アップルパイを食べていたフォークを置いたディーヴァは再び雑誌に目を向けた。
それにならってダンテも雑誌に目を落とす。

「さっきから何の雑誌読んでるんだ？オレをかまえよー」

ユサユサとディーヴァの体を揺り動かすダンテ。

かまってるかまってる、さっきから十分かまってる！ダンテ、ハウス！

ディーヴァはダンテに落ち着くよう言っていさめた。

「友達に借りたファッション誌。だけど、さっき見てたのは日本のバレンタインデーとホワイトデーについて載ってたページ。
で、今見てるのはこっち」

ディーヴァが指し示したページに載っているのは澄み渡る空と壮大な森を映し、きらきら輝く湖畔。
青と深緑のコントラストが美しい湖の風景の写真だった。

その下にはでかでかと文字が書かれ、そのページが旅行を企画するページであることがうかがえる。

「この湖、綺麗だなーって」
「こういうの好きなのか？」
「うん。なんか心が洗われる感じ。水の中って…いいよね」

そのレイクビューを眺めていたディーヴァが、うっとりとした表情を浮かべて言う。

「魚か」
「生き物は全て水の中から生まれたんだよ？…悪魔はどうだかわかんないけど」

つっこみを入れるダンテに注釈を入れ、大きな声を出す。

「母なるうみーっ！！」

写真は海でなく湖だが。

ページを見つめるディーヴァを、ダンテはさらにじっと見つめた。

「ふーん。じゃあさ、そこに泊まりがけで行こうぜ」
「え、別にいいよ。しばらくおっきな休みもないし」
「あるだろ。イースター休暇とかいうのが」

断るディーヴァに苦笑しつつ、側にかけてある壁掛けカレンダーの４月を指差す。
今年の復活祭は４月２０日。
そのあたり一帯の長期休みを言っているのだ。

「あー…試験のあとの休みかぁ。よく知ってたね」

カレンダーをほとんど見ようとしないダンテが珍しいこともあるものだ。

いやいやいや、もしかしたら度重なる注意が功をなしてカレンダーを見るようになったのかもしれない！
…なわけないか、ダンテだし。

「言っておくけど、お泊まりになったからってダンテがご所望するような『イイコト』はなーんにもございません」
「わかってるって」

ＨＡＨＡＨＡ！
笑い飛ばしたダンテは雑誌を受けとると書かれた番号を回し、さっそく予約を入れた。

ダンテが変なことをしてこないか心配だが、その前にもっと難関が立ち塞がっている。
ディーヴァはそちらの不安の方が大きかった。

なんだか今回のテスト…嫌な予感がする……。