、それにしてもさ、なんかお腹いっぱいでお布団の上にいると、うとうとしちゃうよね~…」
「結構歩いたから疲れたんだろ。
……なあディーヴァ、じーさんばーさんにディーヴァの身体の成長のことだとか、その辺の事情聞かれたらどうする?」
「ん~~~…、ダンテに任せる~。ダンテが言っといていい、ょ……」
「は!?」
おやすみ数秒。
言い残したディーヴァは、そのままグゥスヤァ…眠ってしまった。
「……マジかよ…」
ディーヴァの秘密は自分に全て託された。
どこまで言っていいものかわからないが、話してしまった方が後々ラク…かもしれない。
「ったく……、こんな大事なコト、オレに任せやがって」
小憎らしくそして愛しい寝顔を眺め、その鼻をぎゅむっとつまむ。
ディーヴァは一瞬だけ顔を歪めたが、すぐにまた安らかな寝顔を見せた。
気持ち良さそうな寝顔だが、その身体は寒そうだと、そばにあった毛布をしっかりかけてやると、わずかに微笑みを見せた。
自分の恋人は、成長しようがしまいが、どこか子供っぽい。
もちろん、そういうコトをしている時は艶めく大人のオンナだが、この見た目が年相応になっていたとしても、結局子どもと変わらない…そんな気がする。
だからこそ、祖父母に成長のことを伝えても、何も変わることなく今まで通りなんじゃなかろうか。
ダンテは腕を組んでしばらく悩み抜き、そして重い腰を上げた。
「じーさんばーさんに話があるんだが、ちょっといいか?」
それから数分。
ダンテは熟睡しきっている真剣な面持ちで、ディーヴァの祖父母の休むコタツのある居間へと訪れた。
「実は…」
「おお、ちょうど用事があってこっちも行こうと思っていたところじゃ」
「へ?」
コホンと咳払いひとつたてたダンテが大事な話を言い出そうとしたところ、先方も何か用事ありとのこと。
こちらが言い出す前に、祖父はずずいと紙を手渡してきた。
「ほら、受け取れ」
「ああどうも…」
有難いが今は自分の話したい事でいっぱいいっぱい。
受け取った紙を確認もせずポケットに半ば捩込むような格好で仕舞い、続きを話す。
「えーと、実はディーヴァ……天使なんだ」
「「知ってる」」
「え、マジで!?」
あまりごちゃごちゃ言わず、さらっと言ってみる。
すると、まさかの返答。
「あんな可愛い子、天使以外にありえないだろうが!」
「ああ…そっちかよ」
天使に例えての可愛い、の意味か…びっくりして損した。
「そうじゃなくて、実際に天使なんだっての」
「そうじゃない、じゃとッ!?」
「天使以外の何者でもないでしょう?
貴方、ディーヴァを愛してるならその辺りよくわかるはずよ」
だから今からそれを説明しようと思ったというに。
何この人達、面倒くさっ!!
