mission 30:going to travel ~日本~
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まずは挨拶とともに握手しようとして慌ててお辞儀に変えるディーヴァ。
「えっと、日本式はこう…ですよね?あけましておめでとうございます!」
「ああ、気にしないでいいのよ。こちらこそ、あけましておめでとう」
確か日本ではお辞儀するのが一般的だったか…。
日本式のマナーをもっともっと勉強しておくんだったと、今更後悔。
だが、しどろもどろになりながら深々とお辞儀したディーヴァの手を取り、相手はにこにこと笑ってくれた。
「それより貴女がディーヴァちゃんなのね。遠路はるばるご苦労様。
なかなか来ないから心配したのよ~」
「ありがとうおばあちゃん。電車乗るのに手間取っちゃって…ごめんなさい」
「そうだったの。無事に着いてよかったわ。
……で、こっちの彼がダンテ君かしら?」
「はい!」
ディーヴァがはにかみながらそう返事すると、人の良さそうなでもどことなく芯の強そうな祖母が嬉しそうに笑う。
「おいばーさん、オレは君付けされるような年じゃ……ぃてっ!」
「ダンテ、言葉遣いにはもうちょっと気をつけようか」
「おっと、悪い悪い」
「も~…」
「ふふふ、仲良しさんなのね」
笑顔は品がよく見え、かといえば子どものように無邪気な笑顔はディーヴァとそっくり。
ディーヴァがこの人物と血縁者だという何よりの証拠だと、ダンテは思った。
「仲良いに決まってるだろ?なんたって、相思相愛の恋人同士だからな」
「ダンテったら…」
そう言ってディーヴァを抱き寄せてみせるダンテ。
ディーヴァは恥ずかしそうに、けれど嬉しそうにそれを受け入れた。
「ふふ。あ、立ち話もなんだから、中に上がってちょうだい」
その様子を始終にこにこと見た祖母が思い出したように声をあげ、中へ入るよう促す。
玄関先では寒いだけで、ディーヴァ達が風邪をひいてしまう。
「それとね、敬語じゃなくていいのよ?」
「え?あたし、敬語になっちゃってた…?」
「少しだけど敬語になってたぜ」
電話でも敬語じゃなくていいと話をしていたのに、実際に会ったら緊張して敬語を使ってしまっていたらしい。
孫娘に他人行儀にされたら嫌だろう…そう思いなるべく敬語をやめようとしながら玄関をくぐる。
元は農家でも営んでいたのか、と思わせる三和土の土間が広がり、その端にある上がりっ縁。
靴を脱いでキチンと揃え、上へ上がる。
郷に入っては郷に従えと散々言ってあったからか、見ればダンテも珍しくディーヴァにならって靴を揃えていた。
板張りの廊下を抜け、通されたイグサ香る和室。
そこで正座をして茶を待っていたのだが、ディーヴァはともかくダンテは正座など慣れぬ身。
足が痺れて辛そうな事を祖母に話し、居間の和室をやめ外からも見えていた魅力的な場所、テラスへと移動することに…。
淹れてもらった緑茶を飲みながらしばし落ち着いて談話する3人。
ちなみにディーヴァは苦い物が苦手だが、緑茶の苦味は平気だったりする。
祖母のダンテに対する態度を見るに、つかみはばっちり。
そもそも、ダンテとの交際を口では認めつつも不安に思っているのは祖母ではなく祖父だからだ。
ただ……時に女は激しいもの。
怒らせるときっと祖父より恐ろしそうなので、逆らったり怒らせたりはしない方が良さそうである。
ふぅ…と、ひと息ついて湯呑みをコトリと置く3人。
祖母の優しい目がディーヴァに向けられた。
写真や電話では知っていても、実際に会うのは初めての最愛の孫娘。
マジマジと穴の空きそうなほど見られてしまうのは、致し方ないことだろうと思う。
「孫だからこう言うわけじゃないけど、ディーヴァちゃん…かわいいわね~。
なんだか小動物みたい」
「だろ?ウサギみたいなもんだ。つい可愛がりたくなる…」
「そ、かな…ありがとう」
嬉しそうにひとしきりディーヴァを瞳に映した後は、祖母は持ってきていたアルバムを取り出した。
そこには母の幼少期から出て行くまでの全てが並んでいた。
懐かしそうにでもどこか寂しそうに写真をなぞる祖母。
「よく笑う子だったわ。
…ディーヴァちゃんは、蓮に目もととかよく似てるわね。あの子みたく豪快で頑固じゃなさそうだけど…」
「豪快じゃねぇがたまに頑固だぜ」
たまに頑固とはなんだ、頑固とは。
ムッとしてダンテを睨んでいると、衣擦れの音をさせて祖母が立ち上がった。