「だーーーーっ!もう!!だからー!確かに可愛さも天使並だが、本当の本当に『天使』なんだよ!」
それから天使の血族の話、悪魔の話、そしてディーヴァが成長しないその理由を四苦八苦して理解させた。
ディーヴァが言うのを躊躇った家族の死因も、ダンテが教えた。
最初は頭の上にクエスチョンマークを浮かべて聞いていた祖父母だったが、徐々に理解したようだった。
さすが、あやかしや妖怪だの、万物には魂が宿るだのスピリチュアリズムに長けた国、日本だ。
が、こういう事を話す役目は、自分の性に合わないと激しく思った。
「ふむ。なるほどのう、お前さんが半分悪魔、ディーヴァが天使の血筋か…」
「成長しないのは貴方のせいなのね……」
「………悪い」
咎めるような言葉に、つい謝罪の一言が漏れる。
だが、そんなダンテに祖父母はニコニコ笑ってこう言ったのだ。
「いいのよ。
ディーヴァは貴方のおかげで生きている。孫を救ってくれてありがとうね」
「これからも、どうか孫をよろしく頼む」
そして、ダンテが悪魔でもかまわないとの事。
その言葉にどれほど救われたか…ダンテはこの時の事をずっと忘れる事はなかった。
体力が減れば腹が減るもので、朝ごはんと相成った。
「わぁ。美味しそう…!これはなぁに?お餅入りのポトフ?」
「餅、よく伸びるよな」
朝食にと出されたのは、ぷくりと焼かれたお餅と人参や鶏肉、牛蒡に大根、里芋、それにネギなどが入った和風のスープだ。
食欲をそそるいい香りと湯気が椀から漂っている。
「これはお雑煮」
「日本の正月にはよく食べられるモンだ」
「へー!具材がいっぱいで体にも良さそうだね。いただきまーす!」
ディーヴァのいただきますの合唱を合図に、4人はそれぞれ箸やフォークを手に食べ始める。
昨日も思ったが、こんなに賑やかな食卓はいつぶりだろうか。
感動しながら食べると、あら、また感動。
ダシが利いている。
繊細なダシ汁をじゅわりと十分吸った餅が、これまた美味しい。
「ん……美味し~…」
「ばーさん、料理上手だな」
「ふふふ、ありがとう」
「ウチでついた餅だからまだいっぱいあるでな。たんと食え」
家族っていいなぁとディーヴァもダンテも思いながら、食卓を囲むのだった。
そして食後のお茶を飲みながらだった。
「ディーヴァ、お年玉あげるからおいで」
ちょいちょいと手招きされ祖父の元へ行ってみると、渡されたのは膨らんだぽち袋。
袋にはかわいいうさぎの絵柄がプリントされている。
ポテッ、と手の上に置かれたそれと祖父の顔を不思議そうに見比べるディーヴァ。
「おじいちゃんとおばあちゃんからだよ。初めてのお年玉だからね、奮発じゃ」
「お年玉?」
「アメリカじゃ馴染みないことかもしれないが、まぁ、日本の古き良き習慣みたいなもんだ、気にするな」
「お小遣いだと思って受け取ってね」
「え……?お小、遣い…。開けてみてもいい?」
うんうんと頷き、先を促す。
ゆっくりと開けて中身を手の上に出してみると、何枚かの日本円での札束と、大きなパールがいくつか連なったティアラを模した髪飾りが入っていた。
よく目を凝らして見ると、イミテーションではなく本真珠に見える。
「こんなにお金いいよ!それにこんな高価な物、貰えない…」
「お金はなくて損をすることはあれど、あって損はない。もっとけもっとけ」
「それに、サムシングフォー…近い未来にあなた達がする結婚式にはなにかひとつの古いものも必要なのでしょう?古いもので身に付ける物は蓮の形見の中にあるでしょうけど、私からはこれを贈るわ。昔、おじいちゃんに貰ったものなのよ」
手持ち無沙汰気味のそれをディーヴァの髪に飾ってやり、祖母は微笑む。
「じいさんからのプレゼントをいくら孫とはいえ、そう簡単に渡しちまっていいのか」
「いいの。蓮にもあげたかったけれどそれは叶わなかったの。その時は結婚しましたって事後報告だけだったから…」
今まで可愛がれなかった分、プレゼントしたくてたまらない、可愛がりたくてたまらなかったのだと祖父母は語った。
それを聞いたディーヴァは、漸く素直にありがたく受け取るのだった。
***
ダンテとディーヴァにあてがわれた部屋に戻り布団にゴロンとしながら、ディーヴァは髪飾りの入ったぽち袋を見つめる。
その隣でダンテも横になって肘をつき、嬉しそうなディーヴァを撫でる。
「お年玉貰えてよかったな」
「うん。いつか結婚する時、髪につけたいな」
「ああ、オレがつけてやるさ」
「ありがと。…でも何でお年玉って言うんだろ」
「年の玉、ねぇ…玉、玉……。…あ、その中身なら、オレもディーヴァにくれてやれるぜ。あとでディーヴァにたっぷりあげようか」
「玉の、中身?」
「ここじゃくれづらいから、あとで、な」
ちょいちょい下ネタを投下してくるダンテだが、うといディーヴァにはまだ理解できず。
内心ニヤニヤとしながら、ダンテは苦笑して更に撫でてやった。
「楽しみにしてるね。…ん~、それにしてもさ、なんかお腹いっぱいでお布団の上にいると、うとうとしちゃうよね~…」
「結構歩いたから疲れたんだろ。
……なあディーヴァ、じーさんばーさんにディーヴァの身体の成長のことだとか、その辺の事情聞かれたらどうする?」
「ん~~~…、ダンテに任せる~。ダンテが言っといていい、ょ……」
「は!?」
おやすみ数秒。
言い残したディーヴァは、そのままグゥスヤァ…眠ってしまった。
「……マジかよ…」
ディーヴァの秘密は自分に全て託された。
どこまで言っていいものかわからないが、話してしまった方が後々ラク…かもしれない。
「ったく……、こんな大事なコト、オレに任せやがって」
小憎らしくそして愛しい寝顔を眺め、その鼻をぎゅむっとつまむ。
ディーヴァは一瞬だけ顔を歪めたが、すぐにまた安らかな寝顔を見せた。
気持ち良さそうな寝顔だが、その身体は寒そうだと、そばにあった毛布をしっかりかけてやると、わずかに微笑みを見せた。
自分の恋人は、成長しようがしまいが、どこか子供っぽい。
もちろん、そういうコトをしている時は艶めく大人のオンナだが、この見た目が年相応になっていたとしても、結局子どもと変わらない…そんな気がする。
だからこそ、祖父母に成長のことを伝えても、何も変わることなく今まで通りなんじゃなかろうか。
ダンテは腕を組んでしばらく悩み抜き、そして重い腰を上げた。
「じーさんばーさんに話があるんだが、ちょっといいか?」
それから数分。
ダンテは熟睡しきっている真剣な面持ちで、ディーヴァの祖父母の休むコタツのある居間へと訪れた。
「実は…」
「おお、ちょうど用事があってこっちも行こうと思っていたところじゃ」
「へ?」
コホンと咳払いひとつたてたダンテが大事な話を言い出そうとしたところ、先方も何か用事ありとのこと。
こちらが言い出す前に、祖父はずずいと紙を手渡してきた。
「ほら、受け取れ」
「ああどうも…」
有難いが今は自分の話したい事でいっぱいいっぱい。
受け取った紙を確認もせずポケットに半ば捩込むような格好で仕舞い、続きを話す。
「えーと、実はディーヴァ……天使なんだ」
「「知ってる」」
「え、マジで!?」
あまりごちゃごちゃ言わず、さらっと言ってみる。
すると、まさかの返答。
「あんな可愛い子、天使以外にありえないだろうが!」
「ああ…そっちかよ」
天使に例えての可愛い、の意味か…びっくりして損した。
「そうじゃなくて、実際に天使なんだっての」
「そうじゃない、じゃとッ!?」
「天使以外の何者でもないでしょう?
貴方、ディーヴァを愛してるならその辺りよくわかるはずよ」
だから今からそれを説明しようと思ったというに。
何この人達、面倒くさっ!!
「だーーーーっ!もう!!だからー!確かに可愛さも天使並だが、本当の本当に『天使』なんだよ!」
それから天使の血族の話、悪魔の話、そしてディーヴァが成長しないその理由を四苦八苦して理解させた。
ディーヴァが言うのを躊躇った家族の死因も、ダンテが教えた。
最初は頭の上にクエスチョンマークを浮かべて聞いていた祖父母だったが、徐々に理解したようだった。
さすが、あやかしや妖怪だの、万物には魂が宿るだのスピリチュアリズムに長けた国、日本だ。
が、こういう事を話す役目は、自分の性に合わないと激しく思った。
「ふむ。なるほどのう、お前さんが半分悪魔、ディーヴァが天使の血筋か…」
「成長しないのは貴方のせいなのね……」
「………悪い」
咎めるような言葉に、つい謝罪の一言が漏れる。
だが、そんなダンテに祖父母はニコニコ笑ってこう言ったのだ。
「いいのよ。
ディーヴァは貴方のおかげで生きている。孫を救ってくれてありがとうね」
「これからも、どうか孫をよろしく頼む」
そして、ダンテが悪魔でもかまわないとの事。
その言葉にどれほど救われたか…ダンテはこの時の事をずっと忘れる事はなかった。