「少し…蓮の部屋でも見ましょうか」
「え、母の…?」
チラとダンテを確認。
「行ってこいよ、オレ、ここで待ってるから」
「う、ん…」
ダンテはそう言って、ディーヴァを立たせて送り出した。
2階にあるという母の部屋に向かう道すがら、柱に刻まれた身長の痕を説明される。
縁側には何か落書きの跡。
母がいた、という痕跡がそこかしこに大切に残されていた。
自室は柔らかい色調のライムグリーンで統一され、こまめに掃除されているのか今でも誰か住んでいるのではないかという気がしてくる。
その家具の趣味はやはり自分と似ていた。
「まさかあの子が父親と喧嘩して飛び出した挙句、アメリカで結婚するなんて思わなかったわ。しかも…、」
母の大事なものだったのだろう、開くと音の流れ出すタイプのオルゴールをわずか開ける祖母の体は小さく震えていた。
自分のせいだ、自分のこの力のせいで…。
きゅっと唇を結び、そして口を開きかけたディーヴァに、祖母は笑って言った。
「最後まで親不孝で困った子ね」
ずくり、トドメとばかりに胸が痛む。
その理由を、原因を言うべきか否か悩み、そして結局何も言えなくなったディーヴァの顔を上向かせ、祖母は続けた。
「きっと、ディーヴァちゃんはお父様にもよく似てるんでしょうね…。
蓮の夫となった方に会ってみたかったわ。ディーヴァちゃんの兄弟にも。
…私達、何も知らないから、ディーヴァちゃんが今までのこと、思い出…いっぱい教えてね」
「うん…。でも、聞かないの?
家族の…その、死因とか、そういうのは。責めないの?あたしだけ生きてて…」
「その必要はないわ、無理に聞かない。それがたとえどんな理由でも責めたりしない。
それに、ディーヴァちゃんが聞かせたくないことなんでしょう?」
「おばあちゃん…」
「だから聞かないの。それに、貴女だけでも生きていてくれた。それだけでじゅうぶんよ」
ダンテとは違う温かさ、懐かしい感じがディーヴァを包み込んだ。
抱きしめ、ぽんぽんとあやすように撫でられて初めて、ディーヴァは自分が涙を流していることに気がついた。
「だから笑っていなさい。泣いてたら彼が心配するわ」
「うん…っ」
ぐしっ!と涙を拭いさり、代わりに笑う。
「やっと日本に来れて良かった。来て良かった。母の故郷、ここに…」
窓から見える雪化粧を被った山々を遠くに臨みながら、ディーヴァはそう呟いた。
「えっと、日本式はこう…ですよね?あけましておめでとうございます!」
「ああ、気にしないでいいのよ。こちらこそ、あけましておめでとう」
確か日本ではお辞儀するのが一般的だったか…。
日本式のマナーをもっともっと勉強しておくんだったと、今更後悔。
だが、しどろもどろになりながら深々とお辞儀したディーヴァの手を取り、相手はにこにこと笑ってくれた。
「それより貴女がディーヴァちゃんなのね。遠路はるばるご苦労様。
なかなか来ないから心配したのよ~」
「ありがとうおばあちゃん。電車乗るのに手間取っちゃって…ごめんなさい」
「そうだったの。無事に着いてよかったわ。
……で、こっちの彼がダンテ君かしら?」
「はい!」
ディーヴァがはにかみながらそう返事すると、人の良さそうなでもどことなく芯の強そうな祖母が嬉しそうに笑う。
「おいばーさん、オレは君付けされるような年じゃ……ぃてっ!」
「ダンテ、言葉遣いにはもうちょっと気をつけようか」
「おっと、悪い悪い」
「も~…」
「ふふふ、仲良しさんなのね」
笑顔は品がよく見え、かといえば子どものように無邪気な笑顔はディーヴァとそっくり。
ディーヴァがこの人物と血縁者だという何よりの証拠だと、ダンテは思った。
「仲良いに決まってるだろ?なんたって、相思相愛の恋人同士だからな」
「ダンテったら…」
そう言ってディーヴァを抱き寄せてみせるダンテ。
ディーヴァは恥ずかしそうに、けれど嬉しそうにそれを受け入れた。
「ふふ。あ、立ち話もなんだから、中に上がってちょうだい」
その様子を始終にこにこと見た祖母が思い出したように声をあげ、中へ入るよう促す。
玄関先では寒いだけで、ディーヴァ達が風邪をひいてしまう。
「それとね、敬語じゃなくていいのよ?」
「え?あたし、敬語になっちゃってた…?」
「少しだけど敬語になってたぜ」
電話でも敬語じゃなくていいと話をしていたのに、実際に会ったら緊張して敬語を使ってしまっていたらしい。
孫娘に他人行儀にされたら嫌だろう…そう思いなるべく敬語をやめようとしながら玄関をくぐる。
元は農家でも営んでいたのか、と思わせる三和土の土間が広がり、その端にある上がりっ縁。
靴を脱いでキチンと揃え、上へ上がる。
郷に入っては郷に従えと散々言ってあったからか、見ればダンテも珍しくディーヴァにならって靴を揃えていた。
板張りの廊下を抜け、通されたイグサ香る和室。
そこで正座をして茶を待っていたのだが、ディーヴァはともかくダンテは正座など慣れぬ身。
足が痺れて辛そうな事を祖母に話し、居間の和室をやめ外からも見えていた魅力的な場所、テラスへと移動することに…。
淹れてもらった緑茶を飲みながらしばし落ち着いて談話する3人。
ちなみにディーヴァは苦い物が苦手だが、緑茶の苦味は平気だったりする。
祖母のダンテに対する態度を見るに、つかみはばっちり。
そもそも、ダンテとの交際を口では認めつつも不安に思っているのは祖母ではなく祖父だからだ。
ただ……時に女は激しいもの。
怒らせるときっと祖父より恐ろしそうなので、逆らったり怒らせたりはしない方が良さそうである。
ふぅ…と、ひと息ついて湯呑みをコトリと置く3人。
祖母の優しい目がディーヴァに向けられた。
写真や電話では知っていても、実際に会うのは初めての最愛の孫娘。
マジマジと穴の空きそうなほど見られてしまうのは、致し方ないことだろうと思う。
「孫だからこう言うわけじゃないけど、ディーヴァちゃん…かわいいわね~。
なんだか小動物みたい」
「だろ?ウサギみたいなもんだ。つい可愛がりたくなる…」
「そ、かな…ありがとう」
嬉しそうにひとしきりディーヴァを瞳に映した後は、祖母は持ってきていたアルバムを取り出した。
そこには母の幼少期から出て行くまでの全てが並んでいた。
懐かしそうにでもどこか寂しそうに写真をなぞる祖母。
「よく笑う子だったわ。
…ディーヴァちゃんは、蓮に目もととかよく似てるわね。あの子みたく豪快で頑固じゃなさそうだけど…」
「豪快じゃねぇがたまに頑固だぜ」
たまに頑固とはなんだ、頑固とは。
ムッとしてダンテを睨んでいると、衣擦れの音をさせて祖母が立ち上がった。
「少し…蓮の部屋でも見ましょうか」
「え、母の…?」
チラとダンテを確認。
「行ってこいよ、オレ、ここで待ってるから」
「う、ん…」
ダンテはそう言って、ディーヴァを立たせて送り出した。
2階にあるという母の部屋に向かう道すがら、柱に刻まれた身長の痕を説明される。
縁側には何か落書きの跡。
母がいた、という痕跡がそこかしこに大切に残されていた。
自室は柔らかい色調のライムグリーンで統一され、こまめに掃除されているのか今でも誰か住んでいるのではないかという気がしてくる。
その家具の趣味はやはり自分と似ていた。
「まさかあの子が父親と喧嘩して飛び出した挙句、アメリカで結婚するなんて思わなかったわ。しかも…、」
母の大事なものだったのだろう、開くと音の流れ出すタイプのオルゴールをわずか開ける祖母の体は小さく震えていた。
自分のせいだ、自分のこの力のせいで…。
きゅっと唇を結び、そして口を開きかけたディーヴァに、祖母は笑って言った。
「最後まで親不孝で困った子ね」
ずくり、トドメとばかりに胸が痛む。
その理由を、原因を言うべきか否か悩み、そして結局何も言えなくなったディーヴァの顔を上向かせ、祖母は続けた。
「きっと、ディーヴァちゃんはお父様にもよく似てるんでしょうね…。
蓮の夫となった方に会ってみたかったわ。ディーヴァちゃんの兄弟にも。
…私達、何も知らないから、ディーヴァちゃんが今までのこと、思い出…いっぱい教えてね」
「うん…。でも、聞かないの?
家族の…その、死因とか、そういうのは。責めないの?あたしだけ生きてて…」
「その必要はないわ、無理に聞かない。それがたとえどんな理由でも責めたりしない。
それに、ディーヴァちゃんが聞かせたくないことなんでしょう?」
「おばあちゃん…」
「だから聞かないの。それに、貴女だけでも生きていてくれた。それだけでじゅうぶんよ」
ダンテとは違う温かさ、懐かしい感じがディーヴァを包み込んだ。
抱きしめ、ぽんぽんとあやすように撫でられて初めて、ディーヴァは自分が涙を流していることに気がついた。
「だから笑っていなさい。泣いてたら彼が心配するわ」
「うん…っ」
ぐしっ!と涙を拭いさり、代わりに笑う。
「やっと日本に来れて良かった。来て良かった。母の故郷、ここに…」
窓から見える雪化粧を被った山々を遠くに臨みながら、ディーヴァはそう呟いた。